実はシカゴ・ジャズの音源を集めたものはあまり多くない。エディ・コンドンの1927年で取り上げた「シカゴ・スタイル・ジャズ」(Columbia ZL-1091)、『Jazz Odyssey vol.2』(Columbia C3L-32)並びに『ザ・シカゴアンズ』(Decca SDL-10361)などはその貴重な録音集だという。
そのシカゴ・ジャズのトップ・バッターとして最初に収められているのがハスク・オヘア(写真右)のバンドである。そもそもオヘアはミュージシャンではなく、1921年陸軍を退役した後故郷シカゴで音楽界に身を投じ、バンドのマネージャー、指揮者として活躍した。以前彼のバンドの1922年の録音については、「僕の作ったジャズ・ヒストリー 7…原初のジャズ2」で取り上げました。
ハスク・オヘアは、エディ・コンドンに率いられたオースチン・ハイ・スクール・ギャング達とは一線を画す「シカゴ・ジャズの第一世代」の音楽家だと言えるでしょう。彼の活動などが若者たちの共感を呼び、ハイ・スクール・ギャング達に大きく影響を与えたのだと思える。
| Director | … | ハスク・オヘア | Husk O'Hare |
| Cornet | … | モー・ファーガソン | Moe Ferguson |
| Trombone | … | シーザー・ペトリロ | Caesar Petrillo |
| Clarinet & Sax | … | ノーマン・ジャケス | Norman Jaques |
| Clarinet & Sax or Baritone sax | … | モーリー・ヒックス | Maurie Hicks |
| Piano | … | ジョー或いはウォルター・ルドルフ | Joe or Walter Rudolph |
| Banjo | … | ルイ・ブラック | Louis Black |
| Tuba | … | ドク・スレイター | Doc Slater |
| Drums | … | ビル・マーシパン | Bill Marcipan |
まず知った名前が一つもないのに驚かされる。一人も「ジャズ人名辞典」にその名が見当たらず、ジャズを勉強中である僕が言うのもなんだが、多分ジャズ史上でここでだけ登場する名前ではないかと思う。そしてこれだけ知らない人物ばかりの上に、このパーソネルは正確には不明で、レコード収集家ジョン・ステイナーシという人の推定だという踏んだり蹴ったりの録音である。
| A面1曲目 | ミレンバーグ・ジョイス | Milenberg joys |
| A面2曲目 | マイ・ダディ・ロックス・ミー | My daddy rocks me |
レコード解説の飯塚経世氏によると、と言ってもほとんど元の米盤の翻訳だと思われるが、1928年1月シカゴの録音で、まずオーストラリアで発売され後にアメリカに逆輸入されたという珍しいレコードであるという。そしてリーダーであるハスク・オハレという人は、シカゴの白人ジャズ・メンをWHT 放送(ラジオか?)やボールルームなどに出演する際に口利きをしたMCA(Music Corporation of America)の支配人で、当時の若いジャズ・メンたちの激しい意欲がうかがえると日本語にならない解説をしている。
ともかく演奏は立派なもので、まずアンサンブルに工夫がある。Tpがメロディーを吹き、Clがヒョロヒョロと上へ下へと自由に動き回り、Tbが低音部のアクセントをつけるというありきたりのディキシーランド・ジャズではない。こういうことが「シカゴ・スタイル」というものであろうか。いや今となってはそう思うしかあるまい。どちらも歌入りで、、歌っているのはダーク・サヴェイジ(Turk Savage)という人物。この人物は検索しても何も出てこないのでプロフィールは割愛する。
A-1.ミレンバーグ・ジョイス
ニュー・オリンズ・ジャズの名曲で、ジェリー・ロール・モートンとN.O.R.K.のメンバーとの共作。速いテンポの曲でアンサンブルも見事で最初に出るトランペット、続くピアノのソロはこの時代の割には長く聴き応えがある。ヴォーカルの後クラリネットのリードするアンサンブルとなって終わる。
A-2.マイ・ダディ・ロックス・ミー
J・バーニー・バーバーの作ったブルースで、これも歌入り。解説の飯塚氏は、コルネット、バリトン・サックスなどシカゴ・スタイルの原型であるとしている。少しゆったりとしたテンポで、ヴォーカル後のコルネット・ソロ、チューバ・ソロ等聴きどころが多い。
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