アンディ・カーク 1936年

Andy Kirk 1936

アンディ・カークについて、僕が勝手に師事する粟村政昭氏は、「その昔彼の率いるオーケストラは、カンサス・シティ在住のバンドでありながら、ベニー・モーテンに代表されるリフ中心のジャンプ・バンドには聴かれない洒落たアレンジの数々のアレンジを用い、力強さと野暮ったさで売ったカンサス・シティ・グループの中で一際異彩を放つ存在となっていた。
この功績は主としてピアニスト兼アレンジャーであったメリー・ルー・ウィリアムスの手に帰すべきものであったが、テナーを吹いていたディック・ウィルソンもまたこのバンドの重要なソロイストに一人であった。
カークは自己のバンドを”Clouds of joy”という変わった名で呼び、30年にはジャック・カップとの契約が出来てブランズウィックに十数曲の演奏を吹き込んだが、この頃のカークのバンドはどちらかというと、まだ泥臭い田舎育ちに印象を抜けきってはいなかった。カークのバンドが真にジャズ史に残る名演を残すようになったのは、6年後にデッカへ録音を行い始めてからのことで、(中略)常に寛ぎを忘れぬスマートなKCスタイルを創造した点でカーク楽団の功績は永久に讃えられてよい。」と高く評価しているが、今日日本のレコード・ショップなどでアンディ・カークのレコードを見かけることはほとんどないと言っていい。誠に残念なことである。
僕自身このHPを書いている時に、ミュージシャンのプロフィールを調べると、「アンディ・カークのバンドに在籍云々」という記載を見ることがあり、名前は知っていたがレコードは、今回紹介するオムニバス以外に持っていない。
またメリー・ルー・ウィリアムスも、粟村氏の名著『ジャズ・レコード・ブック』は183名のジャズマンを取り上げている中で唯一の女性器楽奏者である。その中で粟村師は次のように彼女を紹介する。
「ジャズ史上最高の女性器楽奏者と言われる彼女は、かつてアンディ・カークのバンドに提供した優れたアレンジの数々と”Lady who swings the band”と讃えられた簡潔でブルース・フィーリング溢れたピアノ・ソロによってスイング・イーラに忘れられない足跡を残した。
彼女はアール・ハインズから大きな影響を受けブギー並びにブルースの名手として名を成したが、時代の変遷と共に(中略)モンクやバド・パウエルの影響さえ巧みに消化して我々を驚かせた。(中略)また、ランスフォード、BG、ノーヴォ、エリントンといった有力バンドに提供した彼女のアレンジの素晴らしさについてもご存知の方は多いに違いない」と。そして彼女のアルバムというのも残念ながら、そうそうは見かけないのである。僕は今日紹介するものの他にはレコード片面分、CDも1枚しか持っていない。
僕は、これからも、レコード・ショップに行った際には彼らのレコード或いはCDを見かければ買って聴きたいと思っている。

<Date&Place> … 1936年3月2日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … アンディ・カークと彼のトゥエルヴ・クラウズ・オブ・ジョイ(Andy Kirk and his twelve clouds of joy)

Band leader & Baritone saxアンディ・カークAndy Kirk
Trumpetハリー・ロウソンHarry Lawsonポール・キングPaul Kingアール・トンプソンEarl Thompson
Tromboneテッド・ドネリーTed Donnelly
Alto Saxジョン・ウィリアムスJohn Williamsジョン・ハリントンJohn Harrington
Tenor saxディック・ウィルソンDick Wilson
Pianoメリー・ルー・ウィリアムスMary Lou Williams
Guitarテッド・ロビンソンTed Robinson
Bassブッカー・コリンズBooker Collins
Drumsベン・シグペンBen Thigpen

<Contents> … 「MCAジャズの歴史」(MCA records VIM-17〜19)

Record 2B-4.[ウォーキン・アンド・スインギン](Walkin’ and swingin’) 「MCAジャズの歴史」に取り上げられたこの曲は、アンディ・カーク全盛時代の名演の一つに数えられているものである。作・編曲はもちろんメリー・ルー・ウィリアムス。力強くノリを生み出すリフと複雑なアンサンブルがうまくかみ合い他のバンドとは一線を画した興味深い演奏が聴ける。メリーのPソロ、実に短いが名手ウィルソンのTsソロが素晴らしい。
因みにレコード解説で、ギター奏者の名が、「テッド・ブリンソン」となっているが、どうググってもそういうギター奏者はおらず、他の解説書などでは「テッド・ロビンソン」となっているので、レコード解説の誤りだろうと思う。

<Date&Place> … 1936年4月2日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … アンディ・カークと彼のトゥエルヴ・クラウズ・オブ・ジョイ(Andy Kirk and his twelve clouds of joy)

Band leader & Bass saxアンディ・カークAndy Kirk
Trumpetハリー・ロウソンHarry Lawsonポール・キングPaul Kingアール・トンプソンEarl Thompson
Tromboneテッド・ドネリーTed Donnellyヘンリー・ウエルズHenry Wells
Alto Saxジョン・ウィリアムスJohn Williamsジョン・ハリントンJohn Harrington
Tenor saxディック・ウィルソンDick Wilson
Pianoメリー・ルー・ウィリアムスMary Lou Williams
Guitarテッド・ロビンソンTed Robinson
Bassブッカー・コリンズBooker Collins
Drumsベン・シグペンBen Thigpen
Vocalファー・テレルPha Terrell

3月2日からの移動
Trombone … ヘンリー・ウエルズ ⇒ In

<Contents> … "The best of Andy Kirk"(MCA2-4105)

record1 A-1.アンティル・ザ・リアル・シング・カムズ・アロングUntil the real thing comes along
バンドの専属歌手、ファー・テレルの天井声のヴォーカルをフューチャーしたナンバー。テレルはカークの地元カンサス・シティのナイト・クラブで歌っているところをカークにスカウトされたという。この曲は彼の代表的なヒット曲になったという。ピアノのイントロの後直ぐにヴォーカルとなる。間奏はTsがリードするアンサンブルである。

<Date&Place> … 1936年12月9日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … アンディ・カークと彼のトゥエルヴ・クラウズ・オブ・ジョイ(Andy Kirk and his twelve clouds of joy)

Alto sax … アール・ミラー(Earl Miller) ⇒ In

<Contents> … "The best of Andy Kirk"(MCA2-4105)

record1 A-2.フィフティ・セカンド・ストリートFifty second street
record1 A-3.ホワット・ウィル・アイ・テル・マイ・ハートWhat will I tell my heart
record1 A-4.ザ・レディ・フー・スイングス・ザ・バンドThe lady who swings the band
record1 A-5.デディケイテド・トゥ・ユーDedicated to you
A-2.[フィフティ・セカンド・ストリート]
スインギーなナンバーで、この曲もヴォーカル入りだが、歌っているのは「ハリー・ミルズ」(Harry Mills)という歌手だという。「ハリー・ミルズ」という歌手はミルズ・ブラーズでバリトンを担当している四男坊しか思い当たらないが、兄弟と離れてレコーディング参加したとも思えず、よく分からない。
ヴォーカルの後ウィリアムスのピアノ・ソロ、ウィルソンのTsソロ、再び短いピアノ・ソロが入り、短いClソロ、アンサンブルとなって終わる。
A-3.[ホワット・ウィル・アイ・テル・マイ・ハート]
これもヴォーカル入りで、こちらはテレル。ゆったりとしたバラード調。間奏はTsソロ、アンサンブル、Pソロ、再びヴォーカルに戻り、エンディングとなる。
A-4.[ザ・レディ・フー・スイングス・ザ・バンド]
こちらはハリー・ミルズがヴォーカルを取る。オブリガードはウィリアムスのP、ソロもまずはウィリアムスのPからTs、Pに戻り、Clソロ、そして短いP,Clソロからヴォーカルとなる。目まぐるしい展開で、タイトルの「ザ・レディ・フー・スイングス・ザ・バンド」とは勿論ウィリアムスのこと。
A-5.[デディケイテド・トゥ・ユー]
テレルのヴォーカル・ナンバー。この曲もスロウで、テレルはスロウ・バラッドを得意としたのであろう。ソロはミュートTp。

"The best of Andy Kirk"(MCA2-4105)の1936年の収録曲は、ヴォーカル・ナンバーばかりでジャズ的に興味をそそられない。

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