ジャック・ティーガーデン 1931年
Jack Teagarden 1931
僕が持っているこの年のティーガーデンの参加した録音は全8曲。まずは1月に録音された自己名義の録音から聴いていこう。
<Date&Place> … 1931年1月 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ジャック・ティーガーデン・アンド・ヒズ・バンド (Jack Teagarden and his band)
<Contents> … “Jack Teagarden/King of the blues trombone”(Epic JSN 6044)
| Record1B面5. | ラヴレス・ラヴ | Loveless love |
タイトルは「愛なき愛」という意味かな?レコード・ボックスのソロ・オーダーにはアンサンブルをリードし、最初にソロを取るのはTpのスターリング・ボーズ、ティーガーデンのヴォーカルにオブリガードを付け、その後のClのソロはマッティ・マトロックとあるが、パーソネルにはマトロックは参加していないことになっている。ロディンかドーシーの誤りであろう。続いてエディー・ミラーのTs、そしてティーガーデンのTbソロで締める。どこかで聞いたことのメロディーで各自短いがなかなか良いソロを聴かせてくれる。
<Date&Place> … 1931年1月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ(Red Nchols and his five pennies)
<Contents> … “Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)
| AH-B面6曲目 | スィート・アンド・ホット | Sweet and hot |
楽曲を提供しヴォーカルも担当しているのは若きハロルド・アーレンである。ハロルド・アーレンは、「虹の彼方に(Over the rainbow)」でつとに有名な作曲家であるが、元はミンストレル・ショウで歌っていた歌手でもあった。前年”Get happy”で注目されるようになる。レッド・ニコルスはファイヴ・ぺニーズで”Get happy”も録音しているので、それも聴いてみたい感じがするが残念ながら収録されていない。
曲はハッピーな曲調である。古き良きアメリカという雰囲気で、アーレンのヴォーカルも堂に行っている。ヴォーカルの前に短いながらBGのソロが入る。ヴォーカル後短いTpソロの後入るTbソロも短いが存在感のあるプレイで、これはジャケットには記載がないがティーガーデンであろう。
<Date&Place> … 1931年2月9日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ザ・チャールストン・チェイサーズ(The Charleston chasers)
<Contents> … “Giants of Jazz/Benny Goodman”(Time-Life)
record1 B-1. | ベイズン・ストリート・ブルース | Baisin street blues |
コロンビアのハウス・バンド「ザ・チャールストン・チェイサーズ」による録音。BGは1929、30年にも同バンドで録音を行っているが、メンバーはかなり異なっている。固定のバンドではなく、何人かのミュージシャンがメンバーとして登録されており、その都度ピックアップされて録音を行ったものであろう。
曲はスペンサー・ウィリアムズが作曲した超有名曲で、冒頭の”Won't you along with me / to the Mississippi〜”という有名なヴァースはこの録音でグレン・ミラーが作り出したもので、この後この曲を取り上げる時は当然のように付け加えられるようになったという。ヴォーカルはジャック・ティーガーデンで実にいい声で味のあるヴォーカルを聴かせてくれる。
ヴォーカルの後BGの1回目のソロが入るが3度、7度をフラットさせたブルーノートを使い時折ダーティー・トーンを混ぜたソロを展開する。その後ティーガーデンのTbソロを挟み再びBGのソロとなるがこちらは原曲に沿った節回しをする。それぞれ聞き応えのあるソロである。BG自身これは全くいいレコードだと自賛しているようだが、確かにスマートでモダーンな出来上がりだと思う。
<Date&Place> … 1931年3月2日 ニューヨークにて録音
<Personnel>… ベン・ポラック・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ben Pollack and his Orchestra)
<Contents> …“Jack Teagarden/King of the blues trombone”(Epic JSN 6044)
| Record1B面6. | スイート・アンド・ホット | Sweet & hot |
この曲はこの年1月16日にレッド・ニコルスとファイヴ・ぺニーズで一度録音しているが、それをベン・ポラックの楽団が取り上げることになったというもの。もしかするとBGかティーガーデン、或いは双方の推薦だったのかもしれない。ファイヴ・ぺニーズでは作者のハロルド・アーレンが歌っていたが、ここではティーガーデンの他Gtのナッピー、大将のポラックも取っているという。さらにソロはBG、ミラー、ティーガーデンの短いソロが入り乱れる形で出てくる。
<Date&Place> … 1931年10月4日 ニューヨークにて録音
<Personnel>… ジャック・ティーガーデン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Jack Teagarden and his Orchestra)
<Contents> …“Jack Teagarden/King of the blues trombone”(Epic JSN 6044)
| Record1B面7. | ザッツ・ホワット・アイ・ライク・アバウト・ユー | That's what I like about you |
| Record1B面8. | ユー・ラスカル・ユー | You rascal you |
| Record2A面1. | チャンセズ・アー | Chances are |
ティーガーデンとファッツ・ウォーラーが共演したのは、2度目1度目は2年前の1929年9月30日の録音であった。その時はウォーラー名義(Fats Waller and his buddies)で、その時もすばらしいえんそうであった。
B-7.[ザッツ・ホワット・アイ・ライク・アバウト・ユー]は、ティーガーデンとウォーラーのヴォーカルの絡みが聴かれる。低音で落ち着いた風のある2枚目ティーガーデンに対してウォーラーは、少し3枚目的な役回りを演じているような気がする。「道化」も彼の大きな売り物だったから仕方がないことかもしれないが。そしてこの曲こそ、ロリーニのバス・サックス、C・ティーガーデンのTp、ラッセルのCl、J・ティーガーデンのTb、ウォーラーのPと短いソロが入り乱れる。3分という制約がなく録音していたらかなり面白い作品になったのではないかと思う。
B-8.[ユー・ラスカル・ユー]は、ルイ・アームストロングがこの年の4月28日、キャブ・キャロウェイが9月23日に録音しているナンバーだが、元々は古いニューオリンズの曲だという。ここでのリード・ヴォーカルは勿論ジャックで、ウォーラーが前曲よりも明確に3枚目的に絡む役を引き受けている。ただしこの作品の注目すべき点は、ルイも、キャブも皆ニューオリンズ風の雰囲気を漂わせた作品であったのに対し、イントロこそディキシー風だが後半特にエンディングなどはスイング時代そのものを彷彿とさせるリフで締めにかかるのである。前2者に比べるとグッとスイングに近づいた感じがする。編曲が見事なのだろう。
A-1.[チャンセズ・アー]は、前2曲同様やはりストライド風のプレイに感じるウォーラーのピアノが効いている。この曲でウォーラーのヴォーカルの出番はなく、ピアノに専念している。
僕が感じるこの31年のティーガーデンの録音の白眉は「ユー・ラスカル・ユー」で、これは聴き応えのある作品だと思う。理由は前述の通り。
<Date&Place> … 1931年10月22日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … エディ・ラングージョー・ヴェヌーティ・アンド・ゼア・オール・スター・オーケストラ(Eddie Lang-Joe Venuti and their all star orchestra)
<Contents> … “Giants of Jazz/Benny Goodman”(Time-Life)
<Contents> … “Giants of Jazz/Benny Goodman”(Time-Life)
| record1 B-3. | ファーウェル・ブルース | Farewell blues |
エディー・ラング(ギター)とジョー・ヴェヌーティ(ヴァイオリン)とその仲間たちオール・スターズによる録音。イギリスの評論家バーネット・ジェイムス(拙HPでも取り上げた『ビリー・ホリディ』の著者)はラングとヴェヌーティをギリシャ神話のカストルとポルックス(仲の良い双子として有名)のような双子みたいだと述べている。
この曲はニュー・オリンズ・リズム・キングスのスタンダード・ナンバーで白人バンドが黒人のバンドと同じようにあるいはそれ以上にスイングすることができることを示した最初のレコードであるとタイム=ライフ解説のジョージ・サイモン氏は記す。確かにデキシーランド・スタイルの曲である。
主旋の後先ずはBGが2コーラスのソロ、1コーラス目は中音・低音域を活かし2コーラス目は一気に高音域に移る。続くヴェヌーティも2コーラスソロを取るが、これも1コーラス目はダブル或いはトリプル・ストップを使い2コーラス目最後は超高音の長いレガートで締めくくる。そしてTbのジャック、Tpのチャーリーのティーガーデン兄弟の1コーラスずつのソロは直球勝負、そして力感あふれるアンサンブルのエンディングに向かう。
クオリティの高いパフォーマンスである。
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