コールマン・ホーキンス 1928年

Coleman Hawkins 1928

フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ 1928年

僕が思うに当時ニューヨークでナンバー1のバンドは何といってもフレッチャー・ヘンダーソンのバンドだったはずである。ヘンダーソンはディスコグラフィーによればこの1927年も多数の録音をこなしていたが、1928年はわずか9曲しかレコーディングを行っていない。その数は激減していると言ってもいいであろう。実際ガンサー・シュラー氏も1927年11月から1930年10月までの2年間において、米国で最も有名な楽団とみなされていたにもかかわらずヘンダーソン楽団は12面分の録音をしてに過ぎないとし、その大きな原因はやはりアレンジャー/ドン・レッドマンの退団が大きいという。シュラー氏はレッドマン退団の打撃がそうさせたのかどうかは判然としないが、ヘンダーソン自身が不可解なことに、この時期バンドというものに興味を失ってしまったという。さらに1928年夏に自動車事故にあって元気を失くし、とりわけバンドの実務面に対してはますます無頓着になってしまったという。このことがバンドの音楽的な側面でも規律を低下させたという。

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」CDボックス

<Date & Place> … 1928年3月14日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Fletcher Henderson and his orchestra)

Band leaderフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetジョー・スミスJoe Smithラッセル・スミスRussell Smithボビー・スタークBobby Stark
Tromboneベニー・モートンBenny Mortonジミー・ハリソンJimmy Harrison
Alto sax & Baritone saxドン・パスクォールDon Pasquall
Clarinetバスター・ベイリ―Buster Bailey
Clarinet & Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Banjoチャーリー・ディクソンCharlie Dixon
Tubaジューン・コールJun Cole
Drumsカイザー・マーシャルKaiser Marshall
Arrangement CD2-2ドン・レッドマンDon Redman
Arrangement CD2-3ビル・チャリスBill Challis

<Contents> … "Fletcher Henderson /A Study in frustration" CD-2(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD2-2.キング・ポーター・ストンプKing Porter stomp
CD2-3.Dナチュラル・ブルースD natural blues

前回収録の録音は27年11月4日だったので4か月余り後の録音となる。パーソネルを見るとメンバーで代わったのは、Tpのトミー・ラドニアが抜け、ボビー・スタークが加わったくらいであり、メンバーは安定していたと思われる。シュラー氏も「バンド自体が素晴らしい状態」を未だ継続していたと述べている。同日の録音CD2-3[Dナチュラル・ブルース]ではなぜかTbのベニー・モートンがチャーリー・グリーン(Charlie Green)に替わり、アレンジャーがビル・チャリス(Bill Challis)が担当した。
CD2-2.キング・ポーター・ストンプ
ジェリーロール・モートンが作った曲で、シュラー氏もこの演奏はレッドマンの時代に育まれた志気と弾みの痕跡が残っているという。とてもスインギーなナンバーだと思うが、シュラー氏は、この時の録音でヘンダーソンの取ったテンポはあまりにも遅く演奏をよろつかせていると手厳しい。
Tpのリードするテーマの後まずソロを取るのはホークである。アンサンブルの後Tp、Cl、再びTpがソロを取り、コール・アンド・レスポンス形式のアンサンブルでエンディングに向かう。
CD2-3.Dナチュラル・ブルース
シュラー氏は酷評している。ブルース色は薄く、白人ぽいアレンジで、手の込んだところはチャリスらしいとは思う。アンサンブル中心でソロはなし。

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」2枚目

<Date & Place> … 1928年4月6日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ザ・ディキシー・ストンパーズ(The Dixie Stompers)

Band leaderフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetボビー・スタークBobby Starkレックス・スチュアートRex Stewart
Tromboneチャーリー・グリーンCharlie Green
Alto sax & Baritone saxドン・パスクォールDon Pasquall
Clarinetバスター・ベイリ―Buster Bailey
Clarinet & Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Banjoチャーリー・ディクソンCharlie Dixon
Tubaジューン・コールJun Cole
Drumsカイザー・マーシャルKaiser Marshall

<Contents> … "Fletcher Henderson /A Study in frustration" CD-2(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD2-4.オー・ベイビーOh baby
CD2-5.フィーリング・グッドFeeling good
CD2-6.アイム・フィーリング・デヴィリッシュI’m feeling devilish

「ザ・ディキシー・ストンパーズ」名義の録音で、メンバーには以下のような変動がある。
Tpセクションのラッセル・スミス、ジョー・スミスが抜け、後にエリントン楽団で活躍するレックス・スチュワートが加わり2名になる。
Tbセクションのベニー・モートン、ジミー・ハリソンが抜け、チャーリー・グリーンが加わり1名になる。他は変動がなく3曲ともアレンジャーはドン・レッドマンが務めているとCDでは記載されているが、シュラー氏は一種の名義貸しのようなもので実際にはレッドマンは編曲していないという。
CD2-4.オー・ベイビー&CD2-6.アイム・フィーリング・デヴィリッシュ
音楽上の本当の問題をごまかしてディキシーランド的感覚が含まれるとシュラーは酷評する。確かにCD2-2[キング・ポーター・ストンプ]でスイング手前まで行っていたのに、なぜディキシーに戻るのかという感じもする。但しホーキンスやレックス、ベイリーなどの短いソロ回しは聴き処が多いと思う。チューバのコールはスラップ・タンギング奏法で吹いているがこの方が歯切れがよい感じもする。
CD2-5.フィーリング・グッド
最初にソロを取るテナーはホーキンス、Corはレックス・スチュワートだと思う。ブレイクにおいて短いがそれぞれのソロ回しのようなアレンジがなされており面白いと思う。
CD2-6.アイム・フィーリング・デヴィリッシュ
これもなんとなくディキシーっぽい演奏で、ソロはまずクラリネット、アンサンブルを挟んでホークのテナー、短いが堂々とした吹きっぷりである。続いてTp、これも熱演だが全体的に古臭い感じがする。

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」2枚目

ガンサー・シュラー氏によれば、前録音と次の録音の間に、ヘンダーソンの意欲を削ぐような自動車事故に遭遇する。

<Date & Place> … 1928年11月 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ヘンダーソンズ・ハッピー・シックス・オーケストラ(Henderson's happy six orchestra)

Band readerフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Cornetレックス・スチュワートRex Stewart
Tromboneチャーリー・グリーンCharlie Green
Clarinetバスター・ベイリ―Buster Bailey
Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Bass saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Banjoクラレンス・ホリディClarence Holiday

<Contents> … "Fletcher Henderson /A Study in frustration" CD-2(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD2-7.オールド・ブラック・ジョー・ブルース(Old black Joe blues)

Web版ディスコグラフィーによると、この録音は「ヘンダーソンズ・ハッピー・シックス・オーケストラ」(Henderson's happy six orchestra)というバンド名での吹込みという。パーソネルもCDではTrumpetがレックス・スチュワート(CD)に対し、Web版ではボビー・スタークとなっている。
ミーハー的な興味を書くと、このナンバーと次のセッションでバンジョーを弾いているクラレンス・ホリディこそかのビリー・ホリディの父親である。無難にリズムを刻んでいるという印象であるが。チューバのジューン・コールが抜け、CDのパーソネルでは、コールマン・ホーキンスがバス・サックスを吹いていると記載されているが、シュラー氏はドン・パスクォールが吹いているとしている。ともかくホークのソロはない。

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」解説

<Date & Place> … 1928年12月12日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his orchestra)

Band readerフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetボビー・スタークBobby Starkレックス・スチュワートRex Stewart
Tromboneジミー・ハリソンJimmy Harrison
Clarinetバスター・ベイリ―Buster Bailey
Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Banjoクラレンス・ホリディClarence Holiday
Tubaジューン・コールJune Cole
Drumsカイザー・マーシャルKaiser Marshall

<Contents> … "Fletcher Henderson /A Study in frustration" CD-2(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD2-8.イージー・マネーEasy money
CD2-9.カムオン・ベイビーCome on baby

CD2-8.イージー・マネー
ボビー・スタークの短いが華々しいTpソロとカイザー・マーシャルの知的な創意あふれるシンバル・ワークが聴かれる佳作。実に短いがホークのソロも入る。
CD2-9.カムオン・ベイビー
カイザー・マーシャル以外聴き処はないとシュラー氏は厳しいが、僕はどちらもそれほどつまらない演奏とも思えない。大体Tbにハリソン、Tpにレックス、Clにベイリー他にホーキンス(わずかだが)、カーターという綺羅星のような名前が並んでおり、それぞれのソロを聴くだけで十分とも思える。特にCD2-9[カムオン・ベイビー]はアレンジをベニー・カーターが担当していることが注目される。こちらはヴォーカル(スキャット)とコーラスが入るが、誰が歌っているかの記載は無い。Web版ディスコグラフィーによれば、ベニー・カーターが歌っているのだという。

シュラー氏の言うように、何故かこの時期フレッチャー・ヘンダーソンは停滞しているのである。自滅という感じさえする。このことが一層エリントンの活躍を際立たせていくような気がする。

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