ルイ・ラッセル 1926年

Luis Russell 1926

[Luis Russell/29th and dearborn]SP盤

ルイ・ラッセルはキング・オリヴァーズ・ディキシー・シンコペイターズのピアニストであるが、スイングジャーナル社1971年発行の『ジャズ人名辞典』には、「27年に自己のバンドを率いるに至る」とある。しかしラッセルには自己名義の録音を1926年に行っている。
ラッセルの加わったシンコペイターズの初録音は1926年3月11に行われているヴォカリオンへの吹込みである。しかしその前日ラッセルは自己名義のバンド「ホット・シックス」(どこかで聞いたことがあるような)を率いて同じヴォカリオンへ吹込みを行っているのである。
そして驚く(?)ことに翌日のオリヴァーのバンドとは自身を入れて4人が重複している(オリィ、ニコラス、ビガード、ラッセル)。そしてバンド名「ホット・シックス」は、ルイの「ホット・ファイヴ」(ホット・セヴンはまだ動き出していない)の向こうを張ったとしか考えられず、さらにメンバーもオリィ、サンシールはカブっている。逆に考えると当時シカゴでは、オリィとサンシールがどれほど引っ張りだこだったかということが分かる。
しかし、残念なことに同じルイでもアームストロングの方の「ホット・ファイヴ」、オリヴァーの「ディキシー・シンコペイターズ」、さらにモートンの「レッド・ホット・ペッパーズ」のように取り上げられることのないラッセルの「ホット・シックス」。いったいどんなバンドだったのであろうか?
また同日は女性ブルース・シンガー、エイダ・ブラウンの伴奏も務めている。僕の知る限り(かなり狭いが)ラッセルが「ホット・シックス」というバンド名を使用したのは後にも先にもこの時だけである。ちょっとしたシャレ、おふざけであった可能性も高い。

「Luis Russell and his orchestra 1926-1929」CDジャケット

<Date & Place> … 1926年3月10日シカゴにて録音

<Personnel> … ラッセルズ・ホット・シックス (Russell’s hot six)

Piano & Band leaderルイ・ラッセルLuis Russell
Cornetジョージ・ミッチェルGeorge Mitchell
Tromboneキッド・オリーKid Ory
Clarinet , Soprano & Alto saxアルバート・ニコラスAlbert Nicholas
Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Banjoジョニー・サンシールJohnny St. Cyr

<Contents> … "Luis Russell and his orchestra 1926-1929"(The chronological 588)

CD-1.トエンティナインス・アンド・ディアボーン29th and dearborn
CD-2.スイート・マンタズ‘Sweet Mumtaz

メンバー的には申し分ないと思うのだが、出来は普通という感じがする。しかし2曲ともタイトルの意味がよく分からない。リーダーだからと言って中心となってソロを取るわけでもない。特に2曲目「スイート・マンタズ」ではピアノの音がほとんど聞こえない。”レッツ・ゴー、レッツ・ゴー”という掛け声を入れたり、ハミングなどが聞こえるがこれは、シカゴで数々のレコーディングにプロデューサーとして参加したリチャード・M・ジョーンズだという。

<Date & Place> … 1926年3月10日シカゴにて録音

<Personnel> … アイダ・ブラウン (Ada Brown)

Vocalアイダ・ブラウンAda Brown
Cornetジョージ・ミッチェルGeorge Mitchell
Clarinet & Alto saxアルバート・ニコラスAlbert Nicholas
Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Banjoジョニー・サンシールJohnny St. Cyr

<Contents> … "Luis Russell and his orchestra 1926-1929"(The chronological 588)

CD-3.パナマ・リミティッド・ブルースPanama limited blues
CD-4.ティア・ユアナ・マンTia Juana man

同日行われたエイダ・ブラウンの歌伴2曲。エイダ・ブラウンは1890年生まれのヴェテラン・ブルース・シンガー。3曲目「パナマ・リミティッド・ブルース」はタイトル通りのブルースで、堂々としたブルース・シンギングを聴かせる。ミッチェルのソロもブルース・ソロの教科書のようなプレイである。
4曲目「ティア・ユアナ・マン」はブルース・ナンバーだがタンゴのようなリズム・パターンを取っているのが珍しい。

「King Oliver's Dixie syncopators」CDジャケット

<Date & Place> … 1926年3月11日〜5月29日 シカゴにて録音

<Personnel> … キング・オリヴァーズ・ディキシー・シンコペイターズ(King Oliver's dixie syncopators)

Cornetジョー・キング・オリヴァーJoe“King”Oliverボブ・ショフナーBob Shoffner
Tromboneキッド・オリーKid Ory
Clarinet & Alto saxアルバート・ニコラスAlbert Nicholasビリー・ペイジBilly Payge
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Banjoバッド・スコットBud Scott
Tubaバート・コブBert Cobb
Drumsポール・バーバリンPaul Barbarin

<Contents> … CD…”King Oliver/Sugar foot stomp”( Decca GRD-616)&レコード…”King Oliver's Dixie Syncopators 1926-1928”(MCA-1309)

CD-1.トゥー・バッドToo bad3月11日
A面1、CD-2.スナッグ・イットSnag it3月11日
A面2、CD-3.ディープ・ヘンダーソンDeep Henderson4月21日
A面3、CD-4.ジャッカス・ブルースJackass blues4月23日
A面4、CD-5.シュガー・フット・ストンプSugar foot stomp5月29日
A面5、CD-6.ワー・ワー・ワーWa-wa-wa5月29日
「King Oliver's Dixie syncopators」レコード・ジャケット

まずこの時期のオリヴァーのレコードは3種類持っている。一番曲数が収録されているのがCDなので、CDを中心に聴くことになるが困ったことに少しずつ3種類で表記が異なるところがある。細かいところなので大勢には影響はないと思うのだが、こういうことが気になる性格なので…。
コルネットのボブ・ショフナーだが、MCA盤とCDは<Bob Shoffner>だがBrunswick盤では<Bob Shaffner>
クラリネットなどのビリー・ペイジだが、MCA盤とCDは<Billy Payge>だがBrunswick盤では<Billy Page>などである。
まず最初の録音は3月11日で2面分行われている。
CD-1.トゥー・バッド
Brunswickの10inch盤とCDに収録されている。最初にソロを取るのはテナー・サックスと思われるが、ということは吹いているのはバーニー・ビガードなのであろう。コールマン・ホーキンスが1923年の吹込みで行っていたようなスラップ・タンギング奏法で吹いているのが興味深い。サウンドはフレッチャー・ヘンダーソン楽団の1924年くらいの録音と似ているような気がする。
コルネットは2本聴こえる(1本はトランペットかもしれない)。1本はミュートでもう1本はオープンで吹いているが、ソロを取るのはミュート方なのでこちらがオリバーなのだろう。なかなかテクニカルのソロである。
A面-1、CD-2.スナッグ・イット
オリヴァー作としては最もよく知られるブルース・ナンバーの一つだそうで、その最初のヴァージョンだという。ソロ・オーダーはオリヴァー、オリィ、ニコラス(Cl)、ピアノをバックにヴォーカルが入り、今一度コルネットのソロが入る。ピアノを弾いているのは、リチャード・M・ジョーンズで、MCA盤ではヴォーカルはオリヴァーとなっているが、CDではリチャード・M・ジョーンズが歌っていると記載している。この辺りはさすがにオリヴァーらしきコルネットがよく聴こえる。いい演奏だと思う。ブレイクでのプレイも面白い。
A面-2、CD-3.ディープ・ヘンダーソン
途中のヴォーカルはルイ・ラッセルとポール・バーバリンだという。オリヴァーのプレイがフューチャーされたナンバーという。オープンがオリヴァーか?
A面-3、CD-4.ジャッカス・ブルース
ジョージア・テイラー(Georgia Taylor)という女性がヴォーカルに加わる。ここでも主役のオリヴァーのコルネットが活躍している。
A面-4、CD-5.シュガー・フット・ストンプ
ここでの注目は「シュガー・フット・ストンプ」であろう。

この曲は元々は「ディッパー・マウス・ブルース」で作者はオリヴァーだという。しかしヘンダーソン楽団ではドン・レッドマンが16小節のクラリネット合奏部を追加し「シュガー・フット・ストンプ」と名前を変えたと瀬川氏が述べている。その「シュガー・フット・ストンプ」を作者のオリヴァーが取り上げたのである。しかし構造はまるで違う。
ヘンダーソン楽団では、
イントロの後、テーマの12小節×2コーラスの後、クラリネット合奏16小節、ルイではないらしいコルネット・ソロが1コーラス入り、ルイが3コーラスのソロを吹くが、これが瀬川氏の言うように素晴らしい。そして16小節のクラリネット合奏、そしてテーマの合奏に戻る。
一方、ディキシー・シンコペイターズでは、ドン・レッドマンの16小節は演奏されない。
イントロの後、テーマの12小節×2コーラスの後、クラリネット・ソロ12小節×2コーラス、トロンボーン・ソロ12小節×2コーラス、ミュートによるコルネット・ソロ12小節×3コーラスの後テーマの合奏に移る。
ルイ、オリヴァーどちらのソロでもバックにアンサンブルのブレイクが入る箇所があるが、オリヴァーのバックは捏ねくり過ぎで落ち着かないし、アンサンブルの<切れ>が悪い。レッドマンの16小節を使わないなら「ディッパー・マウス・ブルース」で良いのに…と思ってしまう。
A面-5、CD-6.ワー・ワー・ワー
最初に出るオリヴァーのソロは素晴らしい。さすがである。

レコードには1926年の演奏はここまでの5曲しか収められておらず、後はCDのみの収録であるが、若干メンバーの移動がある。リード・セクションのアルバート・ニコラスとビリー・ペイジが抜け、ポール・スタンプ・エヴァンズとダーネル・ハワードが加わっている。

「King Oliver/Sugar foot stomp」CD

<Date & Place> … 1926年7月23日、9月17日 シカゴにて録音

<Personnel> … キング・オリヴァーズ・ディキシー・シンコペイターズ(King Oliver's dixie syncopators)

Cornetジョー・キング・オリヴァーJoe“King”Oliverボブ・ショフナーBob Shoffner
Tromboneキッド・オリーKid Ory
Soprano & Alto saxポール・“スタンプ”・エヴァンスPaul“Stamp”Evans
Clarinet & Alto saxダーネル・ハワードDarnell Howard
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Banjoバッド・スコットBud Scott
Tubaバート・コブBert Cobb
Drumsポール・バーバリンPaul Barbarin

<Contents> … ”King Oliver/Sugar foot stomp”( Decca GRD-616)

CD-7.タック・アニーTack Annie7月23日
CD-8.サムディ・スィートハートSomeday sweetheart9月17日
CD-9.デッド・マン・ブルースDead man blues9月17日
CD-10.ニュー・ワン・ワン・ブルースNew wang wang blues9月17日
CD-11.スナッグ・イットSnag it9月17日

CD-7.タック・アニー
アルト・サックス、クラリネット、トロンボーンのソロが入り、最後に入るコルネット・ソロがオリヴァーかな?
CD-8.サムディ・スィートハート
オリヴァーの吹込みの中では最も売れたナンバーであるというが、ヒット・チャートにはランクされていない。ゲスト・ソロイストとしてジョニー・ドッズが加わっている。優しいハート・ウォーミングなナンバーである。オリヴァーのミュート・ソロ、チューバのソロの後のアルト・サックスとドッズのクラリネットのソロが素晴らしい。
CD-9.デッド・マン・ブルース
「死んだ男のブルース」という不吉なタイトルのこの曲は、そのタイトル通り不吉なイントロで始まっている。ジェリー・ロール・モートンの作。コルネット・ソロの後バド・スコットのバンジョー・ソロ、クラリネット・ソロ等が続き、エンディングは最初のテーマに戻る。
4日後の9月21日モートン自身もヴィクターのこの曲を吹き込んでいる。聴き比べるとこの曲に対する意識の違いが判って面白い。オリィ、ビガード、ハワードと3人もメンバーが被っているのも興味深い。
CD-10.ニュー・ワン・ワン・ブルース
”New”が付いているということは、”Old”は何かというと、ポール・ホワイトマン楽団でヒットしたものであろう。この後1929年ベ二ー・グッドマンが在団したベン・ポラックのバンドが1929年に”Wang-wang blues”を吹き込んでいる。
CD-11.スナッグ・イット
A面1、CD-2.「スナッグ・イット」の再吹込みとなる。残念ながら最初の吹込みを越えるものとはなっていないと思う。

さて、ラッセル名義の次の吹込みは約8か月後の11月17日に行われる。この前日には大傑作「ビッグ・バター・アンド・エッグ・マン」を含む4曲がアームストロングのホット・ファイヴによってオーケーに吹き込まれている。
前日のホット・ファイヴの録音に参加したオリィがこの日は参加しておらずTbはプレストン・ジャクソンが吹いている。オリヴァーのシンコペイターズは1926年最後の録音は9月17日で次は1927年4月までない。ルイの1926年最後の11月27日の録音にもオリィは参加しておらず、CD解説の大和明氏はオリヴァーがオリヴァーとともにニューヨークに旅立ったからであるとしている。いつオリヴァーはニューヨークに向かい、いつ戻って来たのであろうか?ともかく次回1927年4月録音もシカゴで行われている。

「ルイ・ラッセル」CD

<Date & Place> … 1926年11月17日 シカゴにて録音

<Personnel>…ルイ・ラッセルズ・ヒービー・ジービー・ストンパーズ (Luis Russell’heebie jeebie stompers)

Piano & Band leaderルイ・ラッセルLuis Russell
Cornetボブ・ショフナーBob Shoffner
Tromboneプレストン・ジャクソンPreston Jackson
Clarinet & Alto saxダーネル・ハワードDarnell Howard
Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Banjoジョニー・サンシールJohnny St. Cyr

<Contents> … "Luis Russell and his orchestra 1926-1929"(The chronological 588)

CD-5.プランテーション・ジョイズPlantation joys
CD-6.プリーズ・ドント・ターン・ミー・ダウンPlease don’t turn me down
CD-7.スイート・マンタズ‘Sweet Mumtaz
CD-8.ドリー・マインDolly mine

当時のバンドのことは残念ながらあまり知らないが、多分プロとしての平均少し上という感じはないか?不思議なのはCD-5、6ではリーダー、ラッセルのピアノ・ソロどころか音さえあまり聞こえない。
CD-7. スイート・マンタズは3月に一度録音しているので再録音。ピアノのイントロで始まるが、ピアノが活躍するのはそこまでであとは音さえも余り聞こえない。リズムは8か月前と同様タンゴっぽいリズム。もしかするとこのリズムで当時人気があった演奏だったのかもしれない。
CD-8「ドリー・マイン」に至って初めてピアノがソロを取る。

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