ミルドレッド・ベイリー 1937年

Mildred Bailey 1937

エディ・ソウター

この吹込みで僕が勝手に注目するのは、トランペットと編曲担当のエディ・ソウターである。と言っても僕はソウターに詳しいわけではない。僕がソーターのことを知ったのは、村上春樹氏著『ポートレイト・イン・ジャズ』がベニー・グッドマンの“Benny Goodman presents Eddie Sauter”を取り上げるているのを読んだからである。氏曰く「若き才人エディ・ソウターがグッドマンのために書いたアレンジメントを演奏したものには他にはない一種独特の斬新さがある。(中略)グッドマンのスィートでスインギーな資質と、ソーターのいくぶん硬質で知的な持ち味がうまく溶け合い、質が高く、しかも娯楽性に富んだ音楽がそこに作り出されている」。そして最後にソウターについて「後年スタン・ゲッツと組んで『フォーカス』という、造形美の極致ともいうべき優れた作品を世に問うことになる。」現在の僕はまだまだ、これはエディ・ソウター、これはドン・レッドマンのアレンジなどと聴き分けるような境地に達していない。
因みにこの“Benny Goodman presents Eddie Sauter”は1940年の録音であり、このミルドレッドの録音はそれに先立つこと約3年、22歳の時の録音である。「デキル若い奴」がいるから使ってみないかということだったのだろう。しかしソウターが元々はトランペット奏者だったとは意外だ。そうでもないか、Tp奏者⇒アレンジャーという後輩にクインシー・ジョーンズがいるか。
ソウターのデビューははっきりとは分からないが、ノーヴォが1935年にピアノレス8重奏団を率い、36年に12人編成とした。その36年の12人編成バンドでアレンジを担当したのがソウターである。洗練された斬新な作風が注目を集めたというが、その辺りがエディが世に出た最初であろう。しかしつくづく思う。能坊のタレント・スカウトの目の確かさ…。
[Mildred Bailey/Her greatest performances]レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1937年1月8日 シカゴにて録音

<Personnel> … レッド・ノーヴォ・アンド・ハー・オーケストラ(Red Norvo and her Orchestra)

Xylophone & Bandleaderレッド・ノーヴォRed Norvo
Trumpetビル・ハイランドBill Hylandスチュー・プレッチャーStew Pletcherエディ・ソウターEddie Sauter
Tromboneアル・マストレンAl Mastren
Clarinets & Alto saxハンク・ダミコHank D'Amicoフランク・シメオンFrank Simeon
Tenor saxハービー・ヘイマーHerbie Haymer
Pianoジョー・リスJoe Liss
Guitarデイヴ・バーバーDave Barbour
Bassピート・ピーターソンPete Peterson
Drumsモーリス・パーティルMaurice Purtill
Vocalミルドレッド・ベイリーMildred Bailey

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

Record2 A-2.スモーク・ドリームスSmoke dreams
Record2 A-3.アイヴ・ガット・マイ・ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォームI've got love to keep me warm
Record2 A-2.[スモーク・ドリームス]
ヴォーカルの後ノーヴォの木琴ソロ、Tpソロを挟んでノーヴォのリードする合奏となる。
Record2 A-3.[アイヴ・ガット・マイ・ラヴ・トゥ・キープ・ミー・ウォーム]
短いイントロの後ベイリーのヴォーカル、アンサンブルからノーヴォのソロ、アンサンブルを挟んで短いTs、Tpソロが入りノーヴォのリードする合奏となる。両曲ともソウターのアレンジだと思って聴くと何となく斬新なアレンジのように聴こえる。

<Date&Place> … 1937年3月23日 シカゴにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・ハー・オーケストラ(Mildred Bailey and her Orchestra)

Tenor sax … チャーリー・ランフィア(Charlie Lanphere) ⇒ In

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

Record2 A-1.ロッキン・チェアRockin' chair
彼女のたった一つのヒット曲であり(出谷啓氏)、このヒットに因んで『ロッキン・チェア・レディ』と呼ばれることになる代表曲。彼女は生涯4度同曲をレコーディングしているという。最初が1932年ポール・ホワイトマン楽団時代、3度目が1941年で、2度目のVocalion盤が伴奏メンバーの立派さで光ると出谷氏は書くが具体的に2度目の録音がいつかは記載していない。しかし論理的に考えるとこの録音が2度目に当たりそうだが、Vocalion盤ではない。Vocalionはコロンビアの系列ではあるが、このコロンビア3枚組はVocalion録音はVocalionと表示しているし、Vocalionのレコーディング・リストに6月、9月の録音は記してあるが、この曲の記載はない。出谷氏の思い違いか?
この曲もホーギー・カーマイケル作。大ヒットとなった1932年ポール・ホワイトマン楽団での録音は未聴だが、この録音も素晴らしい。バックもぐっと押えた演奏で彼女のリリカルな歌を引き立たせている。
[Mildred Bailey/Her greatest performances]2枚目A面ラベル

<Date&Place> … 1937年6月29日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・ハー・オーケストラ(Mildred Bailey and her Orchestra)

Vocal & Bandleaderミルドレッド・ベイリーMildred Bailey
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetエドモンド・ホールEdmond Hall
Tenor saxハーシャル・エヴァンズHerschel Evans
Pianoジミー・シャーマンJimmy Sherman
Guitarフレディー・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

メンバーは一転してカウント・ベイシー楽団のメンバーとなる。クラリネットのエドモンド・ホール、ピアノのジミー・シャーマン以外はベイシーの出であるが、ベイシー一党の相当早い時期の録音であることが注目される。ベイシー楽団は詳しくは別項に譲るが、カンサス・シティ―で活躍しているところをジョン・ハモンドに見いだされる。ハモンドはレコード会社を説き伏せて契約に向かうが、デッカ・レコードのディヴ・カップに出し抜かれて契約を奪われてしまう。そしてデッカの最初の録音が行われたのは1937年1月21日のことであった。 そして次のレコーディングは37年3月26日であり、そこでギターがフレディ―・グリーンに変わっている。その次のレコーディングは37年7月7日なのでその間に行われたことになる。
歌のバックのアンサンブルはちょっと不思議な響きをしている感じがする。途中のテナー・ソロは、ベイシー楽団でレスター・ヤングと人気を分け合い39年30歳の若さで亡くなったハーシャル・エヴァンス。一説によるとミルドレッドはレスターよりもハーシャルのテナーの方を込んだという。

<Date&Place> … 1937年9月27日 ロス・アンゼルスにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・ハー・オーケストラ(Mildred Bailey and her Orchestra)

Record2 A-4.Heaven help this heart of mine
Vocal & Bandleaderミルドレッド・ベイリーMildred Bailey
Xylophoneレッド・ノーヴォRed Norvo
Trumpetジミー・ブレイクJimmy Blakeザケ・ザーキーZake Zarchyバーニー・ズデコフBarney Zudecoff
Tromboneアル・マストレンAl Mastren
Saxesハンク・ダミコHank D'Amicoレナード・ゴールドシュタインLeonard Goldsteinジェリー・ジェロームJerry Jeromeチャーリー・ランフィアCharlie Lanphere)
Pianoビル・ミラーBill Miller
Guitarアレン・ホワイトAllen White
Bassピート・ピーターソンPete Peterson
Drumsジョージ・ウエットリングGeorge Wettling

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

Record2 A-5.ボブ・ホワイトBob White
この録音では一転して35、36年辺りのミルドレッド或いはノーヴォのオーケストラがバックを務める。ミルドレッドのヴォーカルの後ソロを取るのは口笛とノーヴォの木琴。僕はこんなに口笛がソロを吹くのを聞いたのは初めてだ。

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