ジョー・キング・オリヴァー 1926年

Joe "King" Oliver 1926

ザ・プランテーション・ジャズ・バンド 1926年

キング・オリヴァーが1924年“Creole jazz band”に終止符を打たざるを得なくなったが、ただ手をこまねいていたわけではないことはない。オリヴァーは次にセントルイスのトランぺッターであるボブ・ショフナーを招き、さらにニューオリンズからバーニー・ビガード、ポール・バーバリンを呼び、シカゴのドク・クックのバンドで活動していたルイ・ラッセルを招き入れ、バンドの再建に取り組み、”The plantation cafe band“(写真左)そしてこの”Dixie syncopators “を立ち上げたという。
1924年の末から25年はこの再建期に当たるのであろう。そして当然このバンドでシカゴのジャズ・クラブなどで腕を磨き、初のレコーディングを26年3月11日に迎えることになる。それはモートンとの吹込みから1年4か月の時間を要した。
時間を要した原因に一つではないかと僕が想像するのは自分以外のトランぺッターをオリヴァーがメンバーとして欲しがるということもあるのではないか?
ガンサー・シュラー氏によればオリヴァーが目指したものは「統率の取れたニューオリンズ・ジャズ」ということだという。そして自分以外でニューオリンズ・スタイルの演奏を行わせ自分は自由に動き回るというスタイルを求めていたという。もしそうだとすれば、第2トランぺッターはアンサンブル主体で、頭をオリヴァーに抑えられあまり面白くない位置づけということができる。ルイはもともと頭を押さえつけられて留まっているような器ではないだろうが、ラドニアもそういったことが原因で他に天地を求めたのであろうか。
ともかく聴いていくことして、何か分かることがあったら追記していくことにしよう。わが師粟村正昭氏は「これ(クレオール・ジャズ・バンド)に続くディキシー・シンコペイターズ時代のものはコーラル(Coral)盤「ジャイアンツ・オブ・ジャズ」(MH-3023)、Ace of hearts盤の2枚(AH-34、91)に完全に収められている。音も比較的良いし、これまた逃せない逸品である」と書いている。僕はCoral盤もAce of hearts盤も持っていない。持っているのはMCAから出たレコード1枚と後に見つけたDeccaから出たCDのみである。MCAのレコードには16曲入っているのに対して、CDには22曲入っている。レコードにはCDに収録されていない3曲が収録されているので、合計25曲である。粟村師の書くレコードはSPではなくLPだと思うので、LP6面分だとほぼ25曲に近いのではないか。

「King Oliver/Brunswick Vol.1」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1926年3月11日〜5月29日 シカゴにて録音

<Personnel> … キング・オリヴァーズ・ディキシー・シンコペイターズ(King Oliver's dixie syncopators)

Cornetジョー・キング・オリヴァーJoe“King”Oliverボブ・ショフナーBob Shoffner
Tromboneキッド・オリーKid Ory
Clarinet & Alto saxアルバート・ニコラスAlbert Nicholasビリー・ペイジBilly Payge
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Banjoバッド・スコットBud Scott
Tubaバート・コブBert Cobb
Drumsポール・バーバリンPaul Barbarin

<Contents> … CD…”King Oliver/Sugar foot stomp”( Decca GRD-616)&レコード…”King Oliver's Dixie Syncopators 1926-1928”(MCA-1309)

CD-1.トゥー・バッドToo bad3月11日
A面1、CD-2.スナッグ・イットSnag it3月11日
A面2、CD-3.ディープ・ヘンダーソンDeep Henderson4月21日
A面3、CD-4.ジャッカス・ブルースJackass blues4月23日
A面4、CD-5.シュガー・フット・ストンプSugar foot stomp5月29日
A面5、CD-6.ワー・ワー・ワーWa-wa-wa5月29日
「King Oliver's Dixie syncopators」レコード・ジャケット

まずこの時期のオリヴァーのレコードは3種類持っている。一番曲数が収録されているのがCDなので、CDを中心に聴くことになるが困ったことに少しずつ3種類で表記が異なるところがある。細かいところなので大勢には影響はないと思うのだが、こういうことが気になる性格なので…。
コルネットのボブ・ショフナーだが、MCA盤とCDは<Bob Shoffner>だがBrunswick盤では<Bob Shaffner>
クラリネットなどのビリー・ペイジだが、MCA盤とCDは<Billy Payge>だがBrunswick盤では<Billy Page>などである。
まず最初の録音は3月11日で2面分行われている。
CD-1.トゥー・バッド
Brunswickの10inch盤とCDに収録されている。最初にソロを取るのはテナー・サックスと思われるが、ということは吹いているのはバーニー・ビガードなのであろう。コールマン・ホーキンスが1923年の吹込みで行っていたようなスラップ・タンギング奏法で吹いているのが興味深い。サウンドはフレッチャー・ヘンダーソン楽団の1924年くらいの録音と似ているような気がする。
コルネットは2本聴こえる(1本はトランペットかもしれない)。1本はミュートでもう1本はオープンで吹いているが、ソロを取るのはミュート方なのでこちらがオリバーなのだろう。なかなかテクニカルのソロである。
A面-1、CD-2.スナッグ・イット
オリヴァー作としては最もよく知られるブルース・ナンバーの一つだそうで、その最初のヴァージョンだという。ソロ・オーダーはオリヴァー、オリィ、ニコラス(Cl)、ピアノをバックにヴォーカルが入り、今一度コルネットのソロが入る。ピアノを弾いているのは、リチャード・M・ジョーンズで、MCA盤ではヴォーカルはオリヴァーとなっているが、CDではリチャード・M・ジョーンズが歌っていると記載している。この辺りはさすがにオリヴァーらしきコルネットがよく聴こえる。いい演奏だと思う。ブレイクでのプレイも面白い。
A面-2、CD-3.ディープ・ヘンダーソン
途中のヴォーカルはルイ・ラッセルとポール・バーバリンだという。オリヴァーのプレイがフューチャーされたナンバーという。オープンがオリヴァーか?
A面-3、CD-4.ジャッカス・ブルース
ジョージア・テイラー(Georgia Taylor)という女性がヴォーカルに加わる。ここでもリーダーのオリヴァーのコルネットが活躍している。
A面-4、CD-5.シュガー・フット・ストンプ
ここでの注目は「シュガー・フット・ストンプ」であろう。

この曲は元々は「ディッパー・マウス・ブルース」で作者はオリヴァーだという。しかしヘンダーソン楽団ではドン・レッドマンが16小節のクラリネット合奏部を追加し「シュガー・フット・ストンプ」と名前を変えたと瀬川氏が述べている。その「シュガー・フット・ストンプ」を作者のオリヴァーが取り上げたのである。しかし構造はまるで違う。
ヘンダーソン楽団では、
イントロの後、テーマの12小節×2コーラスの後、クラリネット合奏16小節、ルイではないらしいコルネット・ソロが1コーラス入り、ルイが3コーラスのソロを吹くが、これが瀬川氏の言うように素晴らしい。そして16小節のクラリネット合奏、そしてテーマの合奏に戻る。
一方、ディキシー・シンコペイターズでは、ドン・レッドマンの16小節は演奏されない。
イントロの後、テーマの12小節×2コーラスの後、クラリネット・ソロ12小節×2コーラス、トロンボーン・ソロ12小節×2コーラス、ミュートによるコルネット・ソロ12小節×3コーラスの後テーマの合奏に移る。
ルイ、オリヴァーどちらのソロでもバックにアンサンブルのブレイクが入る箇所があるが、オリヴァーのバックは捏ねくり過ぎで落ち着かないし、アンサンブルの<切れ>が悪い。レッドマンの16小節を使わないなら「ディッパー・マウス・ブルース」で良いのに…と思ってしまう。
A面-5、CD-6.ワー・ワー・ワー
最初に出るオリヴァーのソロは素晴らしい。さすがである。

レコードには1926年の演奏はここまでの5曲しか収められておらず、後はCDのみの収録であるが、若干メンバーの移動がある。リード・セクションのアルバート・ニコラスとビリー・ペイジが抜け、ポール・スタンプ・エヴァンズとダーネル・ハワードが加わっている。

「King Oliver/Sugar foot stomp」CD・ジャケット

<Date & Place> … 1926年7月23日、9月17日 シカゴにて録音

<Personnel> … キング・オリヴァーズ・ディキシー・シンコペイターズ(King Oliver's dixie syncopators)

Cornetジョー・キング・オリヴァーJoe“King”Oliverボブ・ショフナーBob Shoffner
Tromboneキッド・オリーKid Ory
Soprano & Alto saxポール・“スタンプ”・エヴァンスPaul“Stamp”Evans
Clarinet & Alto saxダーネル・ハワードDarnell Howard
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Banjoバッド・スコットBud Scott
Tubaバート・コブBert Cobb
Drumsポール・バーバリンPaul Barbarin

<Contents> … ”King Oliver/Sugar foot stomp”( Decca GRD-616)

CD-7.タック・アニーTack Annie7月23日
CD-8.サムディ・スィートハートSomeday sweetheart9月17日
CD-9.デッド・マン・ブルースDead man blues9月17日
CD-10.ニュー・ワン・ワン・ブルースNew wang wang blues9月17日
CD-11.スナッグ・イットSnag it9月17日

CD-7.タック・アニー
アルト・サックス、クラリネット、トロンボーンのソロが入り、最後に入るコルネット・ソロがオリヴァーかな?
CD-8.サムディ・スィートハート
オリヴァーの吹込みの中では最も売れたナンバーであるというが、ヒット・チャートにはランクされていない。ゲスト・ソロイストとしてジョニー・ドッズが加わっている。優しいハート・ウォーミングなナンバーである。オリヴァーのミュート・ソロ、チューバのソロの後のアルト・サックスとドッズのクラリネットのソロが素晴らしい。
CD-9.デッド・マン・ブルース
「死んだ男のブルース」という不吉なタイトルのこの曲は、そのタイトル通り不吉なイントロで始まっている。ジェリー・ロール・モートンの作。コルネット・ソロの後バド・スコットのバンジョー・ソロ、クラリネット・ソロ等が続き、エンディングは最初のテーマに戻る。
4日後の9月21日モートン自身もヴィクターのこの曲を吹き込んでいる。聴き比べるとこの曲に対する意識の違いが判って面白い。オリィ、ビガード、ハワードと3人もメンバーが被っているのも興味深い。
CD-10.ニュー・ワン・ワン・ブルース
”New”が付いているということは、”Old”は何かというと、ポール・ホワイトマン楽団でヒットしたものであろう。この後1929年ベ二ー・グッドマンが在団したベン・ポラックのバンドが1929年に”Wang-wang blues”を吹き込んでいる。
CD-11.スナッグ・イット
A面1、CD-2.「スナッグ・イット」の再吹込みとなる。残念ながら最初の吹込みを越えるものとはなっていないと思う。

粟村師の言うように音も割とよく聴きやすいが、1926年2月26日録音のルイとホット・ファイヴの「コルネット・チャプ・スイ」を聴いた後の耳には古臭く聴こえてしまう。

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