キング・オリヴァーが1924年“Creole jazz band”に終止符を打たざるを得なくなったが、ただ手をこまねいていたわけではないことはない。オリヴァーは次にセントルイスのトランぺッターであるボブ・ショフナーを招き、さらにニューオリンズからバーニー・ビガード、ポール・バーバリンを呼び、シカゴのドク・クックのバンドで活動していたルイ・ラッセルを招き入れ、バンドの再建に取り組み、”The plantation cafe band“(写真左)そしてこの”Dixie syncopators “を立ち上げたという。
1924年の末から25年はこの再建期に当たるのであろう。そして当然このバンドでシカゴのジャズ・クラブなどで腕を磨き、初のレコーディングを26年3月11日に迎えることになる。それはモートンとの吹込みから1年4か月の時間を要した。
時間を要した原因に一つではないかと僕が想像するのは自分以外のトランぺッターをオリヴァーがメンバーとして欲しがるということもあるのではないか?
ガンサー・シュラー氏によればオリヴァーが目指したものは「統率の取れたニューオリンズ・ジャズ」ということだという。そして自分以外でニューオリンズ・スタイルの演奏を行わせ自分は自由に動き回るというスタイルを求めていたという。もしそうだとすれば、第2トランぺッターはアンサンブル主体で、頭をオリヴァーに抑えられあまり面白くない位置づけということができる。ルイはもともと頭を押さえつけられて留まっているような器ではないだろうが、ラドニアもそういったことが原因で他に天地を求めたのであろうか。
ともかく聴いていくことして、何か分かることがあったら追記していくことにしよう。わが師粟村正昭氏は「これ(クレオール・ジャズ・バンド)に続くディキシー・シンコペイターズ時代のものはコーラル(Coral)盤「ジャイアンツ・オブ・ジャズ」(MH-3023)、Ace of hearts盤の2枚(AH-34、91)に完全に収められている。音も比較的良いし、これまた逃せない逸品である」と書いている。僕はCoral盤もAce of hearts盤も持っていない。持っているのはMCAから出たレコード1枚と後に見つけたDeccaから出たCDのみである。MCAのレコードには16曲入っているのに対して、CDには22曲入っている。レコードにはCDに収録されていない3曲が収録されているので、合計25曲である。粟村師の書くレコードはSPではなくLPだと思うので、LP6面分だとほぼ25曲に近いのではないか。
| Cornet | … | ジョー・キング・オリヴァー | Joe“King”Oliver | 、 | ボブ・ショフナー | Bob Shoffner |
| Trombone | … | キッド・オリー | Kid Ory | |||
| Clarinet & Alto sax | … | アルバート・ニコラス | Albert Nicholas | 、 | ビリー・ペイジ | Billy Payge |
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | |||
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | |||
| Banjo | … | バッド・スコット | Bud Scott | |||
| Tuba | … | バート・コブ | Bert Cobb | |||
| Drums | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
| CD-1. | トゥー・バッド | Too bad | 3月11日 |
| A面1、CD-2. | スナッグ・イット | Snag it | 3月11日 |
| A面2、CD-3. | ディープ・ヘンダーソン | Deep Henderson | 4月21日 |
| A面3、CD-4. | ジャッカス・ブルース | Jackass blues | 4月23日 |
| A面4、CD-5. | シュガー・フット・ストンプ | Sugar foot stomp | 5月29日 |
| A面5、CD-6. | ワー・ワー・ワー | Wa-wa-wa | 5月29日 |
まずこの時期のオリヴァーのレコードは3種類持っている。一番曲数が収録されているのがCDなので、CDを中心に聴くことになるが困ったことに少しずつ3種類で表記が異なるところがある。細かいところなので大勢には影響はないと思うのだが、こういうことが気になる性格なので…。
コルネットのボブ・ショフナーだが、MCA盤とCDは<Bob Shoffner>だがBrunswick盤では<Bob Shaffner>
クラリネットなどのビリー・ペイジだが、MCA盤とCDは<Billy Payge>だがBrunswick盤では<Billy Page>などである。
まず最初の録音は3月11日で2面分行われている。
CD-1.トゥー・バッド
Brunswickの10inch盤とCDに収録されている。最初にソロを取るのはテナー・サックスと思われるが、ということは吹いているのはバーニー・ビガードなのであろう。コールマン・ホーキンスが1923年の吹込みで行っていたようなスラップ・タンギング奏法で吹いているのが興味深い。サウンドはフレッチャー・ヘンダーソン楽団の1924年くらいの録音と似ているような気がする。
コルネットは2本聴こえる(1本はトランペットかもしれない)。1本はミュートでもう1本はオープンで吹いているが、ソロを取るのはミュート方なのでこちらがオリバーなのだろう。なかなかテクニカルのソロである。
A面-1、CD-2.スナッグ・イット
オリヴァー作としては最もよく知られるブルース・ナンバーの一つだそうで、その最初のヴァージョンだという。ソロ・オーダーはオリヴァー、オリィ、ニコラス(Cl)、ピアノをバックにヴォーカルが入り、今一度コルネットのソロが入る。ピアノを弾いているのは、リチャード・M・ジョーンズで、MCA盤ではヴォーカルはオリヴァーとなっているが、CDではリチャード・M・ジョーンズが歌っていると記載している。この辺りはさすがにオリヴァーらしきコルネットがよく聴こえる。いい演奏だと思う。ブレイクでのプレイも面白い。
A面-2、CD-3.ディープ・ヘンダーソン
途中のヴォーカルはルイ・ラッセルとポール・バーバリンだという。オリヴァーのプレイがフューチャーされたナンバーという。オープンがオリヴァーか?
A面-3、CD-4.ジャッカス・ブルース
ジョージア・テイラー(Georgia Taylor)という女性がヴォーカルに加わる。ここでもリーダーのオリヴァーのコルネットが活躍している。
A面-4、CD-5.シュガー・フット・ストンプ
ここでの注目は「シュガー・フット・ストンプ」であろう。
レコードには1926年の演奏はここまでの5曲しか収められておらず、後はCDのみの収録であるが、若干メンバーの移動がある。リード・セクションのアルバート・ニコラスとビリー・ペイジが抜け、ポール・スタンプ・エヴァンズとダーネル・ハワードが加わっている。
| Cornet | … | ジョー・キング・オリヴァー | Joe“King”Oliver | 、 | ボブ・ショフナー | Bob Shoffner |
| Trombone | … | キッド・オリー | Kid Ory | |||
| Soprano & Alto sax | … | ポール・“スタンプ”・エヴァンス | Paul“Stamp”Evans | |||
| Clarinet & Alto sax | … | ダーネル・ハワード | Darnell Howard | |||
| Clarinet & Tenor sax | … | バーニー・ビガード | Barney Bigard | |||
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | |||
| Banjo | … | バッド・スコット | Bud Scott | |||
| Tuba | … | バート・コブ | Bert Cobb | |||
| Drums | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
| CD-7. | タック・アニー | Tack Annie | 7月23日 |
| CD-8. | サムディ・スィートハート | Someday sweetheart | 9月17日 |
| CD-9. | デッド・マン・ブルース | Dead man blues | 9月17日 |
| CD-10. | ニュー・ワン・ワン・ブルース | New wang wang blues | 9月17日 |
| CD-11. | スナッグ・イット | Snag it | 9月17日 |
CD-7.タック・アニー
アルト・サックス、クラリネット、トロンボーンのソロが入り、最後に入るコルネット・ソロがオリヴァーかな?
CD-8.サムディ・スィートハート
オリヴァーの吹込みの中では最も売れたナンバーであるというが、ヒット・チャートにはランクされていない。ゲスト・ソロイストとしてジョニー・ドッズが加わっている。優しいハート・ウォーミングなナンバーである。オリヴァーのミュート・ソロ、チューバのソロの後のアルト・サックスとドッズのクラリネットのソロが素晴らしい。
CD-9.デッド・マン・ブルース
「死んだ男のブルース」という不吉なタイトルのこの曲は、そのタイトル通り不吉なイントロで始まっている。ジェリー・ロール・モートンの作。コルネット・ソロの後バド・スコットのバンジョー・ソロ、クラリネット・ソロ等が続き、エンディングは最初のテーマに戻る。
4日後の9月21日モートン自身もヴィクターのこの曲を吹き込んでいる。聴き比べるとこの曲に対する意識の違いが判って面白い。オリィ、ビガード、ハワードと3人もメンバーが被っているのも興味深い。
CD-10.ニュー・ワン・ワン・ブルース
”New”が付いているということは、”Old”は何かというと、ポール・ホワイトマン楽団でヒットしたものであろう。この後1929年ベ二ー・グッドマンが在団したベン・ポラックのバンドが1929年に”Wang-wang blues”を吹き込んでいる。
CD-11.スナッグ・イット
A面1、CD-2.「スナッグ・イット」の再吹込みとなる。残念ながら最初の吹込みを越えるものとはなっていないと思う。
粟村師の言うように音も割とよく聴きやすいが、1926年2月26日録音のルイとホット・ファイヴの「コルネット・チャプ・スイ」を聴いた後の耳には古臭く聴こえてしまう。