チック・ウエッブ 1938年

Chick Webb 1938

チック・ウェッブとエラ・フィッツジェラルド

この年チック・ウェッブとエラ・フィッツジェラルドにとって大変大きな出来事があった。それは『ア・ティスケット・ア・タスケット』の大ヒットである。1938年年間ヒット・チャート第3位にランクされる大ヒットである。
ジェイムズ・ブラウン「俺がJBだ!」 年間ヒット・チャートだけではない。この曲は子供たち、特に黒人の子供たちにはこの曲は非常に定着したようだ。かの“ゴッドファーザー・オブ・ソウル”の異名を持つジェイムズ・ブラウンが、1940年ジョージア州オーガスタでの小学校時代(当時7歳)に「3年生全員の前で、『ア・ティスケット・ア・タスケット』を歌ったこともある。」と言っているくらいだ。これはレコードが発売されて2年後のことである。
ヒットという言葉に非常に無縁のように思われるチック・ウェッブにとってこの意義は大きいであろう。ベニー・グッドマンがカーネギー・ホールに出演し、「その手はないよ」を大ヒットさせ、後進のカウント・ベイシー楽団やアーティー・ショウ楽団もヒットを飛ばす。そんな中で放ったヒット作、時代にしっかりついて言っているという感じだったであろう。

<Date&Place> … 1938年5月2日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsナット・ストーリーNat Storyジョージ・マシューズGeorge Matthews
Clarinet & Alto saxガルヴィン・ブッシェルGarvin Bushell
Alto saxヒルトン・ジェファーソンHilton Jefferson
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoトミー・フルフォードTommy Fulford
Guitarボビー・ジョンソンBobby Johnson
Bassビヴァリー・ピアBeverly peer
Vocalエラ・フィッツジェラルドElla fitzgerald

前回1937年12月17日録音からの移動。
Trombone … ジョージ・マシューズ(George Matthews) ⇒ In
Alto sax … ルイ・ジョーダン ⇒ ヒルトン・ジェファーソン(Hilton Jefferson)
「MCAジャズの歴史」レコード・ボックス

<Contents> … "Chick Webb with Ella Fitzgerald/Princess of the savoy(MCA-1348)&「MCAジャズの歴史」(VIM-17〜19)

曲名原題レコード個所
アイム・ジャスト・ア・ジターバッグI'm just a jitterbug“Princess of the savoy”A面7曲目
ア・ティスケット・ア・タスケットA-Tisket A-Tasket“MCAジャズの歴史”Record3 B面3曲目.
「アイム・ジャスト・ア・ジッターバッグ」
よくスイングやロックン・ロールなどで男女が組みなって激しく踊られるダンス「ジルバ」をほとんどの方が知っていると思うが、この「ジルバ」の語源が”Jitterbug”。カタカナで書くと「ジターバッグ」となるが、実際の発音は「ジルバ」の方が近いだろう。これもスインギーなポップス・チューンでエラの歌のうまさが際立っている。まさに縦横無尽の歌いっぷりだ。
「ア・ティスケット・ア・タスケット」
エラ自身が童謡にヒントを得てアル・フェルドマンに手伝ってもらって作詞作曲したもので、エラ最大のヒット曲、ということはチックにとってももちろん最大のヒット曲。チックのドラムのビートに乗って、バンドとえらが一体となってスイングしているが、どちらかと言えばやはりポップス・ナンバーであろう。僕はエラを中心としたチックのLPを5枚ほど持っているが、この曲はそのどれにも入っておらず、「MCAジャズの歴史」という3枚組のオムニバスに収録されている。

[Ella swings the band]レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1938年6月9日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

“Princess of the savoy”と“Ella Fitzgerald with Chick Webb’s band”の記載は同じで前回5月2日と同じとしている
但し“Cab - Ella & Chick”では相違点が多い。相違点をまとめると
〇トロンボーンにジョージ・マシューズは加わっておらず、サンディとナットの二人である。
〇クラリネット&Alto saxはガルヴィン・ブッシェルではなく、チャウンシー・ホートン
〇アルト・サックスはヒルトン・ジェファーソンではなく、ルイ・ジョーダン
いつものことながら僕には決め手がないので、レコードによって記載が違うことを報告するに留めよう。

<Contents> … "Chick Webb with Ella Fitzgerald/Princess of the savoy(MCA-1348),"Ella Fitzgerald with Chick Webb’s band"(Ace of Hearts AH-36),"Cab - Ella & Chick"(Bandstand 7125)&"Ella swings the band"(MCA-1327)

タイトル原題レコード1レコード2
エヴェリバディ・ステップEverybody step“Princess of the savoy”B面8曲目“Cab - Ella & Chick”B面5曲目
パック・アップ・ユア・シンズ・アンド・ゴー・トゥ・ザ・デヴィルPack up your sins and go to the devil“Ella swings the band”A面7曲目
エラElla“Ella Fitzgerald with Chick Webb’s band”A面4曲目
「エヴェリバディ・ステップ」&「パック・アップ・ユア・シンズ・アンド・ゴー・トゥ・ザ・デヴィル」
アーヴィング・バーリンの作。いかにもスイング時代らしいダンス・ナンバー。いずれもエラのヴォーカル入り。
「エラ」
ウエッブとエルスワースト云う人の作。まず男性ヴォーカルが入るが、これは不明。裏面英文解説に書てあるのかもしれないが、英語が分からないもので…すいません。それに応えるエラが茶化したように歌う。ユーモア・ソングの一種。

”Bronzeville stomp”レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1938年8月13日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ザ・サタディ・ナイト・スイング・クラブ・ハウスバンド(The Saturday night swing club houseband)

trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Drumsチック・ウェッブChick Webb
Others不明Unknown

<Contents> … "Bronzeville stomp / Chick Webb in the thirties"(Jazz archives JA-33)

A-1.ライザLiza ガーシュイン兄弟の作。最初にアナウンスが入るので多分ラジオ放送の録音ではないかと思われる。Tpのロイ・エルドリッジとチックの他はメンバーは不明である。先ずチックの激しいドラムのイントロで始まる。これだけ激しく叩きまくるチックのドラムは他のレコードでは聴かれない珍しいもの。演奏自体もかなりホットで熱のこもった力演である。エルドリッジは短いがさすがに聴かせるソロを取る。とにかく終始激しいチックのドラムに圧倒される。

”ChickWebb_WithEllaFitzgerald”レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1938年8月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

前回5月2日と同じ

<Contents> … "Chick Webb with Ella Fitzgerald/Princess of the savoy(MCA-1348),"Ella Fitzgerald with Chick Webb’s band"(Ace of Hearts AH-36)&"Ella swings the band"(MCA-1327)

タイトル原題レコード1レコード2
愛さずにはいられないI can't stop loving you“Princess of the savoy”B面1曲目
アイ・レット・ア・ティア・フォール・イン・ザ・リヴァーI let a tear fall in the river“Princess of the savoy”B面2曲目
ワッキー・ダストWacky dust“Ella Fitzgerald with Chick Webb’s band”A面3曲目“Ella swings the band”B面1曲目
「愛さずにはいられない」
典型的なこの時代のポップス・チューン。堂々とした落ち着いたえらのヴォーカルが貫録さえ感じさせる。”ア・ティスケット・ア・タスケット”という大ヒットを生み出したので、自信がみなぎっている感じである。朗々としたTbソロはマシューズ、Tpはボビー・スターク。
「アイ・レット・ア・ティア・フォール・イン・ザ・リヴァー」
こちらも前曲同様エラのしっとりとしたヴォーカルが素晴らしい。ここでのTsソロはテディ・マクレーである。曲調にあったリリカルで感情のこもったよいソロである。
「ワッキー・ダスト」
前2曲に比べればスインギーなナンバー。エラのヴォーカルの前は殆どアンサンブルのみで進行する。ヴォーカルの後Tpソロはタフト・ジョーダン。とにかくこの日はエラのヴォーカルが実に好調である。

”Princess of Savoy”レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1938年10月6日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

以下以外 前回8月17日と同じ。
マリオ・バウザ ⇒ リチャード・”ディック”・ヴァンス(Richard "Dick" Vance)

<Contents> … "Chick Webb with Ella Fitzgerald/Princess of the savoy(MCA-1348)

B-3.F.D.R.ジョーンズF.D.R.Jones
B-4.アイ・ラヴ・イーチ・ムーヴ・ユー・メイクI love each move you make
B-5.イッツ・フォクシーIt's foxy
B-6.アイ・ファウンド・マイ・イエロウ・バスケットI found may yellow basket
「F.D.R.ジョーンズ」
ここでもエラの歌のうまさが光る。バンドのメンバーがバック・コーラスをつけている。
「アイ・ラヴ・イーチ・ムーヴ・ユー・メイク」
ミディアム・テンポのポップス・ナンバー。エラのヴォーカルの後のTpはタフト・ジョーダン。
「イッツ・フォクシー」
この曲もエラのヴォーカルの後のTpソロはタフト・ジョーダンが取っている。
「アイ・ファウンド・マイ・イエロウ・バスケット」
この曲はヒット曲「ア・ティスケット・ア・タスケット」と関係がある曲。「ア・ティスケット・ア・タスケット」でも"A-Tisket A-Tasket 〇〇〇 basket"と歌っていたが、ここでも同様の歌詞が歌われる。エラとバンドのコーラスとの掛け合いが実に楽し気なナンバーである。

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