ジェリー・ロール・モートン 1929年

Jelly Roll Morton 1929

「ジャズ・クラシックス・オブ・ジェリー・ロール・モートン」レコードボックス

<Date & Place> … 1929年7月9、10、12日 ニュージャージー・キャムデンにて録音

<Personnel> … ジェリー・ロール・モートン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Jelly Roll Morton and his orchestra)

Piano & band leaderジェリー・ロール・モートンJelly Roll Morton
Trumpet(2Tp)レッド・ロシター?Red Rossiter?バークレイ・S.“ホースコラー”・ドレイパーBarclay S."Horsecollar" Draperorウォルター・ブリスコーWalter Briscoe
Tromboneチャーリー・アーヴィスCharlie Irvis
Clarinetジョージ・バケーGeorge Baquet
Soprano saxポール・バーンズPaul Barnes
Alto saxジョー・トーマスJoe Thomas
Tenor saxウォルター・トーマスWalter Thomas
Ensamble Pianoロッド・ロドリゲスRod Rodriguez
Guitarバーニー・アレクサンダーBarney Alexander
Tubaハリー・プラサーHarry Prather
Drumsウィリアム・ロウズWilliam Laws

<Contents> … 「RCAジャズ・クラシックス/ジェリー・ロール・モートン」(RCA RA-9〜12)

Record3.B-3.コートハウス・バンプCourthouse bump7月9日録音
Record3.B-4.ニューオリンズ・バンプNewOrleans bump7月10日録音
Record3.B-5.タンク・タウン・バンプTank town bump7月12日録音
ジェリー・ロール・モートン 1929年

ジェリーロール・モートンのボックスに収められた1929年最初の録音は、前回取り上げた1928年12月のセッションから7か月後に行われたものである。ディスコグラフィーを見ると、これらの録音の1日前7月8日に6曲ほどピアノ・ソロによる録音を行っている。そして翌7月9日、7月10日、7月12日にテイク違いを含めると都合4曲ずつ「ジェリー・ロール・モートン・アンド・ヒズ・オーケストラ」名義で録音を行っている。ボックスの解説では、「リード・セクションを多くし、ピアノも2人として計12名編成に拡充している。ピアノを2人にしたのは、おそらく自分のソロ・パート以外では指揮に専念したかったからであろう。このセッションからは全曲収録ではなく、選曲の上抜粋したもの。メンバーに関しては諸説あったが、近年の研究の成果を記載した」と書かれている。
しかし面子を見るとあまり見知った名前が無い。色々調べると伝統のニューオリンズ・ジャズを大切に伝えるタイプのメンバーのようである。なぜこの時期にモートンは、新進気鋭ではなく伝統的なミュージシャンを起用してのレコーディングを行ったのであろうか?
僕はこの答えを知っているわけではない。ボックスの解説も全く触れていない。以下は僕の想像である。曲のタイトルには全て”バンプ(bump)”なる言葉が付いている。これらの録音はモートンの”バンプ(bump)”演奏集なのではないだろうか?
そして”バンプ(bump)”を演奏するには、このメンバーが必要だとモートンは考えたのではないだろうか?では”バンプ(bump)”とは何か?英辞典で調べると、「ドスンとぶつかる」とか「揺れながら進む」という意味が書いてあるが、そういうことではなくて多分何か生粋のニューオリンズ・ジャズには存在する”ノリ”のようなものではないだろうか?
「ジャズ・クラシックス・オブ・ジェリー・ロール・モートン」3枚目ジャケット なお、ガンサー・シュラー氏は、より当世的なバンド編成と楽想に屈服したせいか、この1929年7月の録音は、成果が劣悪であるとし、モートンの録音活動のどん底を示していると厳しい評価を行っている。

B-3.コートハウス・バンプ
モートン自身の作で、収録はテイク2。解説では、モートンのビッグ・バンド化への志向はますます強くなり、指揮に力を入れ始めた最初の演奏であるという。Tp奏者は全く不明であるがかなりの腕達者だという。因みにディスコグラフィーでは、ウォルター・ブリスコー(Walter Briscoe)とボイド・ロッサ―(Boyd Rosser)と記載されている。その後の研究で明らかになったのだろうか?ピアノ・ソロもあるがシュラー氏によれば、ロドリゲスがモートンを模倣して弾いたものという。
B-4.ニューオリンズ・バンプ
これもモートン自身の作で、収録はテイク1。単調な進行だが、適度な変化とバケーのグロウル・プレイ、Tp奏者のミュート・プレイの面白さ、それに強調したリズム・セクションで一応の成果を上げているという。ちょっと変わった演奏ではある。
B-5.タンク・タウン・バンプ
これもモートン自身の作で、収録はテイク2。ボックスの解説に拠れば、モートンが時代に即応した演奏形態に移行していこうという意図を描いていたことがこれらのレコードでよく分かるというが、僕には、モートンは新しいサウンドではなく、敢えて古き良きニュー・オリンズ・スタイルを再現したように聴こえてしまうのだが…。ともかくアンサンブルも整然としたものであり、またTp奏者は相当の腕前だと解説氏は評価している。ピアノ・ソロはモートンを模倣したロドリゲス。

「ジャズ・クラシックス・オブ・ジェリー・ロール・モートン」3枚目B面ラベル

<Date & Place> … 1928年11月13日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ジェリー・ロール・モートンズ・レッド・ホット・ペッパーズ(Jelly Roll Morton's Red Hot Peppers)

Piano & band leaderジェリー・ロール・モートンJelly Roll Morton
Trumpetヘンリー・レッド・アレンHenry Red Allen
TromboneJ.C.ヒギンバサムJ.C.Higginbotham
Clarinetアルバート・ニコラスAlbert Nicholas
Guitarウィル・ジョンソンWill Johnson
Bassポップス・フォスターPops Foster
Drumsポール・バーバリンPaul Barbarin

<Contents> … 「RCAジャズ・クラシックス/ジェリー・ロール・モートン」(RCA RA-9〜12)

Record3.B-6.スイート・ピーターSweet Peter
Record3.B-7.ジャージー・ジョーJersey Joe
Record3.B-8.ミシシッピ・ミルドレッドMississippi Mildred
Record3.B-9.ミント・ジュレップMint julep

このセッションのメンバーは見たことがあると思ったら、またもやルイ・ラッセル楽団からのピック・アップ・メンバーであった。この時代ラッセルの楽団の実力はよほど認められていたんだなぁ。ともかくシュラー氏も7月の録音よりもはるかに良いと書いている。
全曲モートンの作品を演奏しているが、モートン・ミュージックにはなっていないという。それはこれだけ個性の強い演奏者の共演だという。どうしても個人芸の展開になり、アンサンブルもモートンの求める対等の練り上げられたものにするにはフロントの3人(アレン、ボッサム、ニコラス)のサウンドが余りにも強烈すぎるのである。
ここはあくまでもメンバー各自の個性的なプレイを堪能すべき演奏であると解説氏はこの録音をそれほど買っていないようだが、この個性のぶつかり合いこそがジャズの楽しみなのではなかろうか?しかしそういった展開をモートン自身が望んでいたのかどうかは分からないが。
実際に聴いてみれば確かにフロン・ラインが強力なのである。ヘンリー・レッド・アレンは吹き間違いと思しきものもあり、ちょっと軽率と思われるプレイもあるが、推進力は抜群である。ヒギンボッサムもこれを堂々と受けて立つという雰囲気であり、確かにアンサンブルやピアノは霞んでしまっている感じだ。でもジャズのレコードとしてはそれなりに聴き処の多い演奏だと思う。

「ジャズ・クラシックス・オブ・ジェリー・ロール・モートン」4枚目ジャケット表面

<Date & Place> … 1928年12月17日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ジェリー・ロール・モートン・トリオ(Jelly Roll Morton Trio)

Piano & band leaderジェリー・ロール・モートンJelly Roll Morton
Clarinetバーニー・ビガードBarney Bigard
Drumsズッティ・シングルトンZutty Singleton

<Contents> … 「RCAジャズ・クラシックス/ジェリー・ロール・モートン」(RCA RA-9〜12)

Record4.A-1.スマイリン・ザ・ブルース・アウェイSmilin' the blues away
Record4.A-2.タートル・トゥイストTurtle twist
Record4.A-3.マイ・リトル・ディキシー・ホームMy little dixie home
Record4.A-4.ザッツ・ライク・イット・オウト・トゥ・ビーThat’s like it ought to be

この回から4枚組の最後の4枚目のレコードに移る。
当時すでにデューク・エリントン楽団の主要ソロイストになっていた旧知のバーニー・ビガード(赤唐辛子楽団のセカンド・セッションで共演)を迎えて、名手シングルトンと組んだトリオ演奏で実に興味深いが、シュラー氏はこの録音に関しては何のコメントもしていない。
解説氏によると、ビガードのプレイは、後年の流麗なスタイルの片鱗は示すもののあくまでニュー・オリンズ派のプレイに徹している。シングルトンが実に多彩なリズムを送り出す見事な演奏ぶりで、その時その時のClの変化に応じたバッキングに名人芸的なものさえ感じられるという。またモートンも「久方ぶりに」本領を発揮したソロを取っているという。
この「久方ぶり」という言葉には引っかかるものがある。一体いつ以来というのであろう。この録音のどのくらい前から「本領」を発揮していなかったのだろう。とても気になる。
ともかく実に珍しい編成の録音ではある。こういう少人数の編成の演奏はそれぞれの技量が高くないと成り立たない。そして技量では人後に落ちない名人が3人集うことで、聴き応えのある演奏に仕立てているところはさすがである。ただよくこういう録音が可能だったなぁとは思う。というのは10月末に起こった株価の大暴落で世の中は不況へと真直ぐらだった世情の中で、こういう地味な名人芸的なものは受けないと思われるからである。

今回取り上げた3セッションは実に多彩で聴いていて楽しいものだ。ビッグ・バンドあり、大型コンボ(七重奏団)あり、トリオありである。

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