レスター・ヤング 1937年
Lester Young 1937
1934年フレッチャー・ヘンダーソン楽団を退団して以来、約2年ぶりにレスター・ヤングはニュー・ヨークに戻ってきた。今度はカンサス・シティで一緒だったカウント・ベイシーの楽団員としてである。1936年11月という記述と1936年も押し詰まった12月末という2つの記述があるが、ともか<ローズランド・ボールルーム>への出演によって、ベイシー楽団はニューヨーク・デビューを果たす。そして1937年からのDeccaとのレコーディング契約は、1937年1月21日のセッションから果たされることになる。
<Date&Place> … 1937年1月27日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
歌手のジミー・ラッシングを入れて総勢14名。堂々たるフル・バンドである。
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record1 A-1. | ハニーサックル・ローズ | Honeysuckle rose |
| record1 A-2. | ぺニーズ・フロム・ヘヴン | Pennies from heaven |
| record1 A-3. | スウィンギン・アット・ザ・ディジー・チェイン | Swingin' at the daisy chain |
| record1 A-4. | ローズランド・シャッフル | Roseland shuffle |
「カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ」の初レコーディングである。
record1 A-1.[ハニーサックル・ローズ]
ファッツ・ウォーラーの代表作の一つ。ウォーラーは「ハーレム・スタイルの開祖」と言われたジェームス・P・ジョンソンの弟子で、ベイシーはそのウォーラーの弟子にあたる。大和氏の解説によれば、この演奏はフレッチャー・ヘンダーソンの編曲を基にベイシーが簡明化したものだという。このように初期のベイシーのレパートリーには全体あるいは一部を他のバンドから借用していることが多いという。
冒頭から弾力性に富んだベイシーのアドリブが圧巻で、そのタッチには作曲者でありベイシーが師と仰いだウォーラーの面影がちらつくと大和氏は解説しているが、ブンチャ、ブンチャという左手に対して右手などはかなりモダンな感じがする。
転調して出るレスターのソロも張り切ったプレイで、例によってラッパ音をぶっ放していると大和氏。「例のラッパ音」がよく分からない。遊び心満載のプレイとは思うが…。アンサンブルの間にペイジの短いベース・ソロもあり、聴き応えのあるナンバーだ。
record1 A-2.[ぺニーズ・フロム・ヘヴン]
この録音と同じ36年に製作された同名タイトルの主題歌。当時大ヒットし、BGやビリー・ホリデイも歌っているナンバー。
これもベイシーのピアノ・ソロに始まる。かなり荒っぽいアンサンブルだが全体にリラックスした雰囲気で、冒頭のベイシーのソロはハーレム・スタイルの流れを活かしながらも可愛らしい装飾音を加えるなど微笑ましいが、この辺りがウォーラー的だと思う。特にラッシングのヴォーカル・バックに付けるピアノのバッキングが良いが、ラッシングものびのびと歌っていると大和氏。
record1 A-3.[スウィンギン・アット・ザ・ディジー・チェイン]
ベイシー作の、ブルージーなミディアム・バウンスの曲。バック・クレイトンがソロイストとして初めてフューチャーされた演奏で、彼の創意に満ちたサトルなミュート・プレイが素晴らしい。最初のピアノのバックに聴けるフレディ―・グリーンが参加する以前のリズムがカチッと決まっていないところに興味を引かれると大和氏。テナー・ソロはハーシャル・エヴァンス。ペイジのベースがズンズン響き、カンサスらしいリフが聴ける素晴らしい作品。
record1 A-4.[ローズランド・シャッフル]
ベイシー自作のジャンピング・ナンバーで「ローズランド」とはもちろんベイシー楽団が出演したボールルームの名前である。
ここではベイシー自身のピアノとレスターのテナーが大きくフューチャーされ、2人によるエキサイティングなチェイスがスリルを感じさせる。ベイシー楽団による初レコーディングにこれだけレスターにスポットを当てたのは、ベイシーがそれだけ他に先駆けてレスターの革新的なスタイルを認めていたからであろう。もちろんレスターも期待に応え彼独特のスムースなフレージィングを生かした好演を繰り広げている。またこの演奏ではアンサンブル・パートもよくまとまっている。
<Date&Place> … 1937年1月25日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
ベニー・グッドマンはサイド・マン扱いが気に食わず「ジョン・ジャクソン(John Jackson)という名でクレジットされている。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SONY SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)
| record1 B-1. | リズムのない男 | He ain't got rhythm |
| record1 B-2. | 今年のキッス | This year's kisses |
| record1 B-3. | 何故生まれてきたの | Why was I born ? |
| record1 B-4. | あの人でなけりゃ | I must have that man ! |
パーソネルを見れば一目瞭然だが、ベニー・グッドマンとウィルソン以外はベイシー楽団のメンバーで固められている。ベイシーの楽団員たちはこうしたセッションに参加して日銭を稼いでいたわけだが、この録音は、ビリーの一つの飛躍のきっかけとなる重要な録音となった。それは音楽的に重要な影響を及ぼすことになるレスター・ヤングとの初共演であるからだ。この日以降レスターのリリシズムと寛いでスムースなプレイ・スタイルに影響を受け、彼女の原メロディーにとらわれない器楽的な唱法は歌詞との不即不離の関連の上に完成の域に近づいていく。
「ザ・テディ・ウィルソン」にも1曲(「リズムのない男」)収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には4曲とも収録されているので、こちらでまとめて聴こう。
B-1.[リズムのない男]
ベニー・グッドマンは自身のオーケストラで1936年12月30日に録音をしている。そのBGとウィルソンのイントロの後ビリーのヴォーカルとなる。ヴォーカルが終わるか終わらぬうちに出るレスターのソロが素晴らしい。続くクレイトンのソロからディキシー風アンサンブルとなる。
B-2.[今年のキッス]
ウィルソンのイントロの後レスターが極上のリリシズムを発揮する。ビリーもその雰囲気を引き継ぎしっとりとした味わい深い歌唱を聴かせる。その後に出るウィルソンのPも極上である。
B-3.[何故生まれてきたの]
クレイトンがリリカルなイントロでこの曲のムードを作る。ビリーは思い切ったフレイジングで応じ、ウィルソン、BGが暖かい素晴らしいソロを繰り広げる。
B-4.[あの人でなけりゃ]
ビリーがじっくり取り組んだ詠唱を聴かせる。Voの後のレスターのソロもしみじみとした温かさを伝える。BGも短いながらムードにマッチした好ソロを聴かせてくれる。
<Date&Place> … 1937年3月26日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
1月27日からの移動
Trumpet … ジョー・キーズ、カール・スミス ⇒ エド・ルイス(Ed Lewis)、ボビー・ムーア(Bobby Moore)
Guitar … クロード・ウィリアムス ⇒ フレディ・グリーン(Freddie Greene)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record1 A-5. | イグザクトリー・ライク・ユー | Exactly like you |
| record1 A-6. | ブー・フー | Boo-hoo |
| record1 A-7. | グローリー・オブ・ラヴ | The glory of love |
| record1 A-8. | ブギー・ウギ― | Boogie woogie |
record1 A-5.[イグザクトリー・ライク・ユー]
この日のセッションからギターにフレディ―・グリーンが加わり、”アール・アメリカン・リズム・セクション”が形成されたことになる。大和氏は、この曲で素晴らしいのはまず、躍動感あふれるジョーのドラミング、そしてブルース歌手として知られるジミー・ラッシングではあるが、こうしたティン・パン・アレイの流行歌をスインギーに歌うのもうまいものだ。この曲でのレスターもまた素晴らしい。何気ない実にリラックスして歌い出すアドリブの妙技、こういうところが後にアレン・イーガーやワーデル・グレイに取り入れられることになる。
record1 A-6.[ブー・フー]
変わったタイトルだが当時流行ったポップ・チューンだそうだ。
ラッシングにオブリガードをつけるクレイトンがなかなか良い。全体的には受けを狙って取り上げたナンバーだけに、ベイシー楽団の魅力が十分に発揮されたナンバーとは言えないであろうと大和氏。ベイシーのピアノがとてもモダンに聞こえるのは僕だけだろうか?
record1 A-7.[グローリー・オブ・ラヴ]
この曲では最後にソロを取るハーシャル・エヴァンスのたくましいダーク・トーンを効かせたソロが全てをさらっていると大和氏は解説しているが、ベイシーのソロ、エド・ルイスのトランペット・ソロも聴き応えがある。
record1 A-8.[ブギー・ウギ―]
ベイシー自作曲で、前回取り上げたこの録音に先立つシカゴにおける”Jones-Smith incorporated”でも取り上げられていた。その時同様ラッシングのヴォーカルをフューチャーしている。さすがにこういう歌はお手のもので、張りのあるみごとなシャウト唱法を聴かせる。歌の後に出るベイシーの2コーラス目のソロの右手の動きにファッツ・ウォーラーの痕跡が見受けられるという。
<Date & Place> … 1937年5月11日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)
| record4.B-1 | 日照雨(ひばえ) | Sun shower |
| record4.B-2 | 二人のもの | Yours and mine |
| record4.B-3 | 貴方とならばどこでも | I’ll get by |
| record4.B-4 | 意地悪なあなた | Mean to me |
日照雨(ひばえ)以外は「ザ・テディ・ウィルソン」にも収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には、4曲全て収録されている。
解説の大和明氏によれば、ビリーが30年代半ばから40年代初めにかけて行った数あるセッションの中で、これほどメンバーが充実し、それもビリーのヴォーカルとの適合性という点でも最高と言えるメンバーを揃え、ビリーのヴォーカル、メンバーのソロとも最高の出来を示したレコーディングは、この日をおいてないと最高の評価をしている。
またこの録音辺りからビリーとレスターの同棲生活は始まっており、この二人の共演がしばらく断続的に続くことから、『ジャズ史上最良のコラボレイション』と謳われた名コンビが誕生するのである。
record4.B-1.[日照雨(ひばえ)]
”Sun shower”を「日照雨」と訳しているのは、間違いないと思う。いわゆる「狐の嫁入り」のことである。しかい「ひばえ」と仮名を振るのは誤りである。正しくは「そばえ」で、どの辞典を見ても、「日照雨」=「ひばえ」とするものはない。どこから引っ張ってきたのだろうか。
短いクレイトン、ホッジスのソロからビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンの端正なソロ、レスターのソロからエンディングとなる。まさに豪華リレーである。
record4.B-2.[二人のもの]
ピアノのイントロからレスター、クレイトン、ウィルソンのオブリガードの付いたビリーのヴォーカル、ウィルソン、レスターのソロと続く。
record4.B-3.[貴方とならばどこでも]
最初はレスターが吹く。そしてビリーのヴォーカルが入り、ウィルソン、クレイトンのソロからエンディングに向かう。
record4.B-4.[意地悪なあなた]
最近は原題通り『ミーン・トゥ・ミー』の方が通りやすいのではないかと思う。クレイトン、レスターのソロに続いてビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンのソロとなりクレイトンが入ってエンディングに向かう。
解説の大和氏が言うように、この4曲については特に言うことがない。もう一人の解説巨泉氏は、「自由奔放に楽しみましょう、バック・クレイトンの拡張の高さに酔い、ビリーの名唱に酔いましょう、テディ・ウィルソンのリリシズムに酔いましょう、そのために貴方はこのレコードを買ったのだ」と言っている。聴けば解説など不要ということだろう。
<Date & Place> … 1937年6月1日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)
| 曲名 | 原題 | 収録アルバム | 収録個所 |
| 自分を偽って | Foolin’myself | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-5 |
| 貴方のために生きるなら | Easy living | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-6 |
| 私は変わったの | I'll never be the same | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-7 |
| いい娘を見つけた | I found a new baby | 「ザ・テディ・ウィルソン」 | record2 A-7 |
record4.B-5.[自分を偽って]
レスター、ウィルソン、クレイトンの後ビリーのヴォーカルとなる。これこそビリーの最高傑作。何百回、何千回聴いても飽きない珠玉の名品だとは、巨泉氏。
record4.B-6.[貴方のために生きるなら]
”Easy living”をこう訳しているのはこのレコードだけだろう。僕の大好きな曲で、”Easy living”=「気楽な生活」と思っていたら、まったく違う訳である。曲の意味合いは「貴方のために生きるなら、何があってもそれは簡単なこと」ということなのだろう。ベイリー、レスター、ウィルソンのソロの流れが何とも言えずいい。
record4.B-7.[私は変わったの]
ビリーに寄り添うレスターのオブリガードが悩ましいまでに思いやりに溢れているという。確かに一緒に歌っているようだ。ウィルソンのピアノも力演で素晴らしい。
record2.A-7.[いい娘を見つけた]
アップ・テンポのインスト・ナンバーで「ザ・テディ・ウィルソン」の方にだけ収録されている。このメンバーで奏されるコンボ・インスト・ナンバーが悪いわけがない。ベイリー、クレイトン、ウィルソン、レスター、ジョーンズと続く豪華絢爛のソロイストの共演を楽しむのみである。ただもっとソロ・スペースを増やしてほしい。
さて、本テイクが何テイクは不明だが、別テイク(第3テイク)が右の海賊版"Lester Young/The alternative"に収録されている。エンディングが少し異なるが、基本的な演奏の構成、ソロの順番などは本チャンと変わりはなくこちらも聴き応えのある演奏である。
<Date & Place> … 1937年6月15日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
大変珍しいメンバーである。Clのホールはニューオリンズ出身のCl奏者とは思えぬ鋭角的なソロを吹く人で、この人の起用は当たればとてつもない傑作になるが外れると目も当てられない。この録音ではうまく行ったようだ。ピアノのシャーマンは初登場で、この日はテディは都合が付かなかったのだろうか。但しプレイぶりはテディそっくりだ。ともかく前回に続きビリー最高期の録音であるという。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第3集」(CBS SOPH 65〜66)
| record5.A-1 | 三人の私 | Me , myself and I |
| record5.A-2 | 三人の私 | Me , myself and I |
| record5.A-3 | 月夜の小舟 | A sailboat in the moonlight |
| record5.A-4 | 愛の運命 | Born to love |
| record5.A-5 | 君の愛なしでは | Without your love |
record5 A-1、2.[三人の私]
珍しく別テイクも収録している。しかし別テイクのA-2になるとグッと音が悪くなる。音だけではなく演奏も一歩落ちるとは巨泉氏。確かにA-1の方が断然良い。レスターのオブリガードは伴奏ではなく、共演である。
record5 A-3.[月夜の小舟]
この曲でもビリーとレスターの共演は続く。二人の共演が終わって出るシャーマンのソロがリリカルでありながら、グッと冷静に聴こえる。クレイトンは襟を正したようなプレイで再度出るビリーとレスターはまたまた甘いところを聴かせる。
record5 A-4.[愛の運命]
単調なメロディとコード、陳腐な歌詞でどうしようもないがクレイトンのメリハリの効いたソロが救っているとは巨泉氏。
record5 A-5.[君の愛なしでは]
この頃レスターはオブリガード専門でほとんどソロを取っていない、とってもせいぜい8小節程度だが、これはビリーからの要請によるものだったという。ここでもクレイトンのソロが素晴らしい。
ベイシー楽団は、デビューの場所となった<ローズランド・ボールルーム>と並ぶ広大なダンス・フロアを持っていたハーレムの<サヴォイ・ボールルーム>に出演し、そのエキサイティングな演奏が全米に生ラジオ放送されることになるのである。その時の模様を収めたのが今回取り上げるレコードである。
なお解説の大和明氏によると、この時の演奏は30分番組として放送された。これまでプライヴェート・レーベルやTemple、Palmなどから何曲か発売されたことはあるが、放送分全曲をまとめてレコード化されたのはこれが初めてだという。
さらに僕の知る限り、ベイシー楽団に在団したビリー・ホリデイの歌声が聴けるレコードはこれと"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"だけである。ラジオ放送で音は良くないが、極めて貴重な録音と言わねばならない。また、最初に断っておくと、レコード解説ではA-4.[ザ・カウント・ステップ・イン]と> A-5.[ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー]が逆になっている。
<Date&Place> … 1937年6月30日 ニューヨーク・サヴォイ・ボールルームから実況放送
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
3月26日からの移動
Alto sax … コーギー・ロバーツ ⇒ アール・ウォーレン(Earl Warren)
Vocal … ビリー・ホリデイ(Billie Holiday) ⇒ In
ベイシー楽団でビリーが歌っているのを聴ける数少ない音源であり、貴重。
<Contents> … 「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム 1937」(ELEC Record KV-109)&"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"
A面 | | |
B面 | | |
| 1. | テーマ:モーテン・スイング | Theme: Moten swing |
1. | アイル・オールウェイズ・ビー・イン・ラヴ・ウィズ・ユー | I'll always be in love with you |
| 2. | シャウト・アンド・フィール・イット | Shout and feel it |
2. | ホエン・マイ・ドリームボート・カムズ・ホーム | When my dreamboat comes home |
| 3. | ザ・ユー・アンド・ミー・ザット・ユースド・トゥ・ビー | The you and me that used to be |
3. | スイング・ブラザー・スイング! | Swing ! brother , awing ! |
| 4. | ザ・カウント・ステップ・イン | The count step in |
4. | ビューグル・ブルース | Bugle blues |
| 5. | ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー | They can't take that away from me |
5. | アイ・ガット・リズム | I got rhythm |
ハッキリ言って、音はよくない。しかしこれまで想像できなかった史上最高のスイング・バンドの初めてのライヴ演奏、何といっても迫力が違う。
このうちビリーの歌う2曲"They can't take that away from me"と"Swing ! brother , awing !"は"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"というボックス物にも収録されている。それには両曲とも"Columbia CL 1759"というレコード番号は付されているので、コロンビアからカップリングで発売されたことがあるかもしれない。
A-1.[テーマ:モーテン・スイング]
オープニングは母体となったバンド、ベニー・モーテン時代の曲だ。ベイシーのピアノによるテーマから、レスターのテナーがスムーズにアドリブを吹き、アンサンブルに入る。
A-2.[シャウト・アンド・フィール・イット]
リードとブラスの「コール・アンド・レスポンス」形式のカンサス・リフ・スタイルの迫力あるアンサンブルから始まる。クレイトンのシンプルなフレイズを重ねたソロ、そしてエヴァンスのTsソロにも絶え間なくリフが付けられ、演奏を鼓舞する。そしてその後に出るベイシーのソロに付けられるリズム・セクションの躍動感。まさに「オール・アメリカン・リズム・セクション」である。さらに続く迫力満点のアンサンブル。豪快そのものである。
A-3.[ザ・ユー・アンド・ミー・ザット・ユースド・トゥ・ビー]
ここでジミー・ラッシングが登場し、当時のポピュラー・ソングを歌う。ブルース・シンガーとして名高いラッシングが歌う流行歌は甘さに欠けるところがあるが、逆に一般のポピュラー歌手にない味を漂わせている。その後のレスターのソロも味わい深い。
A-4.[ザ・カウント・ステップ・イン]
リズム隊が否が応でも乗せまくるというベイシー作のジャンプ・ナンバー。荒々しいアンサンブルから、レスター、クレイトン、ウォーレン、ベイシー、ジョーンズとソロが続く、もしかしたら最もベイシーらしい演奏かもしれない。
A-5.[ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー]
ここでビリー・ホリディの登場となる。ビリーは気怠い雰囲気で、後に引きずるような独特の唱法が印象的だ。
B-1.[アイル・オールウェイズ・ビー・イン・ラヴ・ウィズ・ユー]
冒頭のリズム・セクションが一体となったスイング感に「オール・アメリカン・リズム・セクション」の真骨頂が聴かれる。その後に出るレスターはいかにも楽し気だ。
B-2.[ホエン・マイ・ドリームボート・カムズ・ホーム]
再びラッシングの登場。この人は一体どのくらい声量があるんだろう、物凄い声量で圧倒される。
B-3.[スイング・ブラザー・スイング!]
そしてこちらはビリーがきかせる。実にスインギーによく乗っているが、やはり後に引くような彼女独特の乗り方が特徴的である。
B-4.[ビューグル・ブルース]
本来は「ビューグル・コール・ラグ」という名の曲だが、ここでは名前を変えられている。ベイシー楽団のソロを次々にフューチャーしたナンバー。先頭を切るのはクレイトン、いつもながら堅く引き締まったトーンでよく歌っている。そしてうねるようなエヴァンス、豪放なハント、そしてジョーンズ、ウォーレン、ルイスの後のレスターが鮮やかだ。但し、途中で音が突然変わるのは残念だ。しかしエアチェックの音源なので仕方ないだろう。
B-5.[アイ・ガット・リズム]
最後のナンバー。ここではこの曲を得意としたレスターの圧巻のプレイが堪能できる。
そして最後のアナウンスと共に曲はクロージング・テーマである”One O'clock jump”に移り、レスターのソロが始まるとフェイド・アウトしながらこの日の放送は終了する。スタジオ録音の前に既にステージでは”One O'clock jump”を演っていたことが分かる。
ベイシー次の録音はスタジオに戻り、サヴォイ・ボールルームからの実況放送から1週間後に行われる。レコードはビクターが編集再発した「黄金時代のカウント・ベイシー」に戻る。これはデッカにレコーディングされたベイシーの完全復活版だというので、デッカと専属契約を行ったベイシーとしては、当然そうなるのであろう。
<Date&Place> … 1937年7月7日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
6月30日と同じ。
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record1 B-1. | スマーティ | Smarty |
| record1 B-2. | ワン・オクロック・ジャンプ | One O'clock jump |
| record1 B-3. | リッスン・マイ・チルドレン・アンド・ユー・シャル・ヒア | Listen , my children and you shall hear |
| record1 B-4. | ジョンズ・アイディア | John's idea |
パーソネルは、前録音6月30日から変わっていない。強いて言えばヴォーカルにビリー・ホリディが加わっていないことくらい。編曲にバスター・スミスとジミー・マンディが加わっていると書いているが、どの曲を誰が担当したのかは書かれていない。バスター・スミスは、若きチャーリー・パーカーが師と仰いだ人物である。
6月30日のサヴォイ・ボールルームからの放送では元気なところを見せていたと思われるベイシー楽団だったが、「黄金時代のカウント・ベイシー」解説の大和明氏によれば、この頃バンドメンの多くはすっかり自信を失くしていたという。ニューヨークでは、あまりウケなかったかららしい。自分たちの音楽を理解してくれたカンサス・シティに戻った方が賢明だという意見さえ出始めていたという。しかし彼らは戻らなかった。それは、この日録音した「ワン・オクロック・ジャンプ」がヒットし始めたからだという。
record1 B-1.[スマーティ]
落ち着いたリラックスしたテンポに乗って、クレイトン、エヴァンス、ベイシーがそれぞれの持ち味を発揮したソロを取る。ベイシーのソロのバックのリズムの動きを聴けば、このバンドを支えるリズム・セクションが如何に素晴らしいかがよく分かる。クレイトンは、ジョー・スミスから受け継いだ洗練された味を一層深めた表現で、エヴァンスのデリケートな表現も魅力的だ。
record1 B-2.[ワン・オクロック・ジャンプ]
上記でも述べたように、ベイシー楽団出世の糸口となった代表作。大和氏によれば、この曲の原型はもっと以前からあったのだという。それはファッツ・ウォーラーが作曲した”Six or seven times”である。一方35年にベイシーと共同で<Barons of rhythm>というバンドを率いたアルト奏者のバスター・スミスは、かつてマッキニーズ・コットン・ピッカーズの演奏でこの曲を聴きそのイントロを覚えていた。ある時ベイシーと演奏していた時にこのリフを吹いたところ、同じくホット・リップス・ペイジ、ダン・マイナー、ジャック・ワシントンらがそれに合わせて演奏し始めた。それをまとめ上げてこの曲に仕立て上げたのである。当時この曲には、”Blue balls”という曲名が付けられ、同バンドのレパートリーとなっていたのであるが、その数週間後、リトル・ロックで深夜にこの曲を放送したところ、アナウンサーが1時に近いのでこの曲を”One O'clock jump”と紹介してよいかとベイシーらに同意を求めた結果このタイトルとなったという。また一説には、ベイシー自身が腕時計を見て咄嗟に”One O'clock jump”と言ったとも伝えられる。
多くのバンドによって数え切れぬほど録音がなされているが、何といってもこのオリジナル演奏が最も素晴らしい。次々とスポットを浴びる各奏者もスリリングなアドリブ(特に他の一線を画するレスターのソロの出だしに注目)。華麗なアンサンブルやアドリブ・ソロを飾る特有のリフ、何気なく挿入されるベイシーの右手とリズム陣が重なる躍動感、これを聴いてベイシーに心奪われた人はさぞかし多いであろうという。
record1 B-3.[リッスン・マイ・チルドレン・アンド・ユー・シャル・ヒア]
ラッシングのヴォーカルも素晴らしいが、ベイシーの哀感を漂わせたロマンチシズム溢れるピアノが素晴らしい。
record1 B-4.[ジョンズ・アイディア]
ベイシーとダーハムの共作になるベイシー楽団の本領発揮のジャンプ・ナンバー。タイトルの”John”は、もちろん米しーを世に出してくれたJohn Hamonnd氏のことである。
弾力性に富んだベイシーの力強いタッチ、男性的なトーンでうねるような豪快なソロを取るエヴァンス。しかし最も強烈な印象はジミー・マンディの鮮やかな編曲と爆発的なブラス・セクションによるアンサンブル・サウンドであろう。さすが「シング・シング・シング」のマンディである。ラスト近くにブレーク風に出てくるテナーはレスターである。エンディングのベイシーの音階を下げるグリッサンドの様なプレイが面白い。
<Date&Place> … 1937年8月9日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
7月7日からの変更点
Trombone … ジョージ・ハント ⇒ ベニー・モートン(Benny Morton)
Trombone , Guitar & Arrangement … エディー・ダーハム(Eddie Durham) ⇒ In
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record1 B-5. | グッド・モーニング・ブルース(テイク1) | Good morning blues(take1) |
| record1 B-6. | グッド・モーニング・ブルース(テイク2) | Good morning blues(take2) |
| record1 B-7. | アワ・ラヴ・ウォズ・メント・トゥ・ビー | Our love was meant to be |
| record1 B-8. | タイム・アウト | Time out |
| record1 B-9. | トプシー | Topsy |
”One O'clock jump”の猛烈なヒットで、ニューヨークに受け入れられたベイシー楽団は1か月後再びスタジオに入る。
record1 B-5、6.[グッド・モーニング・ブルース]
ジミー・ラッシングが本領発揮の力強い素晴らしいブルースを聴かせる。スロー・ブルースの傑作として名高いナンバーであるという。クレイトンの泣きのプレイも彼の代表作に数えられるものだという。
record1 B-7.[アワ・ラヴ・ウォズ・メント・トゥ・ビー]
こちらはリード・アルトとして数か月前に加入したばかりのアール・ウォーレンのヴォーカルをフューチャーしたナンバー。
record1 B-8.[タイム・アウト]
エディ・ダーハム作・編曲のリラックスしたテンポのオリジナル・ナンバー。アドリブ・コーラスを先に出し、ブラス・セクションとリード・セクションを交差させたリフによって構成するアンサンブル・テーマを後に置くなど凝った手法で聴かせる。
アンサンブルによるイントロからアドリブ・コーラスへとつなぐ4小節をエヴァンスが吹き、そのすぐ後レスターによるアドリブとなる。クレイトンの渋いミュート・プレイに続いてグリーンの刻むリズムをバックとしてダーハムがエレキ・ギターによるソロを取る。ダーハムはチャーリー・クリスチャンに先駆けてエレキ・ギターによるプレイを行った先駆者の一人だが、これを聴いても分かる通り、テクニックやハーモニー、メロディーなどの面で従来のアコースティック・ギターの域を出ておらず、この楽器の特性を充分に発揮するプレイはクリスチャンの登場を待たねばならなかった。
record1 B-9.[トプシー]
これもダーハムが書いた有名なジャンプ・ナンバー。後バップの発祥地となったニューヨークの<ミントンズ・プレイ・ハウス>でチャーリー・クリスチャンがこの曲のコード進行を使った有名な演奏の録音がある。
ここでもダーハムの編曲は、テーマを先に出さず、ワシントンのソロの最後に着けるバック・アンサンブルからテーマに基づいたフェイクをすることによって初めてテーマを明らかにしている。
<Date&Place> … 1937年9月13日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
後に革新的なビッグ・バンドを率いるクロード・ソーンヒルの参加が珍しい。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第3集」(CBS SOPH 65〜66)
| record5.A-6 | 気ままな人生 | Getting some fun out of life |
| record5.A-7 | 誰が恋なんか | Who wants love ? |
| record5.A-8 | ひとり旅 | Traverin’all alone |
| record5.A-9 | 可笑しなあの人 | He's funny that way |
約3か月ぶりのスタジオ・レコーディングである。この間ビリーはベイシー楽団の専属歌手としてツアーなどに同行していた。6月30日には前々回で取り上げたサヴォイ・ボールルームからのラジオ放送にも参加している。さてこの日のセッションであるが、ソーンヒル以外はビリーが最も安心して歌えるメンバーが揃ったといえる。
record5.A-6.[気ままな人生]
ここではクレイトンが始めオブリガードを付け、続いてベイリー、ウィルソンと変わっていく。クレイトン、レスターのソロはやはりいいなぁ。
record5.A-7.[誰が恋なんか]
当時のポップス・チューンらしい。ソーンヒルのソロはテディの影響をもろに受けているのがよく分かる。
record5.A-8.[ひとり旅]
レスターの伸びやかなソロ、クレイトンのミュート・ソロを受けてビリーも快調にスイングしていく。
record5.A-9.[可笑しなあの人]
ビリーの持ち歌で後にも吹き込んでいる。クレイトンの抑え気味のソロが滋味あふれるようで味わい深い。
<Date&Place> … 1937年10月13日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
8月9日からの変更点
Trumpet … ボビー・ムーア ⇒ ボビー・ヒックス(Bobby Hicks)
レコード記載のデータではビリー・ヒックス(Billy Hicks)となっているが、ボビー・ヒックスの誤りと思われる。
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record2 A-1. | アイ・キープ・リメンバリング | I keep remembering |
| record2 A-2. | アウト・ザ・ウィンドウ | Out the window |
| record2 A-3. | ドンチュー・ミス・ユア・ベイビー | Don't you miss your baby |
| record2 A-4. | レット・ミー・ドリーム | Let me dream |
record2 A-1.[アイ・キープ・リメンバリング]
入団したばっかりのモートンが特有のソフトなトーンで流れるようにレガートなストレート・メロディを歌わせる。これがモートンの持ち味らしい。ヴォーカルはラッシング。ベイシーのオブリガードが素晴らしい。エヴァンスのソロもいい。
record2 A-2.[アウト・ザ・ウィンドウ]
ダーハムの書いたジャンプ・ナンバー。編曲もダーハム。「タイム・アウト」、「トプシー」などで分かるように初期ベイシー楽団において彼がいかに重要な役割を果たしていたかが窺い知れる。
ウォーレン、モートン、ヤングと短いソロが交錯する。モートンについては、代表的なソロ・ワークとして定評があるという。
record2 A-3.[ドンチュー・ミス・ユア・ベイビー]
ベイシー、ダーハム、ラッシングの共作によるブルースで、ミディアム・テンポのブルースとして傑作である。「オール・アメリカン・リズム・セクション」一体となった躍動感、サトルなクレイトンのソロ、もちろんラッシングは言うことなし。ジョーンズのメンバーを鼓舞するドラミングが素晴らしい。
record2 A-4.[レット・ミー・ドリーム]
「黒いトミー・ドーシー」と言われるモートンの情感豊かなプレイが印象的。ヴォーカルはウォーレンで、路線としてはポップス系を狙ったもの。ベイシー本来の演奏ではないとは大和氏。
<Date&Place> … 1937年11月3日 アンティグア島シダー・グローヴ メドウブルック・ラウンジからのラジオ放送音源
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
10月13日と同じメンバー。
<Contents> … "Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"
| record1 A-4. | 言い出しかねて | I can't get started |
アンティグア島とはカリブ海西インド諸島の小国。そこのシダー・グローヴという観光スポットにあるメドウブルック・ラウンジからのCBSラジオ放送の音源という。ビリーがこの曲を録音上で歌うのは初めてだと思う。音はめちゃくちゃ悪い。ビリーの歌い方はかなり独特で、バックのいかにもビッグ・バンドというサウンドとは合わない感じがする。この人は人は小編成のバンドの方が光るような気がする。
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