ナット・キング・コール 1940年

Nat King Cole 1940

ナット・キング・コール

ナット・キング・コール(本名:ナサニエル・アダムズ・コールズ Nathaniel Adams Coles)と言えば、僕や僕の親世代などにはヴォーカリストとして有名で、その甘い歌声の中にも黒人独特の粘っこさもある独特の声でたくさんの人々を魅了したものだった。しかし彼は元々はピアニストであり、僕の最も信頼する評論家の粟村政昭氏などは、「歯切れの良いタッチ、、比類のないスイング感を持ち、上品なユーモアと強力な左手を備えた稀に見る趣味の良いピアニスト」とベタ褒めである。
少し後にデビューしたヴォーカルも上手いオスカー・ピーターソンと同じ芸風であり、コールはピアノを弾かずヴォーカルに徹するから、ピーターソンは歌を歌わずピアノに徹するという取引をしたという噂があり、 この話は単なる根も葉もない都市伝説と思われていたが、実際2人はそういう話をしたという打ち明け話があり周囲を驚かせた。
1936年兄でベーシストのエディ・コールの率いる六重奏団に加わってプロとしてのキャリアをスタートさせ、紆余曲折の末ソロ・ピアニストとしてナイト・クラブで活動を開始した。ニューヨークに進出した折、ナイト・クラブで歌ったところ「こんな下手な歌はダメだ」マネージャーに怒られたというから、歌はその後上手くなったのだろうか?その後カリフォルニアに移り、1939年にはピアノ、ギター、ベースのシンプルな編成からなる「ナット・キング・コール・トリオ」を結成して活動を始める。このトリオは好評で、ロスアンゼルスに来ていたベニー・グッドマン楽団に在籍していたライオネル・ハンプトンが1940年ナイト・クラブで演奏しているところを聞きに行き、レコーディングに起用することになったのである。

<Date&Place> … 1940年5月10日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトンと彼のオーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader & Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Pianoナット・キング・コールNat King Cole
Guitarオスカー・ムーアOscar Moore
Bassウェズリー・プリンスWesley Prince
Drumsアル・スピールドッグAl Spieldock
Vocalヘレン・フォレストHelen Forrest

コール、Gのオスカー・ムーア、Bのウェズリー・プリンスはコール・トリオのオリジナル・メンバー。ドラムのスピールドックは、全く不明の人物で現地のミュージシャンではないかと思う。ヴォーカルのヘレン・フォレストはBG楽団の専属歌手である。

<Contents>

Record5.B-1ハウス・オブ・モーガンHouse of Morgan
Record5.B-2アイド・ビー・ロスト・ウィズアウト・ユーI'd be lost without you
Record5.B-3セントラル・アヴェニュー・ブレークダウンCentral avenue breakdown
Record5.B-4ジャック・ザ・ベルボーイJack the bellboy
Record5.B-1「ハウス・オブ・モーガン」
ミディアム・テンポで出だしからハンプのソロが続く、続いてムーア(Gt)、コール(P)の短いソロが入り、再びハンプのソロとアンサンブルで終わる。
Record5.B-2「アイド・ビー・ロスト・ウィズアウト・ユー」
スロウなバラッドで最初のコーラスはハンプと短いコールのソロで、続いてフォレストのヴォーカルが入る。
Record5.B-3「セントラル・アヴェニュー・ブレークダウン」
これも後にハンプの十八番となったブギ・ナンバー。ここでハンプはコールを差し置いて、2本指ピアノでソロを弾きまくるというショウケース。コールは左手のベース・パートを務めている。確かに乗りまくるナンバーである。
Record5.B-4「ジャック・ザ・ベルボーイ」
大和氏はこれもハンプのオリジナルではないかという。ムーア(Gt)がやや長尺の、コール(P)が短いソロを取る。コールのソロは実にスインギーである。はりきったドラムも途中からハンプではないかという気がする。

<Date&Place> … 1940年7月17日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトンと彼のオーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

前回5月10日と同じメンバー。

<Contents>

Record5.B-5ドゥ・ラ・メ・テイク1Dough-Ra-Me take1
Record5.B-6ドゥ・ラ・メ・テイク2Dough-Ra-Me take2
Record5.B-7ジャイヴィン・ウィズ・ジャーヴィスJivin’with Jarvis
Record5.B-8ブルー・ビコーズ・オブ・ユーBlue because of you
Record5.B-9ゴースト・オブ・ア・チャンスA ghost of a chance
Record5.B-5、6「ドゥ・ラ・メ」
これも多分ハンプのオリジナルという。ユーモラスなノヴェルティ・ナンバーでハンプトン、コール、ムーアの即席コーラスが良くハモッテいて楽しい。ヴォーカルの後はハンプ、コール、ムーアのソロから合奏となる。2つのヴァージョンの一番の違いはムーアのソロであるという。さすがにコールのPソロが良い。
Record5.B-7「ジャイヴィン・ウィズ・ジャーヴィス」
これもハンプトン作のハッピーなジャイヴ・ナンバー。ハンプのソロが中心で間にコール、ムーアの16小節づつのソロが入る。ここでもコールのソロが光っている。
Record5.B-8「ブルー・ビコーズ・オブ・ユー」
ミディアム・スロウにテンポを取った演奏で、先ずはハンプトンがソロを取り、続くコールのソロが素晴らしい。
Record5.B-9「ゴースト・オブ・ア・チャンス」
ヴィクター・ヤングが作曲し、ビング・クロスビーが作詞を手掛け自ら歌ってヒットさせた曲という。テーマの後、ハンプ、コールのソロが入り、フォレストのヴォーカルになる。大和氏はこのフォレストが色気があっていいと評価している。

ライオネル・ハンプトンの1940年5月の吹込みに起用されレコード・デビューを果たしたナット・キング・コール率いるトリオは、その後デッカと契約する。そして1941年10月まで計4回のセッションで16曲の吹込みを行うことになる。音源は「ナット・キング・コール/イン・ザ・ビギニング」(Nat “King” Cole/In the begininng)MCA records VIM-4514である。

<Date&Place> … 1940年12月6日 ハリウッドにて録音

<Personnel> … ナット・キング・コール・トリオ(Nat "King" Cole trio)

Band leader & Pianoナット・キング・コールNat King Cole
Guitarオスカー・ムーアOscar Moore
Bassウェズリー・プリンスWesley Prince

<Contents> … 「ナット・キング・コール/イン・ザ・ビギニング」(MCA VIM-4514)

A面1.ハニーサックル・ローズHoneysuckle rose
A面3.スイート・ロレインSweet Lorraine
A面6.ジス・サイド・アップThis side up
B面1.ゴーン・ウィズ・ザ・ドラフトGone with the draft

キング・コールズ・スイングスターズ名義の録音は1939年からいくつかあるが、トリオでのある程度メジャーなレーベルへの録音は初めてとなる。

A面1.「ハニーサックル・ローズ」
ご存知名ピアニスト、ファッツ・ウォーラー作のスタンダード・ナンバー。ゆったりとしたテンポでスタートするが、直ぐにテンポ・アップしスインギーな展開を見せる。短いコールのソロの後ムーア、プリンスと三者がソロを披露する。三者入り乱れてのインター・プレイは斬新である。
A面3.「スイート・ロレイン」
多くの歌手が取り上げているスタンダード・ナンバーの一つであるが、コールの最大の当たり曲となったという。コールは何度も録音しているが、本録音がファーストだという。僕の持っている最古のコールのヴォーカルもの。解説の岩波洋三氏は、本アルバム通してのベスト・パフォーマンスと述べている。粋で粘っこい唱法でありながらモダンなセンスに溢れているというコール特有の魅力がいかんなく発揮された作品である。ピアノ、ギターのソロもスインギーで良い。
A面6.「ジス・サイド・アップ」
三人によるコーラス・ナンバー。なかなか見事なコーラス・ワークである。ユニゾンで始まりハーモニーに展開する辺りはかっこいい。このトリオはコール、ムーアという卓抜なソロイストを擁し、さらにコールという素晴らしいヴォーカリストを擁し、さらに曲によっては三人の見事なコーラス・ナンバーもある、ナイト・クラブで評判を呼ぶのも当然と思われる。インストも一流、ヴォーカル、コーラスも一流というのは後の「ザ・フォー・フレッシュメン」に先駆けた存在だと思う。
B面1.「ゴーン・ウィズ・ザ・ドラフト」
コーラスで始まるが、こちらはコールのヴォーカルをフューチャーしたナンバー。コールのピアノ、ムーアのギター・ソロとも聴き応えのあるスインギーで楽しいナンバー。

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