エイドリアン・ロリーニ 1935年

Adrian Rollini 1935

レックス・スチュアート著『ジャズ1930年代』によれば、エイドリアン・ロリーニは白人であるが、黒人ミュージシャンにも空前絶後のバス・サックスの名手として認められていて、かのテナー・サックスのパイオニア、コールマン・ホーキンスも憧れていたという。そしてこんなエピソードがあるそうである。
「ホークはお金をためてついにバス・サックスを買い、フレッチャー・ヘンダーソン楽団の吹込みに持ってきたという。スタジオにバス・サックスが置いてあるのを見たジミー・ハリソンが、こう言ったという。『おーい、スマック(ヘンダーソンの愛称)。この吹込みにエイドリアンが参加するなんて聞いてないぞ。』もちろんホークをからかったのである。ホークはこれを無視し演奏を開始した。ホークがブカブカやりだすと、ジミーが笑い始め、ついには楽団員全員が、そしてヘンダーソンも笑い出し、演奏を中止した。さすがのホークも演奏を諦め、その日のうちにバス・サックスを返品した。エイドリアンのようには吹けなかったのである。」
またスチュアートはこのようなことも明かしている。「このように20年代を通じて、エイドリアンはバス・サックスの第一人者だったが、その後レッド・ノーヴォと知り合い、初めてヴァイブラフォンという楽器を知った。すると彼は、同僚たちの驚きをよそに、サックスを捨ててヴァイブラフォンに転向してしまった。それから彼は死ぬまでヴァイブラフォンしか演奏しなかったのである」と。
この録音全4曲中ロリーニは、1曲半でバス・サックスを、2曲半でヴァイブラフォンを演奏している。バス・サックス⇒ヴァイブラフォンの過渡期の貴重な録音と言えるだろう。

<Date&Place> … 1935年6月14日 録音

<Personnel> … エイドリアンとそのタップ・ルーム・ギャング(Adrian and his tap room gang)

Bandleader , Bass sax and Vibraphoneエイドリアン・ロリーニAdrian Rollini
trumpetウィンギー・マノンWingy Manone
Clarinetジョー・マーサラJoe Marsala
Piano & Vocalプットニー・ダンドリッジPutney Dandridge
Guitarカーメン・マストレンCarmen Mastren
Bassシド・ワイスSid Weiss
Drumsサミー・ワイスSammy Weiss
Vocalジーン・バーンズJeanne Burns

<Contents> … 「Swing Sessions in the 30's」(Victor RA-5325)

B面5.バウンシン・イン・リズムBouncin' in rhythm
B面6.ハニーサックル・ローズHoneysuckle rose
B面7.ジャズ・オ・ジャズJaxx O' jazz
B面8.ナガサキNagasaki

B-5.[バウンシン・イン・リズム]
ディキシー風のアンサンブルが飛び出して来て驚かされる。ソロはマーサラ(Cl)、マノン(Tp)そして大将のロリーニのバス・サックスと続く。最後はディキシー風の合奏で終わる。
B-6.[ハニーサックル・ローズ]
ヴォーカルはプットニーだと思うが、かなり崩しヴォードヴィル風のお笑いナンバーとなっている。始めのロリーニのソロなどは聴き応えがある。ヴォーカルの後にはロリーニのヴァイブラフォンのソロも披露する。
B-7.[ジャズ・オ・ジャズ]
ジーン・バーンズのヴォーカルも入り、プットニーとのかけあいでより楽しく展開する。ここでもロリーニがヴァイブラフォンのソロを披露する。スイング時代ギター三羽烏と言われたマストレン、マノンのTpもいい味のソロを展開する。
B-8.[ナガサキ]
ここでもプットニーのヴォーカルがフューチャーされる。彼はキャブ・キャロウェイの影響を強く受けた黒人エンターテイナーのような気がする。ここでもロリーニはヴァイブラフォンを奏している。

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