トミー・ドーシー 1940年
Tommy Dorsey 1940
ドーシーはこの年初からヴォーカル部門を強化している。一つはヴォーカル・グループ、ザ・パイド・パイパーズともう一人はフランク・シナトラの加入である。2000年代も四半世紀を過ぎようとした今、フランク・シナトラは大歌手として認知されているがデビュー当時は、ここまでビッグになるとは思われていなかったのかもしれない。右はパイド・パイパーズとシナトラ。真中にいるのがシナトラ、残るコーラス3人組がザ・パイド・パイパーズである。
因みにザ・パイド・パイパースのメンバーは、ジョー・スタッフォード(Jo Stafford)、ビリー・ウィルソン(Billy Wilson)、チャック・ロウリー(Chuck Lowry)、ジョン・ハドルストン(John Huddleston)という女性1名男性3名というメンバー構成.紅一点ジョー・スタッフォードは後に独立して人気を得た。
『フランク・シナトラの伝説』によると、シカゴのスタジオでパイド・パイパーズと2月1日"The sky fell down"と"Too romantic"の2曲をレコーディングしたというが、その音源は持っていない。
なおこの年2月7日に行われた"Metronome All Star Band"のレコーディングには選ばれなかったか参加を辞退したようである。
さらにパーソネルを見て驚くことは、偉大なるトランぺッター、バニー・ベリガンがTpセクションに名を連ねていることである。詳しいデータを見ると3月3日のニュー・ジャージー州目同ブロック・ボールルームにおける実況ラジオ放送から加わったという。37年に自己の楽団を結成するために去って行ったベリガンはバンド・ビジネスがうまくいかず、帰ってきたのである。
<Date&Place> … 1940年4月10日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-61)
Record2.A-6.「アイム・ノーボディーズ・ベイビー」(I'm nobody's baby)
サイ・オリヴァーのアレンジで、テーマをTpとTbで奏し、柔らかいTbの音はドーシーだろう。合奏を経てコニー・ヘインズのヴォーカルに入る。コニーは当時19歳若々しくキュートな声で、アップ・テンポが得意だったそうだが、4歳の時にデビューしたというヴェテランである。バディ・リッチのドラム・ソロ、バッキングも見事である。
<Date&Place> … 1940年5月23日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
Trumpet … ジョン・ディラード ⇒ レオン・デブロウ(Leon Debrow)
Reeds … ドン・ロディス(Don Lodice) ⇒ In
Vocal … フランク・シナトラ(Frank Sinatra) ⇒ In
Chorus … ザ・パイド・パイパース(The pied pipers) ⇒ In
因みにザ・パイド・パイパースのメンバーは、ジョー・スタッフォード(Jo Stafford)、ビリー・ウィルソン(Billy Wilson)、チャック・ロウリー(Chuck Lowry)、ジョン・ハドルストン(John Huddleston)という女性1名男性3名というメンバー構成である。
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー」(RCA RA-9008)
Record2.B-3.「アイル・ネヴァー・スマイル・アゲイン」(I'll never smile again)
トミー・ドーシー楽団で名を上げ、後には20世紀を代表するエンターティナーとなったフランク・シナトラの出世作となったスロウ・バラッドの傑作で、当時大ヒットとなったという。パイド・パイパーズのコーラスも効いている。解説の野口久光氏は、この時代ヴォーカリストを立ててこんなに洒落たレコードを世に送り出したのはトミー・ドーシーだけだった。ヴォーカル後のトミーのむせび泣くようなTbソロも素晴らしい。
<Date&Place> … 1940年6月27日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
Trumpet … レオン・デブロウ ⇒ クライド・ハーレイ(Clyde Hurley)
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-61)
Record2.B-1.「ザ・ワン・アイ・ラヴ」(The one I love)
解説の瀬川昌久氏によるとこの曲辺りからサイ・オリヴァーのアレンジは強いランスフォード・タッチを示し始めるという。合奏とソロとの掛け合いが実にうまいという。Tbのテーマ・ソロ、ミンスのAsソロ、シナトラの歌とパイド・パイパースのコーラスが実に気持ちよく歌っている。
<Date&Place> … 1940年7月17日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
前6月27日から変更なし。
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-61)
Record2.B-2.「ソー・ホワット」(So what)
もちろんマイルス・ディヴィスとは全く関係ないサイ・オリヴァーのオリジナル曲。急速調のテンポに乗って、リードとブラスのリフの応酬に圧倒される。そして当時としては珍しいテナー・バトルはバトルもののはしりであろうと瀬川氏。トミーとサイの先駆的アイディアが活きた作品。
ここでドーシー楽団にとっては一大事件が発生する。ベリガンが8月20日NBCのラジオ放送中にソロを取ろうとして倒れてしまうのである。そもそも「偉大なる」と形容詞が付けられるベリガンは、古巣ドーシー楽団に戻ってから、吹込みにおいてはほとんどソロを取っていなかった。ベリガンは酒におぼれアルコール中毒症状も出始め、バンド・マネージャーのボビー・バーンズを悩ませていた。そしてついにこの日ドーシー楽団から去らざるを得なくなるのである。結局ベリガンは古巣ドーシー楽団で数か月しか保たなかったのである。
そして後釜にはベニー・グッドマンの楽団で名を上げた、これも偉大なトランぺッター、ジギー・エルマンをスカウトする。エルマンはBGの腰の手術で休暇を取っている間チャーリー・クリスチャンと共に二人だけ給料をもらうという特別待遇を受けていたが、演奏をしない日々が続くことに耐えられなくなったのかもしれない。またドーシー楽団のベリガンの後という栄誉とそれに見合う報酬もあったのであろう。ともかくこの電光石火のバンド運営は見事である。そのエルマンが加わっての最初の録音が8月29日に行われる。
<Date&Place> … 1940年8月29日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
Trumpet … バニー・ベリガン ⇒ ジギー・エルマン(Ziggy Elman)
Reeds … ポール・メイソン ⇒ ハイニー・ボウ(Heinie Beau)
以外は前回7月17日と同じ。
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-61)
Record2.B-3.「アナザー・ワン・オブ・ゼム・シングズ」(Another one of them things)
サイ・オリヴァーのオリジナルで、こちらは軽快なスイング・ナンバー。リフのようなテーマの後まずソロを取るのはブシュキン(P)、そして次のソロを取るTpは新加入のエルマンで、ロディスのテナー・ソロに移る。そしてTp煽るようなハイトーン・リフによって派手に盛り上げていく。
<Date&Place> … 1940年10月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
前回8月29日と同じメンバー。
<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-61)
| Record2.B-4. | スイング・タイム・アップ・イン・ハーレム | Swing time up in harlem |
| Record2.B-5. | スイング・ハイ | Swing high |
| Record2.B-6. | スワニー・リヴァー | Swanee river |
Record2.B-4.「スイング・タイム・アップ・イン・ハーレム」
この当時よく歌われたポピュラー・ソングだという。Tsのロディスがなかなか良い味のソロを取る。そしてリッチ(Ds)の後ちょっとアンサンブルが盛り上げた後サッと引いてピアノ・ソロが入るところなどこれぞビッグ・バンドの醍醐味という感じだ。ブシュキンのシングル・トーンのソロもいい感じである。そしてここではコニー・ヘインズのヴォーカルが入り、ハイ・トーンのTpがリードする迫力あるアンサンブルで幕を閉じる。
Record2.B-5.「スイング・ハイ」
オリヴァーのオリジナル。アップ・テンポでミンスのクラリネット、ロディスのテナーと中々役者がそろっている。次のTpソロも聴き応え十分で、瀬川氏はベリガンだろうとしているが、8月の時点でとっくにベリガンは辞めている。どのディスコグラフィーでもエルマンとしているし、音色はエルマンだと思う。名演である。
Record2.B-6.「スワニー・リヴァー」
もちろん有名なフォスター作のアメリカ民謡。ゆったりとしたテンポでブラスが吹くテーマに対して、サックスのユニゾンが対位法的に進行していくのはオリヴァー得意のパターンという。ドーシーがメロディーをストレートに吹くが先ず音色が美しい。そしてメランコリックなTpプレイはこれまたエルマンの得意とするところ。発表当時から名編曲として名高い作品だという。
<Date&Place> … 1940年11月11日 ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Tommy Dorsey and his orchestar)
前回10月16日と同一メンバー。
レコード記載の録音データでは、Tpのチャーリー・ピーターソン(こういう人物がドーシー楽団に在団したことはない)とジミー・ブレイクが抜けてTpは2本と記載されているが、ディスコらフィーでは10月16日と同一となっている。このレコードのデータは誤りだらけなので信用しないことにしよう。
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー」(RCA RA-9008)
Record2.B-4.「スターダスト」(Stardust)
言わずと知れたホーギー・カーマイケルの大名作。パイド・パイパースのコーラスのリードでシナトラ歌い、女性ヴォーカルも入る。この女性はジョー・スタッフォード。後に独立してソロ・シンガーとなった。この曲も大ヒットしてシナトラは完全にスターの仲間入りを果たしたという。これ以前10月にアーティー・ショウがインストの決定版と言えるような名演を録音しており、こちらはヴォーカル盤の決定版となった。この2つの名演により、「スターダスト」は名曲としての位置を確立する。
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