実に久しぶりの登場である。いつ以来かというと前回取り上げたのは1929年以来である。
この間の状況を、レコード解説の大和明氏が述べている。
すなわち30年代に入ってから大恐慌の影響で仕事に恵まれず、一時タクシーの運転手をしていた時期もあったという。(ドッズの息子は、父はタクシー会社を共同で経営していたと述べている。経営と言っても椅子にふんぞり返っていたわけっではなく、自らも運転していたのかもしれない)
そして30年代の半ば、スイング時代が到来しジャズが大衆の音楽として受け入れられるようになると、彼のワイルドで強烈な個性は、
当時全盛となっていたビッグ・バンドを演奏を主とした洗練されたスイング・ジャズには到底溶け込めず、吹込み活動から全く遠ざかってしまった。
そしてデッカ・レコードが昨年(1937年)のジミー・ヌーンのレコーディングに続いて、この忘れられた巨匠にレコーディングの機会を与えた。それがこの吹込みである。
ドッズにとって、実に9年ぶり、初めてニューヨークに出てきてのレコーディングであった。
ちょっと気になることとして、解説の大和氏は上記のように「デッカへの吹込み」と書いているし、ディスコグラフィーを見てもデッカとなっているが、
僕の最も信頼する粟村政昭師は、「38年、ドッズは、チャーリー・シェイヴァースをパートナーとしてブランズウィックに数曲吹き込んだ」と書いている。
「チャーリー・シェイヴァースと組んだブランズウィック録音」というのも存在するのだろうか?それとも粟村師の誤りか?
| Bandleader&Clarinet | … | ジョニー・ドッズ | Johnny Dodds |
| Trumpet | … | チャーリー・シェイヴァース | Charlie Shavers |
| Piano | … | リル・ハーディン・アームストロング | Lil Hardin Armstrong |
| Guitar | … | テディ・バン | Teddy Bunn |
| Bass | … | ジョン・カービィー | John Kirby |
| Drums | … | オニール・スペンサー | O’Neil Spencer |
| A-1. | ワイルド・マン・ブルース | Wild man blues |
| A-2. | メランコリー | Melancholy |
| A-3. | トェンティナインス・アンド・ディアボーン | 29th and Dearborn |
| A-4. | ブルース・ガロー | Blues galore |
| A-5. | スタアカリー・ブルース | Stack o'Lee blues |
| A-6. | シェイク・ユア・キャン | Shake your can |
音源は、「ジョニー・ドッズ&ジミー・ヌーン/ビッグ・ソウル・クラリネット」(MCA-3077)というレコード。別にジョニー・ドッズとジミー・ヌーンが共演しているわけではなく、それぞれの別セッションを1枚のLPレコードの表売れに収めたもの。今回はA面のジョニー・ドッズ編。
まず、全体的に素晴らしい演奏である。解説に拠るとドッズの久しぶりのレコーディングなので、当時デッカ・レコードのハウス・ピアニストをしていたリル・アームストロングがメンバーを集めたのだという。そしてこの日の演奏は全くディキシーから離れ、完全にスイングのスタイルで演奏される。この年の最初の回で取り上げたベニー・グッドマンのカーネギー・ホール・コンサートから5日後の吹込みであることは何らかこのメンバーの心境にも影響があったのではないかと思ってしまう。どちらと言えばドッズとは対照的なジミー・ヌーンの影響が強いとは云われるBGは、本来彼らの下流に属する存在であったはずであるが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いであり、それに対して不遇をかこってきたドッズは、ことのほか力が入ったのではないだろうか?それがこの熱演に繋がっているような気もするのである。
全体としてシェイヴァースの地味だが、味のあるプレイが光っている。それに対してリルのピアノは全く存在感がない。