ウィリー・ブライアント 1935年

Willie Bryant 1935

ウィリー・ブライアントと彼のバンド

ボーっとではあるけれどジャズ・ファンを長いことやっているが、この「ウィリー・ブライアント」という名前はこの聴き返しをしていて初めて知った。因みに「ウィリー・ブライアント」はスイング・ジャーナル社発行の『ジャズ人名辞典』にも未収録で、これまで『ジャズ人名辞典』に未収録の人物がタイトルとなるのは初めてである。
さて、このウィリー・ブライアントとはどんな人物なのであろうか?詳しくはプロフィールを見ていただくとして、写真から判断するとどう見ても白人にしか見えないのである。更にヴォーカルの声を聴いても白人だと思える。しかしベッシー・スミスと共演したり、”チョコレート・レヴュー”に出演していたという経歴は黒人っぽいのである。色の白いクレオールだったのだろうか?
一方バンドメンを見ると、今回が初登場で写真が見当たらないプレイヤーが多く全ては分からないのだが、ベニー・カーターやベン・ウエブスター、コジ―・コール、グリン・パクなどは黒人である。もし彼が白人だとすると、基本的には白人バンド、黒人バンドと別れていたこの時代、自分以外ほとんどのメンバーを黒人で固めるというのは極めて異例であり、もっと喧伝されていい事象だと思う。
また大和氏の解説に拠ると、彼がバンド・リーダーとなったのは、彼が人気のあるタレントだったからであり、このようなことはよく行われたという。しかし彼は、バンドを強化するためにエドガー・バトルやディック・クラーク、テディ・ウィルソン、コジ―・コールといった実力者ミュージシャンを次々と迎え入れる。これは誰の判断だったのであろうか?もしブライアント自身の決断だったとすれば、確かな耳を持ったバンド・リーダーだったと思わざるを得ない。
「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」レコード・ボックス

<Date&Place> … 1935年1月4日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ウィリー・ブライアント・アンド・ヒズ・オーケストラ(Willie Bryant and his Orchestra)

Band leader & Vocalウィリー・ブライアントWillie Bryant
trumpetロバート・チークRobert Cheekリチャード・クラークRichard Clarkエドガー・“プディング・ヘッド”・バトルEdger “Pudding head” Battle
Tromboneジョニー・ホウトンJohnny HaughtonR.H.ホートンR.H.Horton
Clarinet & Alto saxグリン・パクGlyn Paque
Alto sax & Baritone saxスタンリー・ペインStanley Payne
Tenor saxジョニー・ラッセルJohnny Russell
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarアーノルド・アダムズArnold Adams
Bassルイ・トンプソンLouis Thompson
Drumsコジ―・コールCozy Cole

<Contents> … 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」(RCA RA-56)

record3.A面1.スローイン・ストーンズ・アット・ザ・サンThrowin’stones at the sun
record3.A面2.イッツ・オーヴァー・ビコーズ・ウィアー・スルーIt's over because we're through
record3.A面3.ア・ヴァイパーズ・モーンA viper's moan
A-1.[スローイン・ストーンズ・アット・ザ・サン]
Tpのエドガー・バトルの編曲によるナンバー。解説の大和氏によれば、このバンドのリズム・セクションの素晴らしさを充分に立証した演奏とのことで、ソロはクラーク(Tp)⇒ペイン(As)⇒バトル(Tp)⇒ウィルソン(P)⇒ラッセル(Ts)の順。特にバトルのブリリアントなソロ、スインギーなウィルソン、動的なラッセルのソロが充実している。
A-2.[イッツ・オーヴァー・ビコーズ・ウィアー・スルー]
当時の典型的なハーレム・スタイルによるトーチ・ソングだという。ウィリー・ブライアントが昔コンビを組んでいたレオナード・リードとの共作。34年にはタフト・ジョーダンのTpとヴォーカルをフューチャーしたチック・ウエッブ楽団の優れた録音もあった。
演奏は甘いテーマを縫ってラッセルが実に味のあるTs を展開し、リーダー、ブライアントが甘く暖かい喉を聴かせる。そしてオブリガートを付けるクラークのTpが良い。ここから楽しいリフ・アンサンブルをバックにウィルソンがアール・ハインズ風のタッチの素晴らしいソロを聴かせる。なおサビのAsはペインが担当。
A-3.[ア・ヴァイパーズ・モーン]
大和氏によれば、「Viper」とは麻薬耽溺者のことで、当時ジャズメンにマリファナが広がりつつあったことからこういう曲が出来たのだという。さらに氏は、編曲はエドガー・バトルでこの日の録音の中でもっと優れた演奏とし、先ずリズム・セクションがしっかりしており、プランジャー・ミュートをうまく使ったアンサンブルといい、ソリッドなリズムといい実に素晴らしい。R.H.ホートンのグロウルするプレイともう一人のホウトンとの掛け合いがラッセルのTsソロを挟んで行われる。ハインズ風のウィルソンの短いPソロを経て、バトルがここでも輝かしいソロを披露し、ペインのソロを経て演奏を終えている。語りは勿論ブライアント。 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」ウィリー・ブライアント面

<Date&Place> … 1935年5月8日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ウィリー・ブライアント・アンド・ヒズ・オーケストラ(Willie Bryant and his Orchestra)

trumpetロバート・チークRobert Cheekベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxベン・ウエブスターBen WebsterIn

<Contents> … 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」(RCA RA-56)

record3.A面4.リガマロールRigamarole
record3.A面5.ロング・アバウト・ミッドナイト‘Long about midnight
record3.A面6.ザ・シーク The shiek
record3.A面7.ジェリー・ザ・ジャンカー Jerry the junker
A-4.[リガマロール]
演奏はストック・アレンジによるものだという。先ずアンサンブルがシャープであり、新加入のウエブスターのドライヴ感あふれるソロが聴きもので、ホウトン(Tb)、ウィルソン(P)、ホートン(ミュートTb)、アダムズ(Gt)、ウエブスター(Ts)、バトル(Tp)とソロが続く。
A-5.[ロング・アバウト・ミッドナイト]
ピアニストのアレックス・ヒルの作で、アレンジもヒルが手掛けている。アンサンブルからホウトンのオブリガードをを伴いながらブライアントが軽快に歌う。続いてバトルのミュートTp、ウエブスター張りに豪快に吹くラッセル(Ts)、ホートンの短いソロを経てアンサンブルで締める。
A-6.[ザ・シーク]
全ブライアント楽団の録音中1,2を争う出来映えを示す。ヘッド・アレンジによって演奏は進められ、ピアノのイントロから活き活きとしたリズムに乗って、ホートンのグロウルTbソロ、ウィルソン(P)、ウエブスター(Ts)のたくましいソロ、続いてドライヴ感溢れるラッセル(Ts)とアドリブが展開する。さらにバトルの歌心溢れるソロに続きラスト・コーラスはパク(Cl)がクライマックスへと盛り上げる。
A-7.[ジェリー・ザ・ジャンカー]
これは明らかにキャブ・キャロウェイの「ミニー・ザ・ムーチャー」や「キックイン・ザ・ゴーイング・アラウンド」の商業的成功を意識し、それにあやかろうとした作品。ブライアントとバンドメンのコーラスが同じような雰囲気を醸し出している。ソロはラッセル(Ts)、パク(Cl)、ウィルソン(P)と続く。パクのソロが秀逸。
「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」解説集

<Date&Place> … 1935年8月1日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ウィリー・ブライアント・アンド・ヒズ・オーケストラ(Willie Bryant and his Orchestra)

Band leader & Vocalウィリー・ブライアントWillie Bryant
trumpetオーティス・ジョンソンOtis Johnsonリチャード・クラークRichard Clarkリンカーン・ミルズLincoln Mills
Tromboneジョニー・ホウトンJohnny Haughtonジョージ・マシューズGeorge Matthews
Clarinet & Alto saxグリン・パクGlyn Paque
Alto sax & Baritone saxスタンリー・ペインStanley Payne
Tenor saxジョニー・ラッセルJohnny Russellベン・ウエブスターBen Webster
Pianoロジャー・ラム・ラミレスRodger Ram Ramirez
Guitarアーノルド・アダムズArnold Adams
Bassベース・ヒルBass Hill
Drumsコジ―・コールCozy Cole
この日のpセッションには、ベニー・カーターは参加していなという説もあり決定打ではない。

<Contents> … 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」(RCA RA-56)

record3.A面8.ザ・ヴォイス・オブ・オールド・マン・リヴァーThe voice of old man river
record3.A面9.ステーキ・アンド・ポテトSteak and Potatoes
record3.A面10.ライザLiza
A-8.[ザ・ヴォイス・オブ・オールド・マン・リヴァー]
「オール・マン・リヴァー」を下敷きにしてハリー・”ファーザー”・ホワイトとブライアントが共作した作品。ブライアントらしい軽快な歌の後、ウエブスターの誠に素晴らしいソロが展開される。この時期の彼のベスト・ソロの一つであろうとは大和氏。その後はパクのAsソロを挟んで、ジョンソン(Tp)、ラミレス(P)、パク(Cl)がアンサンブルを縫って華やかなソロを取り、マシューズ(Tb)のソロを挟んでラスト・アンサンブルをさらに盛り上げている。
A-9.[ステーキ・アンド・ポテト]
編曲はテディ・ウィルソンだが、その手法にはベニー・カーターの影響がうかがえるという。ソロはジョンソン(?Tp)に始まり、ホウトン(Tb)、バトル(Tp)のオブリガードによるブライアントの歌に続いて、ウエブスター(Ts)、ホウトン(Tb)と展開する。
A-10.[ライザ]
これもウィルソンによる編曲。この日のセッション中ベストの出来映え。カーター風のサックス・ソロを経て、味のあるマシューズ(Tb)ソロ、ジョンソン(Tp)、再びジョンソン或いはバトルのソロを挟みペイン(As)、そしてラミレス(P)からウエブスター(Ts)とソロが展開する。

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