「スイング王」(King of Swing)と言われるベニー・グッドマンもこの年レコーディング・デビューを果たしている。1909年生まれこの年17歳であり、もちろんサイドマンとしてである。加わっていたバンドはドラマーのベン・ポラックが率いる「ベン・ポラック・アンド・ヒズ・カリフォルニアンズ」である。左がこのバンドの1928年の写真、右から4番目で横になっているのがグッドマン。
音源は、BMGビクターから発売された「コンプリート・ベニー・グッドマン」CD10枚組に特典としてついている「ベニー・グッドマン秘蔵名演集」CD1枚である。本編扱いの10枚組はBGが自己のバンドを持った1935年〜39年までのビクターへの録音をほぼ網羅したもので、付属のCDは1926年のベン・ポラック楽団における初吹き込みから30年までの録音を収録しているが、最大のライバル社コロンビア系への録音はさすがに収録されていない。しかし『スターダスト』、『ジョージア・オン・マイ・マインド』などの作者として名高いホーギー・カーマイケルが、伝説のコルネット奏者ビックス・バイダーベックなどの若き逸材を集めて録音した貴重な音源も収録されており誠に貴重な「付録」となっている。解説は故野口久光氏。ということで今回はかの“スイング王”ベニー・グッドマンの初レコーディングと初レコーディングを行ったベン・ポラックでのレコーディングを取り上げよう。
さて、内容に移ろう。
Drums & Band leader | … | ベン・ポラック | Ben Pollack | |||
Cornet | … | ハリー・グリーンバーグ | Harry Greenberg | 、 | アル・ハリス | Al Harris |
Trombone | … | グレン・ミラー | Glenn Miller | |||
Clarinet | … | ベニー・グッドマン | Benny Goodman | |||
Alto sax | … | ギル・ロディン | Gil Rodin | |||
Tenor sax | … | ファド・リビングストン | Fud Livingston | |||
Piano | … | ウェイン・アレン | Wayne Allen | |||
Banjo | … | クルツェンクナーベ | John Kurzenknabe | |||
Bass | … | ハリー・グッドマン | Harry Goodman | |||
Vocals | … | ホーメイ・ベイリー | Homay Bailey | 、 | ザ・ウィリアムズ・シスターズ | The Williams Sisters |
CD-1.ヒーズ・ザ・ラスト・ワード(He's the last word)
BGの記念すべき初レコーディングである。「私の青空」など多くのヒット・ソングを生んだウォルター・ドナルドソンの作という。
前半古風なアンサンブル・アレンジとウィリアム・シスターズのヴォーカルが時代を感じさせるが、後半一転してBGのクラリネット、ハリー・グリーンバーグと思われるTpがジャズを感じさせる。短いがアルトとトロンボーンのソロもある。特に後半のミラーは一瞬ながらBGとの絡みもあって興味深い。
CDには、ハリー・グッドマンがベースとなっているが、僕にはチューバのように聞こえる。
BGは自伝の中でこのデビュー吹込みの前夜は興奮のあまり眠れなかったと記しているという。