世界史の大きな流れは、日独伊枢軸国と英米仏連合国の対立がより深まり、第二次世界大戦が不可避なものになっていった年と言うことができますが、具体的にはどのように動いていたのでしょう?簡単に振り返ってみましょう。
順位 | アーティスト | 曲名 |
1 | ビング・クロスビー(Bing Crosby) | ペニーズ・フロム・ヘヴン(Pennies from heaven) |
2 | フレッド・アステア(Fred Astaire) | 今宵のあなた(The way you look tonight) |
3 | ベニー・グッドマン(Benny Goodman) | グッディ、グッディ(Goody Goody) |
4 | ビリー・ホリデイ(Billie Holiday) | サマータイム(Summertime) |
5 | ベニー・グッドマン(Benny Goodman) | グローリー・オブ・ラヴ(Glory of love) |
6 | レッドベリー(Leadbelly) | グッドナイト・アイリーン(Goodnight Irene) |
7 | ロバート・ジョンソン(Robert Johnson) | クロスロード・ブルース(Cross road blues) |
8 | シェップ・フィールズ・アンド・ヒズ・リッピング・リズム・オーケストラ(Shep Fields & his ripping rhythm orchestra) | ディド・アイ・リメンバー?(Did I remember ?) |
9 | ファッツ・ウォーラー(Fats Waller) | 嘘は罪(It's a sin to tell a lie) |
10 | トミー・ドーシー(Tommy Dorsey) | アローン(Alone) |
年間ヒットチャートの第1位に輝いたのは、ビング・クロスビーの「ペニーズ・フロム・ヘヴン」。ジョニー・バーク作詞アーサー・ジョンソン作曲でこの年1936年公開の同盟タイトルの映画で使われました。2位はフレッド・アステアの「今宵のあなた」。両曲とも現在でもスタンダードとしてジャズメンに演奏されています。そして両曲ともこの年ビリー・ホリデイもレコーディングしています。
3位と5位には昨年大ブレークしたベニー・グッドマンのナンバーが入っていますが、これは「ベニー・グッドマン 1936年」で取り上げます。4位のビリー・ホリデイの「サマータイム」が意外です。前年10月10日ブロードウェイで初演された主な出演者は黒人だけというミュージカルの冒頭で歌われるナンバーです。これについてもが「ビリー・ホリデイ 1936年」で取り上げます。
6位も非常に意外です。レッドベリー(写真右)は以前にも登場しています(「僕の作ったジャズ・ヒストリー 19 初期のスイング 1934年」)です。殺人未遂罪でルイジアナ州の刑務所に収監されていたところをジョンとアラン・ロマックス親子に発見されました。親子は彼に才能や演奏者としての特異性を見出し、議会図書館に数百曲もの録音を残しました。また親子はルイジアナ州知事にレッドベリーの放免を働きかけ、1934年後半に実現します。しかし彼は1939年脅迫の罪名で再び刑務所に入ることになります。この間に吹き込まれたレコードであると思われます。この曲は古くからあるアメリカのフォーク・ソングですが、このレッドベリーのレコードで初めて世に紹介されることとなります。後にピート・シーガーのウィーバーズやフランク・シナトラが歌い大ヒットとなり、今ではスタンダード・ナンバーとなっています。
ぼくはこの"Top 60 pop songs"というサイトを見ていて、時たま「ホンマかいな?」と思うことがあります。例えば1929年度第5位にランクされたチャーリー・パットンの『ポニー・ブルース』そしてこの7位にランクされたロバート・ジョンソンの『クロスロード・ブルース』です。伝説のブルース・マンと言われる彼のこの曲は後にエリック・クラプトンがメンバーだったスーパー・グループ、<クリーム>に取り上げられ大ヒットします。これについても「ロバート・ジョンソン 1936年」で取り上げます。
8位にランクされたシェップ・フィールズ・アンド・ヒズ・リッピング・リズム・オーケストラは、元々クラリネットやサックスをプレイしていたシェップ・フィールズが率いたダンス・バンドです。9位のファッツ・ウォーラーについても「ファッツ・ウォーラー 1936年」で取り上げます。トミー・ドーシーについても「トミー・ドーシー 1936年」で取り上げますが、10位にランクされたこの曲(『アローン』)は収録されていません。
11位以下のランキングを見ても、ベニー・グッドマンやビリー・ホリデイ、トミー・ドーシーなどジャズ系が複数曲入っていますが、ロバート・ジョンソンも他に2曲ほどランクインしているのが驚きです。
前置きが長くなりました。1936年のジャズの動きを見て行きましょう。
ミュージシャン名 | 生年月日 | 生地 | 自伝・評伝 | 著者 |
セロニアス・モンク | 1917年10月10日 | ノース・カロライナ州・ロッキー・マウント | 評伝『セロニアス・モンク』 | ロビン・ケリー |
チャーリー・パーカー | 1920年8月29日 | ミズーリ州カンサス・シティ | 評伝『バードは生きている』 | ロス・ラッセル |
チャールズ・ミンガス | 1922年4月22日 | アリゾナ州ノガレス | 自伝『負け犬の下で』 | チャールズ・ミンガス( |
マイルス・ディヴィス | 1926年5月26日 | イリノイ州オルトン | 自伝『自叙伝』 | マイルス・ディヴィス&クインシー・トループ |
ジョン・コルトレーン | 1926年9月23日 | ノース・カロライナ州ハムレット | 評伝『ジョン・コルトレーン』 | 藤岡靖洋 |
スタン・ゲッツ | 1927年2月2日 | ペンシルヴァニア州フィラデルフィア | 評伝『スタン・ゲッツ』 | ドナルド・L・マギン |
ビル・エヴァンズ | 1929年8月16日 | ニュージャージー州プレンフィールド | 評伝『幾つかの事情』 | 中山康樹 |
穐吉敏子 | 1929年12月12日 | 旧満州国遼陽 | 自伝『ジャズと生きる』 | 穐吉敏子 |
ウエイン・ショーター | 1933年8月25日 | ニュージャージー州ニューアーク | 評伝『フットプリンツ』 | ミシェル・マーサー |