ジョニー・ドッズ 1938年

Johnny Dodds 1938

実に久しぶりの登場である。いつ以来かというと前回取り上げたのは1929年以来である。
この間の状況を、レコード解説の大和明氏が述べている。
すなわち30年代に入ってから大恐慌の影響で仕事に恵まれず、一時タクシーの運転手をしていた時期もあったという。(ドッズの息子は、父はタクシー会社を共同で経営していたと述べている。経営と言っても椅子にふんぞり返っていたわけっではなく、自らも運転していたのかもしれない)
そして30年代の半ば、スイング時代が到来しジャズが大衆の音楽として受け入れられるようになると、彼のワイルドで強烈な個性は、
当時全盛となっていたビッグ・バンドを演奏を主とした洗練されたスイング・ジャズには到底溶け込めず、吹込み活動から全く遠ざかってしまった。
そしてデッカ・レコードが昨年(1937年)のジミー・ヌーンのレコーディングに続いて、この忘れられた巨匠にレコーディングの機会を与えた。それがこの吹込みである。
ドッズにとって、実に9年ぶり、初めてニューヨークに出てきてのレコーディングであった。
ちょっと気になることとして、解説の大和氏は上記のように「デッカへの吹込み」と書いているし、ディスコグラフィーを見てもデッカとなっているが、
僕の最も信頼する粟村政昭師は、「38年、ドッズは、チャーリー・シェイヴァースをパートナーとしてブランズウィックに数曲吹き込んだ」と書いている。
「チャーリー・シェイヴァースと組んだブランズウィック録音」というのも存在するのだろうか?それとも粟村師の誤りか?

<Date & Place> … 1938年1月21日録音 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ジョニー・ドッズと彼のシカゴ・ボーイズ(Johnny Dods and his Chicago boys)

Bandleader&Clarinet ジョニー・ドッズJohnny Dodds
Trumpetチャーリー・シェイヴァースCharlie Shavers
Pianoリル・ハーディン・アームストロングLil Hardin Armstrong
Guitarテディ・バンTeddy Bunn
Bassジョン・カービィーJohn Kirby
Drumsオニール・スペンサーO’Neil Spencer

<Contents> … 「ジョニー・ドッズ&ジミー・ヌーン/ビッグ・ソウル・クラリネット」(MCA-3077)

A-1.ワイルド・マン・ブルースWild man blues
A-2.メランコリーMelancholy
A-3.トェンティナインス・アンド・ディアボーン29th and Dearborn
A-4.ブルース・ガローBlues galore
A-5.スタアカリー・ブルースStack o'Lee blues
A-6.シェイク・ユア・キャンShake your can

音源は、「ジョニー・ドッズ&ジミー・ヌーン/ビッグ・ソウル・クラリネット」(MCA-3077)というレコード。別にジョニー・ドッズとジミー・ヌーンが共演しているわけではなく、それぞれの別セッションを1枚のLPレコードの表売れに収めたもの。今回はA面のジョニー・ドッズ編。
まず、全体的に素晴らしい演奏である。解説に拠るとドッズの久しぶりのレコーディングなので、当時デッカ・レコードのハウス・ピアニストをしていたリル・アームストロングがメンバーを集めたのだという。そしてこの日の演奏は全くディキシーから離れ、完全にスイングのスタイルで演奏される。この年の最初の回で取り上げたベニー・グッドマンのカーネギー・ホール・コンサートから5日後の吹込みであることは何らかこのメンバーの心境にも影響があったのではないかと思ってしまう。どちらと言えばドッズとは対照的なジミー・ヌーンの影響が強いとは云われるBGは、本来彼らの下流に属する存在であったはずであるが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いであり、それに対して不遇をかこってきたドッズは、ことのほか力が入ったのではないだろうか?それがこの熱演に繋がっているような気もするのである。

A-1.「ワイルド・マン・ブルース」
27年にブラック・ボトム・ストンパーズによる有名な録音があるというが、残念ながら僕は音源を持っておらず未聴である。解説氏によれば、その時よりもテンポが速い軽快なスイング・ナンバーになっているという。ドッズのエモーショナルなプレイに対して、シェイヴァースの爽快でスインギーなミュート・トランペットが対照的な味を示す。バンの中音を主体とした生ギターによるシングル・トーン奏法も見事であり、TpとClの絡みによるラスト・コーラスはもはやディキシーではなく、完全にスイングのスタイルである。スペンサーの見事なバッキングで乗って実に息の合った素晴らしい展開を聴かせてくれる。
A-2.「メランコリー」
これも27年にブラック・ボトム・ストンパーズによる有名な録音があるというが、未聴。解説氏によれば、この曲もその時よりもテンポが速い軽快なスイング・ナンバーになっているという。シェイヴァースの爽快でスインギーなミュート・トランペットが先陣を切り、バンのシングル・トーン奏法も見事であり、続くドッズとシェイヴァースの絡みも楽しい。
A-3.「トェンティナインス・アンド・ディアボーン」
12小節のブルースであるが、ここでも低音と高音を駆使したドッズのプレイは感動的であり、ラスト・コーラスでシェイヴァースのオープンでの吹奏とドッズによる展開が見事である。
A-4.「ブルース・ガロー」
これも12小節のブルースであるが、ここでも低音部から高音までを使ったドッズのプレイが素晴らしい。ラスト・コーラスでのシェイヴァースの絡みも見事である。なおヴォーカルが入っているがこれはドラムのスペンサーである。少しディキシー風の味付けがされている。
A-5.「スタアカリー・ブルース」
編曲もスペンサーが担当している。元は19世紀中ごろに作られたアメリカの古いフォーク・バラードだそうで、色々な歌詞が付けられているが、最も有名なものは”Frankie and Johnny”だという。これもスペンサーのヴォーカル入り。
A-6.「シェイク・ユア・キャン」
スペンサーのヴォーカル入り。シェイバース、バン、カービーといった若手のスイング派のミュージシャンに意外とも思えるような融合性を示している。

全体としてシェイヴァースの地味だが、味のあるプレイが光っている。それに対してリルのピアノは全く存在感がない。

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