さて、ルイ・ラッセルの1929年の録音を聴いていこう。ルイ・ラッセル名義のこの前の録音というと1926年の録音である。しかしラッセル、及びその楽団員の参加した録音はというと1928年9月のキング・オリヴァー名義の録音に参加している。僕はオリヴァーの録音をこの1928年9月以降持っていない。オリヴァーはこの後もバンドを継続したようだが、それはラッセル達とは無縁のバンドだったようだ。ともかく1929年は初頭からラッセルは自身のバンドを率いて録音活動を行っている。
ところでこのルイ・ラッセルという人物とその活動について紹介している本などは極めて少ない。彼の項を設けている書物は見たことが無い。そこで僕が感じるルイ・ラッセルという人物像を書いてみよう。それは一言で言えば、「ちょっとした人物」ということである。この「ちょっとした人物」をどう捉えられるか心配な面もあるが、そのココロは、
先ず彼は、ルイ・アームストロングやデューク・エリントンのような以後のジャズの世界を大きく切り開くような大きな業績を残したというわけではない。しかし油井正一氏が切って捨てるような「その他大勢」でもない。また、ビックス・バイダーベックやフランク・テッシュメーカー、ジョー・スミスといったようにジャズ史上に燦然と輝く名演を残したわけでもない。彼は、プレイヤーとして劣るということではないが、どちらかと言えばバンド運営、ミュージシャン同士のつなぎ役などということに秀でていたのではないかと思う。そういった意味で「ちょっとした人物」と思うのだ。ほぼこの時代の同様のことを、ベッシー・スミスの伴奏をしたり、ルイ・アームストロングの最初のニューヨーク時代にいろいろと面倒を見たクラレンス・ウィリアムズにも感じてしまう。
確かに名ソロは残さなかったかもしれないが、そういったフィクサーのような人物は、それぞれの業界には絶対に必要だと思うのである。
| Piano & Band leader | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell |
| Trumpet | … | ルイ・メトカルフ | Louis Metcalf |
| Trombone | … | J.C.ヒギンバサム | J.C. Higginbotham |
| Clarinet & Alto sax | … | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes |
| Tenor sax | … | テディ・ヒル | Teddy Hill |
| Banjo & Guitar | … | ウィル・ジョンソン | Will Johnson |
| Tuba | … | ウィリアム・“ベース”・ムーア | William “Bass” Moore |
| Drums | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
| Vocal only No.11 | … | ウォルター・ピション | Walter Pichon |
| CD-9. | サヴォイ・シャウト | Savoy shout |
| CD-10. | ザ・コール・オブ・ザ・フリークス | The call of the freaks |
| CD-11. | イッツ・タイト・ライク・ザット | It’s tight like that |
バンド名は「バーニング・エイト(Burning eight)」、「燃える8人集」である。メンバーを見ると、実は全員シンコペイターズにも参加していた面々である。ラッセルがオリヴァーのバンドを引き継いだといわれるのも由なしとは言えない。そしてそれぞれが後に著名になる面々である。全体のサウンド的には、オリヴァーのシンコペイターズに似ている感じがする。
CD-9.サヴォイ・シャウト
ホルムズのCl、バサムのTb、メトカルフTp、ラッセルのPとそれぞれ聴き応えのあるソロが続く。
CD-10.ザ・コール・オブ・ザ・フリークス
かなり変わった曲で、同じリズム・パターンを繰り返し、Tpソロなどを乗っけていく。ウィル・ジョンソンの単音によるギター・ソロも入る。
CD-11.イッツ・タイト・ライク・ザット
唯一ヴォーカル入りの曲で、歌っているのはファッツ・ピションことウォルター・ピションである。ウォルター・ピションは太っているから”Fats”と呼ばれたようで、ニュー・オリンズで活躍中のピアニスト兼ヴォーカリスト。ニュー・オリンズの「ファッツ・ウォーラー」という感じだろう。たまたまニュー・ヨークに来ていて参加することになったようだ。タイトルも曲も前年のルイ・アームストロングとドン・レッドマンの「タイト・ライク・ディス」に似ている感じがする。
| Trumpet , Vocal & Band leader | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong | |||
| Trombone | … | J.C.ヒギンボッサム | J.C. Higginbotham | |||
| Alto sax | … | アルバート・ニコラス | Albert Nicholas | 、 | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes |
| Tenor sax | … | テディ・ヒル | Teddy Hill | |||
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | |||
| Banjo CD4-1,2 only | … | エディ・コンドン | Eddie Condon | |||
| Guitar CD4-3 only | … | ロニー・ジョンソン | Lonnie Johnson | |||
| String Bass | … | ポップス・フォスター | Pops Foster | |||
| Drums | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
| CD4-1. | 捧げるは愛のみ | I’cant give you anything but love |
| CD4-2. | 捧げるは愛のみ | I’cant give you anything but love |
| CD4-3. | マホガニー・ホール・ストンプ | Mahogany hall stomp |
この録音はルイ・アームストロング(以下サッチモ)と被るが、そもそもはラッセルのバンドにサッチモが客演した形になっている。サッチモ、エディ・コンドン、ロニー・ジョンソン以外はラッセルのバンドのメンバー。同日録音のコンドンが音頭を取った「壺を叩いて」にコンドンが参加せず、エディ・ラングが録音に加わり、こちらラッセルとの録音の「捧げるは愛のみ」にはコンドン、「マホガニー・ホール・ストンプ」にはロニー・ジョンソンが加わっている。
CD4-1.捧げるは愛のみ
CD解説の大和氏は、最初のコーラスの後半にヒギンバサムがソロを取る以外はルイの独壇場で、テーマ部前半でのミュート・プレイが実にリリカルな味を出し、そのヴォーカルも彼が初めてバラード・シンガーとしての実力を示したものと言える。その後今度はオープンで、歌の前とは対照的に力強く、そしてラストは高音をヒットし、3段階の表現でまとめ上げるという創意を示している。また終止バックはソフトでメロディアスなサックス・ソリを流し、ここでも対照の妙を表している。
CD4-2.捧げるは愛のみ
大和氏は、この曲は珍しい別テイクで、ヒギンバサムのソロ、ルイのヴォーカル、歌の後の彼のTpソロの部分部分にフレイズの違いを聴き取れよう、と述べている
一方ガンサー・シュラー氏は、次の「マホガニー・ホール・ストンプ」を素晴らしいとして、本作(『捧げるは愛のみ』)の面白くない演奏を録音した直後に、ほっとした気持ちで演奏に取り組めたからではあるまいか」と厳しいというよりいささか失礼な言い回しで貶している。
この”I can't give you anything but love”は、ジミー・マクヒュー作曲、ドロシー・フィールズ作詞で、前年1928年1月ブロードウェイで公演が開始された「Blackbird」の挿入歌。とても覚えやすいメロディーで1890〜1954年の間で最もレコーディングされた曲100選にも選ばれた名曲。いわゆる最新の流行歌を取り上げたということができるだろう。そしてその歌詞に合わせて、実にロマンティックな味付けがなされた演奏となっている。ダンス・ホールのチーク・タイムなどには正にうってつけのムードに満ちている。
演奏の構成は大和氏の記述する通りで特に付け加えることはない。問題はこういう演奏をどう評価するかということである。確かにムーディーでソフトなアンサンブルをバックに時にリリカルに、時に力強く吹き上げるルイのトランペットは見事の一言に尽きるが、かつてジャズの革命児としてジャズの新境地を切り開いてきたルイを愛するコアなジャズ・ファンにとっては、ルイもコマーシャリズムに堕したかという思いもあるであろう。しかし僕は、こういう演奏こそがジャズを一般の人々、それは上流階級をも含んでダンス音楽としてかもしれないが、ジャズを知らしめることになったのではないかと思う。このことからこの演奏を聴いて、これこそがジャズであると考える人もいるのではないかと思うのである。ベニー・グッドマンの全盛時代、グレン・ミラーなどの音楽に通ずる音楽である。
マホガニー・ホール・ストンプ
大和明氏は、この曲は傑作の一つと言ってよいとし、「最初の16小節のテーマでのルイはサトルな表現を示し、そのままセカンド・テーマである12小節のブルースへと続ける。チャーリー・ホームズ(As)、ロニー・ジョンソン(Gt)のソロを経て、その後にルイが3コーラスに渡る素晴らしいソロを取る。最初のコーラスは彼がメロディックな変奏の妙を発揮し、次のコーラスは一音でディミニッシェンドからクレッシェンドへと展開させ、3コーラス目は典型的なニューオリンズ・リフを最後まで力強く区切って吹くことによって、三様の表現をするとともに、表現の調和をも達成するという見事なプレイをしている。
その後は、ヒギンボッサムが出て、最後は再びルイのスインギーでメロディックなプレイで締めくくっている」と述べている。
さらにシュラー氏も先に述べたようにこの作品を高く評価し次のように述べる。「これはルイの最良のレコードの一つで、それ以外にもいくつかの点で独特な作品である。ルイが弦ベースと共に行った最初の録音であり、それだけにベース楽器なしにせよ、チューバを用いたものにせよ、彼の過去の録音のどれよりも革新的な「スイング感」を示す。逆説的なことに、ポップス・フォスターのベース・ラインは、最初二つの16小節のコーラスが半即興的な背景のものだったので、それとの結びつきで、20年代のより大きな編成のニューオリンズのバンド(とりわけサム・モ−ガンの「ボガルサ・ストラット」のような録音)の持つ暖かい感情とテクスチュアを完璧に思い起こさせるところがある。これに参加したニューオリンズ出身の6人の演奏家、ルイ、ニコラス、フォスター、バーバリン、ジョンソン、ラッセルというリズム・セクションの4/5を含むことになるメンバーにとっては懐旧の想い以上のものがあったろう。それにとどまらない。ルイ、ニコラス、バーバリン、ラッセルは全員ニューオリンズのアンダーソンズ・アネックスの店では同じバンドで演奏していた仲間だった。このため1929年のこのニューヨークでの録音は昔仲間の再会の趣があって、バンドは本物のニューオリンズ魂を完璧にとらえたものとなっている」と。
この演奏でシュラー氏のように、これこそニューオリンズ魂と感じる人がどれほどいるか分からない。自分も分からない。しかしこれはシュラー氏の見識が深いということなのかもしれない。
大和氏、シュラー氏ともかなり複雑なことを述べているが、そのようなことを全く省みなくてもこの演奏は素晴らしいと思う。ルイが素晴らしいのは勿論だが、ヒギンバサムのTb、ホルムズのAsも実に歌っていて素晴らしいと思う。
| Trumpet | … | ルイ・メトカルフ | Louis Metcalf |
| Trombone | … | ヘンリー・ヒックス | Henry Hicks |
| Clarinet & Alto sax | … | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes |
| Tenor sax | … | チャーリー・グライムス | Charlie Grimes |
| Piano & Celesta | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell |
| Banjo | … | エルマー・スノウデン | Elmer Snowden |
| Tuba | … | ヘンリー・エドワーズ | Henry Edwards |
| CD-12. | アフリカン・ジャングル | African jungle |
| CD-13. | スロゥ・アズ・モラセズ | Slow as Molasses |
そもそもこのジャングル・タウン・ストンパーズというバンドがよく分からない。ラッセルがリーダーだったようには思えない。このメンバーで最も大物は誰かと言えば、バンジョーのエルマー・スノウデンであろう。スノウデンはデューク・エリントンとの因縁が深いことで有名だが、この時代には大変に人気があったミュージシャンだったというので、オーケーがスノウデンのために集めた面子なのかもしれない。
>CD-12.アフリカン・ジャングル
まずソロを取るのはトロンボーン、そしてアルト・サックス、トランペットと続く。短いがそれぞれしっかりとしたソロである。ラッセルは全く目立たず、スノウデンのしっかりとしたリズムの刻みが聴かれる。
CD-13.スロゥ・アズ・モラセズ]
トランペットのリードするアンサンブルの後メトカルフが、エリントンの楽団で仕込まれたのだろうかミュートでソロを取る。続いてラッセルのチェレスタ、ヒックスのトロンボーン、ホルムズのクラリネット、再びメトカルフのオープン・ソロからエンディングのアンサンブルに入る。
| Piano & Band leader | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | |||
| Trumpet | … | ヘンリー・アレン | Henry Allen | 、 | ビル・コールマン | Bill Coleman |
| Trombone | … | J.C.ヒギンバサム | J.C. Higginbotham | |||
| Clarinet & Alto sax | … | アルバート・ニコラス | Albert Nicholas | |||
| Clarinet & Alto sax | … | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes | |||
| Tenor sax | … | テディ・ヒル | Teddy Hill | |||
| Banjo & Guitar | … | ウィル・ジョンソン | Will Johnson | |||
| String Bass | … | ポップス・フォスター | Pops Foster | |||
| Drums & Vibraphone | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin |
| CD-14. | ザ・ニュー・コール・オブ・ザ・フリークス | The new call of the freaks |
| CD-15. | フィーリン・ザ・スピリット | Feelin’ the spilit |
| CD-16. | ジャージー・ライトニング | Jersey lightning |
CD-14.ザ・ニュー・コール・オブ・ザ・フリークス
CD-10のニュー・ヴァージョンである。サウンド的には、前作では低音部をチューバが担っていたのに対してこちらではストリング・ベース、いわゆるウッド・ベースが担っている。異様な感じはチューバの方が強調されていると思うが、バーバリンのヴァイブラフォンが雰囲気づくりに貢献している。
またこちらはヴォーカル・コーラス入りで、メンバーはヘンリー・レッド・アレン、J.C.ヒギンバサム、ルイ・メトカルフの3人であるという。アレンとヒギンバサムは分かるが、メトカルフはTpに加わっておらず、このコーラスのためだけに呼んだのであろうか?ともかくこのコーラスがなかなかうまいのである。ニコラスのアルト・ソロ、アレンのTpソロなど聴き処が多い。
CD-15.フィーリン・ザ・スピリット
こちらではニコラスはClでソロを取る。バサム、アレンと短いソロが続き、バサムのスキャット・ヴォーカルが入る。ベースも短いソロを取るが弦を叩いているような音である。スラッピング(日本ではチョッパーという)の始まりか?
CD-16.ジャージー・ライトニング
ニコラスのクラリネットをフューチャーして始まる。短いリフ風のアンサンブルとブレイクによるソロという組み合わせが新しい。アンサンブルも素晴らしい。ニコラスのクラリネット・プレイはニューオリンズ伝来とはイディオムを異にするような気がする。
アレン、ニコラス、ボッサムが短いソロ回しが見事である。この辺りの演奏は実に聴き応えがある。
僕が最も信頼を寄せるジャズ評論家粟村政明師の『ジャズ・レコード・ブック』には、ルイ・ラッセル・アンド・ヒズ・オーケストラの内3人のメンバーについて項が設けてある。
まずヘンリー・レッド・アレンについて、
「29年夏から31年にかけて、ルイ・ラッセルのバンドに加入し、32年暮れまでプレイした。当時ルイ・ラッセルのバンドはベスト・バンドに一つであり、その看板スターとして、エネルギッシュで戦闘的なプレイによって文字通りリード・オフ・マンの名に恥じない快演を記録した」と。
そしてJ.C.ヒギンボッサムについては、
「1928年9月ニューヨークに進出したヒギンボッサムは、ルイ・ラッセルのバンドに加入し31年まで在団した。彼の代表作もヘンリー・レッド・アレンと同様、全盛時代のルイ・ラッセル楽団の演奏に求めることができる」と。
最後にアルバート・ニコラスについても、
「ニコラスは、28年にニューヨークに戻りルイ・ラッセルの楽団に5年間在団している間にも様々な吹込みに参加した。ニコラスが残した優れたソロはルイ・ラッセルや晩年のジェリー・ロール・モートンの録音の中に聴くことができる」と。
『ジャズ・レコード・ブック』に掲載されているジャズマンは約180名、相当厳選されている。その中の少なくとも3名がここで素晴らしい演奏を記録しているのである。心して聴かねばなるまい。
| CD-17. | ブロードウェイ・リズム | Broadway rhythm |
| CD-18. | ザ・ウェイ・ヒー・ラヴズ・イズ・ジャスト・トゥー・バッド | The way he loves is just too bad |
この2曲の演奏はなかなか聴き応えがある。アレン、ボッサム、ニコラスそしてヒルと見事なソロを聴くことができる。ルイ・ラッセルのバンドが当時ベスト・バンドの一つと言われたことがよく分かる。
| Vocal | … | ヴィクトリア・スピヴェイ | Victoria Spivey |
| Trumpet | … | ヘンリー・アレン | Henry Allen |
| Trombone | … | J.C.ヒギンボッサム | J.C. Higginbotham |
| Soprano & Alto sax | … | チャーリー・ホルムズ | Charlie Holmes |
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell |
| Guitar | … | ウィル・ジョンソン | Will Johnson |
| String Bass | … | ポップス・フォスター | Pops Foster |
| CD-19. | ブラッド・ハウンド・ブルース | Blood hound blues |
| CD-20. | ダーティー・T.B.ブルース | Dirty T.B. blues |
| CD-21. | モーニング・ザ・ブルース | Moaning the blues |
| CD-22. | テレフォニング・ブルース | Telephoning blues |
歌手ヴィクトリア・スピヴェイの伴奏を務めた録音である。”Spivey”という名はある記述では「スピヴェイ」またある記述では「スパイヴィー」となっている。6月にルイ・アームストロングが伴奏を務めてレコーディングを行っている。その時はルイが連れてきたキャロル・ディッカーソンのメンバーがバックを務めており、ラッセルは参加していない。
ここに収録されている4曲は全て彼女のオリジナルであり、今で言うところの「シンガー・ソング・ライター」の草分け的な人物であったのではないかと思う。サッチモとの録音の時はブルースは歌っていなかったが、こちらは4曲とも「どブルース」である。最初の2曲はアレンが張り切ったプレイが印象的で、後の2曲はホルムズ、そして4曲目はボッサムのソロが際立っている。しかし4曲ともラッセルはほとんど音が聴こえないくらい目立っていない。僕にはマイナー・ブルースの2曲目「ダーティー・T.B.ブルース」が特に印象に残る。ヘンリー・”レッド”・アレンのTpソロが素晴らしい。
9月6日と同じだが、Trumpet…ビル・コールマン ⇒ オーティス・ジョンソン(Otis Johnson)に代わる。
CD-23.ドクター・ブルース(Doctor blues)
ここにきて、1929年録音の最後にニューオリンズ・スタイルでの演奏というのが意外である。ここでもラッセルのピアノはほとんど聴こえない。
サッチモは、1929年12月から30年2月にかけてルイ・ラッセル楽団と帯同して、ゲスト待遇でワシントン、ボルチモア、シカゴと巡演した。その間ニューヨークに戻って来た時に4回に渡ってこのバンドを率いて録音した。12月10日の録音はその最初の録音である。
| Band leader , Trumpet & Vocal | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong | |||
| Trumpet | … | ヘンリー・レッド・アレン | Henry Red Allen | 、 | オーティス・ジョンソン | Otis Johnson |
| Trombone | … | J.C.ヒギンバサム | J.C. Higginbotham | |||
| Clarinet & Alto sax | … | アルバート・ニコラス | Albert Nicholas | 、 | チャーリー・ホームズ | Charlie Holmes |
| Clarinet & Tenor sax | … | テディ・ヒル | Teddy Hill | |||
| Piano | … | ルイ・ラッセル | Luis Russell | |||
| Guitar | … | ウィル・ジョンソン | Will Johnson | |||
| String Bass | … | ポップス・フォスター | Pops Foster | |||
| Drums & Vibraphone | … | ポール・バーバリン | Paul Barbarin | |||
| Vocal on 16 | … | ホーギー・カーマイケル | Hoagy Carmichael |
| CD4-13. | アイ・エイント・ガット・ノーバディ | I ain't got nobody | 12月10日録音 |
| CD4-14. | ダラス・ブルース | Dallas blues | 12月10日録音 |
| CD4-15. | セントルイス・ブルース | St. Louis blues | 12月13日録音 |
| CD4-16. | ロッキン・チェア | Rockin’chair | 12月13日録音 |
D4-13、14の2曲では、ポップス・フォスターとポール・バーバリンがニューオリンズ的感覚の力強いリズムでバンド全体を鼓舞している。特にフォスターはストリング・ベースであり、ズンズンと響く低音が魅力的だ。
CD4-13.アイ・エイント・ガット・ノーバディ
完全にアメリカン・ポップスである。エンターティナーの道を突き進んでいる感じがする。ただ間奏のTpソロなどはもちろん素晴らしい。
CD4-14.ダラス・ブルース
ルイと共にヒギンバサムによる豪快なTbソロも聴きものであり、リズムともどもアンサンブルもさすがにジャジーな感覚にあふれ、気持ちよい。
CD4-15.セントルイス・ブルース
この曲における奔放なエネルギーの迸りに、当時のルイの活力がいささかの衰えも無いことが感じられよう。ヒギンバサムの大らかで豪放なTbソロも好演だし、力強いルイのヴォーカルとラスト4コーラスに渡るそれぞれに異なったリフを重ねて、ぐいぐいと引っ張っていくようにエネルギーを爆発させていくTpソロの見事な展開に圧倒される。このリフなどは完全にスイング期のものである。
CD4-16.ロッキン・チェア
ミルドレッド・ベイリーの当たり曲であるが、その作曲者のホーギー・カーマイケルがゲストとして加わり、ルイとデュオで歌っているのが大きな聴きものとなっている。しかし後年のルイのようにジャック・ティーガーデンとのコンビによるこの曲でのヴォーカルのような成熟した味はまだ出ていないとは大和氏。なお、バーバリンがドラムスと共にヴァイブラフォンも叩いている。
このCD全体を通して聴いてみて、ルイ・ラッセルという人はソロで名を挙げるという人ではなく、バンド作りという面で秀でた人だったのだなぁと思う。粟村師も著作では「名演者」を中心に取り上げているようだが、ジャズ界に貢献した人物という観点で捉え直せば、このルイ・ラッセルなどは当然評価の対象になって来るであろうと思う。