ベン・ウエブスター 1940年
Ben Webster 1940
この年ウエブスターはデューク・エリントンの楽団に加入する。これでデュークの楽団は、正式なテナー・マンを得ることになる。ウエブスターは、ブラントンの面倒をよく見て固い友情で結ばれていたという。ウエブスターの加入はブラントンと一緒にプレイをしたかったからかもしれない。ブラントン、ウエブスターと強力な布陣が揃ったこの時代は、「ウエブスター=ブラントン・時代」と呼ばれるようになる。
ウエブスターの加入時期ははっきり書いていないが、1月の録音データにはなく、2月14日のデータには見えることから1月末か2月初めのことと推測される。
<Date & Place> … 1940年2月14日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
<Contents> … "The Columbia years"(Col 517687-2)&"Duke Ellington presents Ivie Anderson"(Columbia KG 32064)
| CD1-25. | ソフィスティケイティッド・レディ | Sophisticated lady |
| Record2-B6. | ソリチュード | Solitude |
| Record2-B7. | ストーミー・ウエザー | Stormy weather |
| Record2-B8. | ムード・インディゴ | Mood indigo |
「ソフィスティケイティッド・レディ」
1932年に一度録音している。ウエブスターのTsで始まり、ホッジスが絡むと思うが、データを見るとカーネイのBsで始まるとある。デュークのPプレイなどゆとりを感じさせる演奏である。
「ソリチュード」
1934年に一度インストで吹き込んでいる。ゆったりとしたテンポでアンサンブルからウエブスターのTsが入り、アンダーソンのヴォーカルとなる。
「ストーミー・ウエザー」
この曲は1933年にインストで録音している。同じ年エセル・ウォーターズが歌ったものが1933年の年間ヒット・チャートで1位に輝いているハロルド・アーレンの傑作。多分クーティーと思われるグロウルTpに導かれてアンダーソンのヴォーカルとなる。オブリガードはウエブスター。エセルに比べて線の太い歌唱でこの人ならではの潔さを感じる。
「ムード・インディゴ」
1933年に3度も録音するほどのエリントンの一時代名詞的だったナンバー。ゆったりとしたおなじみのメロディをひと一噛みしめるようなヴォーカルが心に沁みる。ウエブスターのソロも短いがいい。
<Date & Place> … 1940年3月6日 シカゴにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
2月14日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD27-3. | ユー・ユー・ダーリン | You , you , darlin’ |
| CD27-4.&record1 A-1. | ジャック・ザ・ベア | Jack the bear |
| CD27-5.&record1 A-2. | コ・コ | Ko ko |
| CD27-6.&record1 A-3. | モーニング・グローリー | Morning glory |
| CD27-7. | ソー・ファー・ソー・グッド | So far , so good |
この日は全5曲が吹き込まれたようで、ヴィクターから出ていた「黄金時代のデューク・エリントン」(LP4枚組)には3曲が収録されているが、History版のCDには5曲全て収録されている。そういう意味ではCDがいいが音は断然レコードが良い。CDは音に厚みが感じられない。デュークのバンドの音の重厚さが伝わってこないのである。
「ユー・ユー・ダーリン」
メロウなナンバーでハーブ・ジェフリーズ(Herb Jeffries)のヴォーカル・ナンバー。ソロは多分ブラウンと思われるTb。レコードには未収録。
「ジャック・ザ・ベア」
「熊のジャック」という意味だろうか?高名なジャズ評論家レナード・フェザー氏によればこの曲はジミー・ブラントンを紹介する目的で最初に作られた曲だという。エリントンという人は、楽曲を作る際に、そのソロイストを意識して、このプレイヤーをこうフューチャーしようということを念頭において作ったという。ソロは現代の尺度からすればかなり短い感じがする。ソロイストは、ブラントン、エリントン、ビガード(Cl)、カーネィ、ナントンで、短いブラントンのブレークで締めくくる。他のベーシストたちは、ここで聴かれるブラントンの2、3小節を聴いただけで、その音色と権威とビートに兜を脱いだと言われる。
「コ・コ」
この期のエリントン屈指の傑作といわれる。8小節のイントロの後、「呼びかけと応答』形式でアンサンブルとティゾールが1コーラス、次の2コーラスはアンサンブル、続いてアンサンブルとベースの応酬が1コーラス、色彩的なアンサンブル1コーラスを経て、バリトン・サックスのリードするリズミックなアンサンブルに戻る。
「モーニング・グローリー」
レックス・スチュワートのコルネットを大きくフューチャーした作品。レックスの切れ味のよいアタックと柔らかなフレージングが素晴らしい。かなり難しそうなアンサンブルだがさすがに見事にソフトに決めている。強靭なビート、優れたソロイスト達、よく訓練されたアンサンブル、加えてデューク自身とストレイホーンが加わった作・編曲陣と正にこの頃のエリントン楽団は向かうところ敵なしの状態だったろう。
「ソー・ファー・ソー・グッド」
レコードには未収録。こちらはアイヴィー・アンダーソン(Ivie Anderson)のヴォーカル・ナンバー。
<Date & Place> … 1940年3月15日 シカゴにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
3月6日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD27-8.&record1 A-4. | コンガ・ブラヴァ | Conga brava |
| CD27-9.&record1 A-5. | コンサート・フォー・クーティー | Concert for Cootie |
| CD27-10.&record1 A-6. | ミー・アンド・ユー | Me and you |
「コンガ・ブラヴァ」
ティゾールとエリントンの合作。キャラヴァンを思わせるエキゾチックなリズムでティゾールとエリントンがテーマを奏で、ソロはウエブスター、ビガードとスチュワートがアンサンブルをバックに短いソロを取り、再びティゾールのテーマ吹奏で終わる。
「コンサート・フォー・クーティー」
この曲にあとで歌詞が付き、"Do nothing till you hear from me"という歌曲になったが、元々は至宝クーティーをフューチャーしたエリントンの傑作。これはその元々の方のナンバー。
「ミー・アンド・ユー」
ピアノのイントロに続き、クーティー、ホッジスの点綴するアンサンブルから、アイヴィー・アンダーソン(Ivie Anderson)のヴォーカル、ブラウンのTbとホッジスの掛け合いを経て、ビガードのソロ、アンダーソンのヴォーカルと続く。1月9日のボストンのサウスランド・カフェからの実況放送では、ハーブ・ジェフリーズ(男性)が歌っていたナンバー。
<Date & Place> … 1940年5月4日 ハリウッドにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
3月15日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD27-11. | ボジャングルス | Bojangles |
| CD27-12.&record1 B-1. | コットン・テイル | Cotton tale |
| CD27-13.&record1 B-2. | ネヴァー・ノー・ラメント | Never no lament |
| CD27-14. | ブルー・グース | Blue goose |
「ボジャングルス」
レコードにはこの録音は収録されておらず、次回5月28日の録音が収められている。デュークが有名なタップ・ダンサー、ビル・”ボジャングルス”・ロビンソンに捧げた曲。イントロからテーマをPとBのデュエットで奏で、アンサンブル、TpかCorのリードするアンサンブル、ウエブスターのTsソロ、アンサンブル、Clのリードするアンサンブル、PとBのデュオ、短いアンサンブルで終わる。終始ブラントンの弾き出すビートが強烈である。
「コットン・テイル」
リフ曲として最も有名なものの一つで、ベン・ウエブスターを大きくフューチャーしている。ウエブスターにとっても初期アップ・テンポの代表作として評価が高い曲である。ベンのほかに、クーティ、カーネイ、エリントンのソロが入る。この曲辺りもアンサンブルが複雑である。
「ネヴァー・ノー・ラメント」
Eiingtoniaだけ、"Don’t get around much anymore"というタイトルになっているが、これも後になって歌詞が付けられた時にこのように改題されたが、作曲された当時は"Never no lament"といったので、このタイトルが正解。TpとSaxの応答によるイントロの後、PとTb(ブラウン)の掛け合いがある。次にアンサンブルと掛け合い、ソロを取るホッジスが素晴らしく、その後のTpについてはクーティ説とスチュワート説があり、解説の油井正一氏はクーティ説を取っている。ブラウンのTbから合奏となり、PとBのみの短いデュエットで結ばれる。
「ブルー・グース」
この曲も、レコードにはこの録音は収録されておらず、次回5月28日の録音が収められている。ピアノのイントロに続き、Ss(ホッジス)⇒Bs(カーネィ)⇒Tp(?)⇒アンサンブル⇒Ts(ウエブスター)⇒Tb(ブラウン)⇒アンサンブル⇒Ss(ホッジス)のテーマと続く。ホッジスのソプラノ・サックスは珍しいがシドニー・ベシェ直伝だという。
<Date & Place> … 1940年5月28日 シカゴにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
5月4日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD27-15.&record1 B-3. | ダスク | Dusk |
| CD27-16.&record1 B-4. | ボジャングルス | Bojangles |
| CD27-17.&record1 B-5. | バート・ウィリアムスの肖像 | A portrait of Bert Williams |
| CD27-18.&record1 B-6. | ブルー・グース | Blue goose |
パーソネルは基本形。この日の録音4曲ともレコード・ボックス「黄金時代のデューク・エリントン」にも収められているので、聴くのは音の良いレコードにしよう。
「ダスク」
エリントン・カラーがあふれるレイジーな作品。「薄暮」のほの暗さがパステル・カラー的なアンサンブルで巧みに描かれる。ソロイストは、ステュワート(Tp)とブラウン(Tb)。
「ボジャングルス」
有名なタップ・ダンサー、ビル”ボジャングルス”ロビンソンに捧げられた曲で前回5月4日の再演。若干構成が異なる。イントロからテーマをPとBのデュエットで奏でるのは同じ、そしてアンサンブル、ウエブスター(Ts)⇒アンサンブルのソロ、続いてClリードのアンサンブルで終わる。
「バート・ウィリアムスの肖像」
「ジーグフェルド・フォリーズ」のスターであった有名な黒人芸人に捧げたエリントンの作品。カーネィのリードするアンサンブル、ステュワート(Cr)のリードするアンサンブル、ビガード(Cl)、アンサンブルを挟んでナントン(Tb)とビガードが交互にソロをとる。Cor、Clの短いソロを含んだアンサンブルで締め括る。
「ブルー・グース」
これも前回5月4日の再演。構成も同じである。どちらかといえばこちらの方がこなれている感じがする。
<Date & Place> … 1940年6月10日 ニューヨークCBS studio
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
5月28日と同じ。
<Contents> … "The Duke box"(Storyville records 108 8600)
| CD1-10. | イースト・セント・ルイス・トゥードル・オー | East St. Louis toodle-Oo |
| CD1-11. | コ・コ | Ko ko |
| CD1-12. | ブルー・グース | Blue goose |
| CD1-13. | ソー・ファー・ソー・グッド | So far , so good |
| CD1-14. | コットン・テイル | Cotton tail |
| CD1-15. | コンチェルト・フォー・クーティー | Concert for Cootie |
| CD1-16. | ジャック・ザ・ベア | Jack the bear |
| CD1-17. | ボーイ・ミーツ・ホーン | Boy meets horn |
| CD1-18. | ザ・サージャント・ウォズ・シャイ | The sergent was shy |
| CD1-19. | ネヴァー・ノー・ラメント | Never no lament |
この演奏はCBSスタジオを使い、イギリスのBBC放送のための実況演奏を録音したものという。
パーソネルについて"The duke box"CDボックスにはオットー・ハードウィックが抜けたと記載があるが、Elingtoniaでは、ウィリアム・ホワイト・ジュニア(William White Jr.)という人物がアルト・サックスで代役を務めているという。この人物については皆目情報がなく不明である。
CD1-10.「イースト・セント・ルイス・トゥードル・オー」
1月の放送録音時同じくテーマ曲から始まる。
CD1-11.〜12.
この年に吹き込んだ曲のライヴ版が聴けるのがこのCDの良いところである。CD1-14.「コットン・テイル」では、ウエブスターの熱演が聴けるが、アンサンブルも見事である。そして次のCD1-15.「コンチェルト・フォー・クーティー」では、クーティーの妙技をたっぷりとご堪能ください、という演出であろう。クーティーはソロをオープンで取っている。僕はオープンのクーティーの方が好きだな。そして次のCD1-16.「ジャック・ザ・ベア」では、若き天才ベーシスト、ジミー・ブラントンを紹介するコーナーとなっている。エンディングで弾くピチカートは見事である。
CD1-17.「ボーイ・ミーツ・ホーン」
コルネットのレックス・スチュワートを大きくフューチャーしている。レックスは超低音を用いるなどユーモラスで楽しい演奏を披露している。
>CD1-18.「ザ・サージャント・ウォズ・シャイ」
ミディアム・アップ・テンポのスインギーなナンバー。
CD1-19.「ネヴァー・ノー・ラメント」
は前曲から続いて演奏されるクロージング・ナンバーで演奏時間は1分にも満たない。
<Date & Place> … 1940年7月22、24日 ニューヨークCBS studio
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
6月10日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD27-19.&record2 A-1. | ハーレム・エア・シャフト | Harlem air shaft | 7月22日 |
| CD27-20. | アット・ア・ディキシー・ロードサイド・ディナー | At a dixie roadside dinner | 7月22日 |
| CD28-1.&record2 A-2. | オール・ツゥ・スーン | All too soon | 7月22日 |
| CD28-2.&record2 A-3. | リッチモンドで大騒ぎ | Rumpus in Richmond | 7月22日 |
| CD28-3. | マイ・グレイテスト・ミステイク | My greatest mistake | 7月24日 |
| CD28-4.&record2 A-4. | セピア・パノラマ | Sepia panorama | 7月24日 |
「ハーレム・エア・シャフト」
エア・シャフトとは通気孔のこと。エリントンはハーレムの匂い、音、ざわめきをこの1曲に盛り込んでみたという。色彩豊かなアンサンブルの後、ナントン、ステュワート、ビガードらのソロが入る。この数度に渡って出るTpを油井氏はステュワートだと思うとしているが、クーティだという説もあると紹介している。このアンサンブルにブレークが入るのはこの時代珍しいのではないかと思う。
「アット・ア・ディキシー・ロードサイド・ディナー」
この曲はレコード・ボックス「黄金時代のデューク・エリントン」に収録されていない。ピアノによるイントロの後ミュートTp、続いてオープンTpのリードするアンサンブルの後、アイヴィー・アンダーソン(Ivie Anderson)のヴォーカルが入る。そしてカーネイ(Bs)、アンサンブル、オープンTpのリードするアンサンブルで締め括る。
「オール・ツゥ・スーン」
エリントン作のスロー・バラード。Pに続きブラウン(ミュートTb)、ウエブスターの得意とするバラード・プレイがフューチャーされる。このウエブスターはオーバーに流れずいい味を出していると思う。
「リッチモンドで大騒ぎ」
クーティ⇒ビガード(Cl)⇒ナントン(珍しいオープン・ソロ)⇒クーティとソロが続く。スイング感あふれるナンバー。
「マイ・グレイテスト・ミステイク」
ゆったりとしたテンポのメロウなナンバー。最初にメロディーを吹くのはカーネイ(Bs)、続いてウエブスター(Ts)がリリカルなバラード・プレイを聴かせ、ブラウン(Tb)は朴訥としたこの楽器の特徴を生かしたソロを聴かせる。レコード未収録・ナンバー。<
「セピア・パノラマ」
「ジャック・ザ・ベア」同様鬼才ブラントンをフューチャーしたエリントンの作品。ブラントン⇒カーネィ⇒エリントンとブラントンのデュオ⇒ウエブスター⇒カーネィ⇒ブラントンとソロが続く。ブラントンのソロは3連符を駆使した画期的なものと思う。
<Date & Place> … 1940年9月5日 シカゴにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
7月24日と同じ。
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)&「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)
| CD28-5. | ゼア・シャル・ビー・ノー・ナイト | There shall be no night |
| CD28-6.&record2 A-5. | イン・ア・メロトーン | In a mellotone(EllingtoniaではMellowtone) |
| CD28-7.&record2 A-6. | ファイヴ・オクロック・ホイッスル | Five O’clock whistle |
| CD28-8. | ウォーム・ヴァレー | Warm valley |
「ゼア・シャル・ビー・ノー・ナイト」
レコード未収録ナンバー。7月24日録音の「マイ・グレイテスト・ミステイク」同様エリントンの作ではないので、LPには収録されなかったのかもしれない。ハーブ・ジェフリーズ(HerbJeffries)のヴォーカル・ナンバー。ポップス的な曲だ。短いが素敵なウエブスターのテナー・ソロが聴ける。
「イン・ア・メロトーン」
モダンなスイングナンバー。いろいろなジャズ・マンに取り上げられていて、スタンダード・ナンバー化している。ソロはエリントン⇒クーティ⇒ホッジスだが、カーネィのリードする重厚なアンサンブルと、一貫してバックの推進力となっているブラントンのBが素晴らしい。
「ファイヴ・オクロック・ホイッスル」
アイヴィー・アンダーソンのヴォーカルをフューチャーしたナンバーでエリントンの作ではない。曲調のせいもあって、アイヴィーは「ア・ティスケット・ア・タスケット」を歌って大ヒットさせたエラ・フィッツジェラルドに似せて歌っているような気がするとは油井氏の弁。確かに「ア・ティスケット・ア・タスケット」に似ている曲である。
「ウォーム・ヴァレー」
ゆったりとした幻想的なナンバーで、ジョニー・ホッジスのリリカルなバラードを大きくフューチャーした作品。約1か月後に再演し、レコードにはそちらが収録されているがこちらの録音も素晴らしい出来栄えである。1か月後の録音とあまり変化はない。
<Date & Place> … 1940年10月17、28日 シカゴにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
9月5日と同じ。
<Contents> … 「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)&"The Duke"(History 204153-302)
| record2 B-1.&CD28-14. | ウォーム・ヴァレー | Warm valley | 10月17日 |
| record2 B-2.&CD28-13. | 燃える剣 | The flaming sword | 10月17日 |
| record2 B-3.&CD28-15. | アクロス・ザ・トラック・ブルース | Across the track blues | 10月28日 |
| record2 B-4.&CD28-16. | クロエ | Chloe | 10月28日 |
| CD28-17. | アイ・ネヴァー・フェルト・ディス・ウェイ・ビフォー | I never felt this way before | 10月28日 |
「ウォーム・ヴァレー」
9月5日の再演である。ゆったりとした幻想的なナンバーで、ジョニー・ホッジスのリリカルなバラードを大きくフューチャーした作品。粟村氏もここでのホッジスを大いに評価している。クーティのTpを挟んで、ホッジスのプレイが堪能できる。ホッジスの代表作。デュークは自伝で、「1939年は色々なところにワン・ナイターで回った。コロンビア川の南岸を通っている時に見た北岸に沿った山々の眺望が特に素晴らしかった。『ウォーム・ヴァレー』はこの時の経験から出来た」と述べている。何となくストレイホーンぽい作品である。
「燃える剣」
アンサンブルを中心としたラテン調の名演で、ソロはクーティのほか、アンサンブルをバックに、ビガード(Cl)、ティゾール、ナントンの順に現れる。
「アクロス・ザ・トラック・ブルース」
エリントンとブラントンによるイントロに始まり、ビガード、ステュワート、ブラウン、再びビガードのソロがあるが、極端に音数を絞ったプレイで明らかにニュー・オリンズ・ジャズのコンセプトではない。イントロと同じパターンで結ばれる。
「クロエ」
エリントンのオリジナルではなく、「沼地の歌」と副題がついた古い流行歌。それがまるでエリントンのオリジナルかと思えるほどエリントン的に演奏される。編曲はビリー・ストレイホーンと4枚組解説で油井氏が述べているが、“Ellingtonia”のディスコグラフィーには出ていない。ソロイストは、ナントン、ビガード、ブラウン、ブラントン、ウエブスター。数度聞こえるTpソロはウォーレス・ジョーンズと野口久光氏は書いている。このウエブスターも好きだ。
「アイ・ネヴァー・フェルト・ディス・ウェイ・ビフォー」
レコード未収録ナンバー。ゆったりとしたテンポのメロウなナンバー。ハーブ・ジェフリーズのヴォーカル入り。
<Personnel> … レックス・スチュアート・アンド・ヒズ・オーケストラ(Rex Stewart and his orchestra)
<Contents> … "Johnny-Rex/Things ain't what they used to be"(RCA LPV-533)&"The Duke"(History 204153-302)
| B面1&CD29-5. | リンガー・ア・ホワイル | Linger a while |
| B面2&CD29-4. | モバイル・ベイ | Mobile bay |
| B面5&CD29-3. | マイ・サンデイ・ギャル | My Sunday gal |
| B面7&CD29-2. | ウィズアウト・ア・ソング | Without a song |
「リンガー・ア・ホワイル」
アンサンブルの後最初にソロを取るのはエリントン、続いてウエブスターそしてスチュアートと続きアンサンブルに戻る。
「モバイル・ベイ」
スチュアートとエリントンの共作のブルース。ここではスチュアートはオープンでエモーショナルに吹いている(エンディングはミュート)。ウエブスターの抑え気味のソロもいい。
「マイ・サンデイ・ギャル」
ゆったりしたテンポのエリントンのオリジナル・ナンバー。主役のスチュアートの独壇場でのびやかに吹いている。
「ウィズアウト・ア・ソング」
当時のポップス・チューン。スチュアートのミュート・ソロの後ウエブスター、再びスチュアートのソロに戻る。
今回は1940年11月7日ノース・ダコタ州ファーゴ・クリスタル・ボールルームにて実況録音を聴いていこう。LPレコード2枚にこの日の録音が収録されている大変興味深いものだ。解説のエリントンにかけては最も詳しいと思われる故野口久光氏が担当しておられる。氏自身も、「ライヴ・レコーディングなどほとんど行われていなかった時代に、バッテリー式ポータブル・カッティング・マシーンを持ち込んで一夜の演奏を逐一収録した、当時としては画期的な生演奏の録音集であり、まず音質の素晴らしさは今日から見ても驚異的でさえある」と述べられているくらいである。
僕がどうやってこのレコードにたどり着いたか?実は簡単である。ディスク・ユニオンさんの店頭で見かけて購入したのだ。僕はこの貴重なレコードのことを知らなかった。ただ店頭で見かけて、「絶頂期1940年のデュークのライヴ・レコード!買わなきゃ!」と思ったのである。値段は確か1,000円しなかったと思う。値段と中身は関係ないのである。今でもたまに見かけるので、お持ちでない方は買って絶対に損をしないレコードだと思う。多分500円前後だし…。
またこのレコーディングを実現させた二人の若者トム・タワーズ氏とディック・バーリス氏のエージェント、レコード会社との交渉などのエピソードなども興味深いがそれはレコードの解説をお読みください。
この年でもエリントン楽団は地方巡業の「ワン・ナイト・スタンド」も頻繁に行っていた。エリントン一行は前夜カナダのウィニペグの市公会堂でコンサートを行い、夜行の寝台車でこの日の午後にファーゴ入りしたという。そしてこのファーゴでも20時30分から深夜25時までの5時間何度か休憩を挟んで、40数曲演奏したという。恐るべき体力である。そしてこの出来映えである。
録音データによると、当夜は40数曲(!)演奏され、うちヴォーカルのアル・ヒブラーをフューチャーした数曲がボールルーム備え付けのマイクを使ったため余りにもオフ・マイクになってしまい録音しなかったという。また1台のカッティング・マシンだったために全曲収録できないものもあった。全曲収録できた(一部欠けた所もあるが)27曲を演奏順に並べたのが本2枚組LPだという。以上はレコードの解説であるが、その後その全曲40数曲を復刻したCDが発売された。それが"The Duke box"(Storyville records 108 8600)である。素晴らしい。
このレコード、CDのデータを見て驚くのは、エリントン楽団の至宝と言われたTp奏者クーティー・ウィリアムスの名前が無いことである。11月2日での録音には参加していたが、この5日間の間に退団したことになる。クーティーが辞める時のエピソードをデュークは自伝に次のように書いている。「その晩、彼(クーティー)は私(デューク)を自分の車に乗せて、シカゴ中をぐるぐる回った。それは、私に、しばらくベニー・グッドマンと一緒の儲かる仕事をしたいのだけどと言いたかったのだ。『ああ、いいよ』私は言った。」
このクーティーの退団は天下の一大事で、柴田浩一氏によればレイモンド・スコットは、『クーティーがデュークを去った時』という曲を書いているほどだという。自伝は続けて言う。「私はなんて運のいい男なんだろう!次の夜レイ・ナンスと出会うのだ」と。
<Date & Place> … 1940年11月7日 ノース・ダコタ州ファーゴ・クリスタル・ボールルームにて録音
<Personnel> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
Trumpet … クーティ・ウィリアムス ⇒ レイ・ナンス(Ray Nance)
以外10月28日と同じ。
<Contents> … "The Duke box"(Storyville records 108 8600)&「ザ・デューク・1940」(Philips 15PJ-1〜2)
| CD2-1. | | イッツ・グローリー | It's glory | | | |
| CD2-2. | record1 A-1. | ザ・ムーチ | The mooche |
| CD2-3. | | アラビアの酋長 | The shiek of Araby |
| CD2-4. | | セピア・パノラマ | Sepia panorama |
| CD2-5. | record1 A-2. | コ・コ | Ko-ko |
| CD2-6. | | ゼア・シャル・ビー・ノー・ナイト | There shall be no night |
| CD2-7. | record1 A-3. | プッシー・ウィロウ | Pussy willow |
| CD2-8. | record1 A-4. | チャッターボックス | Chatterbox |
| CD2-9. | record1 A-5. | ムード・インディゴ | Mood indigo |
| CD2-10. | record1 A-6. | ハーレム・エアシャフト | Harlem airshaft |
| CD2-11. | | フェリーボート・セレナーデ | Ferryboat drtrnade |
| CD2-12. | record1 A-7. | ウォーム・ヴァレー | Warm valley |
| CD2-13. | record1 B-1.- | ストンピー・ジョーンズ | Stompy Jones |
| CD2-14. | | クロエ | Chloe |
| CD2-15. | record1 B-2. | ボジャングルス | Bojangles |
| CD2-16. | record1 B-3. | オン・ジ・エア | On the air | |
| CD2-17. | record1 B-4. | リッチモンドで大騒ぎ | Rumpus in Richmond |
| CD2-18. | | チェイサー | |
| CD2-19. | | ザ・サイドウォーク・オブ・ニューヨーク | The sidewalk of New York |
| CD2-20. | record1 B-5. | 燃える剣 | The flaming sword |
| CD2-21. | record1 B-6. | ネヴァー・ノー・ラメント | Never no lament |
| CD2-22. | | キャラヴァン | Caravan |
| CD2-23. | record1 B-7. | クラリネット・ラメント | Clarinet lament |
「イッツ・グローリー」
不備のためかカットされていたが、復刻された。ディキシー風の演奏なのが意外である。
「ザ・ムーチ」
野口氏によれば、数あるエリントン作品の中でも10指に入る傑作という。ブルージーなナンバーで、5分20秒近い演奏は貴重である。AAB型の曲で、まずソロを取るのはホッジスであろう。テーマAにおいて3クラリネットをバックに早速レイ・ナンスがソロを吹いている。ミュート・プレイも披露するが見事な演奏である。他にビガード、ナントンのソロ・スペースもあり聴き応えがあるが、このような演奏をバックにどんなダンスを踊ったのだろう。
「アラビアの酋長」
この曲はレコードには未収録。スイング時代よく演奏されたナンバー。確かにスイング風の演奏である。録音されたふらついている感じがするのは、テープのせいであろう。音が
「セピア・パノラマ」
この曲からローカル・ラジオ局KVOXからの生中継放送(21:00〜21:30)されたという。初めからブラントンのベースがズンズン響いてくる。
「コ・コ」
この年3月に吹き込まれたエリントンの傑作。ここからラジオ中継が始まるので薄くMCの声が聞こえる。テーマは12小節と短いもので、構成はスタジオ盤と同じだが、ソロイストが異なる。先ずナントンが2コーラス、そしてビガード、ブラントンの2小節交換がありテーマに移る。
「ゼア・シャル・ビー・ノー・ナイト」
これもレコード未収録。ゆったりとしたテンポのナンバー。チーク・タイムかもしれない。ウエブスター(Ts)のソロに続いてハーブ・ジェフリーズのヴォーカルが入る。
「プッシー・ウィロウ」
1939年ブランズウィックに吹き込んだナンバー。スインギーなナンバーで最初にソロを取るのは新加入のレイ・ナンス、そしてホッジス、ブラントンとソロをフューチャーする。
「チャッターボックス 」
1937年にデュークとレックス・スチュアートが合作しブランズウィックに吹き込んだナンバー。スチュアートの白熱したソロの後ブラウン、ホッジスのソロも聴かれる。
「ムード・インディゴ」
デューク1930年の傑作、ゆったりしたメロウなナンバーなので日本でいうところの<チーク・タイム>なのかもしれない。デュークのピアノが大きくフューチャーされる。これも4分を超えるSP盤ではありえない演奏。
「ハーレム・エアシャフト」
この年7月に吹き込んだばかりのナンバー。クーティーが吹いた部分はレックス・スチュアートが吹いている。長尺のデュークのイントロがSP盤とは異なるところ。
「フェリーボート・セレナーデ」
レコード未収録。短い曲でピアノのイントロからアイヴィー・アンダーソン(Ivie Anderson)のヴォーカルとなる。
「ウォーム・ヴァレー」
この年既に2回も吹き込んでいる美しいバラード・ナンバー。ライヴ録音でもこの曲のホッジスは絶品である。この曲でラジオ中継が終わるので、それらしきMCが薄く聞こえる。エンディング・テーマのように聴こえるのは放送的にも良かったのではないかと思う。
「ストンピー・ジョーンズ」
エリントンが1934年に書いたスインギーなナンバーで、ビガード(Cl)、スチュアート(Cor)、カーネィ(Bs)、ナントン(Tb)などのソロが聴ける。
「クロエ」
レコード未収録。オリジナルではないがこの年よく演奏して曲である。ピアノのイントロの後ミュートTpのリードするアンサンブルとなる。ブラントンとアンサンブルの掛け合いがあり、アンサンブルからエンディングに向かう。
「ボジャングルス」
これもこの年録音したばかりのナンバー。タイトルは黒人タップ・ダンサービル・ロビンソンの愛称で、エリントンが彼に捧げたもの。デューク、カーネィ、ブラントンらがソロを取るが何といってもウエブスターの2コーラスのソロが力強い。
「オン・ジ・エア」
元はロジャース=ハートのミュージカル・ナンバーで「ユー・トゥック・アドヴァンテイジ・オブ・ミー」という曲だが何故かデュークは「オン・ジ・エア」と紹介しているという。中間に現れるアンサンブルはフレッチャー・ヘンダーソンの”Rug cutter swing”を引用しているという。編曲もヘンダーソン風で快適にスイングしているとは野口氏。ソロは、デューク、ブラントン、ホッジス、スチュアート、ビガードでみんなよくスイングしている。
「リッチモンドで大騒ぎ」
これもこの年録音したばかりのナンバー。ソロはスチュアート、ビガード、ブラウン(Tb)。
チェイサー
13秒という短い演奏で、クロージング・ナンバーなのであろう。
ここで1回目の休憩が入る。
「ザ・サイドウォーク・オブ・ニューヨーク」
第2部が始まる。レコードには未収録。ピアノ、ベース、ドラムとトリオで始まり、ミュートTpのリードするアンサンブルとなり、いい感じになるが途中でいったん切れる。ブラントンのソロで再び始まる。録音装置の加減であろう。る。
「燃える剣」
これもこの年録音したばかりのラテン・フレイヴァ―のナンバー。合奏の後のソロは、スチュアート、ティゾール、ナントン、ビガード。
「ネヴァー・ノー・ラメント」
これもこの年録音したばかりのホッジスをフューチャーしたナンバー。かすかにMCをするエリントンの声が聞こえる。これぞホッジス節といった素晴らしい歌いっぷりである。ローレンス・ブラウンと思われる短いソロも入るが、何といってもホッジスの独壇場と言った演奏である。
「キャラヴァン」
大ヒット曲だがレコードには未収録。途中で切れるところがあり、それで不備としたのかもしれない。エキゾチックなティゾールのV-Tbの朗々とした歌いっぷりがいい。
「クラリネット・ラメント」
エリントンとビガードの合作で1936年の吹込み。エリントンの曲紹介の後早速ビガードが飛び出し、アンサンブルとなる。スチュアート、ティゾールが印象的な脇役を務める。終始ビガードの名人が聴ける。
| CD3-1. | record2 A-1. | スラップ・ハッピー | Slap happy |
| CD3-2. | record2 A- | セピア・パノラマ | Sepia panorama |
| CD3-3. | record2 A- | ボーイ・ミーツ・ホーン | Boy meets horn |
| CD3-4. | record2 A- | ウェイ・ダウン・ヤンダー・イン・ニューオリンズ | Way down yonder in New Orleans |
| CD3-5. | record2 A- | オー、ベイブ・メイビー・サムディ | Oh , babe maybe someday |
| CD3-6. | record2 A- | ファイヴ・オクロック・ホイッスル | Five O’clock whistle |
| CD3-7. | | ファンファーレ | fanfare |
| CD3-8. | | コール・オブ・ザ・キャニオン‐アンアイデンティファイド・タイトル‐オール・ディス・アンド・ヘヴン・ツー | Call of the canyon /Ubidentified tittle/all this and heaven too |
| CD3-9. | record2 A- | ロッキン・イン・リズム | Rockin’in rhythm |
| CD3-10. | record2 B-1. | ソフィスティケイテッド・レイディ | Sophisticated lady |
| CD3-11. | | コットン・テイル | cotton tail |
| CD3-12. | record2 B-2. | ウィスパリング・グラース | Whispering grass |
| CD3-13. | record2 B-3. | コンガ・ブラヴァ | Conga brava |
| CD3-14. | | アイ・ネヴァー・フェルト・ディス・ウェイ・ビフォー | I never felt this way before |
| CD3-15. | | アクロス・ザ・トラック・ブルース | Across the track blues |
| CD3-16. | | ハニーサックル・ローズ | Honeysuckle rose |
| CD3-17. | | ワム | Wham |
| CD3-18. | record2 B-4. | スターダスト | Stardust |
| CD3-19. | record2 B-5. | リオ・グランデの薔薇 | Rose of the Rio Grande |
| CD3-20. | record2 B-6. | セントルイス・ブルース | St. Louis blues |
| CD3-21. | | ウォーム・ヴァレー | Warm Valley |
| CD3-22. | | ゴッド・ブレス・アメリカ | God bless America |
「スラップ・ハッピー」
ハリー・カーネィのフューチャー曲で、1938年ブランズウィックに吹き込んでいる。アップ・テンポのナンバーで、ナンス、ナントンのソロも入るがイントロから終始カーネィが活躍する。
「セピア・パノラマ」
1940年に吹き込んだばかりの曲。ブラントンのBがフューチャーされる。ブラントン、ウエブスターのソロが2コーラスも聴けるところがありがたい。約5分の長尺演奏。ブラントンはもちろんウエブスターのリラックスしたソロが素晴らしい。
「ボーイ・ミーツ・ホーン」
デュークとスチュアートの共作で1938年吹込みヒットしたスチュアートの十八番。ヴァルヴを半開きで演奏する彼のテクニックを活かしたノヴェルティ風のナンバー。「The Duke box」収録のBBC放送向けのスタジオ録音でも演奏していた。これも長い演奏である。
「ウェイ・ダウン・ヤンダー・イン・ニューオリンズ」
1分半弱の短い曲。1922年にヒットした古いポップス・ナンバーという。アイヴィー・アンダーソンのヴォーカル・ナンバーだがオフ・マイク気味なのが残念である。
「オー、ベイブ・メイビー・サムディ」
この曲はデュークがアイヴィーのために書いた曲で、1936年にレコーディングしている。これもアイヴィーのヴォーカルがオフ・マイクなのが惜しまれる。
「ファイヴ・オクロック・ホイッスル」
これもこの年9月に録音したばかりの新しい曲。野口氏はエリントン作とするが、Historyでは違う表記になっている。油井正一氏はエラを意識したナンバーと記している。どことなく「ア・ティスケオ・ア・タスケット」に似ている。
「ファンファーレ」
レコード未収録。30秒という短い曲。
「コール・オブ・ザ・キャニオン‐アンアイデンティファイド・タイトル‐オール・ディス・アンド・ヘヴン・ツー」
レコード未収録。この3曲は曲とも言えないほど少しだけ表れてすぐに消える。曲名はセット・リストから拾ったのであろう。
この後2回目の休憩に入る。
「ロッキン・イン・リズム」
第3部の始まり。1930年デュークとカーネィが共作して以来エリントン楽団の十八番として繰り返し演奏されているナンバー。野口氏は数あるエリントン・ナンバーの中で最も最もハッピーで、リズミックなナンバーかもしれないという。後半のリフがいつの間にか「南京豆売り」のテーマが現れ盛り上がっていく。
「ソフィスティケイテッド・レイディ」
1933年にエリントンが書いた名バラード曲。ホッジスが主旋律を朗々と吹いてデュークのソロとなり、Tb(ブラウンか?)に引き継ぎ、アンサンブルとなる。
「コットン・テイル」
この年発表したばかりのナンバーだが、レコードには未収録。スタジオ録音よりも速いテンポで奏される。先ずは売り物のウエブスターのTsソロ。続いて御大のエリントンの短いソロを挟みアンサンブルへ。これが見事である。テーマに戻ったところで途中でフェイド・アウトしてしまう、残念!
「ウィスパリング・グラース」
ホッジスのバラード・ナンバーだが、エリントン作ではないようであるとは野口氏。ホッジスという人は平凡なプレイをしたことがない、全く素晴らしいソロだと野口氏もべた褒めである。この曲のスタジオ録音はないとするがどこかで見たような気もする。
「コンガ・ブラヴァ」
この曲もこの年に録音したばかりの新曲。イントロが音がオフ・マイクなのが惜しい。デュークとティゾールの合作でラテン・フレイヴァ―が漂う。ウエブイスターのソロが短いがいい。
「アイ・ネヴァー・フェルト・ディス・ウェイ・ビフォー」
レコード未収録。イントロはピアノ・トリオで奏される。ゆったりとしたナンバーでウエブスターのソロ、ミュートTpがいい。ハーブ・ジェフリーズのヴォーカルが入るが、オブリガードを付けているのはナンスのヴァイオリンではないかと思う。
この後3回目の休憩に入る。
「アクロス・ザ・トラック・ブルース」
レコード未収録。休憩後はゆったりしたピアノ・トリオのイントロで始まる。10月28日に録音したばかりの新曲。よく聴くとClの音も聴こえるがオフ・マイクでよく聞き取れないが、だんだん聴こえるようになる。続いてミュートTp、ミュートTb、Clの長尺ソロが聴ける。
「ハニーサックル・ローズ」
レコード未収録。スタンダード・ナンバー。かなり崩したスタイルで始まるのですぐには曲が分からない。ナンスのヴァイオリンをフューチャーしている。終わりにデュークがナンスを紹介している。
「ワム」
レコード未収録。ほとんどスキャット・ヴォーカルとアンサンブルの曲。このスキャットはどうもナンスらしい。アンサンブルの最後に高音Tpが入るがこれもナンスで、ナンスの紹介コーナーという亭だったのだろう。
「スターダスト」
ホーギー・カーマイケル作の不朽の名作。ウエブスターのショウケースとした3コーラスに渡るソロは当時としては画期的なロング・ソロだという。始めはメロディックに、そして第2コーラスあたりから次第に熱を帯びてくる。録音も素晴らしい。
この後4回目の休憩に入る。
「リオ・グランデの薔薇」
休憩開けはピアノ・トリオのイントロで始まり、アンサンブルが入る。この曲は1922年にヒットしたポピュラー・ナンバー。アイヴィーのヴォーカルをフューチャーして1938年レコーディングしている。ここでもアイヴィーのヴォーカルをフューチャーしているが、マイクがオフ気味なのが残念。ソロではローレンス・ブラウンがフューチャーされる。
「セントルイス・ブルース」
W.C.ハンディー作のあまりにも有名なブルース。アイヴィーのヴォーカル入り。まずソロを取るのはビガード(Cl)そしてデューク、アイヴィー、続くウエブスターのソロが何といっても圧巻で、スチュアート(ミュートCr)などと続く。ラストに「ラプソディ・イン・ブルー」が出てくるのもご愛敬である。
「ウォーム・ヴァレー」
1分足らずの短い演奏である。
「ゴッド・ブレス・アメリカ」
これも30秒足らずの短い演奏で、途中で終わるが、この国歌を演奏してこの日のショウは幕を閉じる。
<Date & Place> … 1940年11月11日 シカゴにて録音
<Personnel> … バーニー・ビガード・アンド・ヒズ・オーケストラ (Barney Bigard and his Orchestra)
<Contents> … "The Duke"(History 204153-302)
| CD29-6. | チャーリー・ザ・チューロ | Charlie the Chulo |
| CD29-7. | ラメント・フォー・ジャヴァネット | Lament for Javanette |
| CD29-8. | ア・ラル・アット・ドウン | A lull at dawn |
| CD29-9. | レディ・エディ | Ready Eddy |
この日はバーニー・ビガード名義の4曲が録音された。面子について、Ellingtoniaはトロンボーンをローレンス・ブラウンとしているのに対し、HistoryのCDデータではファン・ティゾールとしている。
またEllingtoniaでは、「レディ・エディ」のみピアノがデュークからビリー・ストレイホーンに替わるとしているがHistoryではこれもエリントンとしている。
CD29-6.「チャーリー・ザ・チューロ」
ミディアム・アップテンポで小気味よくスイングしていく。ソロでは全面的にビガードがフューチャーされる。後半デュークと対話するような展開となり、アンサンブルとなって終わる。
CD29-7.「ラメント・フォー・ジャヴァネット」
ゆったりとしたテンポの憂いを含んだナンバー。エリントン作かと思いきや、ビガードとストレイホーンの共作とある。中間のウエブスターのソロが良い。
CD29-8.「ア・ラル・アット・ドウン」
こちらもゆったりとしたテンポのナンバー。ソロはビガードのクラリネットのみである。
CD29-9.「レディ・エディ」
こちらも割とゆったりとしたテンポで、こちらもソロはビガードのみである。
<Date & Place> … 1940年12月28日 シカゴにて録音
<Personnel 基本形> … デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Duke Ellington & his Orchestra)
11月7日と同じ
<Contents> … 「黄金時代のデューク・エリントン」(RCA RA-5631〜34)&"The Duke"(History 204153-302)
| record2 B-5.&CD29-10. | ニューヨークの舗道 | Sidewalks of New York |
| record2 B-6.&CD29-11. | フラミンゴ | Flamingo |
| CD29-12. | ザ・ガール・イン・マイ・ドリームス・トライズ・トゥ・ルック・ライク・ユー | The girl in my dreams tries to look like you |
「ニューヨークの舗道」
11月7日ファーゴですでにお披露目済みである。この曲は1927年のミュージカルの主題歌だという。ビガード、ナントンのソロに続いて、ウエブスター、ホッジス、カーネィ、再度ビガードとソロ・リレーを行う。
「フラミンゴ」
ハーブ・ジェフリーズ(Herb Jeffries)のヴォーカルで大ヒットしたナンバー。Ellingtoniaではこの日の録音でこの曲だけPがストレイホーンとなっているが、Historyでは、替わらずデュークとしている。またこの曲については、デュークの自伝に詳しく書いてある。
「エドマンド・アンダーソンという親友がテッド・グラウヤと二人で『フラミンゴ』という曲を作って持ってきた。デュークは気に入り、ストレイホーンに、『ハーブ・ジュフリーズが歌えるようにしてくれ』と言って渡した。ストレイホーンがこの曲で行った、ヴォーカルの背景のオーケストレーションは、オーケストレーションの一大転換点となった。この曲は大ヒットし、他のアレンジャーたちが手法を真似るようになったのだ。」
アレンジはさておきこの曲は最近でもよく演奏されるようだ。僕は「熱帯ジャズ楽団」でこの曲を知った。
「ザ・ガール・イン・マイ・ドリームス・トライズ・トゥ・ルック・ライク・ユー」
この曲は「黄金時代のデューク・エリントン」には収録されていない。ゆったりとしたバラードで、ウエブスターがしっとりと吹き、ジェフリーズのヴォーカルにつなぐ。
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