ビリー・ホリデイ 1938年

Billie Holiday 1938

ビリー・ホリディ

ビリーは1937年3月カウント・ベイシー楽団の専属歌手となり、約1年後退団した。そしてベイシー楽団を退団して間もなくアーティー・ショウの楽団に雇われるとレコード解説に記載がある。そして1938年1月12日の録音がベイシー楽団在団最後の録音となっている。しかしビリーの自伝『奇妙な果実』でビリー自身は「1937年、アーティー・ショウのロールス・ロイスに乗って南部に向かった」と書いている。ビリーの記述は日時に関しては、辻褄が合わないことが多いのでビリーの記憶違いかもしれない。
またレコード付属の解説では、旅から旅の楽旅が嫌になって辞めたように書いてあるが、自伝では楽旅先で度々起こる人種差別によるいざこざ、さらには人種内差別(ビリーは黒人にしては色が白く、ステージ上では黒人らしく顔を黒塗りするよう求められたりした)も加わり嫌になったと書いている。
それにも拘らずまた、今度はアーティー・ショウのバンドに入って楽旅をすることになる。その発端は自分で、「アップタウン・ハウス」で自分の楽団に何かセンセーショナルなものを加えたいと悩んでいるショウに、「そんなこと簡単よ、いい黒人歌手を雇えばいいのよ」と言ったのはビリー自身であった。こうしてビリーはショウの楽団と共に再び楽旅に出ることになるのである。
ビリーがショウのバンドにいつ加入し、いつ辞めたのか正式な記述はないが、ビリーは自伝に「1年半行動を共にした」と書いている通りとすれば1938年の大部分はショウの楽団にいた時期ということになる。しかしビリーがショウ楽団と吹き込んだレコードは正式にはない。ビリー自身「歌手としての私の経歴はレコードでたどることができるが、アーティー・ショウ時代は空白である」と書いている。原因はビリーはコロンビアの専属で、ショウはヴィクターの専属だったからである。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」2枚目A面

<Date & Place> … 1938年1月6日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332〜50333)

Record1 B-5.一目惚れMy first impression of you
Record1 B-6.君微笑めばWhen you're smiling
Record1 B-7.&Record2 B-2.君微笑めばWhen you're smiling
Record1 B-8.貴方が私を好きだなんてI can't believe that you're in love with me
Record1 B-9.貴方が私を好きだなんてI can't believe that you're in love with me
Record1 B-10.夢がかなえばIf dreams come true

1938年の最初のセッションはピアニストのベイシーを除いたベイシー楽団の精鋭メンバーが顔をそろえることになった。このセッションについて、解説の大和明氏は、「テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションの白眉となった演奏の一つ」と非常に高く評価している。

Record1 B-5.「一目惚れ」
いわゆる30年代の小唄の一つだが、ビリーの一途で可憐な歌唱とレスターのリラックスした歌心溢れるソロによって名演となった。イントロとヴォーカル・バックのオブリガードはクレイトン。ヴォーカルの後のウィルソンのピアノ・ソロも秀逸。全てが一級品である。

村上春樹著「ポートレイト・イン・ジャズ」
Record1 B-6、7.「君微笑めば」
以前から名唱の誉れ高いもので、2ヴァージョン収められている。そしてこのうちのB-7の方が「ザ・テディ・ウィルソン」にも収められているカブルナンバーである。解説に拠れば、B-6がテイク3で、B-7がテイク4のようで、元々両ヴァージョンともSP盤では発売された。しかしLPになって収録されてきたのは、テイク3だという。テイク4がLPに収録されたのは、「ザ・テディ・ウィルソン」が初めてだという。ということは、「ビリー・ホリディ物語」は「ザ・テディ・ウィルソン」の後に出たことになる。確かに僕の記憶でも、「ザ・テディ・ウィルソン」が先に出た記憶がある。
ビリーはいつものように原メロディーから高い音域から歌い始め、まるで無頓着と思われるほどフレイズを引き延ばすようにして歌う平坦な唱法で、伴奏との間に対照的な効果を上げる。何といっても見事なのは、テディの楽し気にスイングするソロ、そしてレスターのソロは30年代屈指のソロで、原メロディーにとらわれないモダンな感覚だが、原曲の雰囲気も忘れないまことに立派なもの。モダン・エイジに入ってからも、リー・コニッツやルビー・ブラフなどにそのまま引用されるなど、多くのプレイヤーの手本となった。またこれらの名唱、名演を支えるリズム隊も素晴らしいとしか言いようがない。
因みに村上春樹氏は、その著『ポートレイト・イン・ジャズ』のビリー・ホリディの項で次のように述べている。「ビリー・ホリディの優れたレコードの中で、敢えて1曲を選ぶとすれば、迷わずに「君微笑めば」を僕は選ぶ」と。彼女が”When you are smiling , the whole world smiles with you”と歌うと、世界は本当に微笑むのだと書いている。
Record1 B-8、9.「貴方が私を好きだなんて」
本来恋が成就した歌として歌われ、明るくハッピーに、アップ・テンポで歌われるのが常だったという。大和氏は、それをビリーは思い切ってテンポを落とし、恋の成就をまるで信じられぬような、さらにはこの幸せが本当のものだろうかという不安や恐れまでも表現しようとしているとし、若干22歳の若い女性の歌とは信じられぬほど、愛の機微を知り尽くしたような表現であると述べている。
クレイトン、モートン、レスターと繋がるソロは正に黄金のリレーである。ヴォーカル・バックのウィルソンもリリカルで彼の本領を発揮したものだ。
Record1 B-10.「夢がかなえば」
大橋巨泉氏は全体的にコーニー(古臭い)な感じだと述べ、ビリーも白タマが多い歌で、まだ持て余している感じだとは巨泉氏。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1938年1月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)

Record2 A-1.これがスイングNow they call it swing
Record2 A-2.センチになってOn the sentimental side
Record2 A-3.センチになってOn the sentimental side
Record2 A-4.灯台もと暗しBack in your own back yard
Record2 A-5.女が男を愛する時When a woman loves a man

前録音から6日後の録音で、メンバーも全く同じ。しかしこちらはビリー名義になっている。解説に拠ればこれがビリーがベイシー楽団専属歌手としての最後の録音であるとのことで、この翌月ベイシー楽団を退団する。
前回セッションが抜群の出来だっただけに、このセッションは悪くはないがやや平凡に感じるとも解説の大和氏は言う。

Record2 A-1.「これがスイング」
歌詞の内容に合わせてテディはやや古臭いタッチでイントロを弾き、ビリーの歌が始まるとスイング風に弾いている。芸が細かい。歌詞を大事にして生涯スキャットを歌わなかったビリーだが、サビの部分にスキャットの歌詞がある。歌詞とはいえビリーのスキャットが聴ける珍しい作品。
Record2 A-2、3.「センチになって」
僕はこの邦題は辞めた方がいいと思う。普通「センチになって」と言えば、トミー・ドーシーの大ヒット曲で、同楽団のテーマ曲である"I'm getting sentimental over you"のことであるからである。
同じ曲の別テイクだが、イントロ部をA-2はギター、A-3はピアノで弾いており、この時代にしては別の試みするのは珍しい。さらに珍しいのはほぼ単音の音が聴こえないフレディー・グリーンがメロディーを弾いていることである。さらにはビリーのバックでオブリガードも弾いている。モートンはいつもと変わらずほぼテーマを吹く。このモートンに関して巨泉氏は「能がない」と厳しいが、これがこの人の持ち味で美しいトーンで、トロンボーンの特徴を生かした茫洋としたプレイは味があっていいと僕は思う。そしてオブリガードにテディのリリカルなピアノが付けば、なごみの極致とさえ思える。
Record2 A-4.「灯台もと暗し」
まずイントロのクレイトンの素晴らしい。その好調さはビリーの歌のオブリガードでも続く。そして続くレスターのリラックスしたソロも素晴らしい。
Record2 A-5.「女が男を愛する時」
レスターのイントロから淡々と語りかけるように歌い出すビリーは既に完成の域に達しているとは、巨泉氏。中間のクレイトン節も心地よい。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」2枚目A面

<Date & Place> … 1938年5月11日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバーナード・アンダーソンBernard Anderson
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxベイブ・ラッシンBabe Russin
Pianoクロード・ソーンヒルClaude Thornhill
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole

意外なのは、ベイブ・ラッシンとクロウド・ソーンヒルの参加である。この二人が白人で後は黒人という白黒混合編成。ラッシンはベニー・グッドマンの楽団に在団中であり、ソーンヒルはすでに自己のオーケストラを率いていたはずである。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)

Record2 A-6.頭から離れない貴方You go to my head
Record2 A-7.月に笑われThe moon looks down and laughs
Record2 A-8.もし私が貴方ならIf I were you
Record2 A-9.忘れられるものならForget if you can

大和氏よれば、このセッション以降に見られる特徴として、歌のバックをアンサンブルで飾るようになってきたことが挙げられるという。確かにこれまでは歌のバックは、Tp或いはTsといった単一楽器によるオブリガードが中心だった。
また取り上げるナンバーもセンチメンタルなものが次第に多くなり、歌うテンポも遅くなる傾向がみられる。これは間もなく訪れる絶頂期のビリーが好んだやりかたで、この辺りから絶頂期に向かおうとしているということであろう。選曲に関しても、レコード会社からの一方的なあてがいではなく、ビリーの意思も反映されるようになったと思われ、従来ともすると伴奏に関しては無頓着であったビリーが、音楽的に自覚を持つようになり、歌をアンサンブルで飾り、引き立たせようと図ったのであろうという。
僕が感じるのは、初期のころはともすれば、インストの部分が多く、終わり近くにヴォーカルが出ていたのが、この頃はイントロの後先ずヴォーカルが出るようになっている。そして間奏としてソロがあり、またヴォーカルに戻るという形式になっていることで、すなわち中心はヴォーカルですよということになって来たということである。

「ビリー・ホリディ・クロノロジカル」レコード・ボックス
Record2 A-6.「頭から離れない貴方」
この録音は「クロノロジカル・オーダー」というラジオ放送や映画で歌ったものなどを集めた23枚組のボックスの中の1枚”Rare studio cuts”、要はスタジオ録音からの希少録音という付録的な1枚にも収められ?ている。ということは本国アメリカなどでも入手が難しいナンバーなのであろうか?
内容はスロウ・バラードでしみじみと原メロディを活かした歌い方で、大和氏の言うこの時期からの特徴がよく表れている。僕などはこういった歌唱がしみじみとして好きである。ラッシンのソロもレスターに近い感じで情感がにじみ出るようで良い。
Record2 A-7.「月に笑われ」
大橋巨泉氏が大好きなナンバーとして挙げている作品。声の小さな震えにも、失恋の自嘲を込めて素晴らしい演唱を見せると書いている。ここでもラッシンが短いがイイ感じのソロを聴かせる。
Record2 A-8.「もし私が貴方なら」
これは約2週間前の4月29日にテディ・ウィルソンが白人の美人歌手ナン・ウィンを起用して吹き込んでいる。ソーンヒルのアレンジで、ビリーは高音を活かしてキュートに歌っている。
Record2 A-9.「忘れられるものなら」
このような陳腐な歌を歌って、堪らないほどの悲しみを表現できるのがビリーの特徴であるとは巨泉氏。ソーンヒルのソロは、テディのような華麗さはないが端正でなかなかいい感じだ。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」2枚目B面

<Date & Place> … 1938年6月23日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

この日のメンバーは、約1か月位前の5月11日に行われた録音とギターが加わったことを除けば同じである。但しギタリストも名前は不明で、参加しているのは4曲目「心に鍵をかけて」ではないかという。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)

Record2 B-1.気ままな暮らしHavin’myself a time
Record2 B-2.もう一人の私が言うのSays my heart
Record2 B-3.欲しいのは貴方I wish I had you
Record2 B-4.心に鍵をかけてI'm gonna lock my heart
Record2 B-1.「気ままな暮らし」
楽曲解説の巨泉氏は、初期によく歌ったタイプの曲で、作品的には上位にはランクできないが、ずっと落ち着いた歌い方をしていると書いている。僕は初期よりも、こちらの方が好みだ。テナーについて、大和氏も巨泉氏も、ホーキンス派と書いているが「典型的なホーキンス派」というわけではなく、レスターも少し入っているソロだと思う。
Record2 B-2.「もう一人の私が言うの」
ここでも巨泉氏は、ナンセンスなポップ・チューンだが、ビリーはリラックスして軽いタッチで歌っているとし、ベイリーの風格あるソロ、アンダーソンのクレイトンばりのソロ、ウエブスター風のテナー・ソロとサッチモ好みのエンディングなど小品だが好ましくまとまっていると書いている。
Record2 B-3.「欲しいのは貴方」
巨泉氏は、初期のビリーならもっとずっと直接的に表現したであろうと思われるが、ここではグッと抑えた歌い方をしていて、一寸物足りなくもあるとするが、僕はこちらの方が好みだ。コールのドラミングもアンダーソンの抑えたミュート・ソロも好ましい出来だ。
Record2 B-4.「心に鍵をかけて」
巨泉氏はこの日のセッションでは最良のトラックとする。各人のソロも短いが引き締まった出来映えでいい感じだ。

[Billie Holiday/Kind of Holiday]CDボックス

<Date & Place> … 1938年7月24日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … アーティー・ショウ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Artie Shaw and his orchestra)

Band leader&Clarinetアーティー・ショウArtie Shaw
Trumpetチャック・ピーターソンChuck Petersonクロウド・ボウエンClaude Bowenジョニー・ベストJohnny Best
Tromboneジョージ・アルスGeorge Arusハリー・ロジャースHarry Rodgersテド・ヴェズリーTed Vesely
Reedsロニー・ペリーRonnie Perryハンク・フリーマンHank Freemanレス・ロビンソンLes Robinsonトニー・パスターTony Pastor
Pianoレス・バーネスLes Burness
Guitarアル・アヴォラAl Avola
Bassシド・ワイスSid Weiss
Drumsクリフ・リーマンCliff Leeman
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … "Billie Holiday/Kind of Holiday"(House of Jazz 220121)

CD2-20.エニー・オールド・タイムAny old time
「エニー・オールド・タイム」SP盤
アーティー・ショウとの吹込み
ビリーはコロンビアの専属で、ショウはヴィクターの専属だったため、ショウの楽団とビリーの吹込みは難しかったことは冒頭に書いた。しかしレコード付属の解説によれば、ヴィクターはコロンビアにビリーを入れたショウのレコードを作りたいと許諾を求めたことがあるという。コロンビアはこれに対し、1枚75セントの本盤で発売するものとばかり思い許諾を与えたという。そして1938年7月24日<エニー・オールド・タイム>が吹き込まれる。しかしビリーの自伝によれば、コロンビアにショウと一緒に吹き込みをしたいといったのはビリーであったという。この辺りの真偽は分からない。
ところがヴィクターは1枚35セントの廉価盤ブルーバードで発売した。これにコロンビアは気分を害した。コロンビアは1枚35セントの廉価盤ヴォカリオンでビリーのレコードを出していた。つまり35セントのブルーバード盤でショウとビリーが聴けることになり、ヴォカリオン盤は売れなくなると思ったのだった。コロンビアは強く抗議をし、廃盤にするよう求めた。ヴィクターはこれを受け入れ、回収作業を行ったが、すでにかなりの数のレコードが売れていたという(ビリー自伝では「少し売れていた」)。
アーティー・ショウのディスコグラフィーによればこの日全6曲の吹込みを行っており、ビリーがヴォーカルで参加したのはこの1曲のみで、他の5曲はインスト・ナンバーである。その中には大ヒットとなった「ビギン・ザ・ビギン」も含まれている。演奏自体はゆったりとしたナンバーで、いかにもこのスイング時代らしいアンサンブルが中心だが、冒頭にショウの短いClソロ、アンサンブルを挟んでビリーの2コーラスのヴォーカルとなる。その後短いTsソロからアンサンブルとなって終わる。全体的にはなかなかいい出来である。
勿論このレコードはコレクターズ・アイテムとして珍重されているという。それはそうだろう、これを聴くのはかなり難しいことだった。しかし現在では簡単に聴ける。僕は左の"Billie Holiday/Kind of Holiday"(House of Jazz 220121)というオランダのレコード会社が出しているCD10枚組に収録されているのを保有しているが、それよりもYoutubeにアップされているので、割と簡単に聴くことができる。すごい時代だ。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」解説

<Date & Place> … 1938年9月15日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneディッキー・ウエルズDickie Wells
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Pianoマーガレット・“クイーニー”・ジョンソンMargaret "Queenie" Johnson
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone

アーティー・ショウの楽団に移ったが、ここではなじみのベイシー楽団のメンバーを中心としたセッションを繰り広げている。ピアノのマーガレット・ジョンソンはテディ・ウィルソン派と云われる。確かにブラインド・テストをしたら「テディ・ウィルソン」と答える人が多いだろう。彼女はこの録音の後20歳で結核のため鬼籍に入る。彼女の唯一の録音だという。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)

Record2 B-5.君を想いてThe very thought of you
Record2 B-6.云い出しかねてI can't get started
Record2 B-7.夢のデイトI've got a date with a dream
Record2 B-8.貴方は誰かのものYou can't be mine
Record2 B-5.「君を想いて」
ここでレスターはクラリネットを吹いているのが珍しい。ビリーはクレイトン、レスターと一緒でフレイズも一段と冴えているとは巨泉氏。僕は歌に嫌みがないところが気に入っている。
Record2 B-6.「云い出しかねて」
ビリーは初期のような高音を使った挑戦的な唱法を取っているが、この曲には合わないと巨泉氏も書いている。僕もそう思う。救いはレスターのソロで深くゆったりとしてソロで、このソロはレスターの中でも出色のものではないかと思う。
Record2 B-7.「夢のデイト」
巨泉氏はまたもやつまらぬ歌と書くが、そう感じさせぬほどの表現力をビリーは持っていると感じる。ここでもレスターの珍しいクラリネット・ソロが聴かれる。
Record2 B-8.「貴方は誰かのもの」
巨泉氏は、哀しい表現を試みるが一寸迫力がないと書いているが、僕にはそれが好ましく感じる。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1938年10月31日、11月9日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetハリー・ジェイムスHarry James
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampsonベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxレスター・ヤングLester Youngハーシャル・エヴァンスHerschel Evans
Guitarアル・ケイシーAl Casey
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第4集」(CBS SOPH 67〜68)

Record1 A-1.みんなの笑いものよEverybody's laughing10月31日
Record1 A-2.又朝帰りよHere it is tomorrow again10月31日
Record1 A-3.答えはキッスでSay it with a kiss11月9日
Record1 A-4.心は四月のようApril in my heart11月9日
Record1 A-5.あなたを決して見捨てないI'll never fail you11月9日
Record1 A-6.人は言うThey say11月9日
Record1 A-7.人は言うThey say11月9日

名義はテディ・ウィルソンで一連のブランズウィックへの吹込みである。大和明氏の解説に拠れば、このセッションから、サックス・セクションの強化が図られ、小編成から中編成への動きがみられ、全体的にビッグ・バンドの雰囲気が出始めているという。それは当時スイング・ジャズの黄金期であり、ビッグ・バンド・ジャズの全盛時代であったからであろうという。そしてこうした動きはリーダー、テディ・ウィルソンの希望であったのではないかという。それはこの半年後にウィルソンは、BGのバンドから独立し、自己のビッグ・バンドを率いることになるのであり、ビッグ・バンド演奏に既に心が向いていたと思われるからであるという。
このセッションでは、スイング時代を風靡したハリー・ジェイムスが加わり、当時の人気ぶりを裏付けるような、自信に満ちた華麗で明るいソロを取っている。またテナー・サックスはベイシー楽団から2人が参加しているがソロを取るのはいずれもレスターの方である。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」1枚目A面
Record1 A-1.「みんなの笑いものよ」
通常テディのセッションでは、ビリーのヴォーカルは1コーラスだけだが、この曲では、プレイヤーのソロをはさんで前後で歌うという例外的な構成が見られる。確かにアンサンブルはソフトで、如何にも当時のビッグ・バンド風である。ヴォーカルの後最初にソロを取るのは、テディで、続いてレスター、ハリーの短いソロが入り、少しだけビリーが歌って終わる。
Record1 A-2.「又朝帰りよ」
当時風のサックス・ソリのアンサンブルからハリーの短いソロが入り、ビリーのヴォーカルとなる。そしてテディはいつもの華麗なスタイルでスイングする。

Record1 A-3.「答えはキッスで」
先ずモートンがストレートに吹き、テディのピアノが入り、ビリーの歌となる。続くハリーのTpは明るくベリガン風のプレイだが、続くレスターのソロと比べると子供に感じてしまう。
Record1 A-4.「心は四月のよう」
まずベニー・カーターが華麗なプレイを披露する。ビリーの歌が入り、続くテディのソロが良い感じだ。そしてハリーのTpはここでもベリガンを思い出させる。続くテナーはレスターではなくエヴァンス。
Record1 A-5.「あなたを決して見捨てない」
TpとPのイントロから当時風のアンサンブルとなり、ビリーの歌に引き継ぐ。巨泉氏は珍しく甘さを出して歌っているという。続くTsはエヴァンスで、短いPソロが入り、ハリーのTpでエンディングを迎える。
Record1 A-6、7.「人は言う」
まずハリーがスイートでセクシーなソロを聴かせ、続くテディもリリカルなプレイを行う。そしてビリーも控えめな歌唱を行う。続くカーターのアルトがここでも華麗に吹き上げている。

この11月に、ビリーはアーティー・ショウの楽団を退団した。そしてこのテディのバンドの方は、これだけ優れたメンバーを集めながら、テディは他のメンバーに余りソロを取らせていない。そういえばテディ以外のメンバーのソロは短くなってきているような気がする。ここではサックスを中心としたアンサンブルをバックにテディのピアノを浮き上がらせている。こうなるとオールスター・メンバーを揃えたブランズウィック・セッションは、意義が薄れてきたといえよう。こうした傾向は40年代に大きな人気を博するエディ・ヘイウッドのバンドなどにも影響を与えているといえよう。
「ビリー・ホリディ」レコード第4集」1枚目B面

<Date & Place> … 1938年11月28日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Tromboneトラミー・ヤングTrummy Young
Clarinet & Alto saxトゥーツ・モンデロToots Mondello
Alto saxテッド・バクナーTed Buckner
Tenor saxバド・フリーマンBud Freemanチュー・ベリーChu Berry
Guitarアル・ケイシーAl Casey
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsコジ―・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第4集」(CBS SOPH 67〜68)

Record1 B-1.あなたが欲しいYou're so desirable
Record1 B-2.あなたについて離れないYou're gonna see a lot of me
Record1 B-3.ハロー・マイ・ダーリンHello , my darling
Record1 B-4.月影の夢Let's dream in the moonlight

この11月に、ビリーはアーティー・ショウの楽団を退団した。そしてこのテディのバンドの方は、これだけ優れたメンバーを集めながら、テディは他のメンバーに余りソロを取らせていない。そういえばテディ以外のメンバーのソロは短くなってきているような気がする。ここではサックスを中心としたアンサンブルをバックにテディのピアノを浮き上がらせている。こうなるとオールスター・メンバーを揃えたブランズウィック・セッションは、意義が薄れてきたといえよう。こうした傾向は40年代に大きな人気を博するエディ・ヘイウッドのバンドなどにも影響を与えているといえよう。

Record1 B-1.「あなたが欲しい」
テディのソロは派手なグリッサンドを多用した華麗なものになってきた。そしてビリーはセクシーにねっとりと歌うとは巨泉氏。この頃のビリーは人気的にも絶頂で、「白いくちなし」の花を髪にかざして歌う美しいビリーの姿に多くの聴衆は酔ったという。

Record1 B-2.「あなたについて離れない」
この曲は先ず『貴方の想い出(Memories of you)』に実によく似ている。ここでテーマを吹くのはボビー・ハケットで、ハリー・ジェイムズのような派手さはないが、滋味に富んだ落ち着いた音色が好ましい。ビリーの歌唱もかなり抑えた表現で良い。
Record1 B-3.「ハロー・マイ・ダーリン」
ここでのビリーも抑制の効いたかなり押さえた表現で、そこが僕にも嫌味なく聴こえる所以であろう。
Record1 B-4.「月影の夢」
サックス中心のアンサンブルで始まる。トラミーのTb、テディのPとソロが入り、ビリーのレイジーなヴォーカルとなる。続く短いTsソロはチュー・ベリー。

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