レッド・ニコルス 1926年

Red Nichols 1926

映画『5つの銅貨(ファイヴ・ぺニーズ)』

多分現在の若いジャズ・ファンには、レッド・ニコルスもファイヴ・ぺニーズもご存知ない方が多いのではないかと思う。ましてや彼のレコードを積極的に集めようと人も少ないのではないかと思う。しかし僕はレッド・ニコルスとファイヴ・ぺニーズの名はなぜか高校生時代から知っていた。レコード裏面のライナー・ノートによると日本でレッド・ニコルスの名が広く知られるようになったのは、1960年に封切られたダニー・ケイ主演のニコルスの伝記映画『5つの銅貨(ファイヴ・ぺニーズ)』によってであろうという。実際僕も彼の名を知ったのは、TVで放送された映画『5つの銅貨』によってだったと記憶する。ただ僕がこの映画に興味を持ったのは、クレイジー・キャッツの「谷敬(たに・けい)」の芸名のもとになった「ダニー・ケイ」の映画を見てみたいということだったような気がするが。
人気バンドを率いることによってツアーが多くなり家族とも接触が減り、家庭が崩壊しかける。これはまずいと思ったダニー・ケイ演ずる主人公ニコルスは、トランペットを捨て、バンドを解散し、工場で務める労働者になる。やがて時がたち娘も大きくなり、父親がかつては有名なミュージシャンだったことを知る。娘や友人たちから勧められてトランペットを持ち吹いてみようとするが、全く音が出ない。失望して諦めようとするニコルスを妻や娘たちが応援し、再び素晴らしい演奏を行えるようになり復活を遂げるというお話である。
よくある家族が一番というアメリカ映画であり、どこまで事実に基づいているのかは分からないが、『ジャズ人名辞典』はニコルスが一時音楽界から身を引いたことを「美化された引退」と表現している。
粟村政昭氏は、引退前の積極的な音楽活動を非常に高く評価しているし、復帰後のプレイは逆に格段の進歩を遂げ、正規溌剌たるソロがファンの耳を奪うようになったと極めて高く評価している。
ニコルスの吹込みはサイドマンとして1923年プライヴェイト録音が最初と言われているそうだが、プライヴェイトではないものとしては1925年にサム・ラーニン(Sam Lanin)、カリフォルニア・ランブラーズにおけるレコーディングに参加している。自身がリーダーを務める「ファイヴ・ぺニーズ」は1926年からレコーディングを開始する。

<Date&Place> … 1926年12月8日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ(Red Nchols and his five pennies)

Cornet & Band leaderレッド・ニコルスRed Nichols
Clarinet and Alto saxジミー・ドーシーJimmy Dorsey
Pianoアーサー・シャットArthur Schutt
Drumsヴィック・バートンVic Berton

<Contents> … “Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)

A面1曲目ウォッシュボード・ブルースWashboard blues
A面2曲目ザッツ・ノー・バーゲンThat's no bargain

大和明氏は、「ザ・ファイヴ・ぺニーズ」を名乗って初のレコーディングを行ったのが1926年12月8日のこと」としている。ということは。このAceofHearts盤の最初の2曲が、彼らの初レコーディングとみて間違いないであろう。大和氏や粟村師によると”The five pennies”というバンド名には偽りがあり、常にそれ以上のメンバーがいたというが、ここではニコルス以外3人である。いずれにしろ看板に偽りありではある。レコード裏面のディスコグラフィーには上記の4名が記載されているが、実際に音を聴くと明らかにギターの音が聴こえる。ソロも取っている。これは多分エディ・ラングであろうと思う。
A-1.ウォッシュボード・ブルース
ホーギー・カーマイケルの曲。イントロにギターが入っているので、まず驚く。さらにソロまである。短いが各人のソロを聴くことができる。このギター・ソロが間を活かした素晴らしいソロである。僕の知る限り最も初期に行われた単音によるギター・ソロで革新的なソロだと思う。
A-2.ザッツ・ノー・バーゲン
アップ・テンポのナンバー。ソロはニコルス、続いていないことになっているギター、そしてドーシー(As)、アンサンブルを挟んでシャット(P)、ドーシー(Cl)そして短いがドラムスの参加した掛け合いを行う。2曲とも何故かデキシーランド風の雰囲気が漂うがここでもギターが革新的なソロを取る。

<Date&Place> … 1926年12月8日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ(Red Nchols and his five pennies)

Cornet & Band leaderレッド・ニコルスRed Nichols
Tromboneミフ・モールMiff Mole
Clarinet and Alto saxジミー・ドーシーJimmy Dorsey
Pianoアーサー・シャットArthur Schutt
Guitarエディ・ラングEddie Lang
Drumsヴィック・バートンVic Berton

<Contents> … “Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)&「レッド・ニコルス物語」(MCA-3012)

A面3曲目バディズ・ハビッツBuddy's habitsAH-63
B面2曲目ボニヤード・シャッフルBoneyard shuffleMCA-3012

A-3.バディズ・ハビッツ
曲のタイトルは、「バディーの習慣」ということだろうか?グッとデキシー色が強くなる。ジミー・ドーシーと言えばスイング時代の人というイメージがあるが、こういうクラリネットも吹けることに意外性を感じる。エンディングはディキシー風に決めている。
B-2.ボニヤード・シャッフル
大和氏評は、「わずか6人にもかかわらず、ソロに対するアンサンブルや各楽器の絡み方、またソロとソロの交替の部分など如何に緻密に構成されていたかがよく分かる。こういう所にファイヴ・ぺニーズの真価を見出すことができる」とベタ誉めだった。確かにこの録音を聴いても同様に思う。

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