野口久光氏の解説によると、ブライアン・ラスト(Brian Rust)氏の作成したディスコグラフィー”Jazz records”のグレン・ミラーの項には、1935年〜1939年までの24曲が記載されているだけで、決定的な人気を得た1939年以降の作品は1曲も載っていないそうだ。これはどういうことだろうか?グレン・ミラー楽団はダンス・オーケストラとして物凄い人気を誇っていたが、ポピュラー・ソングを扱ったスィートなナンバーが多く、ジャズの名にふさわしいソロも少なく、ミラー自身のトロンボーン・ソロも少ないことがその原因とされているという。つまりムーンライト・セレナーデ以降のグレン・ミラーの音楽はジャズではないという見方だ。現在の多くの若い方にも同様の見方が広がっているようだ。しかし、少なくとも日本の僕より年上の方たち取っては、グレン・ミラーこそがジャズの代名詞としてとらえられている時代があったように思われる。このことは、ジャズとは何か、何をジャズと思うかということに関わってくる大きな問題であるが、このことについては別機会に考えてみたい。
| Drums & Band leader | … | ベン・ポラック | Ben Pollack | |||
| Cornet | … | ハリー・グリーンバーグ | Harry Greenberg | 、 | アル・ハリス | Al Harris |
| Trombone | … | グレン・ミラー | Glenn Miller | |||
| Clarinet | … | ベニー・グッドマン | Benny Goodman | |||
| Alto sax | … | ギル・ロディン | Gil Rodin | |||
| Tenor sax | … | ファド・リビングストン | Fud Livingston | |||
| Piano | … | ウェイン・アレン | Wayne Allen | |||
| Banjo | … | クルツェンクナーベ | John Kurzenknabe | |||
| Bass | … | ハリー・グッドマン | Harry Goodman | |||
| Vocals | … | ホーメイ・ベイリー | Homay Bailey | 、 | ザ・ウィリアムズ・シスターズ | The Williams Sisters |
CD-1.ヒーズ・ザ・ラスト・ワード(He's the last word)
ベニー・グッドマンの初吹込みとして有名なナンバーであるが、初かどうかは不明だがグレン・ミラーにとってももっとも初期の吹込みであることは間違いない。
趣味の音楽で身を立てる決心をしたミラーは、デンヴァーのマックス・フィッシャー楽団に加わり、ロスに巡業した時にベン・ポラックに見いだされてトロンボーン奏者兼アレンジャーとして迎えられた。1926年のことである。そしてどちらが先かも不明だが、後に盟友ともいうべき存在となるベニー・グッドマンも入団してきたのである。
さてこの曲は、「私の青空」など多くのヒット・ソングを生んだウォルター・ドナルドソンの作で、前半古風なアンサンブル・アレンジとウィリアム・シスターズのヴォーカルが時代を感じさせるが、後半一転してBGのクラリネット、ハリー・グリーンバーグと思われるTpがジャズを感じさせるソロを取る。また短いがアルトと終わり近くにトロンボーンのソロもある。特にミラーは一瞬ながらBGとの絡みもあって興味深い。
CDには、ハリー・グッドマンがベースとなっているが、僕にはチューバのように聞こえる。
BGは自伝の中でこのデビュー吹込みの前夜は興奮のあまり眠れなかったと記しているというが、それはミラーも同じで会ったろう。