トミー・ドーシー 1935年
Tommy Dorsey 1935
<Date&Place> … 1935年1月17日 ニューヨークにて WBS放送用に昼〜3時の間で録音
<Personnel> … ザ・ドーシー・ブラザーズ・オーケストラ (The Dorsey brothers' Orchestra)
前回1934年8月15日からの相違点は、
Trumpet … チャーリー・スピヴァクが加わり3本となった。
Trombone … グレン・ミラー ⇒ ジョー・ユークルJoe Yukl(1935)
この2点である。
<Contents> … "The Dorsey Brothers' Orchestra 1935"(Circle records CLP-20)
| A面 | | B面 |
| 1. | バイ・ヘック | By Heck | デーズ・デム・アンド・ドーズ | Dese . dem and dose |
| 2. | アイ・ウォズ・ラッキー | I was lucky | アイ・ビリーヴ・イン・ミラクルズ | I believe in miracles |
| 3. | ソリチュード | Solitude | ニュー・ディール・イン・ラヴ | (I've got a)new deal in love |
| 4. | ナイト・ウィンド | Night wind | ホエン・ユー・クライム・ゾーズ・ゴールデン・ステアーズ | When you climb those golden stairs |
| 5. | リズム・オブ・ザ・レイン | Rhythm of the rain | ドント・レット・イット・バザー・ユー | Don't let it bother you |
| 6. | エクセントリック | Eccentric | シュガー・フット・ストンプ | Sugar foot stomp |
レコード裏面の解説に拠ると(英文なので自信がないが)、この吹込みは、1935年1月17日に行われたラジオ放送の録音。音がきれいなのでエア・チェックではなく放送局に残された音源であろう。そしてこの時期はまだ「スイング」はまだ爆発していなかった。立役者のベニー・グッドマンはまだコロンビア専属で、ラジオ番組「レッツ・ダンス」へのレギュラー出演が始まって1ヵ月半という時期だった。その時期にドーシー・ブラザーズもラジオ出演していたということで、ラジオ出演はBGの専売特許というわけではなかったことになる。因みにTpのジェリー・ニアリーは、2日前に行われたBGの録音にも参加している。
A-1.[バイ・ヘック]
ミディアム・テンポのナンバー。合奏の後Tb、合奏を挟んでTp、Asソロが聴ける。
A-2.[アイ・ウォズ・ラッキー]
野口久光氏はドーシー・ブラザーズを甘辛両面戦略を取っていたとするが、これなど代表的な「甘いもの」路線であろう。ボブ・クロスビーのヴォーカル入り。ボブ・クロスビーは、大スター、ビング・クロスビーの実弟。そういえば声が似ている感じがする。ボブは後に自身のビッグ・バンドを率いることになるがこの時はまだ歌手を目指していた。
A-3.[ソリチュード]
ご存知エリントンのナンバーで1934年の作。既にルイ・アームストロング、ジミー・ランスフォードなどが取り上げている。やはり認められた楽曲であったのだろう。美しいメロディにクラリネットが鳥のさえずりのように絡む。
A-4.[ナイト・ウィンド]
ボブ・クロスビーのヴォーカル入り。ファッツ・ウォーラーがほんの少し前1月5日に吹き込んでいるナンバー。
A-5.[リズム・オブ・ザ・レイン]
レコードに”Film:Follies Bergere”とある。モーリス・シュバリエが主演したミュージカル・コメディの映画「巴里の不夜城」(Follies Bergere)の映画音楽かもしれない。ジャズっぽくない曲である。
A-6.[エクセントリック]
あまりジャズっぽくない曲である。合奏が中心だが、Asソロが入っている。
B-1.[デーズ・デム・アンド・ドーズ]
グレン・ミラーの作。アンサンブル中心の曲で、リード・セクションのアンサンブルが見事。
B-2.[アイ・ビリーヴ・イン・ミラクルズ]
ボブのヴォーカル入り。アンサンブル中心のポップス的ナンバー。
B-3.[ニュー・ディール・イン・ラヴ]
これもアンサンブル中心のポップス的ナンバー。
B-4.[ホエン・ユー・クライム・ゾーズ・ゴールデン・ステアーズ]
ボブのヴォーカル入りのポップス・ナンバー。
B-5.[ドント・レット・イット・バザー・ユー]
これもアンサンブルが中心でTs、Pソロが入るもののジャズらしさが感じられない。
B-6.[シュガー・フット・ストンプ]
意外な選曲。ご存知キング・オリヴァーの作で、ヘンダーソン楽団でのルイ・アームストロングのソロなどが有名なナンバーだが、ディキシーランド・ナンバーである
全体を通して聴いて感じることは、何となくジャズっぽくない演奏が多い。クラリネットの登場する場面が多くサウンド的に古臭い感じがする。同じクラリネットでもBGではそういう感じはしないのだが…。何故だろう?
1935年春というのでこの録音直後、弟トミーは兄ジミーと曲のアレンジのことや演奏のテンポのことなどで意見が対立し、それが妙に感情的になってしまい、「それなら僕は辞めた!」と言ってバンドを飛び出してしまう。弟トミーはバンドを飛び出したものの、他にあてがあるわけでもなかったが、運よく旧友のアレンジャーでバンド・リーダーのジョー・ヘイムス(Joe Haymes:1907〜1964)がバンドを解散しようとしていることを聞き、そのメンバーをそっくりそのまま引き継ぎ、自身のバンドとして組織することにした。トミーは早速リハーサルを開始し、トミー自身のアイディア、サウンドづくりを進め、一部メンバーの補強にも当たります。そしてトミー・ドーシー・オーケストラとして名乗りを上げたのは1935年秋のことだった。極めて素早い動きだったと思う。そして9月の末にはヴィクターと契約し、レコーディングを開始する。
<Date&Place> … 1935年9月26日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)
これがバンドをたたまざるを得なくなったジョー・ヘイムズから引き継いだメンバーなのだろう、こう言っては何だが、全15名中『ジャズ人名辞典』に載っているのは、当のドーシーとTpのボーズのみという無名のバンドである。
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-60-68)&「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」(RCA RA-9007-08)
record1 A-2.[ウエアリー・ブルース](Weary blues)
新生トミー・ドーシー・バンドの第1回目のレコーディングが1935年9月26日に行われ、4曲が吹き込まれたうちの1曲である。
ドーシー・ブラザーズ時代に吹き込んだことがあるというが、何といっても1927年のルイ・アームストロングの名演が思い浮かぶ。それはともかくこちらは、かなり速いテンポで奏される当時の典型的なホット・ナンバーに仕立て上げている。ストーンバーンのCl、ミッチェルのP、トミーのTbソロが演奏の山場を作っているというが、ちょっと古臭いところもあるが演奏を盛り立てるローゼンのドラムも見事で、全体のアンサンブルも素晴らしい。トミーのバンドの初期の傑作の一つというが、ここまでバンドを仕込んだのはトミーの功績であろう。しかしここでのトミーは「センチメンタル」ではなく、かなり「ホット」である。
<Date&Place> … 1935年10月18日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)
9月26日と同じメンバー。
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-60-68)
record1 A-1.[センチになって](I'm getting sentimental over you)
トミー・ドーシー楽団の最も重要なテーマ曲。トミーはドーシー・ブラザーズ時代、1932年、1934年と2回も吹きこんでいる。当然自分のバンドを立ち上げた1935年9月26日の初レコーディングでも吹込みを行ったが、何らかの理由で破損し捨てられた。米版ディスコグラフィーには"Destroyed"となっている。そこで10月18日に再録音が行われることになった。
甘く切ないバラードで、聴き処は瀬川昌久氏が「誰が真似してもこれ以上に美しく抒情的にしかもハートを込めて吹くことは無理であろう」というトミーのトロンボーン・プレイである。またサックス・セクションのそりも実に良いバランスとイントネーションを示し、リリカルなピアノ・タッチ、後半のトミーのソロによる締め括りも含めて完璧な一つの芸術作品である。
このWebサイトについてのご意見、ご感想は、メールでお送りください。
お寄せいただいたご意見等は本文にて取り上げさせていただくことがあります。予めご了承ください。