カウント・ベイシー 1941年

Count Basie 1941

カウント・ベイシーの1941年の吹込みを聴いていこう。前年1940年12月レスター・ヤングはベイシー楽団を退団する。この理由について、レスターが13日の金曜日にレコーディングを行うことを断ったからというのが定説になっている。そしてその説のもとになったのは1941年1月1日号の「ダウンビート」誌の記事である。しかし『レスター・ヤング』(音楽之友社)の著者ディヴ・ケリーは、そんなことはありえないという。バンド内にもめ事があったようだが、この件に関してはベイシー、レスターとも口を閉ざし語らないので結局のところその原因等は分からないという。

「チャーリー・クリスチャン/「メモリアル・アルバム」レコード・アルバム

<Date&Place> … 1941年1月15日 ニューヨークにて録音

<Personnenl> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・セクステット(Benny Goodman and his sextet)

Band leader & Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Trumpetクーティー・ウィリアムスCootie Williams
Tenor saxジョージ・オールドGeorge Auld
Electric guitarチャーリー・クリスチャンCharlie Christian
Pianoカウント・ベイシーCount Basie
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones

前回1940年12月19日からの移動
Piano … ケニー・カーシ― ⇒ カウント・ベイシー
Drums … ハリー・ジーガー ⇒ ジョー・ジョーンズ
ピアノのベイシーは自分のバンドのドラマーであるジョー・ジョーンズを連れての客演。僕は音源を持っていないが、ディスコグラフィーによれば前日1月14日オーケストラによる録音を行っており、そこでは ピアノにテディ・ウィルソン、ドラムにデイヴ・タフといった名手が加わっている。この二人は翌日は都合が悪かったのであろうか?

「チャーリー・クリスチャン/「メモリアル・アルバム」レコード3A面ラベル

<Contents> … 「チャーリー・クリスチャン/メモリアル・アルバム」(CBS 56AP 674〜6)

record3 A-4.ブレックファースト・フュードBreakfast feud
record3 A-5.ブレックファースト・フュードBreakfast feud
record3 A-6.ブレックファースト・フュードBreakfast feud
record3 A-7.オン・ジ・アラモOn the Alamo
record3 A-8.いい娘をみつけたI've found a new baby
record3 A-9.いい娘をみつけたI've found a new baby
record3 A-10.ゴーン・ウィズ・ホワット・ドラフトGone with what draft
「チャーリー・クリスチャン/「メモリアル・アルバム」解説

A-4〜6. 「ブレックファースト・フュード」
この曲はA-1と同曲であるが、ちょっと複雑な成り立ちをしている。大和明氏の解説によれば、まず最初に発表されたのはA-4であった。しかしこの演奏は実際の演奏にクリスチャンのソロの部分を継ぎ足したものだという。<イ>=2度目のアンサンブル・リフ 4小節、<ロ>=Gtソロ 20小節とし、曲の構造をまとめると
テーマ・アンサンブル 24小節Aメロ8小節+Bメロ4小節×2回
Tpソロ24小節
Clソロ24小節
Pソロ24小節
アンサンブル・リフ 4小節
Gtソロ20小節
アンサンブル・リフ 4小節
Tsソロ20小節
テーマ・アンサンブル 12小節Aメロ8小節+Bメロ4小節×1回
テーマ・アンサンブル 4小節Bメロ4小節×1回
まず、A-4、5、6は構造は同じだが、長さが違う。A-4が最も長いがそれは下の表の(イ+ロ)ユニットが4回繰り返されるからである。A-5は(イ+ロ)ユニットが1度だけであり、A-6は3回である。そしてA-4でのクリスチャンのソロ4回は、この日に録音された4つのテイクを演奏順に接合したものであるという。
つまりはこういうことだ。この通りに演奏されているのはA-5だけなので、A-5はまともな録音ということになる。
続いて最初発表のA-4であるが、(イ+ロ)というユニットを4回繰り返している。ということはこの日A-5を含めて4回のテイクが録られていて、そのうちの3回については(イ+ロ)ユニットだけ抜き取って他の部分は捨てられたということだ。因みにA-5のクリスチャンのソロは全4回の内の3回目に出てくる。大和氏の言うように「録音順に繋いだ」という言葉が正しければ、A-5の前に2つのテイクが録られていたが、(イ+ロ)ユニットを残して捨てられたことになる。さらにA-4には、4回目があるのでそれが最後のテイクでのソロである。(イ+ロ)ユニット以外の部分はどのテイクを使ったかは不明であるが、多分そう変わらなかったのであろう。
しかし問題はA-6である。A-6は(イ+ロ)ユニットが3回繰り返される。この内2度目と3度目はA-4と同じである。しかし最初のユニットは、1940年12月19日に行われた録音のユニットが使われているのである。この時とはピアノとドラムが異なるのである。違うメンバーで録音したものをつなぐというのはいかがなものであろうか?著作隣接権のうるさくなった現在このようなことをしたら大問題となることは間違いない。それにしてもオウルドのプレイはベン・ウエブスターを彷彿とさせるなぁ、憧れていたのかな?
A-7. 「オン・ジ・アラモ」
アイシャム・ジョーンズの作ったメロウなナンバー。センチメンタルに情緒豊かにテーマを吹くBG、オープンで線の太い堂々たるソロを繰り広げるクーティー、エモーショナルに歌い上げるオールド、リリカルな味を出すクリスチャンというように、それぞれの個性が活きていて実に聴き応えがある。ソロイストに名人クラスを集めるとやはり強力なバンドが出来上がるということを見せつけるような作品だと思う。
A-8、9.「いい娘をみつけた」
メディアム・テンポで全体に洒落たムードの溢れるソロの連続が楽しめる。先ず最初にソロを取るクリスチャンがいいし、続くベイシーもバッキングと絡んだり、BGのクラリネットとの絡みも楽しい。もちろんクーティー、オールドもいい味を出しており、短いがジョーンズの叩きっぷりも時代を先取りしている感じがする。
なお、A-8が従来発表されていたテイクで、A-9は新たに発見されたテイクであるという。僕はどちらと言えばやはりA-8の方がいいと思う。
A-10.「ゴーン・ウィズ・ホワット・ドラフト」
A-3“Gilly”と同じ曲だが、A-3の時に述べたようにもともと“Gone with what draft”というタイトルだったものをBGの希望で彼の後妻の娘ジリーにこの曲を捧げるために改題したということであった。しかしここではまた元に戻している。なぜであろう?ともかく後半の構成はA-3とは全く異なっている。とにかく手の込んだ作品に仕上がっている。複雑さが増した感じだ。

「メトロノーム・オールスターズ」1941年

「メトロノーム・オールスター・バンド」の1941年の録音を取り上げよう。この録音は同バンドの第3回目録音に当たる。第1回目は「ヴィクター」に、2回目は「コロンビア」というように2大メジャー・レコード会社がレコーディングを分け合うことになっていて、第3回目はヴィクターの番だということである。
さてこの年の読者投票も相変わらず白人プレイヤーに票が集まり、ポール・ウィナーに輝いた黒人プレイヤーはチャーリー・クリスチャンだけだったという。同誌の編集部で指導的役割を果たしていたジョージ・サイモンは、第2回(1940年2月7日コロンビアに録音)から、黒人プレイヤーも加える決心をし、上位に進出していたベニー・カーターとチャーリー・クリスチャンを起用した。そしてこの第3回では6人(クーティー・ウィリアムス、J.C.ヒギンバサム、ベニー・カーター、コールマン・ホーキンス、カウント・ベイシー、チャーリー・クリスチャン)を加えたのであった。いずれ劣らぬ名手揃いである。
なお録音された2曲ともベニー・グッドマンが指揮を執り、アレンジも当時BG楽団で使っていたもの、「ビューグル・コール・ラグ」はディーン・キンケイド、「ワン・オクロック・ジャンプ」はカウント・ベイシーのものを使用したという。

<Date&Place> … 1941年1月16日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … メトロノーム・オールスター・バンド(Metronome all-star band)

Trumpetハリー・ジェイムズHarry Jamesジギー・エルマンZiggy Elmanクーティー・ウィリアムスCootie Williams
TromboneJ.C.ヒギンバサムJ.C. Higginbothamトミー・ドーシーTommy Dorsey
Cralinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Alto saxトゥーツ・モンデロToots Mondelloベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxxコールマン・ホーキンスColeman Hawkinsテックス・ベネキーTex Beneke
Pianoカウント・ベイシーCount Basie
Guitarチャーリー・クリスチャンCharlie Christian
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsバディ・リッチBuddy Rich

前年1940年からの移動
Trumpet … チャーリー・スピヴァク ⇒ クーティー・ウィリアムス
Trombone … ジャック・ティーガーデン、ジャック・ジェニー ⇒ J.C.ヒギンバサム、トミー・ドーシー
Tenor sax … エディ・ミラー、チャーリー・バーネット ⇒ コールマン・ホーキンス、テックス・ベネキー
Piano … ジェス・ステイシー ⇒ カウント・ベイシー
Bass … ボブ・ハガート ⇒ アーティー・バーンスタイン
Drums … ジーン・クルーパ ⇒ バディ・リッチ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第17巻/スイングからバップへ」(RCA RA96〜100)

record2. A面4ビューグル・コール・ラグBugle call rag
record2. A面5ワン・オクロック・ジャンプOne O'clock jump
「ビューグル・コール・ラグ」
快調なアップテンポで演奏は展開する。リズムの歯切れの良さ、アンサンブルの厚味、次々と繰り出されるアドリブの競演、まさにオール・スター・セッションの醍醐味である。ソロ・オーダーは、BG⇒ヒギンバサム⇒モンデロ⇒ベイシー⇒ホーク⇒ウィリアムス⇒ジェイムズ⇒エルマン。最後にTp3人を並べるところが面白い。
「ワン・オクロック・ジャンプ」
正にジャム・セッション向きのナンバー。リッチのDsのイントロで始まるが、ここから黒人6名が続けてソロを取る。ベイシー⇒クリスチャン⇒ヒギンバサム⇒ホーキンス⇒ウィリアムス⇒カーターときて、白人のジェイムズ、グッドマンのソロ、そしてアンサンブルで締め括る。ホーキンスがソロをリフしか吹いていないのが気にかかる。何か面白くないことでもあったのだろうか?

カウント・ベイシー自身のバンドのレコーディングは、レスターに替わってドン・バイアスを入れ、ディスコグラフィーによれば1月20日からスタートした模様であるが、僕の持っているのは1月28日の録音からである。

<Date&Place> … 1941年1月28日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his Orchestra)

Band leader & Pianoカウント・ベイシーCount Basie
Trumpetバック・クレイトンBuck Claytonエド・ルイスEd Lewisハリー・エディソンHarry Edisonアル・キリアンAl Killian
Tromboneエド・クッフィーEd Cuffeeダン・マイナーDan Minorディッキー・ウエルズDickie Wells
Alto Saxアール・ウォーレンEarl Warrenタブ・スミスTub Smith
Tenor Saxドン・バイアスDon Byasバディ・テイトBuddy Tate
Baritone & Alto Saxジャック・ワシントンJack Washington
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones
Vocalジミー・ラッシングJimmy Rushing

前回1940年11月19日の録音からのメンバー移動は、
Trombone … ヴィック・ディッケンソン ⇒ エド・クッフィー
Alto sax … タブ・スミス(Tab Smith) ⇒ In
Tenor sax … レスター・ヤング ⇒ ドン・バイアス

<Contents> … 「カウント・ベイシー/1939−1951」(CBS SOPW 77-78)

B面4.「ジャンプ・ザ・ブルース・アウェイ」(Jump the blues away)
アンサンブルの後ミュートTp、ベイシー(P)、ミュートTp、Ts、オープンTp、Tbの短いソロがあり、アンサンブルで終わる。タイトルの割に大人しい感じの演奏である。

<Date&Place> … 1941年4月10日 シカゴにて録音

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his Orchestra)

Tenor sax … コールマン・ホーキンス(Coleman Hawkins)が客演で入った他は1月28日と同じ。

<Contents> … 「カウント・ベイシー/1939−1951」(CBS SOPW 77-78)

B面5.9:20スペシャル9:20 special
B面6.フィーディン・ザ・ビーンFeedin' the bean
B面7.ゴーイン・トゥ・シカゴ・ブルースGoin’to Chicago blues
「9:20スペシャル」
憶えやすいメロディーの曲。何といってもゲストとして参加しているコールマン・ホーキンスに注目が集まるが、ソロはベイシー(P)、As、ミュートTpの短いソロがあり、アンサンブルを挟んで最後にホークも短いソロを取る。
「フィーディン・ザ・ビーン」
ベイシー作ということだが、おそらくヘッド・アレンジによるものだろう。「Bean」とはホーキンスのあだ名。最初に取るのはミュートTpだが、その後たっぷりとホーキンス節を聴かせてくれる。
「ゴーイン・トゥ・シカゴ・ブルース」
しっとりとしたブルース。味わいのあるTpソロ2コーラスの後、ジミー・ラッシングの迫力あるブルース歌唱に移る。バックのアンサンブルに変化をつけている。

<Date&Place> … 1941年9月21、24日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Count Basie and his Orchestra)

前回1941年4月10日の録音からのメンバー移動は、
Trombone … エド・クッフィー ⇒ ロバート・スコット(Robert Scott)イーライ・ロビンソン(Eil Robinson)
Tenor sax … コールマン・ホーキンス ⇒ Out

<Contents> … 「カウント・ベイシー/ブルース・バイ・ベイシー」(CBS 20AP-1426)&「カウント・ベイシー/1939−1951」(CBS SOPW 77-78)

「ブルース・バイ・ベイシー」B面1.テイク・ミー・バック・ベイビーTake me back , baby9月21日
「1939−1951」C面1.フィエスタ・イン・ブルーFiesta in blue9月24日
「テイク・ミーバック・ベイビー」
これも迫力あるジミー・ラッシングのブルース・シンギングが楽しめる1曲で、バンドの演奏も迫力があり、これぞベイシーという感じがする。
「フィエスタ・イン・ブルー」
ミュートTpとアンサンブルの掛け合いで曲が進行し、Tpごオープンで吹き、再びミュートに変わる。Tp奏者をフューチャーした演奏。タイトルにもあるようにこれまでのベイシーとはイメージが異なりエキゾチックな曲調である。

<Date&Place> … 1941年10月1日、11月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his Orchestra)

1941年9月21日の録音と同じ

<Contents> … 「カウント・ベイシー/1939−1951」(CBS SOPW 77-78)

C面2.サムシング・ニューSomething new10月1日
C面3.ハーヴァード・ブルースHarvard blues11月17日
「サムシング・ニュー」
アンサンブルの後オープンTpによるソロ、ベイシーのPソロ、アンサンブルとの掛け合いでエンディングを迎える。
「ハーヴァード・ブルース」
「ハーヴァード」とはあのハーヴァード大学のことである。ベイシー楽団がボストンに公演に行くとよくハーヴァ―ド大学の学生や教授たちなど関係者が聞きに来てくれたので、感謝の意味でこのタイトルを付けたという。

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