バニー・ベリガン 1936年
Bunny Berigan 1936
<Date&Place> … 1936年2月4日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オーケストラ(Louis Armstrong & his orchestra)
<Contents> … "Louis Armstrong and his orchestra 1934-1936"(classics 509)
CD-23.[アイム・プッティング・オール・マイ・エッグズ・イン・ワン・バスケット](I'm putting all my eggs in one basket)
本CDでもっとも残念なのは、この日行われたセッションではもう1曲(”Yes! Yes! My! My!”)レコーディングされたが、収録されていない点である。それはスイング時代最高の白人Tp奏者バニー・ベリガンが加わっているからである。ジャズ史上最高のTp奏者の一人サッチモとベリガンの共演は僕の調べた限りこの日のセッションしかないはずである。そもそもこのセッションはどうして実現したのであろうか?評論家の先生方は何故書かないのであろうか?
曲構成は、イントロのTpソロ⇒Tsソロ⇒Tpリード⇒Cl⇒ヴォーカル⇒合奏⇒Tpソロ⇒エンディングで、どちらがベリガンでどちらがルイか?あるいはどちらもルイか?どちらも豪放で奔放な芸風は被るところがあるので悩むところだが、僕は全篇Tpソロはルイだと思う。
<Date&Place> … 1936年2月24日 録音
<Personnel> … バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ (Bunny Berigan and his boys)
<Contents> … 「バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ/テイク・イット、バニー」(Epic SICP 4012)
CD-5. | イッツ・ビーン・ソー・ロング | It’s been so long |
CD-6. | アイド・ラザー・リード・ア・バンド | I'd rather lead a band |
CD-7. | レット・ユアセルフ・ゴー | Let yourself go |
この3曲はSP盤で発売当時は、チック・ブロック(Chick Bullock)のヴォーカル入りだったという。ブロックは30年代最も吹込みをしたと言われる人気歌手。どうしてこの盤では消されたのか謎だとは、解説の原田和典氏。そういわれて聴けばアンサンブルが長いなと感じる部分があったりするが、全体としては、それほど違和感なく聴ける。
CD-5.[イッツ・ビーン・ソー・ロング]
ベリガンのリードするアンサンブルで始まるが、そのアンサンブルはディキシー的な集団合奏である。続いてTs、Clのソロ、そしてディキシー的合奏で終わる。
CD-7.[アイド・ラザー・リード・ア・バンド]
イントロの後Tsのリードするアンサンブルとなる。そして輝かしいベリガンのソロ、そしてTsとTpのソロ交換が入ってエンディングとなる。
CD-8.[レット・ユアセルフ・ゴー]
Tpソロの後ブシュキンのPソロ、フリーマンのTsソロそして大将のベリガンがリードするアンサンブルで終わる。
<Date&Place> … 1936年4月13日 録音
<Personnel> … バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ (Bunny Berigan and his boys)
CD-9.のみメンバー変更
Trombone … ジャック・ティー・ガーデン ⇒ Out
Clarinet … アーティー・ショウ ⇒ ポール・リッチ(Paul Ricci)
<Contents> … 「バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ/テイク・イット、バニー」(Epic SICP 4012)
CD1. | 云い出しかねて | I can't get started |
CD8. | メロディ・フロム・ザ・スカイ | A melody from the sky |
CD9. | リズム・セイヴド・ザ・ワールド | Rhythm saved the world |
CD-1.[云い出しかねて]
そのヴォーカルと共にベリガン最大のヒット曲となるが、それは1937年の録音。こちらはそのファースト・ヴァージョン。そもそもこの曲の歌詞は、「好きな相手に思いを伝えても全く相手にされない男(あるいは女)のやるせない気持ち」を歌ったもので、この邦題は誤訳だという。ベリガンのヴォーカルはそのやるせなさを実にうまく表現している。クロフォードのTsもストレートで素晴らしい。そしてTpに帰ると思いの丈を一気に吹き上げるベリガンのプレイも見事。
ただこのセッションはもともとは前述のように人気シンガー、チック・ブロックの歌伴のはずであり、なぜこの曲だけベリガンがヴォーカルを取ったのか不思議なところだ。
CD-8.[メロディ・フロム・ザ・スカイ]、CD-9.[リズム・セイヴド・ザ・ワールド]
両曲とも原田氏の解説に拠れば、ブロックのヴォーカルが入っていたというがいったいどこに入っていたのだろう。全篇ベリガンのTpが中心で所々ClやTs、Pのソロが入り、ヴォーカル・スペースらしき箇所が見当たらないのだが。ただふと思うのは、2月24日、6月9日の6曲を含めた曲は演奏時間が短いので、ヴォーカル部分をごっそりと抜いたのかもしれない。
<Date&Place> … 1936年6月9日 録音
<Personnel> … バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ (Bunny Berigan and his boys)
<Contents> … 「バニー・ベリガン&ヒズ・ボーイズ/テイク・イット、バニー」(Epic SICP 4012)
CD10. | バット・デフィニトリー | But definitely |
CD11. | 逃しかけた恋 | I nearly let love go slipping through my fingers |
CD12. | イフ・アイ・八ド・マイ・ウェイ | If I had my way |
コンボによる演奏である。それだけにTpが殊更前面に出る。解説よればこれもブロックのヴォーカルを抜いたものということになる。ここでは実に久しぶりにエディ・コンドンの名前を見かけることになる。コンドンは実はギターが弾けないという人がいるがここではちゃんと弾いている。
CD-10.[バット・デフィニトリー]
ベリガンのリードするテーマからClソロ、Tbソロそして再びベリガンのリードするアンサンブルで終わる。
CD-11.[逃しかけた恋]
前曲と似たような構成だが、Clソロはなくエンディング近くで音の聞こえないことで定評のあるコンドンのギターの音が聴こえるのがご愛敬。
CD-12.[イフ・アイ・八ド・マイ・ウェイ]
この曲でもリズムを刻むコンドンのギターの音がしっかりと聞こえる。コールのドラム・ソロが聴かれるのが珍しい。エンディングはニューオリンズ風の合奏で終わる。
<Date & Place> … 1936年6月30日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリデイ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and her orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)
record2 A-5. | 憶えているかしら? | Did I remember ? |
record2 A-6. | 後悔しないわ | No regrets |
record2 A-7. | サマータイム | Summertime |
record2 A-8. | ビリーのブルース | Billie’s blues |
この日のセッションは白黒混合で行われた。黒人はビリーとDrのコジ―・コールの二人で他の4人は白人である(Bのピーターソンは不明)。この録音の聴きものは、スイング時代最高の白人Tp奏者バニー・ベリガンが典型的な彼のスタイルの素晴らしいプレイを披露していることと、アーティー・ショウ(Cl)の参加で、後に(38年)ショウはビリーを自己のバンドの専属歌手に迎え入れている。白人バンドの専属になった黒人の苦労は彼女の自伝に詳しい。またピアノのジョー・ブシュキンもキャリア上ごく初期の録音であり貴重である。この日のビリーも周りの面子に刺激されたのかかなり大胆に崩して歌っている。
record2 A-5.[憶えているかしら?]
ヴォーカルの後のショウのCl、ブシュキンのP、ちょっと合奏が入りベリガンのTpがあり、またちょっとショウ、そしてビリーのヴォーカルで終わる。せっかくの面子なのでもっとソロが聴きたいと思うのは僕だけではないだろう。
record2 A-6.[後悔しないわ]
ショウのブレイクによるソロそしてベリガンとの絡み実に極上の演奏である。ビリー名義だとヴォーカル・スペースが大きい。コーラスに入る度に違う歌い方で入るところはさすがである。
record2 A-7.[サマータイム]
言わずと知れたガーシュイン兄弟作のミュージカル「ポーギー・アンド・ベス」挿入歌である。この演奏を大和氏は大変興味深いとししている。それはベリガンがイントロで大胆なダーティー・トーンで始めるところであり、さらにそれに啓発されたようにビリーも大胆に低唱で始めるといったところで、才能ある者同士がお互いを啓発し合い素晴らしいコラボレーションを見せて行くところであるという。
record2 A-8.[ビリーのブルース]
ビリー自作曲の初吹込みであり、吹き込んだレコードでは初のブルース・ナンバーである。ビリーは、「ブルースを歌うレディ」と呼ばれたが実は余りブルースを歌っていない。しかし彼女の歌にはブルース・フィーリングが溢れているためにそう呼ばれたのであろう。そして逆にこのような本当のブルース・ナンバーをどちらかといえばスインギーなナンバーとしてこなしているところが面白い。ブギー・ウギーのリズムに乗って大胆に歌っている。
ビリー・ホリディ名義の2回目のセッションは、9月29日に行われた。
<Date & Place> … 1936年9月29日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリデイ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and her orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)
record2 B-1. | 結構なロマンス | A fine romance |
record2 B-2. | 偽れない心 | I can't pretend |
record2 B-3. | 数を数えて君を待つ | One , two ,button your shoe |
record2 B-4. | 心と心で | Let’s call a heart a heart |
引き続き白黒混合で、中心はベリガンであろう。ファゾラとクライド・ハートの参加が面白い。ファゾラはどちらか言えばディキシー系と思っていたが、全く異なりクールで素晴らしいソロを聴かせてくれる。
record2 B-1.[結構なロマンス]
大和氏は、ビリーはベッシー・スミスの大きな声と感覚、ルイ・アームストロングのフィーリングを求めていたと語っていて、それが如実に表れたのがこの曲だとしている。ここではいつものように軽く歌い始めず、最初からベッシーのように堂々と歌い出す。しかもサッチモのようなフィーリングに乗り一言一言を叩き出すように歌う唱法を取っていて、さらに着実なリズムの上を実に安定した乗り方で撃てって行けることを示した。しかしビリーがベッシーやサッチモの感覚に浸ろうとするあまり、歌詞の表現の上で正しく伝達しえたかどうか疑問があるとし、それを解決し、真に偉大なシンガーとなるのはもう少しばかり先のこととなるとする。一方巨泉氏は、比較的コミカルな失恋の歌を真摯にひたむきに歌っていると高評価である。ファゾラのソロが良い。ベリガンものびのびと吹いている。
record2 B-2.[偽れない心]
ビリーの得意なナンバーという。クールなファゾラとのびのびとしながらも抑えたベリガンのソロが良いが、コジ―のチンドン屋風のコーニーなドラムが出来を台無しにしている。
record2 B-3.[数を数えて君を待つ]
コジ―とのセリフのやり取りから始まる当時の典型的なナンセンス・ソング。ファゾラとベリガンのソロが全体の出来を救っている。
record2 B-4.[心と心で]
ベリガンがミュートでソロを取るがこれは極めて珍しいという。続くハートのソロはウィルソン風で、影響を脱していないという。続くファゾラのソロはここでも素晴らしい。
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