チャールス・ミンガス 1946年
Charles Mingus 1946
チャーリー・ミンガスはこの年、割と数多くのレコーディングに参加しているようだが、自伝『敗け犬の下で』等を見てもその辺りの事情に触れたものはほとんどない。逆に、マイルス・ディヴィスの自伝でロスアンゼルス滞在中「チャールス・ミンガスと親しくなり、よくジャムったり、ミンガスの実験的なビッグ・バンドとリハーサルを始めた」とあるので、ミンガスは実験的なバンドを率い、リハーサルなどをしていたのだろうと推測する。
<Date&Place> … 1946年1月 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … アイヴィー・アンダーソン・アンド・ハー・オール・スターズ(Ivie Anderson and her all stars)
<Contents> … 「アイヴィー・アンダーソンとヘレン・ヒュームズ」(Storyville ULS-1560-R)
| A面1. | 明るい表通りで | On the sunny side of the street |
| A面2. | アイ・ガット・イット・バッド | I got it bad and that ain't good |
僕はエリントン楽団に在団していたこのアイヴィー・アンダーソンという歌手が大好きだった。彼女は喘息持ちで、1942年当時のバンドに付きもののツアーに耐えかねて退団、気候の良い西海岸に移り、スナックを経営しながら、健康の許す限り歌を歌っていたという。そんな彼女のエリントン楽団退団後の吹込みは誠に少なく、このレコードを見つけた時には、喜々として買ったものだ。そしてサイドメンの中にミンガスの名前を見つけ、驚いたものである。こういう歌伴をするとは思わなかった。
「明るい表通りで」
作ったのはファッツ・ウォーラーだが、ジミー・マクヒューが作ったことになっている超有名曲。アンダーソンの決然としたような声質に合うかどうか疑問だったが、彼女自身はそんなことにお構いなく、決然と歌っているという感じである。間奏はTpが良く歌っており、またミンガスもソロを取っているところが、ミンガスの存在感のなせるところなのだろう。
「アイ・ガット・イット・バッド」
エリントン時代の十八番で持ち歌である。ここでもカール・ジョージのTpがオブリガードを付けている。そして短いがスミスのAsソロが聴き処であろう。
<Date&Place> … 1946年1月 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … チャールズ・ミンガス・セクステット(Charles Mingus sextette)
<Contents> … "Charlie Mingus/The Young Rebel"(Properbox 77)
| CD1-9. | エイント・ジャイヴィン・ブルース | Ain't jivin' blues |
| CD1-10. | シャッフル・ベース・ブギー | Shuffle bass boogie |
| CD1-11. | ワイアード・ナイトメア | Weird nightmare |
「エイント・ジャイヴィン・ブルース」
ミンガスのベースのイントロから始まり、直ぐにトレニアのヴォーカルが入る。トレニアのヴォーカルはキャブ・キャロウェイを彷彿とさせる。ヴォーカル・バックのアンサンブルはバップを意識したような変わった響きである。ソロは先ずバランコのバップを意識したような中音域のピアノ・ソロ。続いてTpソロからヴォーカルに戻って終わる。
「シャッフル・ベース・ブギー」
アンサンブルとBとの掛け合いで始まる。タイトルのようにミンガスのベースをフューチャーしたナンバー。随所にミンガスの素晴らしいプレイが聴けるが、中間のスミスのAsソロ、バランコのPもスインギーである。実に楽しいナンバー。
「ワイアード・ナイトメア」
タイトルを表すような少し異様な響きのアンサンブルからトレニアのヴォーカルとなる。ソロはトンプソンのTs。ヴォーカルに戻り、ドラマティックなPが入ってエンディングとなる。
ジョン・スウェッド著『マイルス・ディヴィスの生涯』によれば、マイルス・ディヴィスはバードとディズを追って、ベニーカーターのバンドに加わり、西海岸に来ていた。ディズはニューヨークに戻り、バードはカマリロ病院に収容され、ベニー・カーターの吹込みに参加したりしていた。そして当時西海岸に住んでいたチャールス・ミンガスと親しくなり、よくジャムったり、ミンガスの実験的なビッグ・バンドとリハーサルを始めたという。『マイルス・ディヴィスの生涯』ではそれ程度しか触れていないが、マイルスの自伝にははっきり「この頃(1946年夏)ミンガス男爵とシンフォニック・エコーズというバンドでレコーディングした」と書いている。訳と解説の中山康樹氏は「これは謎につつまれたレコーディングで、これまでマイルス不参加説もあったが、今回のマイルスの証言によって確実に参加していたことが判明した。」と述べ、さらに「1946年後半にマイルスの参加した録音は行われたが、1949年1月に再度編集の手が加えられたという説もある」と紹介し、このセッションはレコード化されていない模様」と結んでいる。因みに僕の持っている自伝は1991年11月25日の新装版第1刷である。
このミンガスとの吹込みに当たると思う音源が、"Jazz Discography Project"に載っている。そして"Charlie Mingus/The Young Rebel"に収録されているとある。しかし"Charlie Mingus/The Young Rebel"CDボックスのライナー・ノートに載っているデータとは、かなり異なる。双方のデータを掲載してみた。
"Jazz Discography Project" データ
<Date&Place> … 1946年3月or8月 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … バロン・ミンガス・プレセンツ・ヒズ・シンフォニック・エアーズ(Baron Mingus Presents His Symphonic Airs)
| Band leader & Bass | … | チャールズ・ミンガス | Charles Mingus |
| Trumpet | … | マイルス・ディヴィス | Miles Davis | 、 | ヴァーン・カールソン | Vern Carlson |
| Trombone | … | ヘンリー・コッカー | Henry Coker |
| Alto sax | … | ブーツ・ムッスリ | Boots Mussulli |
| Tenor Sax | … | ラッキー・トンプソン | Lucky Thompson | 、 | バディ・コレット | Buddy Collette |
| Baritone sax | … | ハーブ・キャロル | Herb Carol |
| Piano | … | バズ・ウィーラー | Buzz Wheeler |
| Drums | … | ウォーレン・トンプソン | Warren Thompson |
| Vocal | … | ハーブ・ゲイル | Herb Gayle |
<Contents>
| O-189 | He's gone | Fentone 2002 | "Charlie Mingus/The Young Rebel" |
| O-190 | Story of love | | |
| God's portrait | Fentone 2001 | |
| Unknown title | | |
"Charlie Mingus/The Young Rebel" データ
<Date&Place> … 1949年2月 サンフランシスコにて録音
<Personnel> … バロン・ミンガス・プレセンツ・ヒズ・シンフォニック・エアーズ(Baron Mingus Presents His Symphonic Airs)
| Band leader & Bass | … | チャールズ・ミンガス | Charles Mingus |
| Trumpet | … | ジョン・コッポラ | John Coppola | 、 | ヴァーノン・カールソン | Vernon Carlson | 、 | アレン・スミス | Allen Smith | 、 | アンディ・ピール | Andy Peele |
| Trombone | … | ヘイグ・エショウ | Haig Eshow | 、 | ボブ・ロウリー | Bob Lowry | 、 | ホウズ・コールマン | Hawes Coleman |
| Flute | … | ダンテ・パフューモ | Dante Perfumo |
| Alto sax、Clarinet&flute | … | ボブ・オルニー | Bob Olney |
| Alto sax | … | バド・フーヴェン | Bud Hooven |
| Tenor sax | … | モリー・スチュワート | Morrie Stewart | 、 | アレックス・メガイシー | Alex Megyesy | 、 | ドン・スミス | Don Smith |
| Baritone sax | … | ハーブ・カロ | Herb Caro |
| Cello | … | ジャン・マクガイアー | Jean McGuire |
Piano | … | リチャード・ワイアンズ | Richard Wyands |
| Drums | … | カール・ジェイダー | Carl Tjader |
| Percussion | … | ジョニー・バーガー | Johnny Berger |
| Vocal | … | ハーブ・ゲイル | Herb Gayle |
<Contents>
|
| 53281 | He's gone | Fentone 2002A |
| 53281 | Story of love | Fentone 2002B |
と大分データが異なるのである。ではどうなのか、どちらが正しいのか?というと僕には判断をくだせるだけの材料がない。全体のサウンドを聴くと厚みから言って”Jazz Discography Project”のテンティット(10名)の演奏とは思えない。
「He's Gone」
絶対にチェロが入っている。とにかく変わったアレンジの曲だと思う。ハーブ・ゲイルの歌を聴くとそんな変な曲とは思わないが、バックの演奏は変わっている。セロの奏でる荘厳な響き、ハープシコードに見立てたピアノのプレイ諸々実験的な作品だと思う。
「Story Of Love」
これもかなり個性的だ。学究的なコメントができないのが残念だ。アンサンブルのテーマの後、先ずはテナー・サックスがソロを取り、いったんアンサンブルになりテナー・サックスのソロとなる。このソロは誰であろうか?マイルスかなぁ?でもあまりマイルスっぽくないのである。
ではCDのパーソネルが正しく、ディスコグラフィーが誤っているのであろうか?そうも思えない。何せマイルス自身がレコーディングしたと言っているのだ。
そうなってくると中山氏が自叙伝で言及している再編集説というのがちょっと頭をかすめる。一度ディスコグラフィーのメンバー録音したものにCD解説のメンバーでの演奏をオーヴァーダブしたことも考えられる。いずれにせよ僕には判断をくだせないので、次に行こう。
次の音源もデータが錯綜している。
<Date&Place> … 1946年4月20日or5月6日 ロスアンゼルスにて録音
<Contents> … "Charlie Mingus/The Young Rebel"(Properbox 77)
| CD1-12. | メイク・ビリーヴ | Make believe |
| CD1-13. | ベッドスプレッド | Bedspread |
| CD1-14. | ハニー・テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー | Honey,take a chance with me |
| CD1-15. | ディズ・サブ・デューズ・マイ・パッション | This subdues my passion |
<Personnel> … バロン・ミンガス・アンド・ヒズ・オクテットセクステット(Baron Mingus and his octet)
"Jazz discography project"と"The young rebel data"の相違表。同じところを斜め表記にした。
| Jazz discography project | The young rebel data |
| Date | 5月6日 | 4月20日 |
| Trumpet | Karl George | Karl George+John Anderson |
| Trombone | Henry Coker | Britt Woodman |
| Clarinet & Alto sax | Marshall Royal | Buddy Collette |
| Alto sax | Willie Smith | - |
| Tenor sax | Lucky Thompson | William Woodman |
| Piano | Lady Will Carr | Lady Will Carr |
| Guitar | Irving Ashby | Louis Spelger |
| Drums | Lee Young | Lee Young |
| Vocal | Claude Trenier | Claude Trenier |
| Make believe | 393AS | 393AS |
| Bedspread | 395AS | 395AS |
| Honey,take a chance with me | 394AS-2 | 394AS-1 |
| This subdues my passion | 396AS-2 | 396AS-1 |
記載が同一のものだけプロフィールを付記した。
| Band leader & Bass | … | チャールズ・ミンガス | Charles Mingus |
| Trumpet | … | カール・ジョージ | Karl George | 、 | ジョン・アンダーソン | |
| Trombone | … | ブリット・ウッドマン | Britt Woodman |
| Clarinet & Alto sax | … | バディ・コレット | Buddy Collette |
| Tenor Sax | … | ウィリアム・ウッドマン | William Woodman |
| Piano | … | レディ・ウィル・カー | Lady Will Carr |
| Guitar | … | ルイ・スペルガー | Louis Spelger |
| Drums | … | リー・ヤング | Lee Young |
| Vocal | … | クロウド・トレニア | Claude Trenier |
「メイク・ビリーヴ」
アンサンブルで始まり、直ぐにトレニアのヴォーカルとなる。ソロはAsとTbとBさらにTpが取る。Asソロを聴くとウィリー・スミスではないかと思う。
「ベッドスプレッド」
アンサンブルで始まる。ソロはまずTp、続いてTs⇒Tb⇒P⇒As⇒Bと続き、アンサンブルに戻る。
「ハニー・テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー」
アンサンブルで始まり、直ぐにトレニアのヴォーカルとなる。アンサンブルが入り、ミンガスのBソロ、続いてAsソロからアンサンブルに戻る。
「ディズ・サブ・デューズ・マイ・パッション」
Clがリードするアンサンブルで始まる。Tbがリードするゆったりとしたアンサンブルがしばらく続き、AsソロからTbがリードするゆったりとしたアンサンブルとなる。
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