ボブ・クロスビー 1938年

Bob Crosby 1938

今回も音源は3枚のレコードです。その3枚に1938年の録音も散りばめられている。まずその3枚とは、
「ボブ・クロスビー/ザ・ボブ・キャッツ傑作集」Decca SDL-10301
「サマータイム/ボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ&ザ・ボブ・キャッツ」MCA-3145
「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」 MCA-3018
である。

<Date&Place> … 1938年3月10日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bob Crosby and his orchestra)

Band leader & Vocalボブ・クロスビーBob Crosby
Trumpetチャーリー・スピヴァクCharlie Spivakヤンク・ロウソンYank Lawsonビリー・バタフィールドBilly Butterfield
Tromboneウォード・シロウェイWard Sillowayウォーレン・スミスWarren Smith
Clarinetアーヴィング・ファゾラIrving Fazola
Clarinet & Alto Saxマッティ・マトロックMatty Matlock
Alto Saxジョー・キーンズJoe Kearns
Clarinet & Tenor Saxエディ・ミラーEddie Miller
Tenor saxギル・ロディンGil Rodin
Pianoボブ・ザークBob Zurke
Guitarナッピー・ラメールNappy Lamare
Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc

Trumpet … ザケ・ザーキー ⇒ チャーリー・スピヴァク
Clarinet … アーヴィング・ファゾラ ⇒ In
以外前回録音1937年11月16日と同じメンバー。

<Contents>

タイトル原題レコード1レコード2
ヤンシー・スペシャルYancey special「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」A面3曲目「サマータイム」A面6曲目
二人でお茶をTea for two「サマータイム」A面7曲目
「ヤンシー・スペシャル」
ミード・ラックス・ルイスの作で、ミード自身1936年に吹き込んでいる。ジミー・ヤンシーは「ブギー・ウギー」ピアノのパイオニアの一人で、レント・ハウス・パーティーでは人気者だったが、昼間はシカゴのホワイト・ソックスの球場で働き、レコーディングは比較的遅かった。この曲はヤンシーのスタイルをミード流に解釈したもので、1936年時点でまだヤンシーはレコーディングをしておらず、誰もヤンシーの名を知らなかったといわれる。このナンバーは、ディーン・キンケイドがバンド用にアレンジしたもの。1938年でのブギー・ウギー・ナンバーの吹込みは、トミー・ドーシー楽団よりも早く、白人バンドが吹き込んだものとしては最も早い録音の一つだと思う。ただし、この曲でのピアノのベース・ラインは、ミードのプレイもそうだったが「ブギー・ウギー」というよりも「ハバネラ」と言われるリズム・パターンだろう。初期のリズム&ブルースを感じさせる。
ミードの右手の役割を担うアンサンブルは、素晴らしく見事の一言に尽きる。
「二人でお茶を」
「ブギー・ウギー」から一転して優雅なスタンダード・ナンバーとなる。ザークのピアノが面白い。ファッツ・ウォーラーを意識しているような気がする。Tsソロはエディ・ミラーだろうか?ゆとりを感じさせる傑作だと思う。

<Date&Place> … 1938年3月14日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ボブ・クロスビーズ・ボブ・キャッツ(Bob Crosby's bob cats)

Band leaderボブ・クロスビーBob Crosby
Trumpetヤンク・ロウソンYank Lawson
Tromboneウォーレン・スミスWarren Smith
Clarinetアーヴィング・ファゾラIrving Fazola
Tenor Saxエディ・ミラーEddie Miller
Pianoボブ・ザークBob Zurke
Guitarナッピー・ラメールNappy Lamare
Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc

<Contents>

タイトル原題レコード1レコード2レコード3
スロウ・ムードSlow mood「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」A面2曲目
ビッグ・フット・ジャンプBig foot jump「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」A面5曲目
ボブ・キャッツ・マーチMarch of the Bob Cats「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」A面6曲目「サマータイム」A面8曲目「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」A面1曲目
ビッグ・クラッシュ・フロム・チャイナThe big crash from China「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」B面6曲目
「スロウ・ムード」
テナーのエディー・ミラーの作。ロマンティックでソフトな自作曲を実に美しく吹いている。当時白人No.1テナーと言われたのもうなずける。正に白いレスター・ヤングである。
「ビッグ・フット・ジャンプ」
ピアノのボブ・ザークの作。ラグタイム風の楽しいナンバー。かのジェリー・ロール・モートンがザークのピアノだけは賞賛したと言われるが、うなずける素晴らしいプレイである。
「ボブ・キャッツ・マーチ」
この曲のみ
Clarinet … アーヴィング・ファゾラ ⇒ マッティ・マトロック(Matty Matlock)
Bass … ボブ・ハガート ⇒ ヘイグ・ステファン(Haig Stephens)


この曲は3枚のアルバムが取り上げているところから見た彼らの代表作と言っていいであろう。ただこの曲に関しては書くことが一杯ある。
まず録音日であるが「傑作集」だけ1938年8月14日としているが、他の2枚は3月14日としている。演奏内容は何度聴いても同じである。1938年7月にTpのヤンク・ロウソンはトミー・ドーシーの楽団に引き抜かれていないはずなので、3がつ14が正しいと思われる。或いは8月14が正しいとすれば、Tp奏者が違うと思われる。
ソロを取るクラリネットについて、「傑作集」だけはアーヴィング・ファゾラで、他の2枚はマッティ・マトロックとしている。そしてベースは3枚ともヘイグ・ステファンとしているのである。まず、書いていることをまとめると、「傑作集」では、変わったのはベースだけであり、録音日が異なる。ではベースが変わった理由は、その日はベースのボブ・ハガートの結婚式だったからと書いている。「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」は理由も何も書かず、この曲だけファゾラ⇒マトロック、ハガート⇒ステファンに変わったと書いている。そして「サマータイム」において取り上げているのはこの曲だけなので、単にクラリネットはマトロック、ベースがステファンに変わったのは、ハガートが結婚式だったためとなっている。ハガーとはこの日が結婚式で録音に参加できなかったというが、他の曲には参加している。この曲が最後の録音でハガーとは行かなければならなかったのか最初の録音で結婚式から間に合わなかったのかなのであろう。
因みに「傑作集」の解説は飯塚経世氏、「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」の解説は大和明氏、「サマータイム」の解説は瀬川昌久氏である。
更に面白いのはこの曲の由来で3人それぞれ書いていることが異なる。瀬川氏などかなり分量を書いているが、ここでは割愛しよう。
僕の感想を書くと、オーケストラからのピック・アップメンバー”ザ・ボブ・キャッツ”によるディキシーランド・ジャズで、マーチ⇒ディキシーランド・ジャズの流れを踏まえた演奏であるということとディキシー好きのレイ・ボデュークの張り切ったプレイが印象的である。
ビッグ・クラッシュ・フロム・チャイナ
ドラムのレイ・ボデュークの作。フューチュアーされているのも彼のドラムである。チャイナ・ムードのあるディキシーランド・ジャズというかなり特異なナンバーである。

1938年夏創立以来のメンバー、ヤンク・ロウソンとチャーリー・スピヴァクがトミー・ドーシー楽団に引き抜かれる。特にヤンク・ロウソンはTpのスター・プレイヤーであり、当時一大ニュースとなったという。そんなことが次の変形編成によるレコーディングの原因となったのかもしれない。

<Date&Place> … 1938年10月14日 ニューヨークにて録音

<Contents>

タイトル原題レコード1レコード2レコード3
ウィネットカのビッグ・ノイズThe big noise from Winnetka「ボブ・クロスビー/ザ・ボブ・キャッツ傑作集」B面1曲目「サマータイム」B面1曲目「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」A面4曲目
アイ・ヒア・ユー・トーキングI hear you talking「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」B面4曲目

<Personnel 「ウィネットカのビッグ・ノイズ」> … ツー・オブ・ザ・ボブ・キャッツ(Two of the bob cats)

Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc
>p>この曲について「傑作集」、「サマータイム」は38年10月14日録音としているのに対し、「ボブ・クロスビーのボブ・キャッツ」は、1939年2月6日録音としている。演奏内容は同じである。多数決ではないがここでは1938年10月14日録音として進める。
ハガートとボデュークのデュエットで当時大ヒットしたナンバーだという。38年版ドラムん・ベースである。口笛はハガートで、途中ボデュークがベースの弦をドラムのスティックで叩いている。このパフォーマンスは後年ヴェンチャーズが日本公演でドラムのメル・テイラーがボブ・ボーグルのベースの弦を叩いて大喝采を浴びるシーンの基になっているのであろう。

<Personnel 「アイ・ヒア・ユー・トーキング」> … フォー・オブ・ザ・ボブ・キャッツ(Four of the bob cats)

Tenor Saxエディ・ミラーEddie Miller
Pianoボブ・ザークBob Zurke
Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc

スイング感溢れる素晴らしい演奏で、エディー・ミラーのソロ、ハガートのソロ、ボデュークのドラムソロも秀逸である。そして再びミラーのソロも素晴らしいの一言に尽きる。決して有名ではないが同時代のBGのカルテットと比しても決して引けを取らない名演である。

<Date&Place> … 1938年10月19〜21日 シカゴにて録音

<Personnel> … ボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bob Crosby and his orchestra)

Band leader & Vocalボブ・クロスビーBob Crosby
Trumpetザケ・ザーキーZake Zarchyスターリング・ボーズSterling Boseビリー・バタフィールドBilly Butterfield
Tromboneウォード・シロウェイWard Sillowayウォーレン・スミスWarren Smith
Clarinetアーヴィング・ファゾラIrving Fazola
Clarinet & Alto Saxマッティ・マトロックMatty Matlock
Alto Saxジョー・キーンズJoe Kearns
Clarinet & Tenor Saxエディ・ミラーEddie Miller
Tenor saxギル・ロディンGil Rodin
Pianoボブ・ザークBob Zurke
Guitarナッピー・ラメールNappy Lamare
Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc
Vocalマリオン・マンMarion Mann

僕の持っている「オーケストラ」での録音は3月10日以来である。
Trumpet … チャーリー・スピヴァク ⇒ ザケ・ザーキー、スターリング・ボーズ ⇒ In
以外移動はない。
「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」にはTpセクションにヤンク・ロウソンの記載があるが、ロウソンとチャーリー・スピヴァクは1938年夏にトミー・ドーシーの楽団に引き抜かれているので誤りであろう。

<Contents>

タイトル原題レコード1レコード2録音日
ホワッツ・ニューWhat's new「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」A面2曲目
マイ・インスピレイションMy inspiration「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」A面4曲目「サマータイム」B面3曲目10月20日
アイム・プレイン・ハンブルI'm prayin’humble「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」A面6曲目
ホンキー・トンク・トレイン・ブルースHonky tonk train blues「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」B面2曲目「サマータイム」B面2曲目10月19日
サマータイムSummertime「ザ・ボブ・キャッツ傑作集」B面5曲目「サマータイム」A面1曲目10月21日
「ホワッツ・ニュー」
現代でもよく演奏されるスタンダード・ナンバーだが、元々はこの録音がオリジナル。この年1938年ベースのハガートがTpのバターフィールドのために曲を書いた”I'm free”が元で、ジョニー・バークが詞を書き、題名も”What's new”に変更された。バターフィールドのTpが大きくフューチャーされるのは当然として、ミラーも素晴らしいTsソロを聴かせる。
「マイ・インスピレイション」
この曲もベースのハガート作の美しいロマンティックなスロウ・バラード。当初バターフィールドにソロを吹いてもらおうと意図していたが、バターフィールドが「ホワッツ・ニュー」でフューチャーされたので辞退し、クラリネットのファゾラがソロを吹くことになったという。ファゾラのプレイも情感豊かで素晴らしい。
「アイム・プレイン・ハンブル」
これもハガートの作品。少し重苦しい感じで始まるが、だんだんリズミックになり盛り上げる。後にミッチェル・クリスチャン・シンガーズが歌ってヒットしたという。ミュートによるTpソロはバターフィールド。見事なミュート・プレイである。
「ホンキー・トンク・トレイン・ブルース」
「ヤンシー・スペシャル」と同じミード・ラックス・ルイスの大ヒット・ナンバー。曲自体は1925年にミードがダンス・パーティーで披露したといわれるが初めてレコーディングのは、1929年その後自身で何度かレコーディングしている。「ヤンシー・スペシャル」と違って完全にブギー・ウギー・ナンバーである。飯塚氏はアレンジはキンケイドとしているが、瀬川氏はマッティ・マトロックがザークのためにアレンジしたと書いている。ともかくザークのピアノがフューチャーされた完全ブギ・ウギである。
「サマータイム」
ジョージ・ガーシュインがオペラ「ポーギーとベス」のオープニング・チューンとして書いて以来ジャズのスタンダード・ナンバーとなった名作。ディーン・キンケイドのアレンジは極めて情緒豊かなもの。ミラーのTsソロはピュア―なトーンから当時評論家はアイヴォリー石鹸の透明さに比較したほどであったという。
ディキシーが売り物のクロスビー楽団には似つかわしくない感じもするが、楽団の全スコアを演奏したこともあり、その中でこの「サマータイム」が余りに素晴らしいのでメンバー全員の愛好曲となった。そこでこの曲をテーマにしたいと考えたクロスビーは、ガーシュインを招待して演奏を聴かせたところ非常に気に入り、テーマ曲とすることを許可してくれたという。

このWebサイトについてのご意見、ご感想は、メールでお送りください。

お寄せいただいたご意見等は本文にて取り上げさせていただくことがあります。予めご了承ください。