さてデューク・エリントンの1929年の録音。この年もレコーディングは数多くCD5の2曲目からCD7の17曲目まで56曲と他のジャズ・メンを圧倒する吹込み数である。
粟村政昭氏はその著『ジャズ・レコード・ブック』で「エリントン・バンドが真の意味でビッグ・バンド・ジャズと呼び得る演奏形態を確立したのは、ババー・マイレイがバンドを去った29年ごろからではないか。”Black and tan ”にせよ”East St. Louis”似せよ、初期のエリントン・バンドの傑作と目される演奏には、リーダー、エリントンの才能もさることながら共作者乃至はソロイストとしてのババー・マイレイの強烈な個性が大きくものを言っていた」と述べている。こう書くとババーが悪いように読めるがそうではなくババーの強烈な個性が失せたことでエリントン自身の才能がより前面に出、エリントン・サウンドが形成されるようになったということであろう。これはかのガンサー・シュラー氏も同様のことを述べている。
ババーはスイング・ジャーナル社発行『ジャズ人名辞典』によれば29年1月、柴田浩一著『デューク・エリントン』によれば3月にエリントン楽団を退団、5月にノーブル・シスル(Noble Sisle)のオーケストラに加わりフランスへ楽旅に出かける。帰国後はキング・オリヴァー、ジェリーロール・モートンなどと共演し、1930年自己名義でレコディングも行ったが、過度のアルコール摂取のため体調を崩し、1932年5月29歳という若さで帰らぬ人となった。エリントン自身もその自伝で「1925〜29年にかけて彼は伝統の基礎を築いた。それ以降は、クーティー・ウィリアムズやレイ・ナンスといったミュージシャンがそれを守った」と述べている。
その言葉通りババーの後任には、デュークがケンタッキー・クラブ時代から親交の深かったドラマーのチック・ウエッブの推薦でクーティー・ウィリアムズが入団する。デュークの伝記によれば、クーティーはフレッチャー・ヘンダーソンのバンドにいたがソロを吹かせてもらえなかった。クーティーがヘンダーソンのバンドには合わないと踏んだウエッブがデュークに紹介したのだった。デュークは自身語っているように実にツイているのである。クーティーがいつから加わったのかは書いていないが、Historyのデータでは1929年2月18日、Ellingtoniaでは1929年3月1日のレコーディングからメンバーに加わっている。
また柴田氏によれば、マイレイよりも早く年明けにオットー・ハードウィックが退団したとしている。ハードウィック、愛称「トビー」はデュークがソニー・グリアとニュー・ヨークに出てきた時に一緒だったワシントン時代からの盟友である。デュークは伝記で「トビーがニュー・ヨークを去ってワシントンに帰ったのは、家族と一緒に生活し、面倒を見なければならなかったからだ」と書いている。トビーは、”The Duke”のCD記載のデータでは、1月中は残っていたように記載しているが、Ellingtoniaでは、1月の録音から加わっていない。”The Duke”の1929年1月の記載は信用できないので、柴田氏とEllingtoniaの記載を採用しよう。
またこの年8月ヴァルヴ・トロンボーン奏者のファン・ティゾールも入団する。デューク自伝によれば、1920年ごろからマリー・ルカス・オーケストラの一員としてワシントンDCに現れ、ハワード・シアター等で演奏したいたのをアーサー・ホウェッツェルが説得して入団させたという。彼が参加したのは、1929年のコットン・クラブからだったと書いている。
今回のパーソネルについては移動が多いので、1月時点のものを先ず記載し、その移動を都度書いていこうと思う。
また音源は全て”The Duke”(History 204141-302)なので、各録音では記載しない。
ところで以前からお気づきだろうが、デュークとその一党は様々なバンド名でレコーディングを行っている。どういう色分けがあるのだろうと思っていたら、『自伝』に次のような記述があった。そのまま書いてみる。
「私たちは異なった名前でほとんどすべてのレーベルに録音した。
ヴィクターではデューク・エリントン
ブランズウィックではザ・ジャングル・バンド
ハーモニーではザ・ワシントニアンズ
パーフェクトではザ・フーピー・メイカーズ
コロンビアではソニー・グリアとそのメンフィス・メン
オーケーではザ・ハーレム・フットウォーマーズ
ほとんどがインストゥルメンタルだったが売れ行きは良かった。」
吹込みレーベルの記載はHistoryは行っておらず、Ellingtoniaにしか記載がないが、大体上記の方針は当てはまるようである。ただ「ザ・シックス・ジョリー・ジェスターズ」というようなバンド名を使用することもあり、どうも分かりにくい。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | |||||||
| Trumpet | … | ババー・マイレイ | Bubber Miley | 、 | 、 | アーサー・ホェッツェル | Arthur Whetsel | 、 | フレディ・ジェンキンス | Freddie Jenkins |
| Trombone | … | ジョー・”トリッキー・サム”・ナントン | Joe “Tricky Sam” Nanton | |||||||
| Clarinet , Soprano , Alto & sax | … | ジョニー・ホッジス | Johnny Hodges | |||||||
| Clarinet , Alto & Baritone sax | … | ハリー・カーネイ | Harry Carney | |||||||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | |||||||
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | |||||||
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | |||||||
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
「ザ・ジャングル・バンド」というバンド名での録音。HistoryのCDのデータには、ヴォーカルにオジー・ウェア(Ozie Ware)とアーヴィング・ミルズ(Irving Mills)が加わるとあるがどう聴いてもヴォーカルは聴こえない。”The Duke”の1929年1月の記載は信用できないとする所以である。
| CD5-2. | ドゥイン・ザ・ヴーム・ヴーム | Doin’the voom voom |
| CD5-3. | タイガー・ラグ・パート1 | Tiger rag part1 |
| CD5-4. | タイガー・ラグ・パート2 | Tiger rag part2 |
演奏はいずれも実に聴き応えのあるものである。後にエリントンの特徴となる柔らかなアンサンブルと個人を活かしたソロという展開がすでに行われている。
CD5-2.「ドゥイン・ザ・ヴーム・ヴーム」は、エリントンとマイレイの共作。ミュートTpをフューチャーしているが、As、Bs等も短いソロを取る。
CD5-3、4.タイガー・ラグ
ニューオリンズ由来の有名曲だが、パート1とパート2ではソロイストが異なる。パート1はClが最初に長いソロを取るが、これはビガードではないかと思う。またパート2でナントンがソロを取るが、ミュートを外したストレート勝負で、これも彼の力量を感じさせる立派なソロである。かなり複雑なアンサンブルのアレンジ行い、力のある奏者にソロを委ねるという形式は、もう完全にニューオリンズ、シカゴ・スタイルを抜け新しい時代のジャズを演奏していると思う。
1月8日の「ザ・ジャングル・バンド」と同じ。CD5-7のチャイムはソニー・グリアがも担当している。
| CD5-5. | フレイミング・ユース | Flaming youth |
| CD5-6. | サタディ・ナイト・ファンクション | Saturday night function |
| CD5-7. | ハイ・ライフ | High life |
| CD5-8. | ドゥイン・ザ・ヴーム・ヴーム | Doin’ the voom voom |
この辺りのエリントン楽団というのはすでに他バンドに比べると一頭地抜けた存在になりつつあったのではないか?しっかりとしたアレンジがあり、ソロも他バンドに比べて長いような気がするが、それはそれだけ力量のあるメンツが揃っていたということであろう。Tpセクションにしても、強烈なグロウル・ミュート、通常のミュート、オープンと異なった音色を組み合わせたアンサンブルと各自のソロ、Clの流れるようなソロ、個性的なAsなど各曲どれが劣るということが無いのである。
なお『デューク・エリントン』の著者柴田浩一氏はCD5-7[ハイ・ライフ]をフレディー・ジェンキンスの代表作として挙げている。しかし先行するクラリネットのソロも見事で、ソフトなアンサンブルも素晴らしい。
Ellingtoniaでは、前回1月16日と同じとするが、HistoryのCDボックスのデータでは、この録音からトランペットのババー・マイレイが抜け、新たにクーティー・ウィリアムスが加わったとする。
| CD5-9. | ジャパニーズ・ドリーム | Japanese dream |
| CD5-10. | ハーレマニア | Harlemania |
日本人の僕には、CD5-9.[ジャパニーズ・ドリーム]などはとても気になるナンバーである。イントロなど銅鑼の音などどちらかというと中国風の味付けが随所に表れる。ポール・ホワイトマン楽団で大ヒットした”The japanese sandman”からの連想もあるであろうか?『デューク・エリントン』の著者柴田浩一氏は、アーサー・ホエッツェルの代表作として挙げている。
CD5-10[ハーレマニア]では、強烈なTpのグロウル・ミュートも聴かれる。これはHistoryによればクーティーで、Ellingtoniaではフレディ・ジェンキンスということになる。しかしTp、カーネイのBs、ホッジスのAsも見事なソロを取っている。
ここからはHistory、Ellingtonia共Tpはクーティー・ウィリアムズが加わり3管体制となる。
| CD5-11. | レント・パーティー・ブルース | Rent party blues |
| CD5-12. | パドゥカー | Paducah |
| CD5-13. | ハーレム・フラット・ブルース | Harlem flat blues |
CD5-11.「レント・パーティー・ブルース」はエリントンとホッジスの共作。始めはAsがアンサンブルをリードするが、その後はTp、Tb等がリードする。いろいろ工夫を凝らしている。CD5-12.「パドゥカー」は、ドン・レッドマンの作らしい。TpとClの絡みやTbの短いソロもあるがアンサンブルが主体の曲。
CD5-13.「ハーレム・フラット・ブルース」は、かなりエグイTpのグロウル・ミュート・プレイが聴かれるが、これはクーティーではないだろうか?
3月1日の「エリントンズ・オーケストラ」と同じ。
| CD5-14. | ザ・ダーティ・グライド | The dirty glide | |||
| CD5-15. | ホット・フィール | Hot feel | or | ホット・フィート | Hot feet |
| CD5-16. | スラッピー・ジョー | Sloppy Joe | |||
| CD5-17. | スティーヴドア・ストンプ | Stevedore stomp |
CD5-15は、CDの記載では[Hot feet]となっているが、Ellingtoniaでは[Hot feel]となっている。どちらが正しいか現状僕には決め手がない。スキャットのヴォーカル入りだが、Ellingtoniaによればクーティー・ウィリアムス。次曲CD5-16もスキャット入り。こちらはソニー・グリアであるという。確かにこの2曲のヴォーカルはそれぞれ毛色が異なっている。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | ||||
| Trumpet | … | クーティー・ウィリアムズ | Cootie Williams | 、 | 、 | アーサー・ホェッツェル | Arthur Whetsel |
| Clarinet , Soprano , Alto & sax | … | ジョニー・ホッジス | Johnny Hodges | ||||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | ||||
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | ||||
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | ||||
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
バンド名は「ザ・ワシントニアンズ」(The Washingtonians)で、HistoryとEllingtoniaでは面子が異なっている。Historyでは、Tpはフレディ・ジェンキンスが抜けホェッツェルとクーティーとしているのに対して、Ellingtoniaではクーティーのみとしている。また、ここでウェルマン・ブラウドはストリング・ベースではなくチューバを吹いている。
| CD5-18. | サラトガ・スイング | Saratoga swing |
| CD5-19. | フー・セッド”イッツ・タイト・ライク・ザット?“ | Who said “It’s tight like that ?” |
CD5‐18[サラトガ・スイング]は実にゆったりとしたナンバーで、[スイング]というより[ブルース]とした方が合いそうなナンバーだ。また、CD5-19[Who said “It’s tight like that ?”]は、ディスコグラフィー”Ellingtonia”ではタイトルが少し異なり、[Who said it’s “Tight like this ”?]と表記されている。
もしEllingtoniaのように“Tight like this ”が一つの塊であるとすれば、それはルイ・アームストロング1928年の畢生の名作“Tight like this ”のことかと思われるのである。ヴォーカルはクーティーが取っている。しかしここでは、特にルイとのつながりは感じられない。
オジー・ウェアは以前も登場した女性シンガー。Historiaは3月18日と前録音の3日後としているが、Ellingtoniaでは前録音と同一セッションで、上記ザ・ワシントニアンズに歌手のオジー・ウエアが加わったとしている。
| CD5-20. | ヒー・ジャスト・ドント・アピール・トゥ・ミー | He just don’t appeal to me |
オジー・ウエアという歌手の歌伴を務めたもの。オジー・ウエアはいかにもこの時代のブルース・シンガーといった感じで特に可も不可もなし。
3月1日の「エリントンズ・オーケストラ」と同じ。
| CD6-1. | アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン | I must have that man |
| CD6-2. | フリーズ・アンド・メルト | Freeze and melt |
| CD6-3. | ミシシッピ・モーン | Mississippi moan |
4月に入って最初の録音はHistoryでは4月4日、Ellingtoniaによれば4月7日に行われた”Joe Turner and his Memphis men”名義による録音である。バンド名に”Joe Turner”とあるが、”Joe Turner”は加わっていない。ということで先ず問題なのは、”Joe Turner”とは誰かということである。普通に考えれば、ブルース・シンガーの「ジョー・ターナー」(写真右)である。しかしブルース・シンガーのジョー・ターナーは1911年5月生まれでこの時まだ17歳である。ただターナーは14歳でカンサス・シティで歌い始めたというので、ありえなくもない。実はジョー・ターナーはデュークの自伝に登場する。「カンサス・シティに公演に行っていた時毎晩ジョー・ターナーが夜通しブルースを歌うのを聴きに出かけた。ピート・ジョンソンが伴奏を付けていた。全くぞくぞくするような歌いっぷりだった。そんなわけで1941年ロス・アンゼルスで『ジャンプ・フォー・ジョイ』をやる時、彼を呼んで契約した。」この書き方だとデュークはターナーを知っていたが接触はなかったようだ。
それにしても不思議なのは、なぜ「ジョー・ターナー」名義の録音の「ジョー・ターナー」が加わっていないヴァージョンを収録したのかということである。さらに他に「ジョー・ターナー」が加わった録音もあるのか?あるならなぜディスコグラフィーに載せないのかということである。それともここでの「ジョー・ターナー」は、ブルース・シンガーの「ジョー・ターナー」ではないのであろうか?……よく分からない。ともかくこれ以上考えても実態は把握できないと思うので、エリントン・バンドの1929年4月第1回目のレコーディングとして聴いていこう。
CD6-1.「アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン」は、どこかで聴いたことがあるがどうしても思い出せない。ジミー・マクヒューの作で覚えやすいポップス調の曲。デュークはよくマクヒューの曲をレコーディングしているが、それはマクヒューがコットン・クラブの音楽担当で、よく曲を作っていたからであろう。デューク、カーネイのソロが聴ける。ミュートTpの後に続くクラリネットのソロが面白い。いずれにしろビンビンとベースが響いてくる。
CD6-2.「フリーズ・アンド・メルト」この曲もマクヒュー作。リフのようなアンサンブルの後に続く弾むようなベースが見事で、この時代においては革新的なプレイだったのではないか。
CD6-3.「ミシシッピ・モーン」はデュークとミルズの共作。少しテンポを落とした沈鬱な調子の曲で、クラリネットが活躍する。トランペットのミュート・ソロ、ピアノの短い繋ぎがありが入り、今度はオープンのTpが入る。
| CD6-4. | ア・ナイト・アット・ザ・コットン・クラブ・パート1 | A nite at the Cotton club part1[Intro−Cotton club stomp−Misty Mornin’] |
| CD6-5. | ア・ナイト・アット・ザ・コットン・クラブ・パート2 | A nite at the Cotton club part2[Intro−Goin’ to town−Harmonica interlude−Freeze and melt] |
これは大変注目すべき録音だと思う。アーヴィング・ミルズの紹介のコメントが入り演奏が始まる。それはあたかもラジオ放送のように感じる。デュークの自伝によれば、コットン・クラブから毎晩のようにラジオ中継が放送されていたという。そのおかげでデューク達は全国区になったのである。
音がきれいなのでスタジオ録音ではないかと思う反面当時は後で観客の声を被せるなどという技術はなく一発どりだったはずなので、実際の放送録音かもしれない。そう考えてみるとライブ録音というものが今日では普通に行われ、その模様を録音したCDなどが普通に販売されているが、そもそもこの世で初めてライヴ録音が行われたのは一体いつだろう?もしかするとこれが史上初のライヴ録音⇒レコード化かもしれない。
アーヴィング・ミルズの堂に入った紹介でバンドの演奏が始まり、途中でもう一度MCが入りもう一度演奏が始まる。このような展開なので演奏自体は短くなるのだが、聴いていて興味が惹かれるという点ではうまい演出である。
コットン・クラブはニュー・ヨークきっての高級クラブだった。なかなか一般人は行けない。そこではこんな楽しいショウが行われているよ、コットン・クラブよいとこ一度はおいで、酒はうまいし、ネェちゃんはきれいだ、ンパッパー!
4月4日或いは4月8日と同一
| CD6-6. | コットン・クラブ・ストンプ | Cotton club stomp |
| CD6-7. | ミスティー・モーニン | Misty Mornin’ |
| CD6-8. | アラビアン・ラヴァ― | Arabian lover |
| CD6-9. | サラトガ・スイング | Saratoga swing |
CD6-6.「コットン・クラブ・ストンプ」は、ライヴ風CD6-4.で既に一度録音されている。そのスタジオ録音盤ということであろう。
CD6-7.「ミスティー・モーニン」は、前回1928年11月の録音をガンサー・シュラー氏の解説を譜面交じりで紹介した。それから約半年後の再演である。
またシュラー氏は、CD6-8.「アラビアン・ラヴァ―」を、CD5-9.「ジャパニーズ・ドリーム」同様古めかしい異国ものでショウ向けの小曲と述べている。
CD6-9.「サラトガ・スイング」も一度3月に録音している再演もので、ゆったり目のブルース・ナンバー。P、オープンのTp、Asとソロが続く。こういうブルースは応用が利きやすく当時盛んに演奏されたのではないかと思う。
CD6-10と、CD6-11、12は名義はことなるが、実質は4月4日或いは4月8日と同一メンバー。
| CD6-10. | ザット・リズムマン | That rhythm man | Duke Ellington and his Memphis men |
| CD6-11. | ベガーズ・ブルース | Beggars blues | Sonny Greer and his Memphis men |
| CD6-12. | サタディ・ナイト・ファンクション | Saturday night function | Sonny Greer and his Memphis men |
CD6-10はエリントン、CD6-11、12はドラムのソニー・グリア名義の録音。デュークはよく楽団員の名義でレコーディングを行うがこれが最初。ソニー・グリアはワシントン時代からの盟友で共にニュー・ヨークに出てきた人物。ソニーはとにかく音楽仲間などに顔が広く、顔が利く人物だったという。エリントンは仕事を得るうえでもソニーには大分世話になったと述べているので、恩義に報いる意味で最初にしたのであろう。
演奏はこの時代のエリントン楽団らしいもので特にどうということも無いように思える。CD6-11はタイトル通りブラウドのベースの音が強調され、CD6-11はゆったりとしたブルースでナントンがミュートを付けずにオープンでその妙技を披露するところが聴きものか。
HistoryのCD解説では4月4日或いは4月8日つまり前回録音5月28日と同一となっているが、注目は”Ellingtonia”で、この録音からトロンボーンにファン・ティゾール(Juan Tizol)が加入したと記載されている。
| CD6-13. | ブラック・アンド・ブルー | Black and blue |
| CD6-14. | ジャングル・ジャンボリー | Jungle jamboree |
ヴァルヴ・トロンボーンのファン・ティゾール(Juan Tizol)の加入について、『デューク・エリントン自伝』には、「彼が参加したのは1929年のコットン・クラブでだった」と記載があるが、録音にはいつから参加したかは書かれていない。音を聴けば分かるかなとも思ったが、僕の聴き取り耳の悪さは折り紙付きの上に、この2曲の音はヴィクターへの録音なのに、他に比べても非常に悪いのである。もしかするとアンサンブルに加わっているかもしれないがよく分からない。両曲ともデュークのオリジナルではない。ただタイトルからコットン・クラブゆかりの曲のような気がする。
CD6-13.「ブラック・アンド・ブルー」は、ブルーなメロディーで、ミュートTpにClが絡むという展開が中心で、後半倍テンポでPソロが入りアンサンブルによるエンディングとなる。
CD6-14.「ジャングル・ジャンボリー」はアップ・テンポの曲で、スタート部分はBのベースがブンブン唸り、Cl、Tp、Asが32小節ずつソロを取るところが聴き処。そのアンサンブルによるエンディングに移る。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | ||
| trumpet | … | アーサー・ホェッツェル | Arthur Whetsel | ||
| Trombone | … | ジョー・”トリッキー・サム”・ナントン | Joe “Tricky Sam” Nanton | ||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | ||
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | ||
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | ||
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
| CD6-15. | ジャングル・ジャンボリー | Jungle jamboree |
| CD6-16. | スネイク・ヒップ・ダンス | Snake hip dance |
バンド名は「ザ・ハーレム・フットウォーマーズ」であるが、エリントンがこの名前を使ったのは初めてである。しかしこの名前はどこかで見た覚えがある。ということで振り返ってみると1928年で取り上げたシカゴ・ジャズといわれる録音「ハスク・オハーレとフット・ウォーマーズ(Husk O'Hare footwarmers)」であった。”Footwarmer”という言葉には特別な意味があるのであろうか?英和辞典で調べても「足温器」というようなそのままの意味しか載っていないが、何かスラングというほどでもないアメリカ人にはわかる意味合いがあるのであろう。いずれにしろ足元冷え症の僕には、たいへん好感が持てる名称である。
上記はHistory、Ellingtonia共通の記載パーソネルで、いつものメンバーからTpのクーティーとジェンキンス、ホッジス、カーネイも抜けた七重奏団となっている。なぜ七重奏団で「ジャングル・ジャンボリー」を録り直したか不明だが、この場合僕にとって貴重なのは、どちらの記載でもTpはホェッツォルだけになっていることで、他の2人がいるとよく分からない彼の演奏が堪能できる。実に力強い達者な演奏ぶりだと思う。こちらの方が彼の代表作と言っていい演奏ではないかと思う。
柴田浩一著『デューク・エリントン』によれば、この年アーヴィング・ミルズが持ってきた短編音楽映画”Black tan and fantasy”でバンド演奏初出演を行う。映画の撮影がいつ行われたのかは分からないが、Ellintoniaによればザ・ハーレム・フットウォーマーズによるレコーディングの後8月12日に映画用の音源を録音したとある。ということでここに置いておこう。まずこの映画は現在みられるかというと意外に簡単に見られます。右のDVDに収録されているのである。
| 1. | Black and tan | 1929年製作 |
| 2. | Check and double check | 1930年製作 |
| 3. | Symphony in black | 1934年製作 |
| 4. | Paramount pictorial No.889 | 1937年製作 |
| 5. | The hit parade of 1937 | 1937年製作 |
| 6. | Duke Ellington and his Orchestra | 1943年製作 |
僕は、レコード、CDもそれほど持っていないが、映像物はそれに輪をかけて持っていない。それでも何枚かは持っていて、その一つがこのDVDです。1929年の映像が収録されているということと何せお値段が税込みで980円という安さに惹かれて何年か前に購入しました。うたい文句に「ヨーロッパの名門”ストーリーヴィル”が贈るジャズDVD」とあります。
観てみると完全なトーキーの映像です。デュークはしゃべり、バンドの演奏の音も入っています。トータル時間は約50分、結構長いです。
今回は1929年なので、1[Black and tan]のフィルムをご紹介します。まずデューク・エリントンが初めて登場したフィルムで”Black and Tan (1929)”という画面が出ます。楽曲としてのタイトルは”Black and tan fantasy”ですが、映像では”Fantasy”が付けられていません。
オリジナルのタイトル画面は
”Black and Tan with Duke Ellington and his Cotton Club Orchestra”
です。
そして物語が始まりますが、ちょっと不思議なストーリーで19分くらいの長さです。6篇中最長です。
先ず、デュークがアパートらしき部屋で、タバコをふかしながらピアノを弾き、トランぺッター(多分アーサー・ホェッツェルではないかと思う)に吹いてもらっているようなシーンから始まります。そこに黒人のでかい男と小さい男が入ってきてピアノを運び出そうとします。そこに白人の女性が入ってきて、ピアノを運び出そうとした黒人凸凹コンビにウィスキーを飲ませ追っ払います。この辺の展開は英語が分からない僕にはよく分からないのが残念です。そしてこの女性とデュークは”いい関係”らしき雰囲気を出しています。
そして一転デュークのバンドがステージで演奏し、まず黒人5人組がその前で、ユーモラスなダンスを踊ります、ショウの1場面です。続いて先ほど登場したデュークと”いい関係”らしき女性が登場します。彼女は踊り子だったんですね。でもなんか体の具合が悪そうです。ステージの袖でショウ出番の前にステージを見ていますが、眩暈でぐるぐる回っているようです(この辺りは当時としては最新の映像効果だったのかもしれません)。
そしてついに彼女の出番となりますが、彼女は踊り終わると倒れ込んでしまいます。そしてステージ係に運ばれていきます。次の出し物が始まりますが、デュークは演奏を中断して彼女の下に向かいます。
そして場面が変わりベッドで寝ている彼女のそばで再び”Black and Tan”を演奏しますが、こちらは黒人霊歌のようなコーラスも加わります。そして曲のエンディングの有名な「葬送行進曲」のところで彼女がこときれます。ラストの映像は、彼女の目から見たデュークという感じで、デュークの顔がぼやけて行って黒くなり”The end”という画面が出て終わります。
実に暗いストーリーです。
また不思議なもあります。まだ1920年代のことです。この時代、デュークといえども黒人です。その黒人と白人女性が”恋人同士”的な雰囲気を醸し出しているのは相当危険なことではないでしょうか?なぜこんな冒険をしたのでしょうか?それともそんな気遣いは不要なのでしょうか?
そもそもこの映像は誰が企画し、誰を対象に、どんな目的で作られ、どこで映写されたのでしょうか?よく分からないことばかりです。
なお、デューク自身はこの映画について「自伝」では全く触れていません。柴田浩一氏はその著『デューク・エリントン』で、「アーヴィング・ミルズが持ってきた短編音楽映画”Black and tan fantasy”(タイトル間違えているし)でバンド演奏の初出演」としか触れていません。僕は、この作品はかなりの問題作だと思うのですが。
”Cameo”に録音する時には、この「ザ・ワシントニアンズ」というバンド名を使っており、1929年3月以来の録音である。
面子の表記は7月29日と同じ。すなわち”Ellingtonia”には、トロンボーンにファン・ティゾール(Juan Tizol)が加わったことになっている。
3曲とも再演であるが、この吹込みが一番良いのではないかと思う。細かいところまで書き込まれたアレンジとそれを実行する均整の取れたアンサンブル、そこに力量のあるソロイストが揃っているのだから。粟村政昭氏が『ジャズ・レコード・ブック』で「エリントン・バンドが真の意味でビッグ・バンド・ジャズと呼び得る演奏形態を確立したのは29年ごろからではないか」と述べているが、なるほどこういうことかと頷ける演奏である。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | |||||||
| trumpet | … | クーティ・ウィリアムス | Cootie Williams | 、 | アーサー・ホェッツェル | Arthur Whetsel | 、 | フレディ・ジェンキンス | Freddie Jenkins | |
| Trombone | … | ジョー・”トリッキー・サム”・ナントン | Joe “Tricky Sam” Nanton | 、 | ファン・ティゾール | Juan Tizol | ||||
| Clarinet , Soprano , Alto & sax | … | ジョニー・ホッジス | Johnny Hodges | |||||||
| Clarinet , Alto & Baritone sax | … | ハリー・カーネイ | Harry Carney | |||||||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | |||||||
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | |||||||
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | |||||||
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
この録音からHistory、Ellingtoniaともヴァルヴ・トロンボーンにファン・ティゾールを加えているので、ここで改めて全面子を記載しておこう。
| CD6-20. | ジョリー・ウォグ | Jolly wog |
| CD7-1. | ジャズ・コンヴァルジョンズ | Jazz Convulsions |
Historyのデータには、CD6-20.「ジョリー・ウォグ」のデータにはファン・ティゾールが記載されているが、同セッションのCD7-1.「ジャズ・コンヴァルジョンズ」にはティゾールの記載がない。これはちゃんと調べた結果加わっていないことが分かったのであろうか?それとも単なる記載漏れか?雰囲気としては後者であるが、いつもながら僕には決め手がない。
因みにEllingtoniaには両曲ともVトロンボーンにティゾールの記載がある。状況的にティゾールがCD6-20に加わり、CD7-1では抜けるというのは考えにくいので両曲とも加わっているということで進めていくことにしよう。
CD6-20.「ジョリー・ウォグ」はオープンで吹くTpが良いと思うのだが、まだ僕にはこれが誰なのか判定できない。
CD7-1.「ジャズ・コンヴァルジョンズ」は、これまでにないデュークの作風を示しているように思う。ソロはあるがそれはあくまでソロ、独奏ということでアドリブを意味していない。アドリブは唯一クラリネットのソロだけではないかと思う。要はペンが入るのはアンサンブルだけではなく、ソロも入る、ソロはアンサンブルの一部であるという考え方を取っていると思われる。
| CD7-2. | ミシシッピ・ドライ | Mississippi dry |
| CD7-3. | ザ・デューク・ステップス・アウト | The Duke steps out |
| CD7-4. | ハウンテッド・ナイツ | Haunted nights |
| CD7-5. | スワニー・シャッフルズ | Swanee shuffles |
エリントン・バンドにギタリストが客演するのは1928年のロニー・ジョンソン以来である。テディ・バンもブルース・フィーリングの香りの強いギタリストである。
CD7-2.「ミシシッピ・ドライ」では、イントロのアンサンブルからバンのギターが絡む。その後AsのソロやCl、Tpのソロが入るが、途中で倍テンポ風になったりよく分からないアレンジである。アレンジに手を入れ過ぎたような感じがする。
CD7-3.「ザ・デューク・ステップス・アウト」もかなり複雑なアレンジが施されている。何度か現れるホッジスのAsが後年の芸風とは異なっているが、聴き処となっている。エンディングのリトルダントはこの当時非常に珍しいのではないかと思う。
CD7-4.「ハウンテッド・ナイツ」は重苦しいような荘重なアンサンブルで始まる。最初にソロを取るのはゲスト参加のGtのテディ・バン。たどたどしいような引っ張り過ぎのようなプレイぶりだ。ガンサー・シュラー氏はこの作品は、もう一つの「黒と褐色のファンタジー(Black and tan fantasy)」を創り出そうとする試みであるとし、バンのギターだけがマイレイの演奏の単純でありながら表現力に富む味わいを再創造できていると評価が高い。
CD7-5.「スワニー・シャッフルズ」もイントロはバンのGtである。アンサンブルをリードするのもバンである。その後のアンサンブルは色々と工夫を施したもので、かなり難易度が高いと思われるがさすがに少しの弛みもなく吹き切る。ホッジスのAs、ビガードのCl、カーネイの短いソロを披露される。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | |
| Trombone | … | ジョー・”トリッキー・サム”・ナントン | Joe “Tricky Sam” Nanton | |
| Clarinet , Soprano , Alto & sax | … | ジョニー・ホッジス | Johnny Hodges | |
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | |
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | |
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
| CD7-6. | シックス・オア・セヴン・タイムス | Six or seven times | 10月25日録音 |
| CD7-7. | ゴーイン・ナッツ | Goin’ nuts | 10月29日録音 |
| CD7-8. | オクラホマ・ストンプ | Oklahoma stomp | 10月29日録音 |
Ellingtoniaによれば「ザ・シックス・ジョリー・ジェスターズ」という名義で3面分の録音が10月25日と29日に行われている。まずこのバンド名が謎である。ちょっとググっただけでは分からない。
HistoryとEllingtoniaでは録音日は共通するが、メンバー表記がかなり異なる。25日の録音にはGtのテディ・バンが参加しておらず29日には参加しているというのは、History、Ellingtonia共通の記載だが、EllingtoniaではTpをクーティー・ウィリアムス一人としているのに対して、Historyではフレディ・ジェンキンス一人としている点が異なり、またHistoryでは29日のベースをブルース・ジョンソンとしている点など大きく異なる。なお、29日にKazooで加わっているのはEllingtoniaではハワード・ブリンキー・ランドルフ(Howard “Blinky” Randolph)としているのに対し、Historyではハロルド・ブリンキー・ランドルフ(Harold “Blinky” Randolph)としている。
CD7-6.「シックス・オア・セヴン・タイムス」はファッツ・ウォーラーの作、ノンビリした曲調で掛け合いのヴォーカルが入る。一人はソニー・グリアで、もう一人はTp奏者、つまりEllingtoniaではクーティー。Historyではジェンキンスとしている。人気レヴュー「チョコレート・ダンディーズ」の曲のようで、バンド名の「ザ・シックス・ジョリー・ジェスターズ」はそれに因んだものかもしれない。それにしても曲のタイトルは「6回か7回」というのはどういう意味であろうか。
CD7-7.「ゴーイン・ナッツ」はアップ・テンポの楽しい曲。ソロはTpやサックスではなく、Gt⇒カズー⇒ドラムと続くのは珍しい。グリアのソロはブラシによるもので、なかなか達者なものである。ヴォーカルについて、Historyではカズーのハロルド・ブリンキー・ランドルフとしているのに対してEllingtoniaではフレディー・ジェンキンスが歌っているとしている。またベースについてもHistoryではこのセッション(次曲も)ブルース・ジョンソンとしているが、Ellingtoniaではいつものウェルマン・ブラウドとしている。
CD7-8.「オクラホマ・ストンプ」にもGtソロが入るが、9月の時はたどたどしい感じがしたバンであるが、ここでは素晴らしいソロを取っている。バンドに馴染んできたのだろうか。
| Band leader & Piano | … | デューク・エリントン | Duke Ellington | |||||||
| trumpet | … | クーティ・ウィリアムス | Cootie Williams | 、 | アーサー・ホェッツォル | Arthur Whetsol | 、 | フレディ・ジェンキンス | Freddie Jenkins | |
| Trombone | … | ジョー・”トリッキー・サム”・ナントン | Joe “Tricky Sam” Nanton | 、 | ファン・ティゾール | Juan Tizol | ||||
| Clarinet , Soprano , Alto & sax | … | ジョニー・ホッジス | Johnny Hodges | |||||||
| Clarinet , Alto & Baritone sax | … | ハリー・カーネイ | Harry Carney | |||||||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | |||||||
| Banjo | … | フレッド・ガイ | Fred Guy | |||||||
| String Bass | … | ウェルマン・ブラウド | Wellman Braud | |||||||
| Drums | … | ソニー・グリア | Sonny Greer |
ギターのテディ・バンが抜けこの時期のフル・メンバーになったと思われるので、改めて記載しよう。これがしばらくの基本形となる。
| CD7-9. | ザ・ブレックファースト・ダンス | The breakfast dance |
| CD7-10. | ジャズ・リップス | Jazz lips |
| CD7-11. | マーチ・オブ・ザ・フーディアムス | March of the Hoodiums |
CD-9、10.はエリントン作で、CD-11.はホーギー・カーマイケルの作品。3曲は共に明るく楽しげな雰囲気を持った曲。この日何かいいことでもあったのだろうか、このような曲を演奏したかったのではないかと想像してしまう。
久しぶりに登場の音楽家で評論家のガンサー・シュラー氏は、ヴァルヴ・トロンボーン奏者のファン・ティゾールの第2トロンボーンを加えた時、デュークは自分が扱うことができる別の音色を手にしただけでなく、状況次第で、トランペットやリード楽器と交互に使える高度に半音階的な楽器を所有することになった」とし、「エリントンの、半音階的なトロンボーンの栓の使用の初期の例は、「ジャズ・リップス」(右:譜例16)の最後の7声部編成のアンサンブル奏の箇所で聴くことができる」として例を挙げている。
11月14日の基本形からのピック・アップメンバーによる録音。
Tp奏者1人で、Historyはクーティーに対し、Ellingtoniaはジェンキンスとする。
他に参加していないのは、ファン・ティゾールとジョニー・ホッジスで、これはHistory、Ellingtoniaは一致している。
| CD7-12. | ザ・レイジー・デューク | The Lazy Duke |
| CD7-13. | ブルース・オブ・ザ・ヴァガボンド | Blues of the vagabond |
| CD7-14. | シンコペイテッド・シャッフル | Syncopated shuffle |
3曲ともエリントンの作。
CD7-12.「ザ・レイジー・デューク」はブルースで、少し気怠い雰囲気を持ったリフを用いている。
CD7-13.「ブルース・オブ・ザ・ヴァガボンド」はブルースではないと思うのだが、Aメロはそこはかとなく悲壮感があるメロディーだが、中間部のアンサンブルのBメロは割と明るめの雰囲気である。エンディングはまたAメロに戻る。
CD7-14.「シンコペイテッド・シャッフル」では、リードする楽器とアンサンブルのコール・アンド・レスポンスが聴かれる。
CD7-9〜11.と同じ、レギュラー・メンバーによる。
| CD7-15. | スイート・ママ | Sweet mama |
| CD7-16. | ウォール・ストリート・ウェイル | Wall street wail |
| CD7-17. | シンシナティ・ダディ | Cincinnati daddy |
CD7-15.「スイート・ママ」とCD7-16.「ウォール・ストリート・ウェイル」はデュークとアーヴィング・ミルズの共作で、心なしかポップな雰囲気がある。CD7-17.「シンシナティ・ダディ」は少し遅めのテンポで、唸るウェルマンのベースと転がすようなガイのバンジョーをバックにTp、As、Tb、Clのソロ回しが見事である。
この年10月24日に起こる株の大暴落は世界的な大恐慌を引き起こし、ミュージシャン受難の時代に突入していくと言われるが、この時点ではエリントンの録音状況を見る限りさして深刻な影響を受けているようには見受けられない。この後じわじわと押し寄せてくるのだろうか?
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