ベニー・グッドマン 1933年
Benny Goodman 1933
前回僕は1932年のベニー・グッドマンの音源を持っていないことを書きましたので、久しぶりの登場となります。この年も約半分は他のミュージシャンの録音に参加したものですが、残りは自己名義の録音となります。この年辺りからBGは次代を担うミュージシャンの筆頭格にのし上がりつつあったように感じます。
取りあえず僕の持っている演奏は16曲、音源は5種です。16曲を順番に並べると以下のようになります。順番に聴いていきましょう。
| No. | 曲名 | 原題 | 録音日 | 名義 | 収録音源 |
| 1. | ドゥイン・ザ・アップタウン・ロゥダウン | Doin’the uptown lowdown | 1933年10月2日 | Joe Venuti and his blue six | Prestige 7644 |
| 2. | スィート・ロレイン | Sweet Lorraine | 1933年10月2日 | Joe Venuti and his blue six | Prestige 7644 |
| 3. | イン・デ・ラフ | In de ruff | 1933年10月2日 | Joe Venuti and his blue six | Prestige 7644 |
| 4. | ジャズ・ミー・ブルース | Jazz me blues | 1933年10月2日 | Joe Venuti and his blue six | Prestige 7644 |
| 5. | エイント・チャ・グラッド | Ain’t cha glad | 1933年10月18日 | Benny Goodman and his orchestra | Prestige 7644 |
| 6. | アイ・ガッタ・ライト・トゥ・シング・ザ・ブルース | I gotta right to sing the blues | 1933年10月18日 | Benny Goodman and his orchestra | Prestige 7644 |
| 7. | テキサス・ティー・パーティー | Texas tea party | 1933年10月27日 | Benny Goodman and his orchestra | Prestige 7644 |
| 8. | ドクター・ヘックル・アンド・ミスター・ジャイブ | Dr. Heckle and Mr. Jibe | 1933年10月27日 | Benny Goodman and his orchestra | Prestige 7644 |
| 9. | アニー・ダズント・リヴ・ヒア・エニモア | Annie doesn’t live here anymore | 1933年10月30日 | Art Kahn and his orchestra | 宝庫 |
| 10. | ウィ・ワー・ザ・ベスト・オブ・フレンズ | We were the best of friends | 1933年11月22日 | Steve Washington orchestra | 宝庫 |
| 11. | 自由か愛を | Give me liverty or give me love | 1933年11月22日 | Annette Hanshaw | 宝庫 |
| 12. | ドゥ・ユア・デューティ | Do your duty | 1933年11月24日 | Bessie Smith | “Bessie Smith The collection” |
| 13. | ギミ・ア・ピッグフット | Gimme a pigfoot | 1933年11月24日 | Bessie Smith | “Bessie Smith The collection” |
| 14. | ママの息子になって | Your mother's son-in-law | 1933年11月27日 | Benny Goodman and his orchestra | ビリー・ホリデイ物語 第1集 |
| 15. | タッピン・ザ・バレル | Tappin’the Barrel | 1933年12月4日 | Benny Goodman and his orchestra | "Jack Teagarden/King of the blues trombone" |
| 16. | リフィン・ザ・スコッチ | Riffin' the scotch | 1933年12月18日 | Benny Goodman and his orchestra | ビリー・ホリデイ物語 第1集 |
<Date&Place> … 1933年10月2日録音
<Personnel> … ジョー・ヴェヌーティ・アンド・ヒズ・ブルー・シックス(Joe Venuti and his blue six)
<Contents> … "Benny Goodman and the giants of swing"(Prestige 7644)
| B-3. | ドゥイン・ザ・アップタウン・ロゥダウン | Doin’the uptown lowdown |
| B-4. | スィート・ロレイン | Sweet Lorraine |
| B-5. | イン・デ・ラフ | In de ruff |
| B-6. | ジャズ・ミー・ブルース | Jazz me blues |
まずバップから初期モダン・ジャズの貴重なレコードを多数制作・販売している「プレスティッジ」レーベルが、ベニー・グッドマンのレコードを発売していることに驚いた。中古レコード・ショップで見かけ、あまりの意外さと値段が安かったので購入した記憶がある。しかし内容は実に充実したものである。
B-3.[ドゥイン・ザ・アップタウン・ロゥダウン]
ヴェヌーティーのイントロからBG、ロリーニ、マクダフ、サリヴァン、フリーマン、ヴェヌーティが短いソロをつなぐ顔見世的作品。
B-4.[スィート・ロレイン]
ゆったりとしたテンポで始まるスタンダード・ナンバー。途中ドラム・ソロからテンポ・アップしてスインギーな展開となる。ソロは、フリーマン、サリヴァン、ロリーニ、BGが取り集団即興となって終わる。
B-5.[イン・デ・ラフ]
キング・オリヴァーの”Dippermouth blues”後の”Sugar foot stomp”である。ヴェヌーティはBGとオリヴァー=ルイ・アームストロングの行ったコラボを試みたと語っているようである。
B-6.[ジャズ・ミー・ブルース]
これも古いナンバーである。中間でBGがロング・ソロを取るがこの時期のベスト・パフォーマンスの一つという。ヴェヌーティのソロもダブル・ストップを駆使した斬新なものだ。
同セッションではもう少し録音された曲があるようだが、収録されているのはこの4曲である。
<Date&Place> … 1933年10月18、27日録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
<Contents> … "Benny Goodman and the giants of swing"(Prestige 7644)
| A-2. | エイント・チャ・グラッド | Ain't cha glad | 10月18日 |
| A-4. | アイ・ガッタ・ライト・トゥ・シング・ザ・ブルース | I gotta right to sing the blues | 10月18日 |
| A-1. | テキサス・ティー・パーティー | Texas tea party | 10月27日 |
| A-3. | ドクター・ヘックル・アンド・ミスター・ジャイブ | Dr. Heckle and Mr. Jibe | 10月27日 |
この4曲はグッと「スイング」時代を感じさせる。BG名義の録音であるがジャック・ティーガーデンが一番フューチャーされている。
A-2.[エイント・チャ・グラッド]
実に楽し気なナンバー。ジャック・ティーガーデンがヴォーカル、Tbソロと活躍するが、BGのソロ、Tpのソロ、ジョー・サリヴァンのソロもいい感じである。
A-4.[アイ・ガッタ・ライト・トゥ・シング・ザ・ブルース]
タイトルにブルースが付くがブルースではない。ジャック・ティガーデンのヴォーカル、BGのClがフューチャーされた曲である。
A-1.[テキサス・ティー・パーティー]
ブルース。BGのイントロ・ソロで始まる。まずはBGのソロ、バッキングが変わっている。ジャック・ティガーデンのヴォーカル、1コーラス目テナー・サックス、2コーラス目BGのオブリガードと変化をつけ、Tbソロとなる。その後は音数の少ないコレクティヴ・インプロヴィゼイションとなりエンディングに向かう。これがシカゴ・スタイルというものだろうか?
A-3.[ドクター・ヘックル・アンド・ミスター・ジャイブ]
BGのクラリネットが大きくフューチャーされている。ジャック・ティーガーデンのヴォーカルというのも味のある声で僕は好きである。実に楽しいナンバーである。
<Date&Place> … 1933年10月30日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … アート・カーン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Art Kahn and his orchestra)
<Contents> … 「新たなる宝庫・黄金時代のベニー・グッドマン」(Columbia CSM 890〜1)
| record1 A-7. | アニー・ダズント・リヴ・ヒア・エニモア | Annie doesn't live here anymore |
アート・カーンについてはよく分からないが、シカゴを中心に自身のバンドを率いて活躍していたらしい。チック・ブロックは30年代に活躍した名歌手で、拙HPには度々登場している。BGはアンサンブルの中でバス・クラリネットも吹いているというがよく分からない。
ブロックの歌の後、Tpソロがあり、BGの普通のクラリネットのソロが入る。いかにもスイング期のナンバーという感じがする。
<Date&Place> … 1933年11月22日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … スティーヴ・ワシントン・オーケストラ(Steve Washington orchestra)&アネット・ハンショウ (Annette Hanshaw)
<Contents> … 「新たなる宝庫・黄金時代のベニー・グッドマン」(Columbia CSM 890〜1)
| record1 B-2. | ウィ・ワー・ザ・ベスト・オブ・フレンズ | We were the best of friends |
| record1 B-5. | 自由か愛を | Give me liverty or give me love |
バンドは一つで、歌手が入れ替わってレコーディングされたもの。スティーヴ・ワシントン、アネット・ハンショウ共に当時人気があった歌手だったそうで、そのようなことになったのだろう。
B-2.[ウィ・ワー・ザ・ベスト・オブ・フレンズ]
スティーヴ・ワシントンは当時有名な黒人歌手で、その他にもギター奏者、作曲家としても有名な存在であったという。ヴォーカルにBGのCl、ヴェヌーティーのVl、スターリング・ボースのTpが入れ替わりオブリガードで絡み、間奏ソロはボースとBG、ヴェヌーティがとる。
B-5.[自由か愛を]
アネット・ハンショウは正確にはジャズ・シンガーとは言えないが、好んでジャズ風の伴奏を使用したという。ハンショウはヴァースから丁寧に歌っている。ソロはBG、ミュートTp(ボースか)。
この時代はシカゴ・スタイルとスイングとの正に間のような感じがする。スイングへ至る重要な期間だ。
<Date & Place> … 1933年11月24日 ニュー・ヨークにて録音
何といっても目を惹くのは売り出し中の2人の白人ミュージシャン、ベニーグッドマンとジャック・ティーガーデンの参加である。またテナーのチュー・ベリーの最も早い時期のレコード吹込みの一つとしても貴重である。
BGについてはビリー・ホリデイの自伝によると、1930年代前半ラジオなどの仕事が終わると、ジャズ・クラブに現れ黒人たちとのジャム・セッションに参加していたというので、分からないでもないが、ティーガーデンという人はほとんどプライヴェートの記述がないのでよくわからない。ただ1929年サッチモと共演するなど黒人ミュージシャン達にもその実力は伝わっていたのではないかと思われる。それにしても大胆な布陣ではある。
<Contents> … “Bessie Smith The collection”(Columbia CK44441)
| 15. | ドゥ・ユア・デューティ | Do your duty |
| 16. | ギミ・ア・ピッグフット | Gimme a pigfoot |
両曲ともBGのソロはない。聴き処は何といっても圧倒的な迫力のあるベッシーの歌唱である。
ビリー・ホリデイ登場
1933年の初めに偶然のきっかけからジャズ評論家のジョン・ハモンドに見いだされたビリー・ホリデイは、ハモンドの努力によってベニー・グッドマンのレコーディング・バンド(当時のグッドマンは未だレギュラー・バンドを持っていなかった)に加わって録音する機会を与えられた。
<Date&Place> … 1933年11月27日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
<Contents> … 『ビリー・ホリディ物語 第1集』(CBS SOPH 61)
| record1 A-1. | ママの息子になって | Your mother's son-in-low |
ジャズ史上最も重要な女性シンガー、ビリー・ホリデイの初レコーディングである。
ビリー自身が「半分死ぬほどの恐怖だった」と述懐している初録音。正に無我夢中で歌っている様子が目に見えるようであるという。
ここでのビリーは1920年代後期におけるエセル・ウォーターズをはじめとする、いわゆるホット・シンガーの唱法の幾つかを用いているが、そう行った中にもオフ・ビートで持って巧みにリズミックな歌い方をしているところなどに、後半におけるリズムへの絶妙なノリを早くも示しており、既に彼女独自のスタイルの兆候を見せているという。
ジャック・ティーガーデンの後に出る短いトランペット・ソロ、および最後のコーダの部分のトランペットは弟のチャーリー・ティーガーデンによるもの。
ついでながらこのコーダ部分は後にグッドマン楽団におけるトランペット奏者ジギー・エルマンが得意とするヘブライ調の吹奏法のヒントになっているという。
曲目解説の大橋巨泉氏は、彼女の悲惨な人生を考えるとこの若々しさは痛いほどだと書いている。
まさにプロの解説である。付け加えることなど及びもつかない。これがあのビリー・ホリディの18歳時の初録音と知って聴くと若さに意味を感じるが、知らずに聴けば単に若手の、若さに頼った力いっぱいの歌だと思う。そしてこの若手シンガーがあのビリー・ホリデーになっていくのだと思うと本当に感慨深い。
<Date&Place> … 1933年12月4日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
Bass sax … エイドリアン・ロリーニ(Adrian Rollini) ⇒ In
以外は11月27日と同じ。
<Contents> … "Jack Teagarden/King of the blues trombone"(Epic JSN 6044)
| Record2A面8曲目 | タッピン・ザ・バレル | Tappin’the Barrel |
この曲はベニー・グッドマン名義のものだが、これまで取り上げてきたBGのどのレコード・CDにも収録されていなかったもの。ティーガーデンのヴォーカルがフューチャーされているが、BGのClソロもスムーズでいい感じである。
<Date&Place> … 1933年12月18日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
Bass sax … エイドリアン・ロリーニ ⇒ Out
つまりは11月27日と同じ。
<Contents> … 『ビリー・ホリディ物語 第1集』(CBS SOPH 61)
| record1 A-2. | リフィン・ザ・スコッチ | Riffin’the scotch |
初レコーディングから3週間後のビリーのセカンド・セッションとして吹き込まれた。2曲ともディーン・キンケイドが編曲を担当しているが、キンケイドのアレンジは当時年は一流でここではスコットランド風のアレンジが効果を上げている。
なお、イントロ及びヴォーカルの前に出るトランペットはチャーリー・ティーガーデン、ヴォーカルの後のTpソロはシャーリー・クレイによる数少ないソロの一つである。トロンボーン・ソロはもちろんジャック・ティーガーデンで、巨泉氏はさすがにうまいとしている。
明氏、巨泉氏とも2曲とも選ばれたナンバーが大したものでなかっただけに全く反響はなかったとし、ビリー本人も何の反響もなかったと言っている。しかし後に「キング・オブ・スウイング」となるグッドマンのこの時代の演奏が聴けるというのは、興味深い。
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