チャーリー・バーネット 1939年

Charlie Barnet 1939

デュークとチャーリー・バーネット

今回はチャーリー・バーネットである。僕は彼の名前は以前から知ってはいた。多数のジャズ・マンの経歴で彼のバンドに在団していたという人が多いからである。しかし彼のレコードは、シリーズ物のボックスの1枚としてまとめられたこの1枚だけである。それもそのはずボックス解説の斉木克己氏によると、彼のレコードは1974年まで日本では1枚も出ていないというのである。ディスコグラフィーなどを見るとかなり吹込み数は多いようだが、日本では出ていなかったのだ。何故か?斉木氏は「本邦レコード界の七不思議の一つ」としているが、そう思うなら評論家の皆さんがレコード会社に働きかけるのが筋ではないかと思う。
さてこのチャーリー・バーネットは名門かつ富豪の子息としてニューヨークのマンハッタンで生まれた。名門のお坊ちゃんらしく学校は名門コースを歩むが、バンド業に夢中になり16歳でバンドを結成し活動を始めたという。しかしバンドを組んでは解散するという繰り返しで、斉木氏は彼のバンド稼業は、所詮お坊ちゃんの道楽と手厳しく書いている。
しかし何が機縁か分からないが、日頃から敬愛するデューク・エリントンに貴方のようなバンドを作りたいと相談したところから事情は一変する(右の写真はバーネットとエリントン)。デュークにアレンジャー、アンディ・ギブソンを紹介してもらい、エリントン・サウンドを鮮明に打ち出した彼のバンドは、1939年1月ニューヨークのフェイマス・ドアを根城に活動を開始する。すると早くも「ホワイト・エリントン」と異名を取って話題を得ると共にこの年「チェロキー」が大ヒットするに及び彼のバンドは一流バンドの仲間入りを果たすことになるのである。
さてこのRCAのボックスもの、しかも僕の持っているのは再発盤と思われるのだが、何度も申し上げて恐縮だが、録音データが全く付いていない不届きなセットなのである。なので以下記載する録音日、及びパーソネルは僕がWeb上で調べたデータである。もしかしたら異なることもあるかもしれないがご容赦いただきたい。
バーネットに関する記事にはツッコミどころが満載で困ってしまう。まず斉木氏のレコード解説。
「人気の点では四大バンド(ベニー・グッドマン、グレン・ミラー、トミー・ドーシー、アーティー・ショウ)の後塵を拝していたが、常に5番手をキープしていた」、と言いながら少し後に「41〜45年までメトロノーム誌人気投票で連続1位を獲得した」と書く。人気ナンバー1だったのか、5番手だったのか?。
さらにスイングジャーナル誌発行『ジャズ人名辞典』によれば、
「30年代後半から40年代中頃までは、エリントン、ベイシーを遥かに凌ぐ強力なメンバーを維持した。」とある。下記のパーソネルを見て欲しい。既出のミュージシャンは「ナット・ジャフェ」ただ一人である。このメンバーが、クーティー、ホッジス、カーネイを擁するエリントン、クレイトン、ヤングなどを擁するベイシーの楽団を遥かに凌いでいるだろうか?
これはバーネットの責ではないが、まともな紹介をして欲しい。音源は全て「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ11巻/ザ・サウンズ・オブ・スイングレコード8」(RCA RA-67)なので、各曲では省略する。

「ザ・ザ・サウンズ・オブ・スイング」レコード・ボックス

<Date&Place> … 1939年2月24日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Barnet and his Orchestra)

 
Bandleader , Soprano , Alto , Tenor saxチャーリー・バーネットCharlie Barnet
Trumpetロバート・バーネットRobert Burnetジョニー・メンデルJohnny Mendellチャールズ・八フィーネCharles Huffine
Tromboneビル・ロバートソンBill Robertsonベン・ホールBen Hallドン・ルパースバーグDon Ruppersberg
Alto saxカート・ブルームKurt Bloomジーン・キンゼイGene Kinsey
Tenor saxドン・マクックDon McCookジェイムズ・ルメアJames Lemare
Pianoナット・ジャフェNat Jaffe
Guitarバス・エトリBus Etri
Bassフィル・スティーヴンスPhil Stevens
Drumsウェズリー・ディーンWesley Dean
Record8 A-1.「ザ・ギャル・フロム・ジョーズ」(The gal from Joe's)
ミディアム・テンポの曲でどことなくエリントン・ムードを漂わせている。演奏の軸はサックス・アンサンブルで、バーネットのアルト・ソロとピアノ・ソロのバックを付けるミュート・ブラスが素晴らしい。解説氏はピアノをビル・ミラーとしているが、僕の検索した限りこの時点ではナット・ジャフェである。編曲はエヴァン・ヤング。

チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ 1939年

<Date&Place> … 1939年4月5日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Barnet and his Orchestra)

Trumpet … チャーリー・シェイヴァース(Charlie Shavers) ⇒ In
Piano … ナット・ジャフェ ⇒ ビル・ミラー(Bill Miller)
他は2月24日と同じ。右は1939年当時のチャーリー・バーネット楽団。

Record8 A-2.「エコーズ・オブ・ハーレム」
エリントン・ナンバーで、クーティー・ウィリアムスをフューチャーした曲。クーティーのパートをバーネットがアルトで吹いている。ロバート・バーネットがクーティーばりの見事なグロウル奏法でオブリガードを付けるのが面白い。ミュートのロバートとジョニー・メンデルのオープンTpの絡みも効果的で、ホワイト・エリントンの面目躍如の感がある。これもアレンジはエヴァン・ヤングで実に創意に満ちたアレンジである。

「ザ・ザ・サウンズ・オブ・スイング 8枚目」A面ラベル

<Date&Place> … 1939年7月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Barnet and his Orchestra)

Trumpet … ジョニー・メンデル、チャールズ・八フィーネ ⇒ ジョン・オウエンズ(John Owens)ビリー・メイ(Billy May)
Drums … ウェズリー・ディーン ⇒ レイ・マイケルズ(Ray Michaels)
以外前4月5日と同じ。

Record8 A-3.「チェロキー」
1938年3月に録音したレイ・ノーブル楽団のレコードは全く評判にならなかったが、1年遅れのこちらのレコードは大ヒットした。ビリー・メイの編曲の力でもある。以後バーネット楽団のテーマ曲になった。解説氏によると、ロンピング・サックスとミュート・ブラスによる独自のヴォイシングは、バーネット楽団のお家芸だという。確かにユニークな響きである。

「ザ・ザ・サウンズ・オブ・スイング」解説

<Date&Place> … 1939年9月10日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Barnet and his Orchestra)

Trumpet … ライマン・ヴンク(Lyman Vunk) ⇒ In
Sax … ジェイムズ・ルメア ⇒ スキップ・マーチン(Skip Martin)
以外全7月17日と同じ。

<Contents>

Record8 A-4.ザ・デュークス・アイディアThe Duke’s idea
Record8 A-5.ザ・カウンツ・アイディアThe count’s idea

この2曲は続けて聴くと面白い。対となる作品である。

A-4.「ザ・デュークス・アイディア」
タイトル通りデュークのサウンドを見事に作り題している。ロバート・バーネットがクーティー、チャーリー・バーネットがホッジス役を務める。実に楽しい演奏である。
A-5.「ザ・カウンツ・アイディア」
一転してこちらは、カウント・ベイシー風に挑戦している。アップ・テンポで乗りまくるベイシー楽団を彷彿とさせる。今度はロバートのTpがクレイトン風に、チャーリーのテナーはレスター風に聴こえてしまう。解説氏はクラリネット・ソロはスキップ・マーチンとしている。

全体として実に楽しい演奏揃いである。ディスコグラフィーを見ると、この年かなりの録音を行っているようだが、選りすぐっている感じは伝わってくる。

「ザ・ザ・サウンズ・オブ・スイング」レコード・ボックス

<Date&Place> … 1939年10月9日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … チャーリー・バーネット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Charlie Barnet and his Orchestra)

前回9月10日と同じ。

<Contents>

バーネット楽団は、「デュークのアイディア」と「ベイシーのアイディア」のように対象させることに興味を持っていたのだろうか?そして今度は「悪い考え(The wrong idea)」と「正当な考え(The right idea)」である。
Record8 A-6.ザ・ロング・アイディアThe wrong idea
Record8 A-7.ザ・ライト・アイディアThe right idea
「ザ・ロング・アイディア」
古い小唄"When I take my sugar to tea"のコード進行に基づいたビリー・メイとバーネットの共作という。ホテル・スタイルのスイート・バンドの陳腐な演奏に皮肉と冷やかしを込めた異色作という。オーヴァー・ヴィブラートのサックスでガイ・ロンバード、スチール・ギターを使ってサミー・ケイの物真似をやってのけるところは吹き出してしまう。アレンジ、ヴォーカルはビリー・メイ。メイの時代離れした歌も微笑ましいと解説しているのは、斉木克己氏である。ビリー・メイがかなり詳しくヴォーカルで語ってくれているようだが、この辺りのことは解説が無いと我々には分かり難い。
「ザ・ライト・アイディア」
ビッグ・バンド・ファンならずとも思わず引き込まれる快演。AABCAという変則の形式で、スキップ・マーチンのペンが冴えわたっている。お得意のエリントン・ハーモニーにベイシー・リズムを組み合わせ、バーネット自身のTsソロ、ロバート・バーネットのTpにスポット・ライトが当たる。ミラーの明快なピアノ・タッチも秀逸とは斉木氏。確かに明快にスイングするナンバーである。

最後にデューク・エリントン自身がバーネットのことをどう思っていたかを紹介しておこう。出店はデュークの自伝『A列車で行こう』(晶文社)である。
「バーネットは私にはいつも素晴らしい友人である。その音楽家気質と優れた判断、優れた鑑識力ゆえに、人々は常に彼のために仕事をした。(中略)同時に、彼は彼は私たちの作品を演奏することで私のエゴを支えてくれた。。私たちの作品の編曲は、バーネットのバンドに会うようになされた。しかも、いつ演奏してもぴったりと決まっていた。」
そしてバーネットがデュークたちに示した好意の例を挙げている。エリントンといえどもフォロワーがいるということはうれしかったのだなぁと感じる。

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