アーティー・ショウ 1939年

Artie Shaw 1939

昨年1938年暮れにショウは、バーニー・プレヴィン、ジョージ・オールド、バディ・リッチ(写真右)等を補強しバンドはさらに充実したものになってくる。その頃は最大のライヴァルと目されたベニー・グッドマン楽団では、花形ソロイスト、ハリー・ジェイムス、テディ・ウィルソン、ジーン・クルーパ等が独立し、自らのバンドを率いるようになっていたため、1939年になるとバンドの質自体はショウのバンドが上回るようになっていたという。
今回はその39年の録音を聴いていこう。
今回の音源は2つ、前回と同じ「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)と「The complete Artie Shaw Vol.7 1939-45」(Bluebird AXM2−5580−2−D)である。「The complete Artie Shaw Vol.7 1939-45」には、6月12日と11月9日に録音された2曲が収録されている。このブルーバード盤は”Complete”と謳っているので、全シリーズ揃えればよいのだろうが、僕はこの1セット(2枚組)しか持っていない。
しかしありがたいことに、こちらには録音データが記載されているのである。一方繰り返しで申し訳ないが、「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」再発盤は、経費削減のため録音データを削除したというとんでもないレコードなのである。従って6月12日と11月9日以外のパーソネルについては、Webから拾った記載となることをあらかじめ断っておきたい。

<Date&Place> … 1939年1月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

Band leader&Clarinetアーティー・ショウArtie Shaw
Trumpetチャック・ピーターソンChuck Petersonバーニー・プリヴィンBernie Privinジョニー・ベストJohnny Best
Tromboneジョージ・アルスGeorge Arusハリー・ロジャースHarry Rodgersレス・ジェンキンスLes Jenkins
Reedsハンク・フリーマンHank Freemanレス・ロビンソンLes Robinsonトニー・パスターTony Pastor
ジョージ・オウルドGeorge Auld
Pianoボブ・キチスBob Kitsis
Guitarアル・アヴォラAl Avola
Bassシド・ワイスSid Weiss
Drumsバディ・リッチBuddy Rich

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record4 A-8.「恋人よ我に帰れ」(Lover , come back to me)
シグムンド・ロンバーグが1928年に書いたミュージカル『ニュー・ムーン』からの名曲。ヴォーカルものとしてはミルドレッド・ベイリーの名唱が有名。ショウのソロが実に甘いロマンティズムを醸し出しており、パスターの後のリード・アンサンブルにもうっとりさせられる。Tpソロは新加入のバーニー・プレヴィンだという。

<Date&Place> … 1939年1月23日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

1月17日と変更なし

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record4 B-1.私の彼氏The man I love
Record4 B-2.ドンキー・セレナーデThe donkey serenade
B-1.「私の彼氏」
ガーシュイン兄弟による不朽の名作。元は1927年の『ストライク・アップ・ザ・バンド』の挿入歌だという。ショウ、パスター、プレヴィンのソロを中心としたミディアム・スロウ・ナンバー。アンサンブルとの絡むアレンジも素晴らしい。
B-2.「ドンキー・セレナーデ」
ルドルフ・フリムルが1937年にミュージカル『歌う密使』のために書きおろしたナンバーという。新鋭バディ・リッチとショウのコミカルなやり取りのイントロから美しいリード・アンサンブルのテーマに入る。リッチのバッキングがバンド全体のスイング感を生き生きとさせている。そのリッチに鼓舞されるようにソロを取るショウのソロも見事。ラスト・コーラスのブラス・アンサンブル・リフもブリリアントで、ショウのコミカルなプレイで終えるところも気が効いている。

<Date&Place> … 1939年3月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

Vocal … ヘレン・フォレスト(Helen Forrest) ⇒ In
以外前回1月23日と変更なし
B面4.「ディープ・パープル」(Deep purple)
この年に作られたポップス・チューン。前年1938年ショウに見いだされた新進歌手のヘレン・フォレストの若々しい歌声が楽しめる。この時フォレストはまだ21歳だが、中々堂々とした歌いっぷりである。またソロを取るショウのクラリネットも情感たっぷりで聴き応えがある。

<Date&Place> … 1939年3月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

前回3月12日と同じ。

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record4 B-5.ワン・ナイト・スタンドOne night stand
Record4 B-6.ワン・フット・イン・ザ・グルーヴOne foot in the groove
Record 4 B-5.「ワン・ナイト・スタンド」
ブルース形式で書かれたショウのオリジナル。メロディーはグレン・ミラーの『イン・ザ・ムード』に似ている。次々とショウ楽団のソロイストが登場する。ソロ・オーダーは、オウルド(Ts)⇒ジェンキンス(Tb)⇒キチス(P)⇒ショウ(Cl)。なかなかホットな演奏である。
Record4 B-6.「ワン・フット・イン・ザ・グルーヴ」
これもショウのオリジナル。ここでもメンバーのソロ回しが行われる。グロウル・スタイルのTp⇒キチス(P)⇒オウルド(Ts)。そしてアンサンブルを挟んでショウの短いソロで締め括っている。

1939年5月ショウ楽団は、「パロマー・ボールルーム」に出演するため、ハリウッドに赴いた。「パロマー・ボールルーム」と言えば、1935年ここでベニー・グッドマンの人気が火を噴き、スイング時代の起爆剤となった場所である。ボールルームからはNBC放送を通じてバンドの演奏は各家庭にも届けられ、また『オールド・ゴールド』というレギュラー・ラジオ・ショウにも出演することになった。5月15日から10日までの5日間ショウは病気のため出演できず、その間はジョージ・オウルドがバンドの指揮を執ったという。
さらにショウ楽団は『ダンシング・コ・エド』という映画に初出演を果たす。正にこの時のショウの人気ぶりがよく分かる。右は映画「ダンシング・コ・エド」に出演したショウ・バンド。

<Date&Place> … 1939年6月12日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ (Artie Shaw and his orchestra)

ここで初めてレコードに記載されたパーソネルが出現する。"The complete Artie Shaw Vol.7 1939-45"(Bluebird AXM2−5580−2−D)という輸入盤に記載されているものであるが、それによると前回3月17日と同じメンバーである。
因みにこちらにはこの6月12日録音ということで「野蛮人へのセレナーデ」が収録されている。ところが日本編集盤「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」では、6月22日となっている。Webでも6月12日となっているので日本盤の間違いであろう。

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)&"The complete Artie Shaw Vol.7 1939-45"

Record4 B-7.カムズ・ラヴComes love
Record4 B-8.トラフィック・ジャムTraffic jam
Record5 A-1.野蛮人へのセレナーデSerenade to a savage
Record4 B-7.「カムズ・ラヴ」
この39年にサム・H・ステプトという人によって書かれたポップス・チューン。ジョン・ベスト(Tp)がテーマを奏しショウの甘いソロの後、フォレストのヴォーカルが魅力的だ。そして短いながら情感のこもったオウルドのソロも素晴らしい。
Record4 B-8.「トラフィック・ジャム」
ショウ作のダイナミックなジャム・ナンバー。バンドのホットな面を強調した演奏で、ソロはオウルド(Ts)⇒ショウ⇒アルス(Tb)⇒ワイス(B)⇒リッチ(Ds)。いずれも激しいソロを繰り広げる。
Record 5 A-1.「野蛮人へのセレナーデ」
まず聴き比べてみて、日本編集盤「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」と「The complete Artie Shaw Vol.7 1939-45」収録のこの曲は同じ演奏である。ということはどちらかの表記が誤っていると考える。Web上のディスコグラフィーでも日付が6月12日となっていることから、多数決ではないが6月12日として進めよう。
ドン・レッドマン、ルイ・アームストロング楽団のサックス奏者であり、アレンジャーとしても知られるジョー・ガーランドの作。タム・タムなどを使用してドラムが雰囲気を盛り上げ、プリヴィン、オールド、ショウのソロがスポットを浴びる。これもまたホットな演奏である。

<Date&Place> … 1939年6月22日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

前回6月12日と同じ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record5 A-2.「ムーンレイ」(Moonray)
ショウのオリジナル。タイトル通りロマンティックなムードのポップな曲である。フォレストのヴォーカルが良い情感を醸し出し、ヴォーカル後のオウルドのテナーもいい味を出している。

日付は記載がないが、1939年初夏にアーティー・ショウの楽団はニューヨークに戻り、ホテル・ペンシルヴァニアの「カフェ・ルージュ」に出演するようになった。

<Date&Place> … 1939年8月19日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ (Artie Shaw and his orchestra)

前回6月22日と同じ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record5 B-3.「キャリオカ」(Carioca)
解説の大和明氏は、この曲は1月23日に行われたスタジオ録音を収録する予定だったが、大和氏のところに届いた解説用テープには、8月19日のホテル・リンカーンのブルー・ルームからの放送録音が入っていた。すぐ送り直すよう指示したのだが間に合わなかった、と少々分からない解説を書いている。解説者用テープは間違っていたがレコードは間違いなく収録されているように受け取れるが、最後に「ここに収録されているのは8月19日のエア・チェックである」と述べている。音源を聴くと実況録音ぽいので、ここに記載することにした。
曲はフレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースのコンビによる33年度の映画『空中レヴュー時代』の挿入歌だという。ラテンのリズムによる快適なダンス・ナンバーで、リッチ、ショウ、オウルドのソロにスポットが当てられる。ホットなナンバーである。

<Date&Place> … 1939年8月27日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ (Artie Shaw and his orchestra)

Trumpet … ジョニー・ベスト ⇒ ハリー・ゲラー(harry Geller)
以外前回8月19日と同じ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record5 A-3.「アイ・サレンダー・ディア」
1931年のヒット曲。ショウのクラリネットを全面にフューチャーしたナンバー。彼の甘く切ない情緒たっぷりのプレイが心に沁みる。キチスのピアノもテディ・ウィルソンを思わせる美しいプレイである。

<Date&Place> … 1939年11月9日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ (Artie Shaw and his orchestra)

Guitar … アル・アヴォラ ⇒ ディヴ・バーバー(Dave Barbour)
以外前回8月27日と同じ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-63)

Record2 B-1.「シャドウズ」
スロウなテンポのムーディーなナンバーで、ショウのロマンティックなプレイがフューチャーされる。

ショウはこの後11月中に人気が上り詰め始めた時点で、何を思ったかのかバンドを放り出しメキシコに行ってしまうのである。残された楽団員たちは、バディ・リッチを除いてジョージ・オウルドの下にそのままバンドを続けたが、約40年初頭にバンドは解散してしまうのである。

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