クロード・ソーンヒル 1938年
Claude Thornhill 1938
<Date & Place> … 1938年5月11日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
意外なのは、ベイブ・ラッシンとクロウド・ソーンヒルの参加である。この二人が白人で後は黒人という白黒混合編成。ラッシンはベニー・グッドマンの楽団に在団中であり、ソーンヒルはすでに自己のオーケストラを率いていたはずである。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)
| Record2 A-6. | 頭から離れない貴方 | You go to my head |
| Record2 A-7. | 月に笑われ | The moon looks down and laughs |
| Record2 A-8. | もし私が貴方なら | If I were you |
| Record2 A-9. | 忘れられるものなら | Forget if you can |
大和氏よれば、このセッション以降に見られる特徴として、歌のバックをアンサンブルで飾るようになってきたことが挙げられるという。確かにこれまでは歌のバックは、Tp或いはTsといった単一楽器によるオブリガードが中心だった。
また取り上げるナンバーもセンチメンタルなものが次第に多くなり、歌うテンポも遅くなる傾向がみられる。これは間もなく訪れる絶頂期のビリーが好んだやりかたで、この辺りから絶頂期に向かおうとしているということであろう。選曲に関しても、レコード会社からの一方的なあてがいではなく、ビリーの意思も反映されるようになったと思われ、従来ともすると伴奏に関しては無頓着であったビリーが、音楽的に自覚を持つようになり、歌をアンサンブルで飾り、引き立たせようと図ったのであろうという。
僕が感じるのは、初期のころはともすれば、インストの部分が多く、終わり近くにヴォーカルが出ていたのが、この頃はイントロの後先ずヴォーカルが出るようになっている。そして間奏としてソロがあり、またヴォーカルに戻るという形式になっていることで、すなわち中心はヴォーカルですよということになって来たということである。
Record2 A-6.「頭から離れない貴方」
この録音は「クロノロジカル・オーダー」というラジオ放送や映画で歌ったものなどを集めた23枚組のボックスの中の1枚”Rare studio cuts”、要はスタジオ録音からの希少録音という付録的な1枚にも収められ?ている。ということは本国アメリカなどでも入手が難しいナンバーなのであろうか?
内容はスロウ・バラードでしみじみと原メロディを活かした歌い方で、大和氏の言うこの時期からの特徴がよく表れている。僕などはこういった歌唱がしみじみとして好きである。ラッシンのソロもレスターに近い感じで情感がにじみ出るようで良い。
Record2 A-7.「月に笑われ」
大橋巨泉氏が大好きなナンバーとして挙げている作品。声の小さな震えにも、失恋の自嘲を込めて素晴らしい演唱を見せると書いている。ここでもラッシンが短いがイイ感じのソロを聴かせる。
Record2 A-8.「もし私が貴方なら」
これは約2週間前の4月29日にテディ・ウィルソンが白人の美人歌手ナン・ウィンを起用して吹き込んでいる。ソーンヒルのアレンジで、ビリーは高音を活かしてキュートに歌っている。
Record2 A-9.「忘れられるものなら」
このような陳腐な歌を歌って、堪らないほどの悲しみを表現できるのがビリーの特徴であるとは巨泉氏。ソーンヒルのソロは、テディのような華麗さはないが端正でなかなかいい感じだ。
<Date & Place> … 1938年6月23日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
この日のメンバーは、約1か月位前の5月11日に行われた録音とギターが加わったことを除けば同じである。但しギタリストも名前は不明で、参加しているのは4曲目「心に鍵をかけて」ではないかという。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)
| Record2 B-1. | 気ままな暮らし | Havin’myself a time |
| Record2 B-2. | もう一人の私が言うの | Says my heart |
| Record2 B-3. | 欲しいのは貴方 | I wish I had you |
| Record2 B-4. | 心に鍵をかけて | I'm gonna lock my heart |
Record2 B-1.「気ままな暮らし」
楽曲解説の巨泉氏は、初期によく歌ったタイプの曲で、作品的には上位にはランクできないが、ずっと落ち着いた歌い方をしていると書いている。僕は初期よりも、こちらの方が好みだ。テナーについて、大和氏も巨泉氏も、ホーキンス派と書いているが「典型的なホーキンス派」というわけではなく、レスターも少し入っているソロだと思う。
Record2 B-2.「もう一人の私が言うの」
ここでも巨泉氏は、ナンセンスなポップ・チューンだが、ビリーはリラックスして軽いタッチで歌っているとし、ベイリーの風格あるソロ、アンダーソンのクレイトンばりのソロ、ウエブスター風のテナー・ソロとサッチモ好みのエンディングなど小品だが好ましくまとまっていると書いている。
Record2 B-3.「欲しいのは貴方」
巨泉氏は、初期のビリーならもっとずっと直接的に表現したであろうと思われるが、ここではグッと抑えた歌い方をしていて、一寸物足りなくもあるとするが、僕はこちらの方が好みだ。コールのドラミングもアンダーソンの抑えたミュート・ソロも好ましい出来だ。
Record2 B-4.「心に鍵をかけて」
巨泉氏はこの日のセッションでは最良のトラックとする。各人のソロも短いが引き締まった出来映えでいい感じだ。
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