ジョニー・ドッズ 1928年

Johnny Dodds 1928

ジョニー・ドッズ

1927年ルイ・アームストロングの歴史的なレコーディング・コンボ「ホット・ファイヴ」で存在感あるプレイを披露したドッズだったが、1928年からルイ・アームストロングはキャロル・ディッカーソンの楽団のメンバーをレコーディングに使うようになり、ルイとの共演はなくなる。キング・オリヴァーも休みの時の代役として入ったオマー・シメオンを可愛がるようになり(ドッズ2世談)、またオリヴァーがニュー・ヨークへ出たこともあって共演はなく、1927年に参加したジェリー・ロール・モートンもこの年ニュー・ヨークに出て共演はない。と言っても演奏活動自体が停滞していたというわけではないのだろう。また、前にも書いたが、息子の証言によればタクシー会社を経営し、3階建てアパートの家主でもあったので、生活的には安定していたのではないかと思われる。
息子の語るエピソードその2。ジョー・キング・オリヴァーのバンドが時々リハーサルをしにドッズ家に集まった。ピアノはリル・ハーディンのときもあり、リチャード・M・ジョーンズのときもあった。トロンボーンはオノレ・デュトレーさんでドラムはベイビー叔父さんだった。リーダーはオリヴァーだったので、彼は誰に対しても父親のようにふるまった。とても仲の良いグループだと思っていたが、後で実は仲の悪いグループだったと聞かされ幻滅した。
いずれにしろジョニー・ドッズの1928年の吹込みは、マイルストーン盤の1曲とRCA盤6曲しか僕は持っていないので、その録音を聴いていこう。

「ジョニー・ドッズ/シカゴ・メス・アラウンド」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1928年4月録音

<Personnel> … ブラインド・ブレイク(Blind Blake)

Guitarブラインド・ブレイクBlind Blake
Clarinetジョニー・ドッズJohnny Dodds
Zylophoneジミー・バートランドJimmy Bertrand

<Contents> … 「ジョニー・ドッズ/シカゴ・メス・アラウンド」(Milestone MJ-7137)

A面3曲目サウス・バウンド・ラグSouth bound rag

ブラインド・ブレイクは現代では知る人ぞ知るギター弾きというような存在だが、ラグタイム・ギターの父と言われるブルース草創期の名奏者でパラマウント・レコードに数多くの録音を残しているという。またジミー・バートランドはルイ・アームストロングの1927年の項でも取り上げた。その時はウォッシュボードなどを演奏していた打楽器奏者。今回はシロフォン(木琴)を演奏している。この録音は、ブラインド・ブレイク名義となっているが本当だろうか?ブレイクはほとんどをリズムの刻みに終始しており、ドッズとバートランドがメロディーを奏でソロを取るという展開になっている。
本録音、及び次の”Vintage series”で最も重要なのは、数少ないビル・ジョンソンの参加録音だということである。ビル・ジョンについては「僕の作ったジャズ・ヒストリー 6 … 原初のジャズ1」を参照のこと。

「ジョニー・ドッズ/ヴィンテージ・シリーズ」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1928年7月5日録音

<Personnel> … ジョニー・ドッズ・トリオ (Johnny Dodds trio)

Clarinetジョニー・ドッズJohnny Dodds
Pianoチャーリー・アレクサンダー(?)Charlie Alexander
Pianoリル・ハーディン・アームストロングLil Hardin Armstrong
Bassビル・ジョンソンBill Johnson

<Contents> … ”Johnny Dodds/Vintage series”(RCA LPV-558)

B面4曲目ブルー・クラリネット・ストンプBlue clarinet stomp
B面5曲目ブルー・ピアノ・ストンプBlue piano stomp

Web版ディスコグラフィーでは、バンド名は「ジョニー・ドッズ・トリオ」となっている。不思議なのはピアノに、チャーリー・アレクサンダーとリル・ハーディン・アームストロングの2人がクレジットされていることで、曲によって交替しているのだろうか?
レコードではチャーリー・アレクサンダー(?)となっている。どちらもブルース・ナンバーで、ビル・ジョンソンがベースをピチカットする音がビンビンと響く録音である。ドッズは低音から高音まで使って奔放でエモーショナルな吹奏ぶりを示している。
そのクラリネットにベースが絡んでいくようなプレイもある。かなり斬新で聴き応えのある演奏なのではないだろうか。

「ジョニー・ドッズ/ヴィンテージ・シリーズ」A面ラベル

<Date & Place> … 1928年7月6日録音

<Personnel>…ジョニー・ドッズ・ウォッシュボード・バンド (Johnny Dodds Washboard band)

BandLeader & Clarinetジョニー・ドッズJohnny Dodds
Cornetナッティ・ドミニクNatty Dominique
Tromboneオノレー・デュトレーHonore Dutrey
Pianoチャーリー・アレクサンダー(?)Charlie Alexander
Bassビル・ジョンソンBill Johnson
Washboardベイビー・ドッズBaby Dodds

<Contents> … ”Johnny Dodds/Vintage series”(RCA LPV-558)

A面1曲目ブル・フィドル・ブルースBull fiddle blues
A面2曲目ブルー・ウォッシュボード・ストンプBlue washboard stomp
A面3曲目ウェアリー・シティWeary city
A面4曲目バックタウン・ブルースBucktown blues

レコード裏面の表記ではピアノはチャーリー・アレクサンダー(?)となっているが、シュラー氏はリルとしている。
この録音もジョンソンのベースがビンビン響いてくる。デュトレーとは、レコード上ではキング・オリヴァーのバンド以来の共演ではないか。ニュー・オリンズ出身のナッティ、弟のベイビーともども気心の知れた仲間と気持ちよくニューオリンズ・スタイルのジャズを演奏している。ニューオリンズ・スタイルのジャズとしてはかなり名演の部類に入るのではないかと思う。
A-1.ブル・フィドル・ブルース
ウキウキするようなアップ・テンポの実に楽しい演奏。上質なディキシーランド・ジャズを代表するような演奏だ。シュラー氏も、ドッズの最良の録音の一つであるとし、この録音に登場する音楽たちは、全員がシカゴに移住したニューオリンズの人間で、ナッティ・ドミニクを除く全員がキング・オリヴァーと共演した経験がある。ウォッシュボードを担当したベイビー・ドッズは、本物の濃厚なニューオリンズの感覚の一端を再現したとしながら、残念なのは、またもやリル・ハーディン・アームストロングであるという。
そして彼女の慌ただしいラグタイムのソロは全く曲の雰囲気にそぐわないと手厳しい。肝心のドッズは、持ち前のアンサンブルのスタイルで演奏し、構成も巧みで、テンポも良いストップ・タイムのコーラスを聴かせてくれる。
さらにシュラー氏によれば、何よりもこの演奏は、ビル・ジョンソンのベース・ソロにより注目すべき作品であるという。これはおそらく録音された最初の本格的なピチカートのベース・ソロであるという。
A-2.ブルー・ウォッシュボード・ストンプ
これも弾むようなテンポの楽しい演奏。上質なディキシーランド・ジャズの楽しさの典型的な演奏である。
「ウェアリー・シティ」譜例13 A-3.ウェアリー・シティ
ガンサー・シュラー氏は詳しく解説している。
ドッズは、音域によって音質にずれのあることに苦しんでいた。彼の作り出す二つの異なる音質がつながりという点で問題があることを自身理解していたのだ。この問題はこの[ウェアリー・シティ](「疲れた都市」と訳してある)の最終コーラスで明瞭に聴き取ることができるという。
ドッズは、弱起を数えないで最初の10小節半の間、リード楽器らしい、ややこするような、くぐもった低音で演奏する。ところが譜例の矢印の箇所に至って、あたかもベールが取り払われたかのように、突然、新しい、より明快な響きが登場する。このソロは、モチーフの組み立てに関するドッズの卓抜な感覚をも明らかにしている。彼のソロは、しばしば取り留めのないものになりがちで、コーラスを簡潔に構成的に組み立てられないという評判もあるが、この譜例は、その評判は間違いであることを示している。11小節目の間オクターヴを超えず、それでいて単なるリフの旋律にとどまらない12小節のソロは、予想されるものと意外なものとを巧みに組み合わせた、バランスの取れた試みである。
A-4.バックタウン・ブルース
スタートからドッズは好調である。自由奔放なソロを取り、ピアノ、トロンボーン、トランペットとソロを回す。
ドッズがどうのこうのと言うより、バンドとして実に楽しい演奏である。

もしルイ・アームストロングがニューオリンズ・ジャズからの脱却を図っているとしたら確かにこのメンバーとは演りたくないだろう。どうしてもニュー・オリンズ・スタイルとなってしまう。実に楽しい演奏としても、それはもはやルイの望みではなくなっているのだと思う。

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