トミー・ドーシーは1925年ザ・カリフォルニア・ランブラーズに加わるが、僕の持っているレコードは1925年4月2日から7月15日に吹き込まれたものだけである。そして1926年の録音は見当たらず、次に彼の名が確認できるのは1927年のポール・ホワイトマン楽団(写真右)のレコードになる。
ポール・ホワイトマンは、アメリカ・ポップス史上の大立者であり、ジャズの歴史を扱った本などには必ず登場する。しかし現在入手できるポール・ホワイトマンの録音は実に少ない。僕はこれまで何年にも渡ってレコード・ショップ通いを繰り返しているが、彼の単体のレコードというのを見たことがない。そんな彼の録音が収められている貴重なレコードで、僕の持っている彼の唯一のレコードが「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第11巻/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RVC RA-68)である。
このレコードは貴重なホワイトマンのバンドの演奏を記録したことでは素晴らしいが、怪しからんのは全くレコーディング・データを記載していないのである。僕は誰が何というと(誰も何も言わないが)録音のわかる限りのデータを掲載するのがまず第一であると思っている。それがなければそもそもレコード解説としては失格である。
ということでレコード解説には全く記載されていないが、Web上でのディスコグラフィーで調べた録音日を記載した。パーソネルはどちらにも記載がない。あまり関係ないということなのだろう。
そしてレコード解説の斉木克己氏は、レコード解説で「ポール・ホワイトマンの成功の要因は、ハッタリと商人感覚である」と手厳しく評論しているが、その割に各曲の演奏解説詳しくしている。
トミー・ドーシーを追ってホワイトマン楽団にたどり着いたら、そこにはカリフォルニア・ランブラーズでも一緒だったレッド・ニコルス、ジミー・ドーシーもいるではないか。どちらが先に入団したのかは不明だが…。
| Cornet & Band leader | … | レッド・ニコルス | Red Nichols | |||
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey | 、 | ジャック・フルトン | Jack Fulton |
| Clarinet | … | マッティ・マトロック | Matty Matlock | |||
| Clarinet and Alto sax | … | ジミー・ドーシー | Jimmy Dorsey | |||
| Piano | … | ハリー・ペレラ | Harry Perella | |||
| Vocal | … | ザ・リズム・ボーイズ | The Rhythm Boys |
例によってこのレコードのシリーズの再発盤は録音データが全くついていない。文中で記載のあるものだけ拾った。全ての録音に参加しているかどうかは不明。
| 1. | アイム・カミング・ヴァージニア | I'm coming Virginia | 1927年4月21日録音 |
| 2. | サイド・バイ・サイド | Side by side | 1927年4月29日録音 |
| 3. | ホワイトマン・ストンプ | Whiteman stomp | 1927年8月11日録音 |
A-1.アイム・カミング・ヴァージニア
地味な演奏だがビル・チャリスの編曲はかなりジャズの気分を出している。マッティ・マルネック、ジャック・フルトン、レッド・ニコルス、リズム・ボーイズ(ソロはハリー・パリス)等が出番を与えられている。ギターのギルバート・トーマスはエディ・ラングの変名かもしれないという。冒頭のソロに注目したい。
この曲は当時のヒット・チューンだったらしくフレッチャー・ヘンダーソンが5月11日、ビックスが抜群のソロを記録したフランキー・トランバウアー楽団が5月13日にレコーディングしている。ビックス名義のレコードが年間ヒット・チャート36位にランク・インしている。「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第11巻/ザ・サウンド・オブ・スイング」解説の斉木氏は、ヴォーカルをリズム・ボーイズのハリー・バリスとしているが、ヒット・ランキングではビング・クロスビーのものが第54位にランクされている。この年リズム・ボーイズに属していたビング・クロスビーがポール・ホワイトマンに対抗するようにレコーディングをするだろうか?斉木氏がクロスビーをバリスに、或いはチャート編集者がバリスをクロスビーにに間違えたのだろうか?ヴォーカルの前にわずかだがトミーらしきTbが聴かれる。
A-2.サイド・バイ・サイド
リズム・ボーイズにスポットライトを当てた月並みなダンス・アレンジだが、合奏を挟んで二度出てくるレッド・ニコルスがビックス・ベイダーベックに似ているばかりでなく、Tpの合奏はまさしくビックスの複数化である。年間ヒット・チャート第31位。
A-3.ホワイトマン・ストンプ
ヘンダーソンを思わせるホットな演奏で、ドーシー兄弟とハリー・ペレラ(P)がソロを取るが、ハーレム・タイプを模したペレらのプレイが面白い。各セクションが交錯する入り組んだ手法は、当時としてはかなり進歩的である。それもそのはず、アレンジはドン・レッドマンである。ヘンダーソンの録音については「フレッチャー・ヘンダーソン 1927年」をご覧ください。