「デルタ・ブルースの父」と呼ばれるチャーリー・パットンもこの1929年からレコーディングを開始している。といっても彼がレコーディングを行ったのは1929年、30年、34年の3年だけである。そのうちっもっとも多くの録音を行ったのは1929年で、インディアナ州のリッチモンドとウィスコンシン州のグラフトンのスタジオでParamount recordsに38曲ほど吹込みを行っている。因みに1930年は4曲、1934年にはVocalion recordsへ29曲吹き込みをしているという。
彼はいわゆる「放浪のブルース・マン」ではなく、その人生のほとんどを生地であるミシシッピ州サンフラワー郡で過ごしたといわれており、生粋のデルタ・ブルースを継承しレコーディングを行った貴重な存在と言えるだろう。また彼の名前の表記であるが、普通に”Charlie”と表記される場合と”Charley”と表記される場合とがある。”Charlie”なら”Charles”の愛称というか略称だが、”Charley”でも同じなのだろうか?それとも”Charley”は愛称とか略称ではなく正式名称なのであろうか?とりあえず拙HPではレコードの表記に従い、”Charlie Patton”と表記することとする。
アメリカでは彼の吹込みを網羅したボックスCDなどが出ているようだが、僕はずいぶん以前に購入した”Origin Jazz Library”から出ていた”The immortal”の1集と2集しか持っていない。このレコードは大変ありがたいものだが、収録が年代順ではなく色々散らばっているので、プレイヤーの針の上げ下ろしがかなり面倒ではある。
| record1-B-5. | アイム・ゴーイン・ホーム | I'm goin’home | Paramount 12883-B |
| record2-A-1. | シェイク・イット・アンド・ブレーク・イット・バット(ドント・レット・イット・フォール・ママ) | Shake it and break it but (Don't let it fall Mama) | Paramount 12869-A |
| record2-A-2. | ダウン・ザ・ダート・ロード・ブルース | Down the dirt road blues | Paramount 12854-A |
| record2-A-4. | ア・スプーンフル・ブルース | A spoonful blues | Paramount 12869-B |
| record2-A-7. | イット・ウォント・ビー・ロング | It won't be long | Paramount 12854-B |
| record2-B-3. | ポニー・ブルース | Pony blues | Paramount12792-A |
| record2-B-6. | バンティ・ルースター・ブルース | Banty rooster blues | Paramount 12792-B |
| record2-B-7. | トム・ラシェン・ブルース | Tom Rushen blues | Paramount 12877-B |
パットンの魅力は、決して美声とは言えないしわがれた声で心情を絞り出すように歌い込んでいくところが実に土臭くて素朴なところであろう。ギターは驚くようなテクニカルな技を披露するわけではないが、時にボトルネック奏法を取り入れたり、オープン・チューニングを取り入れたりと工夫が凝らされている。特にオープン・チューニングで低音部を叩きながら高音部でフレーズを作っていくところなどは現代にも通ずるモダンな雰囲気を持っている。
record1-B-5.「アイム・ゴーイン・ホーム」やrecord2-A-1.「シェイク・イット・アンド・ブレーク・イット・バット」などはブルースではなくフォーク・ソングであり、古い時代のミュージシャンはブルース、フォークどちらも歌っていたように思える。
record2-A-2.「ダウン・ザ・ダート・ロード・ブルース」では、ギターを弦を弾くと同時に叩いたり、ギターを叩くだけでリズムを取って歌ったりと色々なプレイ・スタイルをとっていた様子がうかがえる。
record2-A-4.「ア・スプーンフル・ブルース」ではボトル・ネック奏法を使っている。誰かと掛け合いで歌っているように聞こえる箇所があるが相手は誰であろうか。またこの曲は通常形式のブルースではないように思える。
record2-B-3.「ポニー・ブルース」はパットンの代表作の一つであろう。レコード解説には少しヒットした(minor hit)とあるが、1929年のヒット・ソングの5位にランクされているので大ヒットと言っていいのではないかと思う。
record2-B-6.「バンティ・ルースター・ブルース」、record2-B-7.「トム・ラシェン・ブルース」は野太い声を絞り出すように歌っており、いかにもパットンという感じの出来である。
| record1-A-3. | エルダー・グリーン・ブルース | Elder Greene blues | Paramount 12972-A |
| record1-B-4. | サム・オブ・ディーズ・デイズ・アイル・ビー・ゴーン | Some of these days I'll be gone | Paramount 13110-B |
| record2-B-4. | ホエン・ユア・ウェイ・ゲッツ・ダーク | When your way gets dark | Paramount 12998-B |
| record2-B-5. | カム・バック・コリナ | Come back Corrina | Paramount 12912-A |
| record2-B-8. | ハンマー・ブルース | Hammer blues | Paramount 12998-A |
この録音でのヴォーカルの声が前回と若干異なる気がする。また2曲ほどフィドル入りの曲がある。
record1-A-3.「エルダー・グリーン・ブルース」はヘンリー・サン・シムス(Henry ”Son”Smis)のフィドルが伴奏に加わっている。フィドルはダブル・ストップ奏法のためか2本入っているように聴こえる。この曲辺りは非常に古い形式のような気がする。
record1-B-4.「サム・オブ・ディーズ・デイズ・アイル・ビー・ゴーン」この曲はブルースではない。古いフォーク・ソングではないかと思う。
record2-B-4.「ホエン・ユア・ウェイ・ゲッツ・ダーク」これまでの芸風とはかなり変わっている。ギター奏法はかなりワイルドになっているし、声も荒れている。
record2-B-5.「カム・バック・コリナ」この曲もヘンリー・サン・シムス(Henry ”Son”Smis)のフィドルが伴奏に加わっている。曲はブルースではなく、パットンは裏声を使うなど芸風が変わっている。ジミー・ロジャーズの影響でもあろうか?
record2-B-8.ハンマー・ブルースブルースではあるが、少し変わったブルースではある。
| record1A-2. | グリーン・リヴァー・ブルース | Green river blues | Paramount 12972-A |
| record1A-5. | ゴーイング・トゥ・ムーヴ・トゥ・アラバマ | Going to move to Alabama | Paramount 13014-B |
| record1A-6. | アイ・シャル・ナット・ビー・ムーヴド | I shall not be moved | Paramount 12986-B |
| record1B-2. | フランキー・アンド・アルバート | Frankie and Albert | Paramount 13110-A |
| record1B-3. | ランニン・ワイルド・ブルース | Runnin’wild blues | Paramount 12924-B |
| record2A-5. | ハイ・ウォーター・エヴリホエア・パート1 | High water everywhere Part1 | Paramount 12909-A |
| record2A-6. | ハイ・ウォーター・エヴリホエア・パート2 | High water everywhere Part2 | Paramount 12909-B |
record1A-5.「ゴーイング・トゥ・ムーヴ・トゥ・アラバマ」はシムスのフィドル入り。ブルースというよりもリズム・アンド・ブルース、ロックン・ロールに近いような気がする、もちろんその当時まだ存在しないが。
record1A-6.「アイ・シャル・ナット・ビー・ムーヴド」、record1B-3.「ランニン・ワイルド・ブルース」もシムスのフィドル入り。ブルースではないというか古いフォークかニグロ・スピリチュアルスに近い感じがする。
record1A-2.「グリーン・リヴァー・ブルース」とrecord1B-2.「フランキー・アンド・アルバート」はブルースだが、「フランキー〜」はちょっと変わったブルースである。
record2A-5、6.「ハイ・ウォーター・エヴリホエア・パート1、2」はパットンの最高傑作と言われる。”High water everywhere”直訳すれば、「いたるところ高い水」ということで、1927年のミシシッピの大洪水のことを歌っているのだという。この大洪水はミシシッピ地方の大損害をもたらした亡くなった人多く、水没した田畑も多かった。パットンはSP盤の両面にわたり、神様なんで俺たちにこんな仕打ちをするのだと激しい怒りと諦念の情をぶちまけている。