ピー・ウィー・ラッセル 1938年

Pee Wee Russell 1938

ピー・ウィー・ラッセルは、1906年3月27日ミズーリ州セントルイスで生まれだが、1920年代後半シカゴで活動するようになり、ビックス・バイダーベックやエディ・コンドンらと共演し、次第に名前が知られるようになったヴェテランとも言えるクラリネット奏者である。僕の持っている彼の名を冠したレコードは、この年が最も古いものとなる。そこで彼のリーダー・セッションや彼の参加したレコードを取り上げておこう。。

ラッセルはこの年早速1月17日、コモドア・レーベルの初レコーディングに、エディ・コンドンの呼びかけで参加する。コモドア・レコードの初録音については、エディ・コンドン 1938年」を参照。

<Date&Place> … 1938年1月17日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … エディ・コンドンと彼のウィンディ・シティ・セヴン(Eddie Condon and his Windy City Seven)

Bandleader&Guitarエディ・コンドンEddie Condon
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Tromboneジョージ・ブルニーズGeorge Brunies
Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Tenor saxバド・フリーマンBud Freeman
Pianoジェス・ステイシーJess Stacy
Bassアーティー・シャピロArtie Shapiro
Drumsジョージ・ウェットリングGeorge Wettling

バンド名の"Windy City"はシカゴの別名だが、シカゴ出身はコンドン、ラッセル、フリーマン、ステイシーの4人である。

<Contents> … 「栄光のコンドン・ジャズ」(Mainstream Records XM-34-MSD)&"Eddie Condon/That's a serious thing"(History 20.3008-HI)

B面2曲目カーネギー・ドラッグCarnegie Drag
CD1-3.ジャ‐ダJa-Da
CD1-4.ラヴ・イズ・ジャスト・アラウンド・ザ・コーナーLove is just around the corner
CD2-4.ビート・トゥ・ザ・ソックスBeat to the socks

この日の録音は、CD"Eddie Condon/That's a serious thing"に3曲、メインストリーム・レコーズから発売された「栄光のコンドン・ジャズ」に1曲収められている。油井正一氏によれば全体で5曲録音されたというので、残り1曲あることになる。
まず興味を引かれるのは、「栄光のコンドン・ジャズ」に収められた「カーネギー・ドラッグ」である。実はこの日の前日カーネギー・ホ−ルではベニー・グッドマンのコンサートが行われており、そのBG楽団のレギュラー・ピアニストとしてジェス・ステイシーは、<シング・シング・シング>などにおいて一世一代の大熱演を演じている。この録音日は、1月17となっているが、実際のところは、ステイシーはコンサートが終了したその足で、スタジオ入りし、その興奮冷めやらぬ指でピアノを弾いたのである。

B面2曲目「カーネギー・ドラッグ」
伝統的な12小節のブルースをヘッド・アレンジで演奏したもの。上記ソロはまずステイシーが2コーラス取り、ミュートTb、コルネット、Ts、Clの順に出る。Tbのブルニーズは彼の全録音中屈指の名演だという。ラスト・コーラスのアンサンブルは、ディキシー・スタイルで行われる。
CD1-3.「ジャ‐ダ」
ゆったりとしたディキシー風のアンサンブルで始まる。コンドン一党のシカゴ・ジャズは元々ニューオリンズ・ジャズの再現を目指したものだったことを思い出させる演奏となっている。しかしソロを取るフリーマンはどこかレスター・ヤング風であるのが面白い。ソロはフリーマン⇒ハケット。短いフリーマンのカデンツアからエンディングとなる。
CD1-4.「ラヴ・イズ・ジャスト・アラウンド・ザ・コーナー」
こちらもハケットのリードするアンサンブルはディキシー風である。ソロはラッセルが取り、ハケットとの絡みなどがあり、フリーマンのソロとなり、ハケットのリードするアンサンブルで締め括る。
CD2-4.「ビート・トゥ・ザ・ソックス」
このCDは2枚組であるが、ここで2枚目のCDに移る。全体の流れでこういう収録順になったのだろうが、その意図がよく分からない。録音順不同の収録である。この曲はステイシーのイントロで始まるブルースである。まずソロはハケット(Cor)、そしてブルニーズ(Tb)、フリーマン(Ts)、ラッセル(Cl)と1コーラスずつ取り、ディキシー風の合奏になって終わる。

<Date&Place> … 1938年4月30日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … エディ・コンドンと彼のウィンディ・シティ・セヴン(Eddie Condon and his Windy City Seven)

前回1月17日からの移動
Trombone … ジョージ・ブルニーズ ⇒ ジャック・ティーガーデン(Jack Teagarden)

<Contents> … "Eddie Condon/That's a serious thing"(History 20.3008-HI)

CD1-5.エンブレイサブル・ユーEmbraceable you
CD2-10.ダイアンDiane
CD2-11.セレナーデ・トゥ・ア・シャイロックSerenade to a Shylock
CD1-5.「エンブレイサブル・ユー」
ガーシュインの作で現代でもよく取り上げられるスタンダード・ナンバー。ハケットのリードするテーマ吹奏の後、フリーマンのソロとなる。続いてティーガーデン(Tb)、ラッセル(Cl)、ハケット(Tp)がソロを取るが、いずれもリリカルでメロウな雰囲気を醸し出す好ソロの連続である。特にティーガーデンはさすがの力量を示し聴き応えのある素晴らしいソロを取る。またハケットのソロの時にリズム・パターンを変える工夫も見られる。当時の力作の一つではないかと思う。
CD2-10.「ダイアン」
ちょっとしたピアノのイントロの後、ティーガーデンがソロを取るがさすがに聴かせる。続くフリーマンも負けじといいソロを取るが、何となくレスター風である。続いてハケットのリードするアンサンブルとなり、エンディングでは再びティーガーデンが締める。 <5>CD2-11.「セレナーデ・トゥ・ア・シャイロック」 ブルースで、ヴォーカル入り。声を聴いてティーガーデンだと分かる。ヴォーカルの後ソロを取るのもティーガーデン。そしてフリーマン、ハケットが続く。いずれも好ソロだ。そして短いドラム・ソロが入りラッセルhのソロから倍テンポとなり、ディキシー風アンサンブルで締め括る。

<Date&Place> … 1938年8月31日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … ピー・ウィー・ラッセルズ・リズメイカーズ(Pee Wee Russell's rhythmakers)

Bandleader&Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Trumpetマックス・カミンスキーMax Kaminsky
Tromboneディッキー・ウエルズDickie Wells
Tenor saxアル・ゴールドAl Gold
Pianoジェイムズ・P・ジョンソンJames P Johnson
Guitarフレディー・グリーンFreddie Greene
Bassウェルマン・ブラウドWellman Braud
Drums&Vocalズッティ・シングルトンZutty Singleton

メンバーはいわゆる白黒混合で、面白い組み合わせである。テナーのアル・ゴールドだけ今回初登場だが、他のメンバーは言わずと知れた名手が揃っている。

<Contents> … "Archive of Jazz/Jack Teagarden & Pee Wee Russell"(BYG 529 066)

B-1.ベイビー・ウォンチュー・プリーズ・カム・ホームBaby , won’t you please come home
B-2.ダイナDinah
B-3.ズッティーズ・フーティー・ブルースZutty’s hootie blues
B-4.ゼアル・ビー・サム・チェンジズ・メイドThere’ll be some changes made

ニューオリンズの古老たちの演奏するディキシーとは一味違ったディキシー・ミュージックである。これがシカゴ・ジャズというものであろうか?

B-1.「ベイビー・ウォンチュー・プリーズ・カム・ホーム」
軽快なジョンソンのストライド・ピアノで始まる楽しいナンバー。合奏の後のソロも先ずはジョンソンで、続くラッセルのソロはダーティー・トーンというかかわった音が飛び出して来たりする。ラッセルという人は独立独歩という言葉がピッタリとあてはまる奏者で、不思議な演奏をする人だ。そしてカミンスキー、ウエルズ、そしてゴールドとソロが続き合奏に移る。心なしかゴールドのソロは自身無げに聴こえてしまう。
B-2.「ダイナ」
こちらもアップテンポで進行する楽しいナンバー。まずソロを取るを取るのはラッセル、そしてカミンスキー、そして貴重なグリーンのコード・ワークのソロを挟みウエルズ、ジョンソンの少し長めのソロが入るがこれは熱の入った素晴らしいソロである。そして合奏へ移るがジョンソンを筆頭に聴き応えのあるソロが並ぶ。どうも全体を締めているのはジョンソンではないかと思う。
B-3.「ズッティーズ・フーティー・ブルース」
ゆったりとしたテンポでまずウエルズが1コーラス・ソロを取り、ズッティのヴォーカルが入る。決してうまいという感じではないが、中々味のある歌いっぷりである。ヴォーカルの後はカミンスキーのソロが入るが、その後はテンポを倍に取り短い合奏で締め括る。
B-4.「ゼアル・ビー・サム・チェンジズ・メイド」
カミンスキーのリードする合奏で始まり、ジョンソン、ズッティのソロが入り、カミンスキーのリードするアンサンブルとなる。

<Personnel> … ラッセルズ‐ジョンソン‐シングルトン(Russell-Johnson-singleton)

Bandleader&Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Pianoジェイムズ・P・ジョンソンJames P Johnson
Drums&Vocalズッティ・シングルトンZutty Singleton

<Contents> … "Archive of Jazz/Jack Teagarden & Pee Wee Russell"(BYG 529 066)

B-5.いい娘を見つけたI found a new baby
B-6.エヴリバディ・ラヴズ・マイ・ベイビーEverybody loves my baby

8人編成の「リズメイカーズ」の録音と同日、クラリネット、ピアノ、ドラムスというトリオでの録音も行われた。この編成はBGのトリオと全く同じであり、とても興味が惹かれるところである。
まずBGトリオとの比較で感じるところは、ピアニストの差が如実に表れているということである。BGトリオのテディ・ウィルソンはリリカルさ・繊細さが持ち味なのに対してジョンソンは実に力強いのである。両トリオを比べるとここが一番違うであろう。2曲ともジョンソンの力強い演奏が全体を引っ張っていると感じる。

B-5.「いい娘を見つけた」
ジョンソンとシングルトンが伴奏を付けるのをバックにラッセルが吹きまくる。こんな風に吹きまくるラッセルは珍しい。
B-6.「エヴリバディ・ラヴズ・マイ・ベイビー」
こちらはジョンソンと対話するように吹くラッセルは序盤を低音中心に吹いていく。ジョンソンとシングルトンのソロも聴くことができる。

<Date&Place> … 1938年11月12日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … エディ・コンドンと彼のウィンディ・シティ・セヴン(Eddie Condon and his Windy City Seven)

Bandleader&Guitarエディ・コンドンEddie Condon
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Tromboneヴァ―ノン・ブラウンVernon Brown
Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Tenor saxバド・フリーマンBud Freeman
Pianoジョー・ブシュキンJoe Bushkin
Bassアーティー・シャピロArtie Shapiro
Drumsライオネル・ハンプトンLionel Hampton

バンド名は正確には分からないが、前作同様コモドアへの吹込みなので同じバンド名ではないかと思う。
移動は、
Trombone … ジャック・ティーガーデン ⇒ ヴァ―ノン・ブラウン(Vernon Brown)
Piano … ジェス・ステイシー ⇒ ジョー・ブシュキン(Joe Bushkin)
Drums … ジョージ・ウェットリング ⇒ ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)
ハンプトンの参加が意外である。

<Contents> … "Eddie Condon/That's a serious thing"(History 20.3008-HI)

CD1-6.サンディSunday
CD2-5.カリフォルニア・ヒア・アイ・カムCalifornia here I come

ハンプトンの参加が意外である。ヴィクターにおける「オールスター・セッション」が始まってからは、恩義のあるベニー・グッドマンのセッションにしかサイドマンとしての参加は極めて稀ではないかと思う。

CD1-6.「サンディ」
フリーマンの短いイントロの後ニュー・オリンズ風の合奏となる。こういう録音にハンプトンが加わるというのがとにかく意外。ソロはラッセル(Cl)⇒ブラウン(Tb)⇒ブシュキン(P)⇒フリーマン(Ts)⇒ハケット(Cor)と短いソロが続き合奏となって終わる。ハンプトンらしいプレイは全く見受けられない。
CD2-12.「カリフォルニア・ヒア・アイ・カム」
ピアノのイントロで始まるところはスイング・ナンバーのようだが、合奏は完全なニュー・オリンズ風である。ソロはラッセル(Cl)、続いてハケットのソロにラッセルが絡むところもニュー・オリンズ風である。ハンプトンの存在感がない。

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