テディ・ウィルソン 1937年
Teddy Wilson 1937
今回は、テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションの1937年の録音を聴いていこう。テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションは1935年7月に始まり、1939年1月まで3年半行われるが、最もセッション数が多く、吹き込まれた曲が多いのはこの1937年である。テディ・ウィルソンはブランズウィック・セッションの他にもベニー・グッドマンのトリオやカルテットなどかなり録音数がこの年も多い。ともかく順番に聴いていくことにしよう。
<Date & Place> … 1937年1月12日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)
| record3.A-4 | 誰も知らない | One never knows , does one ? |
| record3.A-5 | 恋に寒さを忘れ | I've got my love to keep me warm |
| record3.A-6 | 口でいえない心のうち | If my heart could only talk |
| record3.A-7 | 夢の中でも | Please keep me in your dreams |
この録音はビリー名義の録音で、吹き込まれたのはヴォカリオン/オーケーであり、「ザ・テディ・ウィルソン」(ブランズウィック・セッション)には収録されていないし、プレイ自体もそれほど目立ってはいない。またパーソネルを見るとGtのリュースが唯一白人の参加で珍しい。サンプソンの参加も意外だが、多分それほど大きな意味合いはなく、「明日ビリーの吹込みに来れる人」という連絡網が回り、集まってきたのかもしれない。
record3.A-4.[誰も知らない]
ビリーにしては珍しく、イントロなしにいきなり歌い始める。サンプソンはClとAsを持ち替えてプレイしている。ここでビリーは、お得意の「遅れたノリ」でレイジーに歌う。
record3.A-5.[恋に寒さを忘れ]
ウィルソンの軽快なイントロの後、ここでもビリーは、お得意の「遅れたノリ」でレイジーに歌う。ビリーの後のウエブスターも同じ雰囲気を継続して聴かせる。しかしその後のサンプソンのClが良くないとは、レコード楽曲解説の大橋巨泉氏。それほど良くないかな?僕はそうは思わないが…。
record3.A-6.[口でいえない心のうち]
こうした祈るような乙女心を歌うビリーは絶品だが、後のサンプソンのClが良くないと、大橋巨泉氏は怒っている。怒るほどでもないのでは?と僕。
record3.A-7.[夢の中でも]
30年代の安っぽい流行歌の一つと巨泉氏。ウエブスター、ジョーンズのソロが良い。
<Date&Place> … 1937年1月25日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
ベニー・グッドマンはサイド・マン扱いが気に食わず「ジョン・ジャクソン(John Jackson)という名でクレジットされている。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)
| record1 B-1. | リズムのない男 | He ain't got rhythm |
| record1 B-2. | 今年のキッス | This year's kisses |
| record1 B-3. | 何故生まれてきたの | Why was I born ? |
| record1 B-4. | あの人でなけりゃ | I must have that man ! |
パーソネルを見れば一目瞭然だが、ベニー・グッドマンとウィルソン以外はベイシー楽団のメンバーで固められている。ベイシーの楽団員たちはこうしたセッションに参加して日銭を稼いでいたわけだが、この録音は、ビリーの一つの飛躍のきっかえとなる重要な録音となった。それは音楽的に重要な影響を及ぼすことになるレスター・ヤング、そしてバック・クレイトンとの初共演であるからであるが、そのことはビリーの項で詳しく触れよう。
「ザ・テディ・ウィルソン」にも1曲(「リズムのない男」)収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には4曲とも収録されているので、こちらでまとめて聴こう。
B-1.[リズムのない男]
ベニー・グッドマンは自身のオーケストラで1936年12月30日に録音をしている。BGのイントロの後ビリーのヴォーカルとなる。ヴォーカルが終わるか終わらぬうちに出るレスターのソロが素晴らしい。続くクレイトンのソロからディキシー風アンサンブルとなる。
B-2.[今年のキッス]
レスターが極上のリリシズムを発揮する。ビリーもその雰囲気を引き継ぎしっとりとした味わい深い歌唱を聴かせる。その後に出るウィルソンのPも極上である。
B-3.[何故生まれてきたの]
クレイトンがリリカルなイントロでこの曲のムードを作る。ビリーは思い切ったフレイジングで応じ、ウィルソン、BGが暖かい素晴らしいソロを繰り広げる。
B-4.[あの人でなけりゃ]
ビリーがじっくり取り組んだ詠唱を聴かせる。ウィルソン、クレイトンのオブリガードも見事にマッチしている。Voの後のレスターのソロもしみじみとした温かさを伝える。BGも短いながらムードにマッチした好ソロを聴かせてくれる。
<Date&Place> … 1937年2月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)
1936年12月2日と同じメンバー。この年最初のカルテットでの録音。
<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)
| CD6-2. | 美わしのアイダ | Ida , sweet as apple cider |
| CD6-3. | 二人でお茶を | Tea for two |
| CD6-4. | ランニン・ワイルド | Runnin' wild |
CD6-2.[美わしのアイダ]
20世紀初頭のポピュラー・ソングで、リラックスしたミディアム・スロウの演奏の中ハンプトンのソロの時だけテンポを速め変化をつけている。SP盤としてはぎりぎりの3分43秒と長尺の演奏である。
CD6-3.[二人でお茶を]
現代でもよく奏されるスタンダード・ナンバー。リラックス感あふれる素晴らしい演奏である。
CD6-4.[ランニン・ワイルド]
ジーン・クルーパは、BGのために行ったスタジオ録音の中では自分のベストであると述べている作品。確かに素晴らしいブラシ・ワークである。
<Date & Place> … 1937年2月18日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)
| record3.B-5 | ムードにひたって | The mood that I'm in |
| record3.B-6 | 導いてくれた貴方 | You showed me the way |
| record3.B-7 | センチでメランコリー | Sentimental and melancholy |
| record3.B-8 | これが最後の恋よ | My last affair |
このセッションの聴き処を解説の大和氏は、一つは「これが最後の恋よ」におけるビリーの歌唱で、それはビリーの歌唱にこの録音には参加していないがレスターのノン・ヴィブラートによるフレイジングが導入され、一層リリカルな味が強調されているところと、サッチモ直系のTp奏者であるレッド・アレンには他の奏者には見られない自由自在なフレイジングを駆使した独特の味わいがあり、この日のセッションでは随所に発揮されているという。
record3.B-5.[ムードにひたって]
何といってもウィルソンのプレイが光るとは巨泉氏。でも一番良いのはビリーの歌だと思う。
record3.B-6.[導いてくれた貴方]
ここでもウィルソンと、堂々たるレッド・アレンのTpが素晴らしい。僕はこの歌、この歌を歌うビリーは好きだなぁ。
record3.B-7.[センチでメランコリー]
この曲もウィルソンが絶好調を維持、レッド・アレンもフレージングが独特で素晴らしい。前々セッション参加のジョナ・ジョーンズとの格の違いを見せつけると巨泉氏は厳しい。
record3.B-8.[これが最後の恋よ]
ここでもウィルソン、アレンが素晴らしい。最初に述べたようにビリーの歌唱も後の歌手に大きな影響を与えた画期的なものだという。これでテナーがレスターだったら言うことなしという快演。
<Date & Place> … 1937年3月31日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)
| 曲名 | 原題 | 収録アルバム | 収録個所 |
| うかつだった私 | Carelessly | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.A-1 |
| どうしてできるの | How could you | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.A-2 |
| しのび泣き | Moanin’low | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.A-3 |
| ファイン・アンド・ダンディ | Fine and dandy | 「ザ・テディ・ウィルソン」 | record2 A-2 |
このセッションは前録音から約1か月半空いている。この録音ではクーティー、ホッジス、カーネィとエリントニアンとの共演が実現した。そういったことで雰囲気ががらりと変わるところが面白い。ビリーの歌唱には、父親を失った悲しみ・怒りは聴き取れない。歌うことに集中することでそれらを振り払っていたのかもしれない。
record4.A-1.[うかつだった私]
クーティーの短いイントロの後ホッジスが吹き、ウィルソンが引き取る。エリントンと異なる端正なピアノである。ビリーのノン・ヴィブラート唱法が効いている。ホッジスのオブリガードでビリーの歌を聴くとはなんとも贅沢なことだ。後半のクーティのグロウル・ミュートのソロは素晴らしい。しかし
record4.A-2.[どうしてできるの]
解説の巨泉氏は、ビリーの歌以外はつまらないというが、端正なウィルソンのピアノ、クーティーのソロ、ホッジスのAsソロなどいかにもらしくて僕は好きだ。
record4.A-3.[しのび泣き]
解説の巨泉氏は、曲が良いと出来も良くなるとメチャクチャなことを言っている。イントロのウィルソン、続くホッジス、それを受けてのウィルソンはさらにリリカルで素晴らしい。大和氏は、本来は失恋の歌だが、恋人を失うことと父親を失ったことが二重写しになり深みのあるブルース・フィーリング(曲はブルースではない)となっているのではないかと述べている。
record2.A-2.[ファイン・アンド・ダンディ]
この日のセッションで行われたインスト録音。エリントン・ムードは前面に出さず、軽快なテンポに乗った典型的なスイング・コンボ・セッションを展開する。ホッジスの力強さと甘さ、始めは押さえながら次第に豪快なアタックで迫るクーティ、軽快で優雅なウィルソン、重厚と軽妙を兼ね備えたカーネイと各ソロイストの妙技を聴くことができる。もう少しソロ・スペースが長く欲しいと思うのは、僕だけではないだろう。
<Date & Place> … 1937年4月1日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
<Contents> …「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)
| record4.A-4 | お先真っ暗 | Where is the sun |
| record4.A-5 | 誰も奪えぬ思い出 | They can't take that away from me |
| record4.A-6 | もうよそうや | Let's call the whole thing off |
| record4.A-7 | 恋は盲目 | I don't know if I’m coming or going |
さて今回のセッションは前録音の翌日で、こちらはビリー名義のレコーディング。サイドメンにこちらはジミー・ランスフォード楽団からエディ・トンプキンス、ジョー・トーマスが参加している。テディ・ウィルソンという人は、自身名義の録音でないと抑え気味に弾く人だなぁ。
record4.A-4.[お先真っ暗]
ビリーはピアノ1音でいきなり歌い出す。非常にグルーミー(憂鬱)な唱法は前セッションに続いて彼女の唱法に変化が訪れたことを表している。ベイリーのClの絡みが良い。トンプキンスのTpもクールでよい味を出している。
record4.A-5.[誰も奪えぬ思い出]
突然音が悪くなる。音源のSP盤の状態が良くなかったか?この曲はスインギーなナンバーとして奏されることが多かった由だが、ここではグッとテンポを落とし切々と歌い上げている。ベイリーのソロが良い。
record4.A-6.[もうよそうや]
大体コミカル・ソングとして歌われることが多いというが、ここではビリーは素晴らしいジャズヴォーカルにしているという。ソロでは、ホーキンス直系のジョー・トーマスの太くてたくましいテナーが出色。
record4.A-7.[恋は盲目]
これも音が悪い。ビリーは、プレイボーイに恋をしてしまった娘の気持ちを高音を使い可憐に歌っている。後年のビリーは高い声が出なくなりこういう表現は出来なくなったという。これもベイリーのソロ、ウィルソンのオブリガードがいい。
<Date & Place> … 1937年4月23日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)
| record2 A-3 | アイム・カミング・ヴァージニア | I’m coming Virginia |
このテディ・ウィルソンのセッションではBG楽団を辞めるヘレン・ウォードが3曲歌い、1曲(この曲)がインスト・ナンバーとして録音された。ウォードのヴォーカル入りも収録して欲しかったなぁ。
メンバーが面白い。曲はビックス・バイダーベックの名演が有名。これを見事にスイング・ナンバーとして再生している。まずBG楽団のエースTpジェイムスが華麗に吹き上げ、続くウィルソンはハインズの流れをくむ力強く、ベイリーはBGを思わせる流麗に、そしてしなやかホッジス、そしてジェイムスのTpが再登場して締めくくる。
<Date & Place> … 1937年5月11日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)
| record4.B-1 | 日照雨(ひばえ) | Sun shower |
| record4.B-2 | 二人のもの | Yours and mine |
| record4.B-3 | 貴方とならばどこでも | I'll get by |
| record4.B-4 | 意地悪なあなた | Mean to me |
日照雨(ひばえ)以外は「ザ・テディ・ウィルソン」にも収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には、4曲全て収録されている。
解説の大和明氏によれば、ビリーが30年代半ばから40年代初めにかけて行った数あるセッションの中で、これほどメンバーが充実し、それもビリーのヴォーカルとの適合性という点でも最高と言えるメンバーを揃え、ビリーのヴォーカル、メンバーのソロとも最高の出来を示したレコーディングは、この日をおいてないと最高の評価をしている。
またこの録音辺りからビリーとレスターの同棲生活は始まっており、この二人の共演がしばらく断続的に続くことから、『ジャズ史上最良のコラボレイション』と謳われた名コンビが誕生するのである。
record4.B-1.[日照雨(ひばえ)]
”Sun shower”を「日照雨」と訳しているのは、間違いないと思う。いわゆる「狐の嫁入り」のことである。しかし「ひばえ」と仮名を振るのは誤りである。正しくは「そばえ」で、どの辞典を見ても、「日照雨」=「ひばえ」とするものはない。どこから引っ張ってきたのだろうか。
短いクレイトン、ホッジスのソロからビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンの端正なソロ、レスターのソロからエンディングとなる。まさに豪華リレーである。
record4.B-2.[二人のもの]
ピアノのイントロからレスター、クレイトン、ウィルソンのオブリガードの付いたビリーのヴォーカル、ウィルソン、レスターのソロと続く。
record4.B-3.[貴方とならばどこでも]
最初はレスターが吹く。そしてビリーのヴォーカルが入り、ウィルソン、クレイトンのソロからエンディングに向かう。
record4.B-4.[意地悪なあなた]
最近は原題通り『ミーン・トゥ・ミー』の方が通りやすいのではないかと思う。クレイトン、レスターのソロに続いてビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンのソロとなりクレイトンが入ってエンディングに向かう。
解説の大和氏が言うように、この4曲については特に言うことがない。もう一人の解説巨泉氏は、「自由奔放に楽しみましょう、バック・クレイトンの拡張の高さに酔い、ビリーの名唱に酔いましょう、テディ・ウィルソンのリリシズムに酔いましょう、そのために貴方はこのレコードを買ったのだ」と言っている。聴けば解説など不要ということだろう。
<Date & Place> … 1937年6月1日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)
| 曲名 | 原題 | 収録アルバム | 収録個所 |
| 自分を偽って | Foolin’myself | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-5 |
| 貴方のために生きるなら | Easy living | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-6 |
| 私は変わったの | I'll never be the same | 「ビリー・ホリディ物語」 | record4.B-7 |
| いい娘を見つけた | I found a new baby | 「ザ・テディ・ウィルソン」 | record2 A-7 |
record4.B-5.[自分を偽って]
レスター、ウィルソン、クレイトンの後ビリーのヴォーカルとなる。これこそビリーの最高傑作。何百回、何千回聴いても飽きない珠玉の名品だとは、巨泉氏。
record4.B-6.[貴方のために生きるなら]
”Easy living”をこう訳しているのはこのレコードだけだろう。僕の大好きな曲で、”Easy living”=「気楽な生活」と思っていたら、まったく違う訳である。曲の意味合いは「貴方のために生きるなら、何があってもそれは簡単なこと」ということなのだろう。ベイリー、レスター、ウィルソンのソロの流れが何とも言えずいい。
record4.B-7.[私は変わったの]
ビリーに寄り添うレスターのオブリガードが悩ましいまでに思いやりに溢れているという。確かに一緒に歌っているようだ。ウィルソンのピアノも力演で素晴らしい。
record2.A-7.[いい娘を見つけた]
アップ・テンポのインスト・ナンバーで「ザ・テディ・ウィルソン」の方にだけ収録されている。このメンバーで奏されるコンボ・インスト・ナンバーが悪いわけがない。ベイリー、クレイトン、ウィルソン、レスター、ジョーンズと続く豪華絢爛のソロイストの共演を楽しむのみである。ただもっとソロ・スペースを増やしてほしい。
さて、本テイクが何テイクは不明だが、別テイク(第3テイク)が右の海賊版"Lester Young/The alternative"に収録されている。エンディングが少し異なるが、基本的な演奏の構成、ソロの順番などは本チャンと変わりはなくこちらも聴き応えのある演奏である。
<Date&Place> … 1937年7月30日 ハリウッドにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332-3)&「新たなる宝庫・黄金時代のベニー・グッドマン」(Nostalgia records CSM 890-891)
| 「ザ・テディ」record2 A-8. | コケット | Coquette |
| 「宝庫」record2 A-6. | ジ・アワー・オブ・パーティング | The hour of parting |
こちらはウィルソンがBGのツアーに帯同してハリウッドに行っている時の録音である。この日は全5曲録音されたようだ。「ザ・テディ・ウィルソン」には、1曲だけ行われたインスト・ナンバーが収録されている。
[コケット]
同日1曲だけ録音されたインスト・ナンバー。「ザ・テディ・ウィルソン」に収録。BG一党による洗練された演奏で、ベイシー軍団のグイグイ押してくるリズム・セクションとの違いが鮮明である。僕自身は少々物足りなく感じる。
[ジ・アワー・オブ・パーティング]
ブーツ・キャッスル(Boots Castle)
ブーツ・キャッスルという女性歌手を加え4曲録音が行われたが、その内1曲が「新たなる宝庫・黄金時代のベニー・グッドマン」に収められている。ゆったりとしたテンポのナンバー。最初にBGがソロを取り、ムッソのTsの後キャッスルのヴォーカルが入る。この歌手は全く分からないが、なかなか堂々とした歌いっぷりである。ヴォーカルの後はジェイムズのTpに他の楽器が絡みディキシー風に終わる。
<Date&Place> … 1937年7月30日、8月2日 ハリウッドにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)
1937年2月3日と同じメンバー
<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)
| CD6-16. | アヴァロン(テイク1) | Avalon(take1) | 7月30日 |
| CD6-17. | アヴァロン(テイク2) | Avalon(take2) | 7月30日 |
| CD6-18. | ハンドフル・オブ・キーズ(テイク1) | Handful of keys(take1) | 7月30日 |
| CD6-19. | ハンドフル・オブ・キーズ(テイク2) | Handful of keys(take2) | 7月30日 |
| CD6-20. | 私の彼氏 | The man I love | 7月30日 |
| CD6-21. | スマイルズ | Smiles | 8月2日 |
| CD7-1. | ライザ | Liza | 8月2日 |
CD6-16、17.[アヴァロン]
カルテットの十八番となった曲で、テイク1は未発表だったもの。BG、ウィルソンのソロも実に快調である。
CD6-18、19.[ハンドフル・オブ・キーズ]
ファッツ・ウォーラーの作。アップ・テンポで演奏される。
CD6-20.[私の彼氏]
ガーシュインの作で現在もよく歌われ、演奏されるスタンダード・ナンバー。全員しっとりしたソロを取っている。メランコリーなナンバーである。
CD6-21.[スマイルズ]
第1次大戦頃のアメリカのヒット曲だという。
CD7-1.[ライザ]
ガーシュインの作で現在もよく歌われ、演奏されるスタンダード・ナンバー。クルーパのドラミングが冴えを見せるスインギーなナンバー。
<Date&Place> … 1937年8月29日 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332-3)
| record2 B-4 | 貴方を夢見て | You can't stop me from dreaming |
これは変わった録音だ。音は良くない。まずClにBGではなくロサッテイ、ベースにシモンズという初登場の人物を加えている。他はBG一党で締めている。演奏自体はアップ・テンポのディキシー風でこれもよく分からないが、こういう演奏もできますよという感じがする。
<Date&Place> … 1937年9月5日 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・カルテット(Teddy Wilson Quartet)
<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332-3)
| record2 B-1. | 浮気はやめた | Ain’t misbehavin’ |
| record2 B-2. | ハニーサックル・ローズ | Honeysuckle rose |
| record2 B-3. | ジャスト・ア・ムード(パート1,2) | Just a mood part1,2 |
これはさらに珍しい演奏だ。BGのカルテット演奏の向こうを張るようなカルテット演奏である。楽器編成もTp、Xyl(シロフォン=木琴)、P、そしてBである。B-1、2ともファッツ・ウォーラーの作である。四者が一体となり作品に新しい息吹を吹き込んでいる。
record2 B-1.[浮気はやめた]
ジェイムズが主旋を吹き、ソロはまずノーヴォ続いてジェイムズ、ウィルソンと続く。次の曲でも言えることだが、メロディ楽器が3人なので、ソロ・スペースが大きく聴き応えがある。
record2 B-2.[ハニーサックル・ローズ]
ジェイムズがノーヴォの伴奏で主旋を吹き、ソロはノーヴォ、ジェイムズ、ウィルソンの順で出る。ソロ・スペースがたっぷりあり聴き応えがある。
record2 B-3.[ジャスト・ア・ムード(パート1,2)]
一番の圧巻の録音。当時SP盤両面に渡って収められた。これはエリントン、BGに次ぐことであるがコンボで行ったのは、これが最初ではないか?ともかくソロがたっぷり聴ける。曲は12小節のブルースでまずジェイムズが4コーラスを吹くがどのコーラスも素晴らしいが特に4コーラス目が圧巻である。そしてテディも4コーラス・ソロを取る。2コーラスの終わったところでA面が終わる。B面に移ってさらにテディが2コーラス、そして能坊ことノーヴォが3コーラス取る。そしてジェイムズが主旋をもう一度吹いて終わる。モダン期を思わせるような長尺のソロで各自のソロが楽しめる。
<Date&Place> … 1937年10月29日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・トリオ・アンド・カルテット(Benny Goodman Trio and Quartet)
8月2日と同じ。
<Contents> … 「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)
| CD7-11. | いつか何処かで | Where or when |
| CD7-12. | 月光のシルエット | Silhouetted in the moonlight |
| CD7-13. | ヴィエニ・ヴィエニ | Vieni , Vieni |
この日はカルテットとトリオの演奏が録音された。
CD7-11.[いつか何処かで]
野口氏はこの録音ではこのバラッド演奏がベスト・トラックという。BGのClがほのぼのとした雰囲気を醸し出し、ウィルソンのエモーショナルなソロと聴き応えがある作品。
CD7-12.[月光のシルエット]
「聖林ホテル」の主題歌で、映画ではローズマリー・レインが歌っていたナンバーという。ここでは勿論ティルトンが歌っている。BGトリオのナンバーでヴォーカルが入るのは珍しいパターンだと思う。
CD7-13.[ヴィエニ・ヴィエニ]
元はティノ・ロッシが歌ってヒットしたシャンソンだという。カルテットによる演奏。
<Date&Place> … 1937年11月1日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
このセッションには何故かレスターの姿がない。この日のヴィド・ムッソとプリンス・ロビンソンの担当楽器について昔から諸説あったらしいがここでは割愛しよう。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SONY SOPH 65〜66)
| record5.B-1 | うまい話しさ | Nice work if you can get it |
| record5.B-2 | やっと陽の目を | Things are looking up |
| record5.B-3 | マイ・マン | My man |
| record5.B-4 | あの人を愛さずにはいられない | Can't help lovin’dat man |
record5.B-1.[うまい話しさ]
今でもよく歌われるスインギーでノリのいいナンバーだが、ビリー向きのナンバーとは思えない曲ではある。
record5.B-2.[やっと陽の目を]
切々としたビリーの名唱の後に出るテディのピアノ・ソロが良い。巨泉氏はこのタッチが素晴らしい、このタッチが真似できないのだという。確かにそうかもしれない。
record5.B-3.[マイ・マン]
後にビリーのフェヴァリット・ナンバーとなった曲であるが、ここではテンポも速くまだまだ掘り下げが足りない感じだという。ビリーはこの後じっくりとこの曲を育てていく。ソロはロビンソン(Cl)、ウィルソン(P)でその後集団演奏となる。
record5.B-4.[あの人を愛さずにはいられない]
クレイトンの高音を控えたソロが滋味深い。続くウィルソンのピアノもよい。ラストの合奏はコーニーだと僕も思う。
<Date&Place> … 1937年12月2、3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
11月12日と変更点。
Trombone … マレイ・マッキーチャーン ⇒ ヴァ―ノン・ブラウン(Vernon Brown)
<Contents> … 「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)
| CD7-20. | 張り切りおやじ(テイク1) | I'm a ding dong daddy(take1) | 12月2日 |
| CD7-21. | 張り切りおやじ(テイク2) | I'm a ding dong daddy(take2) | 12月2日 |
| CD8-1. | イッツ・ワンダフル | It's wonderful | 12月2日 |
| CD8-2. | サンクス・フォー・ザ・メモリー | Thanks for the memory | 12月2日 |
| CD8-3. | ライフがパーティーへ(テイク3) | Life goes to a party (take3) | 12月2日 |
| CD8-4. | 夢がかなったら | If dreams come true | 12月3日 |
| CD8-5. | アイム・ライク・ア・フィッシュ・アウト・オブ・ウォーター | I'm like a fish out of water | 12月3日 |
| CD8-6. | スイート・ストレンジャー | Sweet stranger | 12月3日 |
CD7-20、21.[張り切りおやじ]
この日の録音は、カルテット演奏から行われた。オーケストラと同日に録音を行うのは1936年の8月以来のことである。曲は1930年にフィル・バクスターが書いたノヴェルティー曲という。ルイ・アームストロングも録音している。カルテットとしてかなり速いテンポの曲。テイク1、2共にSP盤で出ていたという。
CD8-1.[イッツ・ワンダフル]
ジャズ・ヴァイオリンの名手スタッフ・スミスの作。オーケストラのナンバーでティルトンの歌入り。
CD8-2.[サンクス・フォー・ザ・メモリー]
パラマウント映画「百万ドル大放送」の中で、ボブ・ホープが歌い、その年のアカデミー賞主題歌賞を取った曲という。僕はミルドレッド・ベイリーの歌ったものが好きだなぁ。ティルトンはまだ少し硬い感じがする。
CD8-3.[ライフがパーティーへ]
11月12日録音の別テイク。どちらも甲乙つけがたい好演。
CD8-4.[夢がかなったら]
エドガー・サンプソンの作・編曲。
CD8-5.[アイム・ライク・ア・フィッシュ・アウト・オブ・ウォーター]
映画「聖林ホテル」で主演のディック・パウエルが歌っていたナンバー。オクラになっていたナンバーという。
CD8-6.[スイート・ストレンジャー]
映画「聖林ホテル」で主演のディック・パウエルが歌っていたナンバー。CD8-5.と共にオクラになっていたもの。
<Date&Place> … 1937年12月21、29日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)
1937年10月29日と同じメンバー
<Contents> … 「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)
| CD8-7. | 素敵なあなた(パート1) | Bei mir bist du schon (part1) | 12月21日 |
| CD8-8. | 素敵なあなた(パート2) | Bei mir bist du schon (part2) | 12月29日 |
CD8-7、8.[素敵なあなた]
2日に分けて録音が行われた。この曲はドイツ語っぽいタイトルが付いているが、ユダヤ人の作詞、作曲家の手によるミュージカルの中の1曲で、ヘブライ民族色の漂う曲であり、全BGの作品の中でもかなり異色の作品と言える。どちらもティルトンの歌入り。12月21日4人のスターとティルトンで1曲しか録音できなかったという書き方をモート氏はしている。そして8日後にTpのジギー・エルマンが呼ばれ録音に加わった。これが大正解でユダヤ人のエルマンは、明るさの中にも憂いのある印象的なプレイはいつまでも消えることのない特別な味わいをこの曲に与えた。先にアンドリュー・シスターズのレコードが出てヒットしていたが、SP盤両面にテイク1,2を収録したBGのレコードもヒットした。
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