ルイ・アームストロング 1934年

Louis Armstrong 1934

1934年は、油井正一氏の言うサッチモのキャリアの最悪の第3期(1931〜1935年)に当たります。またボックス「ルイ・アームストロングの黄金時代」ボックスでも「終わった人」扱いで、1932年以降についての動向については全くと言っていい触れていません。ガンサー・シュラー氏も評論を展開しているのは、1931年のロスアンゼルスにおける録音まででその後については、「ルイは既に自らの貢献を成し遂げた。つまり授業料を払え終えたのであり、今度はそのお返しを享受することを望んだ」と述べ、完全に終わった人扱いである。
ともかく1934年の録音データを見ると、まず一緒に演奏しているメンバーを見て驚いた。知っている人が一人もいない。ピアノのハーマン・チッチソンを除いて一人も「ジャズ人名辞典」に載っていないのである。どういうことだと思ってよく見ると今回の録音はフランスのパリで行われていた。どうも地元のミュージシャンを起用しての録音だったようだ。
ルイは1933年4月まではシカゴにいてレコーディングなどをこなしていたようだが、ディスコグラフィーによれば、前回4月26日シカゴで行われた録音の次は、約半年後の10月21日デンマークのコペンハーゲンでレコーディングを行い、さらに10月28日にはスウェーデンのストックホルムでレコーディングでレコーディングを行っている。コペンハーゲンでの録音時のパーソネルは記載されていないが、ストックホルムでの録音のパーソネルを見るとTpの一人を除いて、今回の録音に参加しているメンバーである。もしかするとルイは1933年10月からヨーロッパに滞在し、各地で公演を行ったり、レコーディングに参加したりしていたのかもしれない。
因みにルイの1934年のレコーディングはこの1回のみで、それはThe ChronogicalCDの解説とディスコグラフィーの記載が一致している。

<Date & Place> … 1934月10月 パリにて録音

<Personnel> … ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オーケストラ(Louis Armstrong & his orchestra )

Trumpet , Vocal & Band leaderルイ・アームストロングLouis Armstrong
Trumpetジャック・ハミルトンJack Hamiltonレスリー・トンプソンLeslie Thompson
Tromboneライオネル・ギマラエスLionel Guimaraes
Clarinet & Alto saxピート・ドゥコンジPete Duconge
Alto saxヘンリー・タイリーHenry Tyree
Tenor saxアルフレッド・プラッツAlfred Pratt
Pianoハーマン・チッチソンHerman Chittison
Guitarメイシオ・ジェファーソンMaceo Jefferson
Bassジャーマン・アラゴGerman Arago
Drumsオリヴァー・タインズOliver Tines

<Contents> … "Louis Armstrong/The Chronogical 1934-1936"(Classics 509)

CD-1.セント・ルイス・ブルースSt. Louis blues
CD-2.タイガー・ラグTiger rag
CD-3.ウィル・ユー、ウォント・ユー・ビー・マイ・ベイビー?Will you , won't you be my baby ?
CD-4.明るい表通りでOn the sunny side of the street
CD-5.セント・ルイス・ブルースSt. Louis blues
CD-6.ソング・オブ・ザ・ヴァイパーズSong of the vipers

CD-1、5.[セント・ルイス・ブルース]
おなじみのW.C.ハンディ作の有名曲だが、CD-1、CD-6共構成は同じで、速めのテンポで始まり、Aメロはルイ、BメロはTbがソロを吹く。ルイのヴォーカルの後ソロは、ソロはTb⇒Cl⇒⇒P⇒Ts⇒Tp(ルイ)。ルイはCD-1ではドヴォルザークの「新世界」やアメリカの作曲家フォスターの「スワニー川」、CD-6では同じくドヴォルザークの「新世界」から同じくフォスターの「草競馬」の一節などを引用しながらユーモラスに吹き上げ、エンディングは高音連発でバックとコール・アンド・レスポンス的展開を見せる。ヴォーカルは、キャブ・キャロウェイに近いような感じがする。目玉を向いて歌っている姿が目に浮かぶ。黒人によるアメリカン・エンターテイメントを代表するような仕上がりだと思う。
CD-2.[タイガー・ラグ]
クラリネットが大活躍する。地元の実力ミュージシャンがアメリカから来た本物のジャズの大スターの胸を借りて、ニューオリンズ・スタイルに挑戦するという絵であろう。しかしこういう場でもルイのTpは冴え渡っている。エンディングがスイング風のリフになるところが面白い。
CD-3.[ウィル・ユー、ウォント・ユー・ビー・マイ・ベイビー?]
「マッキニーズ・コットン・ピッカーズ」の曲のようだが、ここでルイに取り上げられて有名になった曲。前曲に続いてインスト・ナンバーだが、ルイの掛け声とちょっとしたスキャットが入る。こちらはアンサンブルが中心で前曲と異なりいかにもスイング時代という感じである。
CD-4.[明るい表通りで]
日本ではNHKの朝の連ドラ「カム・カム・エヴリバディ」で有名になった。ルイのヴォーカルをフューチャーしたナンバー。エンディングもルイが高音連発のカデンツァで締め括る。
CD-6.[ソング・オブ・ザ・ヴァイパーズ]
ルイ自身の作。トロンボーンのソロなどもあるがやはり中心はルイのTpソロ。ルイの掛け声などが入ったりアンサンブルの前半部のちょっと込み入ったブレイク、エンディングのリフなどルイが現地ミュージシャンに稽古をつけているような感じの曲に聴こえてしまう。

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