フレチャー・ヘンダーソン 1934年
Fletcher Henderson 1934
ディスコグラフィーによると、この3月のセッションがヘンダーソン楽団の最初にレコーディングセッションであり、コールマン・ホーキンスのヘンダーソン楽団でのラスト・セッションである。この後ホーキンスはヨーロッパに渡り39年まで帰米しなかった。
<Date & Place> … 1934年3月6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Fletcher Henderson and his orchestra)
前回1933年8月からの異動は次の通り。
Trumpet … ボビー・スターク⇒ジョー・トーマス
Trombone … ディッキー・ウエルズ、サンディー・ウィリアムス ⇒ クロウド・ジョーンズ、ケグ・ジョンソン,br.
Clarinet … スター・ベイリー ⇒ In
Drums … ウォルター・ジョンソン ⇒ ヴィック・イングル
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第9巻 ザ・ビッグ・バンド・エラ 第1集」RA-45(B面)、RA-46(A面)
| Record1B面7曲目 | ホーカス・ポーカス | Hocus pocus |
| Record1B面8曲目 | ファントム・ファンタジー | Phantom fantasie |
| Record2A面1曲目 | ハーレム・マドネス | Harlem madness |
| Record2A面2曲目 | タイダル・ウェイヴ | Tidal wave |
Record1 B-7.[ホーカス・ポーカス]
RCAボックス付属の油井正一氏の解説は、アレンジャーがウィル・ハドソンであること、最初に登場するClソロがバスター・ベイリー、続いてホーキンスのTsそしてアレンのTpが続くというソロイストの紹介のみである。しかしこの演奏はこの3人のソロも素晴らしいが、まずアンサンブルが見事である。かなり難しい譜面と思われるが、スムースに奏される。アレンジも少々複雑だと思うが、これは当時人気だった「カサ・ロマ・オーケストラ」の影響を受けたのではないかという気がする。
Record1 B-8.[ファントム・ファンタジー]
RCAボックス付属の解説は、アレンジがラス・モーガンではないかということとソロイストが、Tpがジョー・トーマス、続いてヘンダーソンのP、ホーキンスのTsとこれまたソロイストの紹介のみである。しかしこちらもアレンジが複雑で幻想的な面白い効果を出している。ホーキンスのソロの後、アンサンブルがだんだんと盛り上げていき静謐になって終わるというドラマティックな展開である。
Record2 A-1.[ハーレム・マドネス]
ミディアム・アップの軽快なナンバー。こちらもレコードの解説ではソロイストの羅列のみである。それによると、ホーキンスのTs⇒ヘンダーソンのP⇒バスター・ベイリーCl⇒チャールズ・ホランドのヴォーカル(アレンのミュートTpのオブリガード)⇒ジェファーソンのAsで、アレンジはフレッチャー・ヘンダーソン自身だという。
ヴォーカルのチャールズ・ホーランドは、1909年生まれの黒人歌手でクラシックの歌手を目指していたが、人種の壁でその道が断たれ、ヘンダーソンの楽団で歌っていた。後にヨーロッパに渡ってクラシック歌手として成功し、後にアメリカに凱旋帰国、1981年ついにクラシック歌手としてカーネギー・ホールの舞台に立った。当時黒人はクラシック音楽を演奏することも歌うこともできなかったのである。
Record2 A-2.[タイダル・ウェイヴ]
アップ・テンポの軽快なナンバー。冒頭クラシックのメロディーが奏される。作曲はウィル・ハドソンでアレンジはラス・モーガンではないかという。
ソロはホーキンスのTs⇒ヘンダーソンのP⇒アレンのTp⇒ベイリーのClと続く。エンディングのアンサンブルは何となくクラシックっぽい。
さてこの録音の後ホーキンスはヨーロッパに行ってしまうのだが、これはヘンダーソンにとってかなりの痛手となった。ホーキンスは、バンドを組む以前から10年以上もヘンダーソンらの仲間だったのである。この時も以前のように意気消沈してバンドを解散しそうになったが、何とか保ち堪え当時評判を聞いていたレスター・ヤングをテナーで雇う。ところがこれは双方にとって不幸なこととなってしまう。ホーキンスの大きくてたくましい音に慣れていたバンドのメンバーが、ヤングのクールで軽いテナーのプレイを拒絶したのである。そしてヘンダーソンの細君までも口をはさみレスターにホーキンスのように吹くように執拗に勧めてくる。嫌気がさしたレスターはさっさとカンサス・シティーに戻ってしまうのである。
ディスコグラフィーを見るとヘンダーソンの次の録音は1934年9月11日に行われるが、そこでテナーを吹いているのは、ベン・ウエブスターである。そしてこの後のヘンダーソン楽団についてガンサー・シュラー氏は大変厳しい評を下している。
「1934年7月のデッカのための12面分の録音で、我々はヘンダーソン楽団の末路に立ち会うことになる。」まず、Web版ディスコグラフィーによれば、ヘンダーソン楽団に1934年7月に録音は無く、この次の録音は9月11日である。これは単なる録音日の違いだけでとらえてよいのかそしてどちらの日付が正しいのかは現状僕には判断のしようがないので、いつものようにこのまま続ける。
「これらの録音は、驚異的なまで軽快で、指を鳴らしたくなるようなスイングやウエブスターやレッド・アレンのいくつかのソロがあるから、そしてまたスイング時代の間や直後に育ったすべての人間にとっておそらくは格別な意義があるものなのだから、称賛されてよいのかもしれない。しかしながら、こうした魅力とは別に、バンドのビートが礼儀正しくなってきたことがはっきり聴き取れる。
そして数年経つと多くの白人の楽団がこの方向をさらに推し進めて、これを『ビジネスマンのバウンス』にまで変えてしまうことになるだろう。ほとんど欠陥のないアンサンブルの楽句が単に耳障りの良いものに転化している様子もうかがえる。こうした楽句は抑制が効いているが、感情が希薄で、内容に乏しく、旋律的関心を犠牲にしてまで、スイングに固執する。そうする過程で、ソロイストたちの周囲に、彼らの動きを微妙に封じるような和声の網目を被せて行くのだ。」
要旨が分かりにくいのだが、要はヘンダーソン楽団の1934年の次に行われる7月あるいは9月の録音は、耳当たりは良いが野趣や個性にかけたつまらない白人ジャズの先駆けになったということである。これは、ベニー・グッドマンやグレン・ミラーのことを言っているのだろうか?
<Date & Place> … 1934年9月25日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Fletcher Henderson and his orchestra)
前回1934年3月からの異動は次の通り。
Trumpet … ジョー・トーマス ⇒ アーヴィング・ランドルフ
Tenor sax … コールマン・ホーキンス ⇒ ベン・ウエブスター
Guitar … バーナード・アディソン ⇒ ローレンス・ルーシー
Bass … ジョン・カービー ⇒ エルマー・ジェイムス
Drums … ヴィック・イングル ⇒ ウォルター・ジョンソン
Alto sax … ベニー・カーター ⇒ In
ベニー・カーターに関しては両CDとも記載がないが、Webのディスコグラフィーに記載がある。取りあえず参加しているということでこの先を進めよう。
<Contents> … "A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)&"Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)
| CD3-17、CD1-1. | ワイルド・パーティー | Wild Party |
| CD3-18、CD1-2. | ラグ・カッターズ・スイング | Rug cutter’s swing |
| CD3-19、CD1-3. | ホッター・ザン・エル | Hotter than‘ell |
| CD3-19、CD1-4. | ライザ | Liza(all the clouds‘ll roll away) |
CD3-17、CD1-1.[ワイルド・パーティー]
クラリネットのリードするアンサンブルで始まる。ソロもClからTb、As、Tp、Tsと短いソロを繋ぎアンサンブルのエンディングに向かう。ピアノは弟のホレス。
CD3-18、CD1-2.[ラグ・カッターズ・スイング]
ミュートTpのリードするアンサンブルで始まる。ソロはまずCl続いてTbそしてAs、Ts、TbとTs、オープンTpと目まぐるしい。
CD3-19、CD1-3.[ホッター・ザン・エル]
この曲もアップ・テンポのナンバー。ソロはまずCl、そしてTp、Ts。サックス・セクションとブラス・セクションの交換があり盛り上げて終わる。カーターらしいアレンジである。かなり難しそうなアンサンブルも聴かれる。
CD3-20、CD1-4.[ライザ]
ガーシュイン作のスタンダード・ナンバーで、ピアノは弟のホレスが担当している。これもミディアム・テンポの軽快なナンバーである。ソロはまずAsが取りTb、As、Tp、Pと短いソロが差し込まれ、アンサンブルに戻る。
全体として感じることは、古株のバスター・ベイリーのクラリネット、当時はすでにアルト奏者としてアレンジャーとして名を上げていたベニー・カーター、新加入のベン・ウエブスターに多くのソロの機会が与えられていたようだ。但しソロは短く色々飛び出してくるので落ち着かない。聴き処も多く僕には、シュラー氏が目くじらを立てるほどの演奏とは思わないのだが…。
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