ベン・ウエブスター 1936年

Ben Webster 1936

柴田浩一著『デューク・エリントン』

ベン・ウエブスターは、この年いくつかのデュークの吹込みに参加している。柴田浩一氏はその著『デューク・エリントン』に、その年のデュークとその楽団に起こった主な出来事を簡単にまとめているが、その中にウエブスター加入の記事はない。ということはまだ正式加入したわけではなく、時に応じたエクストラ参加だったのであろう。ウエブスター参加録音だけを抜き出してみよう。
この回も音源は、全てHistory社から出ている"The Duke"(History 204140 302〜204159 302)CD40枚組(一部”Columbia years”にも収録)なので、コンテンツ表記は収録場所、曲名のみにする。

History盤CD 40枚組

<Date & Place> … 1936年7月29日 ニューヨークにて録音(ARC)

<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington and his orchestra)

Band leader & Pianoデューク・エリントンDuke Ellington
trumpetアーサー・ウェッツェルArthur Whetselクーティ・ウィリアムスCootie Williams
Cornetレックス・スチュアートRex Stewart
Tromboneジョー・”トリッキー・サム”・ナントンJoe “Tricky Sam” Nantonローレンス・ブラウンLawrence Brown
Valve‐Tromboneファン・ティゾールJuan Tizol
Clarinet,Soprano,Alto & saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Clarinet , Alto & Bass saxオットー・ハードウィックOtto Hardwick
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Clarinet,Alto & Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Banjo & Guitarフレッド・ガイFred Guy
String Bassビリー・テイラーBilly Taylor
Drumsソニー・グリアSonny Greer
Vocalアイヴィー・アンダーソンIvie Anderson

またEllingtoniaによれば、CD17-7.「エキスポジション・スイング」のみビリー・テイラーとヘイズ・アルヴィンのツィン・ベースだとしている。

<Contents> … ARC

CD17-6.イン・ア・ジャムIn a jam
CD17-7.エキスポジション・スイングExposition swing
CD17-8.アップタウン・ダウンビート(ブラックアウト) Uptown downbeat(Blackout)
CD17-6.[イン・ア・ジャム]
エリントン作。アルト(多分ホッジス)とTpの2小節ずつのソロ交換などいろいろな工夫がみられる。そしてウエブスターのソロなども短いがソロ交換が多い。それで「ジャムで」ということか?
CD17-7.[エキスポジション・スイング]
エリントン作。アンサンブルをカーネィのBsがリードする。短いソロが目まぐるしく展開する。この短いソロ展開は、この時期エリントンにおけるマイ・ブームだったのだろうか?
CD17-8.[アップタウン・ダウンビート]
エリントン作。Tpソロはクーティーか?続くAsソロはホッジスかと思う。

次の録音は約4か月半後の12月中旬、カリフォルニアのハイウッドで行われる。巡業の途中での録音だったのだろうか?

History盤CD 40枚組の8セット目 History盤CD 40枚組のCD17枚目 「ビリー・ホリディ物語 第1集」2枚目B面

<Date&Place> … 1936年10月21日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetアーヴィング・ランドルフIrving Randolph
Clarinetヴィド・ムッソVido Musso
Tenor saxべン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsジーン・クルーパGene Krupa
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)

record2 B-5.もてすぎる貴方Easy to love
record2 B-6.君とスイングWith thee I swing
record2 B-7.今宵のあなたThe way you look tonight
record2 B-8.愛しているのは誰だと思うWho loves you ?

第6回目のテディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションは10月に行われた。4曲ほど吹き込まれたが、全てビリー・ホリディのレコードに収録されている。この日の面子はベニー・グッドマンの楽団のメンバーが半数以上を占めている。BGの楽団ではテナーを吹いているムッソが、ウエブスターがいるのでClに廻ったか?珍しいのは当時キャブ・キャロウェイの楽団に在籍していたミルト・ヒントンの参加で、1990年代まで活躍したベーシストの極めて初期のレコーディングである。
record2 B-5.[もてすぎる貴方]
コール・ポーターの作だが、巨泉氏によれば原メロディーは全く出てこないという。ランドルフは力量不足、ウエブスターはこの日は抑え気味でいい味を出している。
record2 B-6.[君とスイング]
イントロの後とエンディング前のウエブスターが聴き処。ムッソのClはまるでBGだという。
record2 B-7.[今宵のあなた]
現在もよく奏されるジェローム・カーン作のスタンダード・ナンバー。全体的に今一つ精彩がない出来とは巨泉氏。
record2 B-8.[愛しているのは誰だと思う]
巨泉氏の言うように、ランドルフの出だしのソロは全く素朴吹いているだけで、ベリガンとの力量の差が歴然である。
「ビリー・ホリディ物語 第2集」レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1936年11月19日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetジョナ・ジョーンズJonah Jones
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SONY SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)

曲名原題収録アルバム収録個所
黄金の雨Pennies from heaven「ビリー・ホリディ物語 第2集」record1.A-1
これが人生なのねThat’life I guess「ビリー・ホリディ物語 第2集」record1.A-2
捧ぐるは愛のみI can't give you anything but love「ビリー・ホリディ物語 第2集」record1.A-3
セイリンSailin’「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-5

第7回目のセッションは11月19日に行われた。録音は4曲で、3曲がビリーの歌入り、もう1曲がインスト・ナンバーである。ということでここでもビリーのヴォーカル入りナンバーは「ビリー・ホリディ物語」に、インスト・ナンバーは「ザ・テディ・ウィルソン」に収められている。なお「ビリー・ホリディ物語」はLP2枚組が1セットで、トータルでは5セットLP10枚組みとなっている。ここから2セット目LPとしては3枚目に入る。
ここでのパーソネルの陣容は7名セプテットである。8月24日以来BGが参加した録音である。8月24日のセッションの時に書いたが、BGはサイドマン扱いされることを極端に嫌いこのセッションから「ジョン・ジャクソン(John Jackson)という変名を使うようになったという。今では堂々と「ベニー・グッドマン」と出ているが、SP盤発売当時は、クラリネットは”John Jackson”だったのである。
解説の大和氏によると、このセッションでビリーは実に大胆な唱法を示しているという。
record1 A-1.[黄金の雨]
最初から最後までこの曲の通常の歌い方を全く一新した唱法を取り、不必要なまでにリズム・セクションのテンポを殺しながらレイジーにフレイズを引き延ばし、しかも歌い始めから原メロディーより一段と高い音でスタートし、そのまま原メロディーにとらわれず、しなやかな感覚で歌いきっており、まったく新しい解釈による自由なアドリブ唱法を取っているのである。特に最後の”There'll be pennies from heaven for you and me”と歌うところの思い切った崩し方などはまさにこの頃のビリーの本領を充分に発揮した圧巻の出来といえる
ビリー以外、ウィルソン、ウエブスターも快調で、歌の後に出るBGもビリーに啓発されたように珍しく憂鬱そうなソロを取る。
record1 A-2.[これが人生なのね]
前曲とこの曲でのBGは実に思いやりに満ちたプレイで、巨泉氏は「この頃の二人の仲を想わせる」と書いている。やはりみんな知ってるんじゃないの?なぜ書かない?
record1 A-3.[捧ぐるは愛のみ]
サッチモはじめいろいろな人が演っているスタンダード・ナンバーである。こういう知っている曲だとビリーがかなり崩しまくって歌っていることがよく分かる。
record1 B-5.[セイリン]
ビリーの入った3曲は少しテンポを落としたグルーミーな雰囲気を醸し出していたが、一転インストのこちらはフロント3人とドラムのコジ―が絡み合うホット・ナンバーである。ジョーンズ⇒ウィルソン⇒BGと続き最後の1コーラスは、最初と同様全員による集団合奏で終わる。
「ザ・テディ・ウィルソン」1枚目B面

<Date&Place> … 1936年12月16日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetアーヴィング・ランドルフIrving Randolph
Clarinetヴィド・ムッソVido Musso
Tenor saxべン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalミッジ・ウィリアムスMidge Williams

<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)

record1 B-6.ライト・オア・ロングRight or wrong
record1 B-7.二人でお茶をTea for two
record1 B-8.夢で逢いましょうI'll see you in my dreams
record1 B-6.[ライト・オア・ロング]
ランドルフの味のあるイントロに続き、ウィルソンが情熱を秘めた美しいタッチのソロを聴かせる。そしてムッソ、ランドルフと続きミッジの歌となる。鼻にかかったような声は独特のチャーミングな味をもたらしている。ビリーとは対極的な歌手である。バックのムッソも歌を引き立てるいい感じのオブリガードを吹いている。その後のウエブスターもスイング時代の代表的テナー奏者らしい貫禄あるソロを取り、ランドルフのリードによってラスト・アンサンブルに入る。
record1 B-7.[二人でお茶を]
超有名スタンダードで、ムッソはサブ・トーンでメロディーをストレートに吹いていき落ち着いた雰囲気を出しているが、バックを付けるウィルソンのピアノは躍動的で面白い対照となっている。第2コーラスでのランドルフのソロは、彼の代表的名演と評判の高いもの。第3コーラスのウエブスターもソフトなトーンで、ランドルフとの対照が興味深い。
record1 B-8.[夢で逢いましょう]
これも超有名スタンダード・ナンバー。通常メロウなムードで奏されることが多いが、ここでは快適なノリのいいリズム・セクションに導かれ、ウエブスター、ランドルフ、ムッソと快適なソロを披露する。
「Duke Ellington/The Columbia years」

<Date & Place> … 1936年12月21日 ハリウッドにて録音

<基本形 Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

Historyでは、基本形にウエブスターがTsで加わっているとしているのに対し、Ellingtoniaでは参加していないとしているとこである。どちらが正しいのだろうか?もし参加しているとすれば、ロス・アンゼルスまで帯同したか呼び寄せたか或いはたまたまロスにウエブスターがいたかである。
ただ、CD17-17.と18.はデュークのピアノ・ソロなのでバンド演奏は2曲だけである。音を聴いた限りTsソロはないので、ウエブスターは加わっていなかったというEllingtoniaのデータを支持することにする。

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