あえてジャズとは言わず、アメリカ・ポップス史上の大立者、ジャズの歴史を扱った本などには必ず登場するポール・ホワイトマン。このポール・ホワイトマンはジャズを含むポピュラー音楽史上に大きな影響力を持ちながら、現在入手できる録音は実に少ない。僕は彼のことを知りながら、これまで何年にも渡ってレコード・ショップ通いを繰り返しているが、彼の単体のレコードというのを見たことがない。そんな彼の録音が収められている貴重なレコードで、僕の持っている彼の唯一のレコードである。
因みにポール・ホワイトマンの今回取り上げたナンバーは1927年以降のものであるが、ディスコグラフィーを見ると1921年頃から吹込みを行っている。僕が持っているのは1927年以降のものでそれ以前のものは持っていないのである。
そのレコードはもちろん単体ではなく、「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ」の一環、第11巻として発売された。この第11巻は9枚組でスイング時代初期の主にビッグ・バンドによる演奏を収録している。その9枚目のA面にホワイトマン楽団の演奏が収められている。因みにB面はイギリス出身のレイ・ノープル楽団のものである。
このレコードは貴重なホワイトマンのバンドの演奏を記録したことでは素晴らしいが、怪しからんのは全くレコーディング・データを記載していないのである。僕は誰が何というと(誰も何も言わないが)録音のわかる限りのデータを掲載するのがまず第一であると思っている。それがなければそもそもレコード解説としては失格である。
ということでレコード解説には全く記載されていないが、Web上でのディスコグラフィーで調べた録音日を記載した。パーソネルはどちらにも記載がない。あまり関係ないということなのだろう。
そしてレコード解説の斉木克己氏は、レコード解説にもかかわらず「ポール・ホワイトマンの成功の要因は、ハッタリと商人感覚である」手厳しく評論しているが、その割に各曲の演奏解説詳しくしている。
| Cornet & Band leader | … | レッド・ニコルス | Red Nichols | |||
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey | 、 | ジャック・フルトン | Jack Fulton |
| Clarinet | … | マッティ・マトロック | Matty Matlock | |||
| Clarinet and Alto sax | … | ジミー・ドーシー | Jimmy Dorsey | |||
| Piano | … | ハリー・ペレラ | Harry Perella | |||
| Vocal | … | ザ・リズム・ボーイズ | The Rhythm Boys |
例によってこのレコードのシリーズの再発盤は録音データが全くついていない。文中で記載のあるものだけ拾った。全ての録音に参加しているかどうかは不明。
| 1. | アイム・カミング・ヴァージニア | I'm coming Virginia | 1927年4月21日録音 |
| 2. | サイド・バイ・サイド | Side by side | 1927年4月29日録音 |
| 3. | ホワイトマン・ストンプ | Whiteman stomp | 1927年8月11日録音 |
A-1.アイム・カミング・ヴァージニア
地味な演奏だがビル・チャリスの編曲はかなりジャズの気分を出している。マッティ・マルネック、ジャック・フルトン、レッド・ニコルス、リズム・ボーイズ(ソロはハリー・パリス)等が出番を与えられている。ギターのギルバート・トーマスはエディ・ラングの変名かもしれないという。冒頭のソロに注目したい。
この曲は当時のヒット・チューンだったらしくフレッチャー・ヘンダーソンが5月11日、ビックスが抜群のソロを記録したフランキー・トランバウアー楽団が5月13日にレコーディングしている。ビックス名義のレコードが年間ヒット・チャート36位にランク・インしている。「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第11巻/ザ・サウンド・オブ・スイング」解説の斉木氏は、ヴォーカルをリズム・ボーイズのハリー・バリスとしているが、ヒット・ランキングではビング・クロスビーのものが第54位にランクされている。この年リズム・ボーイズに属していたビング・クロスビーがポール・ホワイトマンに対抗するようにレコーディングをするだろうか?斉木氏がクロスビーをバリスに、或いはチャート編集者がバリスをクロスビーにに間違えたのだろうか?
A-2.サイド・バイ・サイド
リズム・ボーイズにスポットライトを当てた月並みなダンス・アレンジだが、合奏を挟んで二度出てくるレッド・ニコルスがビックス・ベイダーベックに似ているばかりでなく、Tpの合奏はまさしくビックスの複数化である。年間ヒット・チャート第31位。
A-3.ホワイトマン・ストンプ
ヘンダーソンを思わせるホットな演奏で、ドーシー兄弟とハリー・ペレラ(P)がソロを取るが、ハーレム・タイプを模したペレらのプレイが面白い。各セクションが交錯する入り組んだ手法は、当時としてはかなり進歩的である。それもそのはず、アレンジはドン・レッドマンである。ヘンダーソンの録音については「フレッチャー・ヘンダーソン 1927年」をご覧ください。