ロイ・エルドリッジ 1935年

Roy Eldridge 1935

<Date&Place> … 1935年7月2日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his Orchestra)

Piano & Band Leaderテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコジー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
豪華な顔ぶれである。初登場はロイ・エルドリッジとコジー・コール。スイング時代最高のトランペット奏者と言われるロイ・エルドリッジの多分初レコーディングである。エルドリッジのディスコグラフィーでは、初録音は1936年2月5日自己名義のレコードとなっているが、それよりも半年早い。コジー・コールは、1930年ジェリー・ロール・モートンとのレコーディングがデビューだったようだが、そのレコードは持っていない。拙HPでは初である。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語」(CBS SONY SOPH 61-62)

record1-3.月に願いをI wish on the moon
record1-4.月光のいたずらWhat a little moonlight can do
record1-5.ミス・ブラウンを貴方にMiss Brown to you
record1-6.青のボンネットA sunbonnet blue
「ビリー・ホリディ物語」解説の大和昭氏は、「リズム隊の躍動感は見事であり、生き生きとした雰囲気に満ちている。エルドリッジの鋭さ、ウエブスターの豪快さ、グッドマンの軽妙さとフロント・ラインの3人が三者三様の素晴らしい出来を示している」と書いているが、確かにこれぞスイング時代最高のコンボ演奏の一つと言えると思う。
record1-3.[月に願いを]
もう一人の解説者、大橋巨泉氏は、初録音から2年がたち、ビリーもグッと落ち着きを見せるとし、グッドマンも未完成だが、トーンに色気があり、歌のバックもいい、この二人は恋仲だったかもしれないと書いている。確かに恋仲だったのであろう。それはビリー自身が自伝『奇妙な果実』(油井正一、大橋巨泉訳 晶文社)で明らかにしていることである。またラスト16小節をリードするエルドリッジは抜群である。
record1-4.[月光のいたずら]
軽快なテディのイントロに乗って出るBGのソロがいい。前半は中・低音を使い、後半は高音部でぐいぐいとスイングする。大和氏、巨泉氏ともBG最高のソロの一つとしているが確かに素晴らしい。この後のビリーの歌唱もまた素晴らしく、それにつられてかウエブスターも素晴らしい吹奏ぶりをしめす。
原曲の譜面を確認した巨泉氏は、全くつまらない流行歌をここまで名作に仕立て上げたのはこの面子だからであると述べている。
record1-5.[ミス・ブラウンを貴方に]
この曲でBGはイントロは高音で、メロディは中・低音でと展開を変えており、彼の好調ぶりを示している。ビリーとウエブスターが、レスターとのように溶け合っていないが、ウィルソン、エルドリッジが良くコールのブラシでのドラミングも素晴らしい。
record1-6.[青のボンネット]
この曲録音前になぜかBGは帰ってしまい、参加していないという。ウエブスター、エルドリッジの出来が素晴らしい。 「ビリー・ホリディ」レコード第1集 1面

<Date & Place> … 1935年7月31日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetセシル・スコットCecil Scott
Alto saxヒルトン・ジェファーソンHilton Jefferson
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarローレンス・ルーシーLawrence Lucie
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)

A面7.こんな夜にこんな月ならWhat a night , what a moon , what a girl
A面8.涙かくして街を行くI'm painting the town red
A面9.燃えている私It's too hot for words
2度目の録音は7月末に行われた。2度目のレコーディングは、さすがに2度目につき合わせるのは無理と判断されたのかクラリネットにはセシル・スコットが加わっている。ディスコグラフィーによれば、この日は全6曲の録音が行われたが、ビリー・ホリディが参加したのは3曲である。
そしてビリーの加わっていない3曲の内の1曲「スィート・ロレイン」のみが「ザ・テディ・ウィルソン」に収録されている。残り2曲、「ライザ」と「ロッゼッタ」であるが、「ライザ」はオクラ入りとなり、「ロッゼッタ」は未聴である。
まず、リーダーのウィルソン、ウエブスター、コールの3人はウィリー・ブライアント楽団からの参加で、セシル・スコットは35、6年当時ヘンリー・レッド・アレンのレコーディングに参加していたという。ジェファーソンは当時はフレッチャー・ヘンダーソンやチック・ウエッブの楽団でプレイしていた名手だという。
ビリーの加わった3曲に関して、解説の大和明氏は「ここでも取り上げられたナンバーは取るに足らない流行歌である」と述べ、さらに「『こんな夜にこんな月なら』も『涙かくして街を行く』も、最初のコーラスをアンサンブルとウィルソンのピアノで8小節或いは4小節ずつ交互に進行していくという構成が取られ、ウィルソンのプレイを引き立たせる工夫がされている。」
曲の解説はビリーの大ファンである故大橋巨泉氏が担当している。巨泉氏はここでもビリーをべた褒めで、演奏はコーニー(古臭い)がビリーだけは新しいとしている。僕はこの時代はまだスイングの爆発前夜であり、当時としてかなり高水準の演奏だと思うし、逆にビリーのかすれた声のはすっぱな歌い方が好きではない。「すれっからし」という言葉しか浮かんでこないが、自分に正直で「かまとと」ぶっていないところが良いという感想もあるだろうとは思う。
A-7.[こんな夜にこんな月なら]
ピアノがリードするアンサンブルが小気味よくスイングする。その後ビリーの歌が入り、ジェファーソン(As)、スコット(Cl)、ウィルソン(P)、エルドリッジ(Tp)、ウエブスター(Ts)と続き、再度スコットのリードするアンサンブルで終わる。顔見世的ナンバーだがそれなりに楽しいと僕は思う。
A-8.[涙かくして街を行く]
最初に触れたようにピアノとアンサンブルの交互の進行の後、短いAs、Tpソロの後歌が入る。ここでのヴォーカルは迫力がある。そしてそれを受けたエルドリッジのTpソロも素晴らしい。
A-9.[燃えている私]
タイトル通りかなり大胆で卑猥な内容で、ビリーのヴォーカルも何やら反抗的だとは巨泉氏。ヴォーカル後のAs、Cl、Ts、Tpと短いソロが続きその後はアンサンブルで締め括る。
「ビリー・ホリディ」レコード第1集 2面

<Date & Place> … 1935年10月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxチュー・ベリーChu Berry
Guitarデイヴ・バーバーDave Barbour
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)

B面1.日がな一日Twenty=four hours a day
B面2.ヤンキーはショボかったYankee Doddle never went to town
B面3.イーニー・ミーニー・マイニー・モーEeny meny miney mo
B面4.君を得たならIf you were mine
このセッションで注目されるのはテナー・サックスのチュー・ベリーで、同じホーキンズ派でも前回までのウエブスターは豪放さが持ち味だが、一方ベリーは豪快な中にもまろやかなソフト・トーンを持っているとは解説の大和氏。しかし前回までのウエブスターもそれほど豪放に吹いているわけではないと思うのだが。それにTbのベニー・モーテンもいい味を出していると思う。
B-1.[日がな一日]
いきなり出てくるチュー・ベリー、そしてモーテン、ウィルソン、エルドリッジなど短いが素晴らしいソロの連続である。曲は愚作で、ビリーもスイングしているものの手の施しようがないと巨泉氏は書くが、インストの素晴らしさで元は取れたと思うよ。
B-2.[ヤンキーはショボかった]
解説氏は、これも当時はやった凡庸な流行歌の一つであるが、ビリーの独特の遅れたノリが聴きもので、サビの終わりに例のヴィブラートを聴かせてくれるという。スケールの大きいモーテンのソロの方が聴きもののような気がするが。
B-3.[イーニー・ミーニー・マイニー・モー]
この曲は少し後の11月22日にヘレン・ウォードのヴォーカルでベニー・グッドマン楽団も録音している。当時の流行歌だったのだろうか?「これも愚曲の典型でビリーの誰も真似ることのできない「乗り」を楽しむしかない」とは巨泉氏。僕はモーテンとウィルソン、エルドリッジ、ベリーのソロ、及びバックのコールのドラミングなど素晴らしいので可。
B-4.[君を得たなら]
「トロンボーンのイントロを受けてのウィルソンのソロは、彼の生涯の最高の一つであろう。歌い方、乗り方、非の打ちようがない」とは巨泉氏。正確には「トロンボーンのイントロを受けて一瞬トロンボーンのつなぎがありヴォーカルの前の」ピアノ・ソロのことであろう。さらに氏は続けて「そしてああビリー!この限りない憧れをたたえた名唱をなんと表現したらいいのだろう。後半の「Yes」だけでも僕は胸があつくなる」と感極まっている。確かに熱演で内容も素晴らしいことは、僕にも分かる。

4度目のレコーディングは、12月の初めに行われた。全4曲が録音されたが、その内3曲にビリーが参加している。
「MCAジャズの歴史」

<Date & Place> … 1935年12月20日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … デルタ・フォア(The Delta four)

trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetジョー・マーサラJoe Marsala
Guitarカーメン・マストレンCarmen Mastren
Bassシド・ワイスSid Weiss

<Contents> … 「MCAジャズの歴史」(VIM-17〜19 1556)

record3.B面6.[スインギン・アット・ザ・フェイマス・ドア(Swingin’at the famous door)]
3枚組のオムニバス「MCAジャズの歴史」に1曲だけ1935年録音のカルテット演奏があったので、ここで紹介しておこう。非常に珍しい楽器編成である。面子は既に登場した人ばかり。エルドリッジ以外は 皆1935年6月録音のエイドリアン・ロリーニの録音に参加している。
TpとClがフロントだとどうしてもディキシー風になるのかもしれない。マーサラのClが良い。シドのベース・ソロはどう聴いてもロックン・ロールのベース・ラインである。Bソロの後の集団合奏は、ロックン・ロール、ディキーが混然一体となった摩訶不思議な、興味津津たるアンサンブルを展開する。

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