ルイの1932年の最も早い録音は1932年1月25日にシカゴで行われたもので、前回録音(1931年11月)から2か月後であるが、メンバーは1931年11月と同じである。ということは1931年4月の録音時と同じメンバーである。つまりこの時期のルイのレギュラー・バンドと言っていいだろう。ルイはこのメンバーを率いて各地を巡演し、シカゴに戻って来るとオーケーに吹込みを行っていた。しかしこのオーケーへの録音も32年3月の録音をもって打ち切られる。ルイがオーケーからヴィクターへ移籍したためである。
| Trumpet , vocal , speech & conduct | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong |
| Trumpet | … | ジルナー・ランドルフ | Zilner Randolph |
| Trombone | … | プレストン・ジャクソン | Preston Jackson |
| Clarinet & Alto sax | … | レスター・ブーン | Lester Boone |
| Clarinet , Soprano sax & Alto sax | … | ジョージ・ジェイムス | George James |
| Clarinet & Tenor sax | … | アルバート・ワシントン | Albert Washington |
| Piano | … | チャーリー・アレクサンダー | Charlie Alexander |
| Banjo & Guitar | … | マイク・マッケンドリック | Mike McKendrick |
| Bass | … | ジョン・リンゼイ | John Lindsey |
| Drums | … | タビー・ホール | Tubby hall |
| CD6-13. | 絶体絶命 | Between the devil and the the deep blue sea | 1月25日 |
| CD6-14. | 絶体絶命 | Between the devil and the the deep blue sea | 1月25日 |
| CD6-15. | キッキン・ザ・ゴング・アラウンド | Kickin’ the gong around | 1月25日 |
| CD6-16. | ホーム | Home | 1932月1月27日 |
| CD6-17. | オール・オブ・ミー | All of me | 1932月1月27日 |
| CD6-18. | ラヴ , ユー・ファニー・シング | Love , you funny thing | 1932月3月2日 |
| CD6-19. | ザ・ニュー・タイガー・ラグ | The new tiger rag | 1932月3月11日 |
| CD6-20. | キーピン・アウト・オブ・ミスチーフ・ナウ | Keepin’out of mischief now | 1932月3月11日 |
| CD6-21. | > ロウド、ユー・メイド・ザ・ナイト・トゥ・ロング | Lawd , you made the night too long | 1932月3月11日 |
CD6-13、14.[絶体絶命]
ハロルド・アーレンの作で、1931年のキャブ・キャロウェイの回で登場した曲。1931年10月27日のキャブ盤が初レコーディングということなので、3か月後にはルイが取り上げたことになる。CD6-13がテイク2で、CD6-14がテイク3だという。大和明氏の解説に拠ると、テイク3はあまり出回っていない稀少テイクで、テンポがテイク2よりややゆったりしている。歌の後に出るルイのソロもテンポの違いだけでほとんど同じようなフレイズだが、テイク2の方が整っている。ミュート・ソロの出来もバランスと歌心に溢れており、ラストの12小節をオープンにして吹くアイディアが良いとは大和氏。
CD6-15.[キッキン・ザ・ゴング・アラウンド]
これも大和氏氏の解説に拠れば、1931年に作られたポピュラー・ソングで、ヴォーカルのサビの取り扱いがユニークで、バンジョーのリズムに乗って倍テンポで歌われるスキャットが楽しい。始めから終わりまでルイの一人舞台の演奏である。
CD6-16.[ホーム]
これも大和氏の解説。「ルイのノスタルジックなヴォーカルとTpが共に心のこもった表現で、情感に満ちたフィーリングの素晴らしさを感じさせる。ただサビに出るAsが心を感じさせない表面的なムードだけで全体の雰囲気を損ねているのが惜しい。」
CD6-17.[オール・オブ・ミー]
今でもよく演奏されるスタンダード・ナンバーであるが、1931年にジェラルド・マークスとセイモア・シモンズが作った出来立てのポピュラー・ナンバーだった。
これも以下大和氏の解説。「ルイのTp(歌の前はミュート、後はオープン) とヴォーカルが共に絶好調であり、バックもリズム面を始めとして、そつなくこなしている。またルイ以外にソロを担当するアルバート・ワシントンのテナーも比較的無難にまとめているため、破綻なく進行する。ミュートにおけるルイの歌心は相変わらず素晴らしく、それがそのままヴォーカルにも通じている。そして後半のオープン・ソロはキーを変えて、力強く、しかも流麗に歌い上げており、会心の出来と言っていい。」
この日のセッションではもう1曲(ザ・ニュー・タイガー・ラグ)録音されたが、それは破棄され3月11日に再録音となった。出来が悪かったのだろう。
CD6-18.[ラヴ , ユー・ファニー・シング]
これも大和氏の解説。「相変わらずルイのミュート・ソロは歌心に溢れ、メロディアスに歌うが、なにせバックの伴奏陣が一緒に歌っていなので致命的である。ルイもそう感じたのであろう、サビのサックス・ソリの所で思わず“Bring it out !”と叫んで、サックス・セクションにハッパをかけている。ルイは、ヴォーカルでも心温まる表現をしており、その後は例によってオープン・ソロで大らかに歌い上げる。」
オーケーへの最後の吹込みとなる。
CD6-19.[ザ・ニュー・タイガー・ラグ]
これも大和氏によれば、この曲は31年11月録音の「チャイナタウン・マイ・チャイナタウン」と同質のルイの凄腕ぶりを見せつける形式の演奏である。そしてそれをさらに強調するためにテンポを最高レベルに早め、音楽的感性を犠牲にしてもルイのテクニックを示そうという思惑の演奏になっている。それだけに俗受けを狙ったトリッキーなプレイで、音楽的な心地よさや感動は皆無である。
CD6-20.[キーピン・アウト・オブ・ミスチーフ・ナウ]
珍奇なアルト・ソロやテナー・ソロのもたつきが演奏上の汚点となっているが、ルイのソロやヴォーカルは評価できるレベルにあると大和氏は厳しい。
CD6-21.[ロウド、ユー・メイド・ザ・ナイト・トゥ・ロング]
大和氏は次のように述べる。「最後のオーケー録音となったこの曲は、宗教的な内容を持った歌で、ルイはそうした雰囲気にふさわしい荘重さを表現し、最後のセッションを絞めている。」
この後ルイは4月に再びカリフォルニアのニュー・セバスチャン・コットン・クラブに出演しシカゴを経てニューヨークに戻る。
そしてその直後の7月から11月まで英国巡演を果たすが、これが彼の初渡欧となった。なお渡英中にイギリスの音楽誌「メロディー・メーカー」の編集長から“サッチモ”(サッチェルマウス=がま口の略)というニックネームを貰いその後その愛称が使われるようになる。
そして帰国後12月にルイは大手レコード会社ヴィクターと契約、ここにデビューからのオーケーとの関係が切れたのであった。ディスコグラフィーを見ると、ヴィクターへの初吹込みは1932年12月8日に4面分が行われたのが最初のようであるが、それが収録された音源は持っていない。2回目の録音は12月21日に「メドレー・オブ・アームストロング・ヒッツ」のパート1とパート2が行われた。なぜかパート2の方から録音が行われたようで、それは僕の持っている”The chronogical”シリーズの一つ前のCDに収められていると思われる。
| Trumpet , vocal , speech & conduct | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong | |||
| Trombone | … | チャーリー・ゲインズ | Charlie Gaines | 、 | 不明 | Unknown |
| Alto sax | … | ルイ・ジョーダン | Louis Jordan | 、 | アーサー・ディヴィー | Arthur Davey |
| Tenor sax | … | エルスワース・ブレイク | Ellsworth Blake | |||
| Piano , Banjo & Guitar | … | ウェズリー・ロビンソン | Wesley Robinson | |||
| Tuba | … | エド・ヘイズ | Ed Hayes | |||
| Drums | … | ベニー・ヒル | Benny Hill |
| CD1. | メドレー・オブ・アームストロング・ヒッツ パート1 | Medley of Armstrong hits part1 |
このヒット・メドレーと題して取り上げられた曲は”You rascal you”、”Nobody's sweetheart”、”When it's sleepy time down south”の3曲で、当時これらがサッチモのヒット曲と認識されていたということであろう。サッチモの語りから始まる。2曲目”Nobody's sweetheart”の途中でソロを取るがさすがに貫禄が違う。ソロの後短いドラム・ソロがあり、次曲へつなぐ。最後の”When it's sleepy time down south”はインストのみで短い演奏である。