クーティー・ウィリアムズ 1944年
Cootie Williams 1944
歴史的に大変貴重な録音である。何といってもあの「ビ・バップ」の立役者の一人、「ピアノのチャーリー・パーカー」と言われるバド・パウエルの初吹込みである。それは「エリントンの至宝」と言われたクーティ・ウィリアムズのレコーディングに参加したものであった。まずこの辺りの状況を見ていこう。
1940年11月クーティはベニー・グッドマンに引き抜かれて、デューク・エリントンの楽団を退団する。そしてBGの楽団に入団するのだが、在団期間は約1年でBG楽団を退団するのである。なぜ退団に至ったかの経緯に触れた記述に出会ったことが無いので、理由は不明である。退団後は自身のバンドを結成する。1942年3月には、15人編成のビッグ・バンドを編成してOKレコードに吹き込みも行ったというが、これは何故かレコード化されておらず、未発表のままのようだ。そして42年8月からは、AFMの吹込みストが始まり、この1944年1月までぷっつりと録音は途切れてしまう。
こうしてこの録音が行われたわけだが、吹込み先は<HIT Records>という超マイナー・レーベルである。<HIT Records>というレーベルは現在も存在するが、それは1962年テネシー州に設立された全く別レーベルで、色々調べてもこの1944年にクーティらを録音したレーベルの資料は出てこない。レコード解説によれば、この<HIT Records>のフェニックス社(Phoenix)が集大成してLP化したというが、このフェニックス社(Phoenix)というのもよく分からないレーベルで、海賊盤専門のレコード会社という記述もある。ともかくクーティのAFMスト以後の初レコディングは、超マイナーなレコード会社に行われたということだけは確かである。
日本盤解説者の佐藤秀樹氏は、クーティの大きな功績の一つとして「新人の発掘」を挙げておられるが、もちろんそういったこともあるだろうが、そもそもこの時代、ミュージシャン不足が深刻な事態に陥っていたことは、人気バンドのドーシー、ケントン、BG、エリントンなどもバンドのメンバー維持に苦労していることからも明白であり、クーティも実績のあるミュージシャンは集められず、経験の浅い新人を起用するほかなかったという面の方が強いのではないかと思う。ただここでの面子を見ると、バド・パウエル、エディ・ロックジョー・ディヴィス、エディ・クリーンヘッド・ヴィンソン、パール・ベイリーと後に大活躍する新人をチョイスしている辺り見る目は確かだったことが分かる。
さて、ではバド・パウエルである。アイラ・ギトラー氏によれば、パウエルは、ニューヨークのアップタウンのバーで、セロニアス・モンクと出会ったという。そこでの詳しいエピソードは分からないが、お互いにピアノを弾いて、モンクはパウエルの才能に気づく。しかしその頃のパウエルは、ハインズやテディ・ウィルソン、アート・ティタムなどの影響下にあり、そのパウエルをミントンズ・プレイハウスに連れて行って、バップの風に当てたのがモンクだったという。そんなパウエルは、ミントンズでは滅多にピアノを弾かず、その才能を知る人はいなかったという。そんな彼がどのような経緯でクーティの録音に加わることになったのかは全く不明だが、クーティもミントンズには出入りしていた様であり、たまに弾くパウエルのピアノに才能を見出したのかもしれない。
<Date & Place> … 1944年1月4、6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … クーティー・ウィリアムズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Cootie Williams And His Orchestra)
<Contents> … 「クーティー・ウィリアムズ/セクステット・アンド・オーケストラ」(Storyville ULS-1558-R)
| A面1. | ユー・トーク・ア・リトル・トラッシュ | You talk a little trash | 1月4日 |
| A面2. | フルーギー・ブー | Floogie Boo | 1月4日 |
| A面3. | アイ・ドント・ノウ | I don't know | 1月4日 |
| A面4. | ドゥ・サム・ウォー・ワーク・ベイビー | Do some war work baby | 1月4日 |
| A面5. | マイ・オールド・フレイム | My old frame | 1月6日 |
| A面6. | スイート・ロレイン | Sweet Loraine | 1月6日 |
| A面7. | エコーズ・オブ・ハーレム | echoes of harlem | 1月6日 |
| A面8. | ハニーサックル・ローズ | Honeysuckle rose | 1月6日 |
このA面に集められたセクステット録音が注目であろう。ピアノの音が聴き取りやすいからである。
A面1.「ユー・トーク・ア・リトル・トラッシュ」
テーマ・アンサンブルからディヴィス(Ts)、クーティ、ヴィンソン(As)の半コーラスのソロ、続いてパウエルの8小節のソロとなるが、ベースと二人に委せられたという感じがする。
A面2.「フルーギー・ブー」
アップ・テンポのナンバー。ピアノのイントロからTp、Ts、P、Asとソロが続く。解説氏はここでのソロをバップ的な展開を見せると書いている。エンディング近くに短いベース・ソロが聴かれる。
A面3.「アイ・ドント・ノウ」
ピアノのイントロからアンサンブルのテーマに入る。ミディアム・テンポのナンバーで、ミュートTpが1コーラス、続いてAs、P、Tsが8小節ずつのソロを取る。
A面4.「ドゥ・サム・ウォー・ワーク・ベイビー」
これまで3曲同様クーティの作。「戦争のために何かしろよ」というタイトルかな?ヴォーカルはクーティ。そのバックでパウエルが、オブリガードを弾いている。ヴォーカルの後Tp、Ts、Pとソロを取る。解説氏は、パウエルのソロは、コード使いはバップだが、タッチがスイング的と述べている。
A面5.「マイ・オールド・フレイム」
スタンダード・ナンバーで、少しゆったりとしたテンポで演奏される。テーマの後まずソロを取るのはパウエル、続いてクーティ、そしてロックジョー(Ts)。パウエル、ロックジョーのソロがリリカルでいい。
A面6.「スイート・ロレイン」
スタンダード・ナンバー。ゆったりとしたテンポで奏される。クーティがミュートでじっくりとテーマを歌い上げ、パウエルにつなぐ。このパウエルのソロが8小節しかないが、リリカルで聴かせる。
A面7.「エコーズ・オブ・ハーレム」
エリントン・ナンバー。クーティの十八番だった曲で、中にキャブ・キャロウェイの「ミニー・ザ・ムーチャー」を取り込みながら、そのミュートの妙技を聴かせる。
A面8.「ハニーサックル・ローズ」
ファッツ・ウォーラー作のスタンダード・ナンバー。テーマも思い切ったアレンジが施してある。ソロはTp、Ts、P、As。ここでのパウエルのソロはバップ風のパッセージを示す。
<Date & Place> … 1944年1月6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … クーティー・ウィリアムズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Cootie Williams And His Orchestra)
<Contents> … 「クーティー・ウィリアムズ/セクステット・アンド・オーケストラ」(Storyville ULS-1558-R)
| B面1. | ナウ・アイ・ノウ | Now I know |
| B面2. | テスズ・トーチ・ソング | Tess's torch song |
| B面3. | レッド・ブルース | Red blues |
| B面4. | 昔はよかったね | Things ain't wahat they used to be |
B面1.「ナウ・アイ・ノウ」
デビューしたてのパール・ベイリーのヴォーカルをフューチャーしている。当時ベイリーは25歳。割と遅いデビューと言える。ソロはミュートTpのみ。
B面2.「テスズ・トーチ・ソング」
この曲もベイリーをフューチャーしている。ミディアム・テンポでデビューしたてと言えキャリアを積んでいるベイリーのヴォーカルは堂々としたものだ。ソロはここでもクーティのみ。
B面3.「レッド・ブルース」
この曲では、ヴォーカルがヴィンソンに替わる。アンサンブルの後先ずAsでソロを取り、ヴィンソンの歌となる。テキサス出身らしい泥臭いスタイルである。
B面4.「昔はよかったね」
これもエリントン・ナンバー。有名なテーマ・アンサンブルはヴィンソンのAsがリードする。ヴィンソンはAsソロ、ヴォーカルと大々的にフューチャーされている。
<Date & Place> … 1944年8月22日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … クーティー・ウィリアムズ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Cootie Williams And His Orchestra)
1944年1月6日からの移動。
Trumpet … ハロルド・マネー・ジョンソン ⇒ ラマー・ライト(Lammar Wright)、トミー・スティヴンソン(Tommy Stevenson)
Trombone … ジョージ・スティーヴンソン ⇒ エド・グローヴァ―(Ed Glover)
Alto sax … チャーリー・ホルムス ⇒ フランク・パウエル(Frank Powell)
Tenor sax … エディ・"ロックジョー"・ディヴィス ⇒ サム・ザ・マン・テイラー(Sam Taylor)
Guitar … ルロイ・カークランド(Leroy Kirkland) ⇒ In
Bass … ノーマン・キーナン ⇒ カール・プルイット(Carl Pruitt)
<Contents> … 「クーティー・ウィリアムズ/セクステット・アンド・オーケストラ」(Storyville ULS-1558-R)
| B面5. | イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント | Is you is or is you ain't |
| B面6. | サムバディズ・ガッタ・ゴー | Somebody's gotta go |
| B面7. | ラウンド・ミッドナイト | 'Round midnight |
| B面8. | ブルー・ガーデン・ブルース | Blue garden blues |
B面5.「イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント」、B面6.「サムバディズ・ガッタ・ゴー」
これもヴィンソンのヴォーカル・ナンバー。バックにオブリガードを弾くパウエルが聴こえる。ソロもヴィンソンである。
B面7.「ラウンド・ミッドナイト」
ご存じセロニアス・モンクの超有名曲。これが史上初録音。これはパウエルの紹介で取り上げたのかもしれない。この時代の風習でバンマスのクーティの名前が作者の中に入っている。テーマをクーティが吹き上げている。パウエルのソロも聴きたかったと思うのは僕だけではないだろう。
B面8.「ブルー・ガーデン・ブルース」
古いニュー・オリンズのナンバー。ソロはまずクーティで、ミュートを駆使した彼の持ち味を生かしたもの。続くTsソロは、日本では「ムード・テナーの帝王」と言われる、サム・ザ・マン・テイラー。ジャズをやっていたころの貴重なソロで素晴らしい。そして肉声とミュートTpを絡めた風変りなソロを挟んで、パウエルのソロとなる。このソロが素晴らしい。バップ風でフレーズ、リズムなどモンクの影響を感じさせるとは解説氏。最後はカンサス・シティ風のリフで盛り上げる。
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