前年1927年の12月にレッド・マッケンジ―という有名な歌手の知己を得レコード・デビューすることになったエディ・コンドンとその一党。そこにはティッシュメーカー、メズロウやクルーパなど素晴らしい才能が揃っていたためか順調にレコーディングの機会を得られたようだ。
録音順でいうと次に当たるのが、約3か月半後の録音となる「ザ・シカゴ・リズム・キングス」によるものである。このバンド名もニューオリンズの名門No.O.R.K.(ニューオリンズ・リズム・キングス)に因むものであろう。パーソネルも、Tpがジミー・マクパートランドからマグシー・スパニアに、Tsがバド・フリーマンからメズ・メズロウに代わっているくらいで、ほぼ”McKenzie and Condon's Chicagoan”と同じである。なぜかレッド・マッケンジ―も参加しているが。
ともかくこの3曲はルイ・アームストロング1927年の傑作「バーベキュー料理で踊ろう」にも匹敵するような素晴らしい出来を示している。各自のソロも比較的長く聴き応えがある。
| Cornet | … | マグシー・スパニア | Muggsy Spanier |
| Clarinet | … | フランク・テッシュメーカー | Frank Teschemacher |
| Tenor sax | … | メズ・メズロウ | Mezz Mezzrow |
| Piano | … | ジョー・サリヴァン | Joe Sullivan |
| Banjo & Vocal A-5 | … | エディ・コンドン | Eddie Condon |
| Bass | … | ジム・ラニガン | Jim Lanigan |
| Drums | … | ジーン・クルーパ | Gene Krupa |
| Vocal | … | レッド・マッケンジ― | Red McKenzie |
| A面3曲目 | ゼアール・ビー・サム・チェンジィズ・メイド | There'll be some changes made | 4月6日 |
| A面4曲目 | アイヴ・ファウンド・ア・ニュー・ベイビー | I've found a new baby | 4月6日 |
| A面5曲目 | 家へ帰っておくれ | Baby , won't you please come home | 5月2日 |
A-3.ゼアール・ビー・サム・チェンジィズ・メイド
1923年にW・ベントン・オーヴァーストリートという人が作ったスインギーなヒット曲という。シカゴ・リズム・キングスの傑作の一つ。第1コーラスはスパニアがリードするアンサンブル、そしてマッケンジーのヴォーカルが続き、その後のテッシュメーカーのクラリネット・ソロが何といっても素晴らしい。そしてラストも名手スパニアがリードするアンサンブルで締める。
A-4.アイヴ・ファウンド・ア・ニュー・ベイビー
1928年ジャック・パルマーとスペンサー・ウィリアムスの作曲したとされるが、実際はもっと昔からディキシーランド・ジャズ・ナンバーとして演奏されており、これほど広く親しまれた曲も珍しいという。解説では元は歌曲というが、意外にヴォーカルは入っていない。ソロ・ワークはテッシュメーカーのCl、サリヴァンのP、メズロウのTs、スパニアのCorいずれも聴き応え十分である。
| Clarinet & Alto sax | … | フランク・テッシュメーカー | Frank Teschemacher |
| Alto sax | … | ロッド・クレス | Rod Cless |
| Tenor sax | … | メズ・メズロウ | Mezz Mezzrow |
| Piano | … | ジョー・サリヴァン | Joe Sullivan |
| Banjo & Vocal A-5 | … | エディ・コンドン | Eddie Condon |
| Bass | … | ジム・ラニガン | Jim Lanigan |
| Drums | … | ジーン・クルーパ | Gene Krupa |
| Vocal | … | レッド・マッケンジ― | Red McKenzie |
A-6.ジャズ・ミー・ブルース(Jazz me blues)
久しぶりマッケンジーとコンドン名義の録音。Corなしという珍しいセッション。アレンジはテッシュメーカーで自身のソロも素晴らしい。しかし素晴らしいのは一人テッシュメーカーだけではない。ロッド・クレスのAs、メズロウのTs、サリヴァンのPなど聴き処の多い作品である。
| Band leader & Trombone | … | ミフ・モール | Miff Mole |
| Cornet | … | レッド・ニコルス | Red Nichols |
| Clarinet | … | フランク・テッシュメーカー | Frank Teschemacher |
| Piano | … | ジョー・サリヴァン | Joe Sullivan |
| Banjo | … | エディ・コンドン | Eddie Condon |
| Drums | … | ジーン・クルーパ | Gene Krupa |
| A面4曲目 | ワン・ステップ・トゥ・ヘヴン(ウィンディ・シティ・ストンプ) | One step to heaven(Windy city stomp) |
| B面1曲目 | シム・ミイ・シャ・ワープル | Shim-me-Sha-Wabble |
この2曲はミフ・モール(Tb)がリーダーを務めるバンドの演奏で、そもそも日本ではミフ・モールのレコード発売自体が極めて少なく貴重だという。コンドン一党がニュー・ヨークに進出しての録音となったようだ。
A-4.ワン・ステップ・トゥ・ヘヴン
これはシカゴ・スタイルと言いながらニューヨークで録音されたもの。当時のレッド・ニコルスの演奏が聴ける貴重なものだという。イントロからCl、Tp、Tbがみごとなアンサンブルを奏し、テッシュメーカー、ビックス張りのニコルスのソロが快適であるとは解説の石原氏。そしてモールのソロへと続き、アンサンブルとなって終わる。
B-1.シム・ミイ・シャ・ワープル
スペンサー・ウィリアムスが1917年に書いたナンバー。石原氏のレコード解説によると、この作品はミフ・モールの代表作として、たくさんの批評家が最高評価を与えているという。軽快なサリヴァンのピアノのイントロに始まり、シカゴ・スタイルのデリケートな演奏が聴かれる。石原氏は、特に後半のモールのアンサンブルとホット・ソロが素晴らしい作品としているが、ソロがちょっと短すぎないか。も少し聴きたいところだ。しかし白人Tb奏者の興味深いレコードとしてコレクションには欠かせない1作と石原氏は述べている。
| Band leader & Banjo | … | エディ・コンドン | Eddie Condon |
| Clarinet | … | フランク・テッシュメーカー | Frank Teschemacher |
| Piano | … | ジョー・サリヴァン | Joe Sullivan |
| Drums | … | ジーン・クルーパ | Gene Krupa |
| A面3曲目 | オー・ベイビー | Oh Baby |
| B面2曲目 | インディアナ | Indiana |
ニューヨークに進出しての録音で、カルテットによる演奏というのがまず珍しい。こういう小編成のバンドでは個々の音がよく聴こえるので、コンドン氏はよくやる気になったなとも思う。実際に聴いてみると、バンジョかギターのコード・ストロークが聴こえるような聴こえないような微妙な感じだが…。
なお、この録音においてクルーパは初めてドラム・セットをフルに活用するチャンスが与えられたという。ハリキリ過ぎてちょっとうるさいと思うところもあるが、まぁそれが若さというと言うこともできる。
また、この2曲の録音日について、レコード解説の石原氏の記述は混乱している。A-3[オー・ベイビー]の項では28年1月28日とし、B-2[インディアナ]の解説には、この2曲は同日1928年7月28日の録音とある。「1」と「7」を見間違えたか?他のディスコグラフィーにはどちらも7月28日の録音とあるので、両曲とも7月28日の録音とした。
A-3.オー・ベイビー
これもアメリカでは発売されず、オーストラリア、英国のパーロフォンで出され好評を博していたためコレクターの間で話題になっていたという。テッシュメーカーは最初短くクラリネットでソロを取るが出来としてはそれほど感心しない。却って後半のアルト・ソロの方が良いと思う。
B-2.インディアナ
バラード・マクドナルドとジェイムス・F・ハンレイの共作で1917年に書かれたディキシーランドのスタンダード・ナンバー。O.D.J.B.も1917年にコロンビアに吹き込んでいる
クルーパのシンバルによるイントロ、テッシュメーカーがアルトでメロディーを奏し、サリヴァンが軽快でスムースなスイング時代を先取りするようなソロを取る。そしてクラリネットに持ち替えたテッシュメーカーの力のこもった堂々たるソロを経由してエンディングに入る。Clの2コーラス目盛り上げる部分で珍しくコンドンのバンジョーの音が明確に聴こえる。クルーパが思い切りドラムを叩いた記念すべき傑作。
次の録音は10月30日に行われたエディ・コンドンと彼のフット・ウォーマーズによるもので、名手ティーガーデンの若き日の録音として大変貴重だという。
| Band leader & Banjo | … | エディ・コンドン | Eddie Condon |
| Cornet | … | ジミー・マクパートランド | Jimmy McPartland |
| Trombone & Vocal | … | ジャック・ティーガーデン | Jack Teagarden |
| Clarinet | … | メズ・メズロウ | Mezz Mezzrow |
| Piano | … | ジョー・サリヴァン | Joe Sullivan |
| Bass | … | アーティ・ミラー | Artie Miller |
| Drums | … | ジョニー・パウエル | Johnny Powell |
B面3曲目「メイキン・フレンズ」(Makin' friends)
曲はティーガーデンとコンドン、そしてTpのマクパートランドの共作という。サリヴァンのスインギーなプレイに先導され、ティーガーデン、メズロウの短いソロそしてティーガーデンの味のあるヴォーカルが入る。コンドンのバンジョーによるコード・プレイもしっかり聴こえる。解説の石原氏は、ここで聴かれるメズロウのソロとテッシュメーカーのソロを比べるとシカゴ・スタイルのフレーズなり約束された形式が理解できるというが、残念ながら僕はその境地には達していない。