スコット・ジョプリン「ジ・エンターテイナー」

Scott Joplin ”The Entertainer”

「Scott Joplin/The Entertainer」CD・ジャケット

<Date & Place> … 1916年4月と5月

<Personnel>

Pianoスコット・ジョプリンScott Joplin

<Contents> … Scott Joplin ”The Entertainer”(Biograph DK 30155)

曲順曲名原題Connorised
1メイプル・リーフ・ラグMaple leaf rag1916年4月
2サムシング・ドゥイングSomething doing1916年5月
3ウィーピング・ウィロゥ・ラグWeeping willow rag1916年5月

1〜3はスコット・ジョプリン自身によってピアノ・ロールに打ち込みしたものを再生

<Date & Place> … 1960年代

<Personnel>

Pianoハル・ブールウエアHal Boulware

<Contents> … Scott Joplin ”The Entertainer”(Biograph DK 30155)

曲順曲名原題
4ジ・エンターティナーThe entertainer
5ジ・イージー・ウィナーズThe easy winners
6パイン・アップル・ラグPine apple rag
7ソレイスSolace
8グラジオラス・ラグGladiolus rag
9ザ・ラグタイム・ダンスThe ragtime dance
10シュガー・ケインSugar cane
11ザ・クラッシュ・コリジョン・マーチThe crush collision march
12ベセナ−ア・コンサート・ワルツBethena - aconcert waltz
13コンビネィション・マーチCombination March
14ア・ブリーズ・フロム・アラバマA breeze fron Alabama

ちょっとややこしいが、1〜3の録音は、実際にジョプリンの演奏に合わせて記録用のロール紙に穿孔したものなので、ジョプリンの演奏に近いどころかそのものということができる。
4〜14の収録曲は、コレクターのハル・ブールウエア(Hal Boulware)氏が、1960年代にロール紙に穿孔したものだという。ジョプリンのロール紙が完全な形で残っておらず、ハル氏が楽譜を基に修復したものらしい。
11.ザ・クラッシュ・コリジョン・マーチ (The crush collision march)は、かなり初期(1896年)の作品で、1896年28歳の9月16日、カンサス&テキサス鉄道会社(The Katy, K&Tの意)の宣伝のためにテキサス州wako近くで行った車両同士の正面衝突(衝撃によるボイラー爆発で、5万人の観客の一部に破片が飛び、結局2名死亡と重傷者の出る大事故になったが)にジョプリンは作曲へのインスピレーションを感じて作曲したものという。
タイトルは“The entertainer”でこれは映画『スティング』の主題歌となった超有名曲である。このタイトルはセールス用だ。重要なのはサブ・タイトル“Classic ragtime from rare piano rolls”である。正直このCDを見つけ購入する時に、CDの裏を見“played by Scott Joplin”の表記を見て驚いた。史上初のジャズのレコーディングは1917年2月に行われたことは第66回O.D.J.B.の時に触れたばかりだ。そしてスコット・ジョプリンが亡くなったも1917年である。ジョプリンはいつPlayしたのだろう?O.D.J.B.よりも古いではないか?しかしその疑問は、ヨアヒム・ベーレント氏の次の記述で明らかになる。
「ラグタイムの作曲家たちは、その作品を自動ピアノのロール(型紙)に打ち込み、これらのピアノ・ロールは何千も売りさばかれた。当時蓄音機はなかったし、こうした事実は、つい最近まで、ほとんど知られていなかった。1950年に入って、ときには全く偶然に多くの貴重なピアノ・ロールが発見され、レコードに採録されて陽の目を見た」。
ピアノ・ロールの構造や理論についてはほとんど知らないが、アメリカ映画などでピアノの鍵盤が勝手に動き演奏するシーンを何度か見たことがあり、あれがピアノ・ロールの再生の場面だろうと想像している。歴史は古く1877年エヂソンによって発明されたものらしい。記録する時は実際の演奏に合わせて穴が穿たれる仕組みのようだ。
さて以下は2014年にこのCDを取り上げた時の記事を一部残そう。
そもそもラグタイム(ragtime)とはどういう意味であろうか?その語源の定説は未だ無いようで、このリズムが持つragged (でこぼこした、という意味)からきているという説とシンコペーションを多用した右手のメロディーと左手の伴奏を癒合させた独特の演奏スタイルが、従来のクラシック音楽のリズムとは違う「ずれた」リズムと思われたことから「ragged-time」略して「ragtime」と呼ばれるようになったという説があるようである。
多分名付け親は白人なのであろう。「自分体の演奏とは感じが違う、リズムが外れているんではないの?」と当時の白人たちは思ったのだろう。
要は「クラシック音楽のリズム感からするとずれている」ということだ。僕自身は「外れている」ように感じないのだが、その原因は僕にリズム感がないことが主原因だが、そもそもクラシックのリズム感が体にしみ込んでいないから、「外れている」と感じないということもあるだろう。
ヨアヒム・ベーレントによれば(『ジャズ』)、当時スコット・ジョプリンの他にも多くのラグタイム・ピアニストがいた。その中には数人の白人もいたが、専門家でさえ演奏スタイルで黒人と白人を識別できなかったという。このことは特筆に値する。ラグタイムでは、即興演奏がなくすべて譜面に沿って演奏していた。ということは譜面通りに演奏すれば、白人、黒人関係なくラグタイムになったということで、つまりは譜面自身が「ラグタイム」だったことになる。ジャズ研究家であり、ジャズ・レーベル”Riverside”を設立したオリン・キープニュースは「ラグタイムはホットというよりクールな音楽」と言っているが、それはこの「譜面通りの演奏」ということを言っているのであろう。
ではこの「クラシック音楽のリズム感とのずれ」はどこから生まれてくるのであろうか?何がずれているのだろうか?
大和明氏によれば、ラグタイムはロンド形式を主体とする19世紀の西欧音楽の伝統に基づいて作られ、本来譜面通りに演奏された黒人ピアノ音楽だが、そのピアノ演奏には黒人特有のシンコペーションが盛り込まれていたとする。
ロンド形式とは、西欧古典音楽の一形式で、主要主題部が挿入部を挟んで数度回帰する形式のことだが、ガンサー・シュラー氏によると、それは誤りだという。シュラー氏のよればクラシックのロンド形式は「ABACA-Coda」のように新たなエピソードに入る前には最初のエピソード(A)へ復帰する。確かにジョプリンのラグには、「AABBACCAA」を備えている曲もあるが、最も多いパターンは「AABBACCDD」であるとする。このパターンの代表は1.メイプル・リーフ・ラグ、フィグ・リーフ・ラグ(前回のウィリアム・オルブライト盤収録)、5.ジ・イージー・ウィナーズ (The easy winners)などであるという。ではラグタイムの形式上の原型はどこから来たのかというと「行進曲(マーチ)」から来ているという。
スコット・ジョプリンが最も有名なラグタイムのピアニスト兼作曲家であるが、他にはジェームス・スコット(1886-1938)、ジョセフ・ラム(1887-1960)などが有名な作曲家という。

このWebサイトについてのご意見、ご感想は、メールでお送りください。
お寄せいただいたご意見等は本文にて取り上げさせていただくことがあります。予めご了承ください。