| B-8&record1.B-4 | キャロライナ・シャウト | Carolina shout |
デューク・エリントンはその自伝で、「わたしはこの曲をどんなに練習したことだろう!わたしはこの曲を心に抱きくり返しくり返し弾いた。そのことが私にしっかりした基礎をもたらしたのだ。(中略)『キャロライナ・シャウト』はわたしのパーティで必ず弾く曲となった」と述べている。エリントンが練習したのはピアノ・ロールでジョンソンは1917年に録音したものである。
因みにプリーストリー著『ジャズレコード全歴史』によれば、ジェームズ・P・ジョンソンはピアノ・ロールのレコーディングでは1回100ドル以上受け取っていたが、レコーディングの報酬は1回に付き30ドルだったという。つまりレコードを録音するよりピアノ・ロールの方がかなり割りが良かったのである。
ジョン・F・スウェッドはその著『ジャズ・ヒストリー』(青土社 訳諸岡敏行)で次のように述べる。
「1921年の“キャロライナ・シャウト”は当時の真摯なストライド・ピアニストの例で、技巧を凝らした風格ある作品だが、一方ではシャウト、つまり輪を作って踊るシャッフル・ダンスに基礎をおいている。サウス・キャロライナの人たちが教会の中でも、外でも好んだものだ。曲は16小節のテーマの上に8つの変奏で構成され、いくつかの点でフォーク・シャウトのコール・アンド・レスポンス(応答形式)に近い表現を取る。また、4分の4拍子でありながら、曲の出だしでジョンソンの左手は3−3−2拍子の形でビートを分解して、これらのダンスのとるポリミーター(複合リズム)をそれとなく提示する。」
ジョンソンは、「ストライド・ピアノの父」と呼ばれる。粟村政昭氏は『ジャズ・レコード・ブック』で、J.P.ジョンソンはラグタイム・スタイルに新しい息吹を与え、同時に強力なストライド奏法を完成した人物だという。初期ジャズのピアノにおいて必ずと言っていいほど登場するのが、ピアノの「ストライド奏法」である。では「ストライド奏法」とはどういうものなのだろうか?
「ストライド奏法」の定義について、「ストライド・ピアノの父/ジェイムズ・P・ジョンソン」(MCA-3081)のライナー・ノートで故野口久光氏は次のように述べている。
「『ストライド奏法』の『ストライド』(stride)とは、『またぎ越す』、『大股に歩く』という意味で、左手の低音リズム音形に乗って右手がカウンター・リズムによるメロディックなヴァリエーションを作る形、動きを形容した名称である。ストライド奏法は、ラグタイム・ピアノの技法、スタイルを発展させたスタイルで、ニューヨークのハーレムを中心に盛んになったことから「ハーレム・スタイル」とも呼ばれている。」
「ストライド奏法」の理解とはお粗末もので、「左手でブンチャ、ブンチャ(この最初の「ブン」はコードの根音で低音部、「チャ」は「ブン」より高めのコード構成和音)というような粗っぽいものだが、それでよいのか間違っているのか、違うならどういうものかということが知りたいのである。
ガンサー・シュラー氏はもっとも進歩的なラグタイム・ピアニストの一人だとし、次のようにまとめている。
「ジェイムズ・P・ジョンソンの最大の貢献は、ラグタイムのリズムをよりスイングする、より確実なジャズのビートへと置換したことだった。」とし、さらに後のピアニストにとっての「練習曲」となったこの曲も含めて『旋律的な内容』よりむしろリズムの明治の方に関心があったことを示していると記載している。
実際に聴いてみると、曲の初めに提示される憶えやすいメロディーはどんどん変奏されて行き、また左手のリズムも「ブンチャ、ブンチャ」という単純なパターンではなく、「ポリリズム」と言っても良いような複雑な分節で構成され、それも変奏されて行く。この録音で行われた通りに演奏しようとするならば、実に難度の高い曲だと思う。
ジョンソンは幼いころから彼の母親とイタリア人の教師によって、徹底的にクラシックの演奏技術を仕込まれたという。その卓越した技巧がこういったことを可能にしているのであろう。
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