ブラザー・ジョン・セラーズ「シングス・ブルース&フォーク・ソングス」

Brother John Sellers “Sings blues and folk songs”

「ブラザー・ジョン・セラーズ/シングス・ブルース&フォーク・ソングス」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1954年録音

<Personnel>

Vocalブラザー・ジョン・セラーズBrother John Sellers
Trumpet(A-2、3)ルビー・ブラフRuby Braff
Pianoサー・チャールズ・トンプソンSir Charles Thompson
Guitarフレディー・グリーンFreddie Greene
Brassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones

<Contents> … 「ブラザー・ジョン・セラーズ/シングス・ブルース&フォーク・ソングス」(Vanguard VRS8005)

A面
B面
1ジョン・ヘンリーJohn Henry1ボール・ウィーヴィルBoll Weevil
2フェアウェル・ワーク・ライフFarewell work life2トゥー・リトル・フィッシェズ、ファイヴ・ローヴズ・オブ・ブレッドTwo little fishes , five loaves of bread
3ドレサ・ブギーDretha Boogie3ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイドDown by the riverside
「ブラザー・ジョン・セラーズ/シングス・ブルース&フォーク・ソングス」レコード・A面

まずこのレコードを買ったのは、「ジョン・ヘンリー」という曲が入っていることと歌手のブラザー・ジョン・セラーズは全く知らない人物だったが、バックが素晴らしい。カウント・ベイシーがチャールズ・トンプソンに代わって入るけれどそれ以外は「オール・アメリカン・リズム・セクション」である。
珍しいのはTpのルビー・ブラフでこのセッション唯一の白人である。彼のほぼ初録音に近いものだと思う。
またこのレコードはかの大プロデューサー、ジョン・ハモンド氏がヴァンガード・レコード時代に企画したものという。かなり異色レコードだが、氏の狙いは黒人音楽のルーツを知ってもらいたいというものだったのだろうという。

A面1.「ジョン・ヘンリー」は、余り日本では知られていないが、アメリカを代表するフォーク・ソングである。そしてブルースではない。
19世紀半ばの黒人労働者にまつわる話で、色々なヴァリエーションが存在するらしいが、機械の導入を機にリストラをもくろむ白人オーナーと抵抗する黒人労働者たち。ジョン・ヘンリーは自分たちの方が作業が速いことを証明するために機械(蒸気ハンマー)と対決する。しかし彼はその戦いの最中に力尽きて死んでしまうという物語である。
大和田俊之氏はその著『アメリカ音楽史』で、歴史学者スコット・ネルソン氏のこの曲の関する考察を紹介している。それによれば、この「ジョン・ヘンリー」には実在の人物がモデルになっているという。この歌詞の内容と中世イギリスのマイニング・バラッド(炭坑節)との共通点を指摘する。黒人労働者はアパラチア山脈の炭鉱で働くことで、そこで歌い継がれてきたウエールズ人やスコットランド人のバラッドと接触していたはずだという。そして黒人炭鉱労働者は中世バラッドの形式を用いて「ジョン・ヘンリー」の歌詞を整えたというのである。

「ブラザー・ジョン・セラーズ/シングス・ブルース&フォーク・ソングス」レコード・B面

さらに興味深いのは、この歌が黒人炭鉱労働者だけではなく白人のコミュニティでも知られていたということである。20世紀初頭に研究者が調査を始めたところ、既にミシシッピ州の黒人やケンタッキー州の山岳地帯に住む白人、ヴァージニア州東部の黒人炭鉱労働者やチェサピーク&オハイオ鉄道の鉄道敷設院の誰もが口ずさめるほどに広がっていたという。氏はこれがブルースが成立する初期の段階で白人の音楽文化が密接にかかわっていたことを示すものだとしている。
確かにブルースではなく、僕の思っている典型的なフォーク・ソングである。歌っているセラーズは黒人のシンガーでその独特の声でそのことは分かるが、そう言えば黒人が歌うフォーク・ソングというのは余り聴いたことがないかもしれない。この録音に関して言えば各自のソロもなく、これだけのメンバーを集める必要があったのかなという気はする。
A面2「フェアウェル・ワーク・ライフ」はセラーズのオリジナル・ブルースである。ブラフのオブリガード、トンプソンのソロが聴ける。
A面3「ドレサ・ブギー」もセラーズのオリジナルのブギー。セラーズは唯一ここではシャウトしている。トンプソンのブギー・ピアノもよく弾んでいてノリノリの一作である。
B面1「ボール・ウィーヴィル」はトラディショナル・ナンバーでこのアルバム最大の聴きものである。グリーンのギターとペイジのベースだけをバックにセラーズが切々と歌っている。タイトルの「ボール・ウィーヴィル」とは、綿花につく害虫のことで、駆除される害虫に自分と同じ姿を見たという内容。こういうグリーンのギターも珍しい。
B面2「トゥー・リトル・フィッシェズ、ファイヴ・ローヴズ・オブ・ブレッド」は、直訳すれば「2匹の小さな魚と5つのパンの塊」ということだが、意味がよく分からない。
B面3「ダウン・バイ・ザ・リヴァーサイド」はよく知られたスタンダード・ナンバー。セラーズの歌唱は迫力がある。

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