グレン・ミラー 1929年

Glenn Miller 1929

ベン・ポラック・バンド 1928年

前年1928年はグレン・ミラーにとって激動の年であった。詳しい月日が分からないので順序が分からないが、トロンボーンのジャズ教則本の出版やヘレン・バーガーとの結婚の他に在団していたベン・ポラックのバンドにトロンボーンの天才・プレイヤー、ジャック・ティーガーデンが入団しミラーのソロ・スペースが削られるということもあった。現に1928年ニュー・ヨークのパーク・セントラル・ホテルに出演中のポラック楽団の写真にはミラーは写っておらず、トロンボーンを吹いているのはジャック・ティーガーデンである。さらに10月15日ニュー・ヨークで行われたポラックのバンドの吹込みのパーソネルを見ると、トロンボーンはミラーではなく、ジャック・ティーガーデン一人がクレジットされている。
ところが1929年1月のレコーディング・データを見ると、トロンボーンはミラーであり、ティーガーデンは参加していない。この辺りの事情はどうなっているのであろうか?ミラーは偶々1928年10月の吹込みには参加できなかっただけで、ポラック楽団におけるNo.1トロンボニストの座を明け渡したわけではなかったのかもしれない。

「ベニー・グッドマン秘蔵名演集」CDジャケット

<Date&Place> … 1929年1月22日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ベンズ・バッド・ボーイズ(Ben’s bad boys)

Vocal & Band leaderベン・ポラックBen Pollack
Cornetジミー・マクパートランドJimmy McPartland
Tromboneグレン・ミラーGlenn Miller
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoヴィック・ブリーディスVic Briedis
Banjoディック・モーガンDick Morgan
Bassハリー・グッドマンHarry Goodman
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc

<Contents> … 「ベニー・グッドマン秘蔵名演集」(PDTD-1046)

CD-6.ワン・ワン・ブルースWang-wang blues
CD-7.イエロウ・ドッグ・ブルースYellow dog blues
CD-8.シャツ・テイル・ストンプShirt tail stomp

これはベン・ポラック楽団のピックアップ・メンバーによるコンボ演奏。”Ben's bad boys”という名義だが、1928年6月録音の”Benny Goodman's Boys”とほぼ同じメンバーである。ここにポラックのジャズへの意欲が見えると言われるが、こういうメンバーでの録音名義はBGの方が先である。後にBGもビッグ・バンドを率いた中にコンボ演奏を交えたりするがその原点はここからかもしれない。ということはビッグ・バンドの大きな流れの一つの原点と言えるかも。
CD-6.ワン・ワン・ブルース
ポール・ホワイトマン楽団のトロンボーン奏者で、30年代の初め日本に滞在していたバスター・ジョンソンが作曲し、ポール・ホワイトマン楽団のレコードがヒットした曲という。形式はポップス型でブルースではない。BGがキッチリと1コーラス(32小節)のソロを決める。
CD-7.イエロゥ・ドッグ・ブルース
ブルースの父W.C.ハンディの名作。ここではベースのハリーがベースではなくチューバを、ドラムを御大のポラックではなくレイ・ボデュークが叩いている。ニュー・オリンズ風の演奏で、BGのソロには尊敬するジミー・ヌーンのフレーズが出てくる。続くマクパートランドのソロが良い。どちらかと言えば「コミック・ソング」であろう。
CD-8.シャツ・テイル・ストンプ
1928年6月4日に「ベニー・グッドマンズ・ボーイズ」名義で吹き込んでいるナンバーの再演。ソロはBGのクラリネット(もちろんテッド・ルイス風に吹いているという)、マクパートランドのコルネット、ギター或いはバンジョー・ソロ、クラリネットとコルネットの掛け合いとなる。
CD解説の野口久光氏は、「ディキシー風のノヴェルティな演奏で、作者のベン・グッドマンはBGのペン・ネイムかもしれない。というのはBG自身がリーダーとして吹き込んでいるからである。これもベンズ・バッド・ボーイズと名乗るセプテット演奏で、BGはテッド・ルイス奏法(こういう奏法があるんだなぁ)の影響を見せ、ユーモラスなお遊びが楽しい」と書いている。氏には申し訳ないが意味が分からない。

<Date&Place> … …1929年4月18日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ (Red Nchols and his five pennies)

Trumpet & Band leaderレッド・ニコルスRed Nichols
Trumpetレオ・マッコンヴィルLeo McConvilleマニー・クラインManny Klein
Tromboneジャック・ティーガーデンJack Teagardenグレン・ミラーGlenn Millerビル・トロンBill Trone或いはハーブ・テイラーHerb Taylor 
Clarinet , Alto & Baritone sax ベニー・グッドマンBenny Goodman
Alto sax不明Unknown
Tenor sax ベイブ・ラッシンBabe Russin
Pianoアーサー・シャットArthur Schutt
Guitarカール・クレスCarl Kress
Bassアーティー・ミラーArtie Miller
Drumsジーン・クルーパGene Krupa

Webにはミラーは1930年レッド・ニコルスのバンドのメンバーであったと出ているが、すでに1929年から録音には参加していることになる。
シカゴアンズの一人ジーン・クルーパも1928年の暮れにレッド・マッケンジ―とともにニューヨークに登った。そのまま居続けたのかどうかは不明。ともかくBG、ティーガーデン、ミラー、クルーパを従えた録音は豪華と思うのは現代人の感覚で、当時としてはまだまだ売り出し中の若者だった。

<Contents> … 『レッド・ニコルス物語』(MCA-3012)&“Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)

A-4、B-1.インディアナIndiana
A-5.ダイナDinah

A-4、AH-B-2.インディアナ
解説の大和明氏によると、編曲はグレン・ミラーでスッキリとまとめ上げられており、ファイヴ・ぺニーズの代表曲となったという。ソロはBG⇒ニコルス⇒ティーガーデンと続く豪華リレーである。若さと真剣さに溢れるBGと既に完成の域にあるティーガーデンのソロが対照的であるとする。ともかくBG、ティーガーデンのソロは聴き応えがある。ここにミラー=アレンジャー、ティーガーデン=ソロイストという位置づけが明確化されている。
A-5.ダイナ
何年か前この録音を初めて聴いた時、これはディック・ミネのヒット曲ではなかったか。「ダイナ、私のこいびーと〜」というメロディははっきり覚えている。僕の父親がディック・ミネのファンだったので何度かテレビで聴いたことがあった。
大和氏は、悠揚迫らざるティーガーデンのソロに始まり、ラッシン、BGとソロが続くが、このBGのソロが軽快で躍動感に満ちているという。僕はやはりティーガーデンがすでに貫禄溢れるプレイぶりが素晴らしいと思う。4ビートの頭にビートを置くという珍しいリズムである。

<Date&Place> … …1929年6月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ (Red Nchols and his five pennies)

 
Trumpet & Band leaderレッド・ニコルスRed Nichols
Trumpetレオ・マッコンヴィルLeo McConvilleマニー・クラインMannie Klein
Tromboneジャック・ティーガーデンJack Teagardenグレン・ミラーGlenn Miller不明Unknown
Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Tenor saxバド・フリーマンBud Freeman
Pianoジョー・サリヴァンJoe Sullivan
Banjoトミー・フェラインTommy Feline
Bassアーティー・ミラーArtie Miller
Drumsデイヴ・タフDave Tough

<Contents> … “Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)

AH-B面2曲目.ワシントン広場のバラ(Rose of Washington square)
サウンド的にはディキシーランドとスイングのちょうど中間のような気がする。ディキシー臭くしているのは、チャンチャカチャンチャカと奏でられるバンジョーだと思う。Tb〜Cl〜Ts〜Pと受け継がれるソロは、聴き応え十分で確かに腕達者を集めたセッションであることが分かる。

BGも証言しているように、レッド・ニコルスに呼ばれれば断れなかった。断るということは次のチャンスの芽を摘んでしまうということになってしまうからであろう。そんな事情も反映してこの時代、ニコルスのファイヴ・ぺニーズは当代一流のバンドの座を維持したのであろう。そしてこの1929年の録音を聴くとかなり完成度は高くなっていると感じる。やはり起用したメンバーが”当たり”であったのだろうか。

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