ルイは1933年8月にイギリスに渡り、10月21日にはデンマーク・コペンハーゲンでショート・フィルムに出演し、ついでスウェーデンのストックホルムでもその足跡を残し、さらに1934年10月にフランス・パリでレコーディングをしている。その後ルイはそのままパリに滞在し、長い休暇を楽しんだという。
翌1935年1月にアメリカに戻り、新たにジョー・グレイサーがマネージャーとなった。そして今回の録音が行われる1935年10月からルイ・ラッセルのバンドをバックに従えるようになったという。ルイ・ラッセルのバンドは一時期最もニューヨークで力のあるバンドと言われたこともある実力派である。そして新たにデッカとレコーディング契約を交わし、吹込みを開始する。
しかし1月に帰国した後10月までルイは何をしていたのだろう。その間にアメリカの音楽シーンは激変を遂げる。ベニー・グッドマンという白人率いるバンドが爆発的な人気を得て、全米中を席捲しているのを目の当たりしてどんな思いを抱いただろうか。それもかつて自分だ在団したこともあるニューヨークの名門バンドの棟梁、フレッチャー・ヘンダーソンをアレンジャーとして抱え込んで、白人が「スイング・ミュージック」なる新語を掲げて受けまくっているのを見て何を思ったのだろうか。
The Chronogical “Louis Armstrong and his orchestra 1934-1936”classics 509
| Trumpet , Vocal & Band leader | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong | ||||||
| Trumpet | … | レオナード・ディヴィス | Leonard Davis | 、 | ガス・エイキン | Gus Aiken | 、 | ルイ・ベイコン | Louis Bacon |
| Trombone | … | ハリー・ホワイト | Harry White | 、 | ジミー・アーチ― | Jimmy Archey | |||
| Alto sax | … | ヘンリー・ジョーンズ | Henry Jones | 、 | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes | |||
| Clarinet & Tenor sax | … | ビンギー・マディソン | Bingie Madison | ||||||
| Tenor sax | … | グリーリー・ウォルトン | Greely Walton | ||||||
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | ||||||
| Guitar | … | リー・ブレア | Lee Blair | ||||||
| String Bass | … | ポップス・フォスター | Pops Foster | ||||||
| Drums & Vibraphone | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
ルイは生涯自己の固定的なバンドというものを持たなかった。このバンドももともとはルイ・ラッセルがリーダーを務めていたバンドだった。それをどのような事情でルイは傘下に置くようになったのだろうか?フレッチャー・ヘンダーソンに見られるように、大分明るい兆しが差し始めたと言っても不況から立ち直りきっていないこの時期、やはりバンド経営は難しくルイのようなスターが必要だったのであろうか?
いずれにせよ1935年に行われる録音は全てこのメンバーを従えてのものとなる。
| CD-7 | 恋の気分で | I'm in the mood for love | 10月3日 |
| CD-8 | ユーアー・マイ・ラッキー・スター | You are my lucky star | 10月3日 |
| CD-9 | ラ・クカラーチャ | La Cucaracha | 10月3日 |
| CD-10 | ガット・ア・ブラン・ニュー・スーツ | Got a bran’new suit | 10月3日 |
| CD-11 | アイヴ・ガット・マイ・フィンガーズ・クロスド | I've got my fingers crossed | 11月21日 |
| CD-12 | オール・マン・モーゼ | Ol' man Mose | 11月21日 |
| CD-13 | アイム・シューティング・ハイ | I'm shooting high | 11月21日 |
| CD-14 | (ウォズ・アイ・トゥ・ブレイム・フォー)フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ユー | (Was I to blame for) Falling in love with you | 11月21日 |
| CD-15 | 夕日に赤い帆 | Red sails in the sunset | 12月13日 |
| CD-16 | オン・トレジャー・アイランド | On treasure island | 12月13日 |
| CD-17 | サンクス・ア・ミリオン | Thanks a million | 12月19日 |
| CD-18 | シュー・シャイン・ボーイ | Shoe shine boy | 12月19日 |
| CD-19 | ソリチュード | Solitude | 12月19日 |
| CD-20 | アイ・ホープ・ガブリエル・ライクス・マイ・ミュージック | I hope Gabriel likes my music | 12月19日 |
全体としては、完全にコマーシャリズムに乗っかったポップス・ナンバー集である。ジョン・ハモンド氏のアドヴァイスとはいえ、コマーシャル風を避けスイングに重点を置いたベニー・グッドマンと異なり、マネージャーのジョー・グレイサーはとことんポップス路線を狙っていると思われる。